艦隊これくしょん -とある鎮守府の伝説- 作:小説はどうでしょう
「こちらが提督室になります」
「ありがとう」
提督室と掲げられた部屋に入ると大きな机が目に飛び込んでくる。
自分には少しばかり豪勢に過ぎるなぁ、とは思いながらも椅子に座り感触を確かめていると、長門は居住まいをただし
「後ほど前提督よりの引継ぎの書類を持ってこさせます」
「あぁ、頼むよ」
「失礼します」
「あ、ちょっと待ってくれ」
敬礼し退室しようとす長門を引き止める。
「なにか?」
「たしか君が前任の伊佐名提督の秘書艦だったね」
「はい、そうです」
「そうか」
少しだけ考える。
「あの、それが何か?」
「あぁ……そうだね、そうしよう」
「?」
言っている意味が分からない長門だったが、顔を見上げた竹早と目が合うと嫌な予感がした。
「君に、僕の秘書艦になって貰いたい」
どうやら予感は当たったらしい。
一層表情に影を落とす長門だったが、竹早はそれを織り込み済みだった。
「それはご命令ですか? であるならば従」
「そう。これは命令だ」
「っ! ……了解致しました」
感情を消した表情で敬礼をする。
「長門型一番艦 戦艦・長門。現時刻より秘書艦の任、拝命致します」
「苦労を掛けるがよろしく頼むよ」
「いえ。私は任務がありますので失礼致します」
「あぁ」
長門が消えたドアを見詰めながら溜め息を漏らす竹早は頭を掻く。
とりあえずこの鎮守府に食い込む方法を思案するが
「やっぱり彼女に認めて貰う事が最善手なんだよなぁ。にしても……難易度高いですよ元帥」
しばし、今後の身の振り方を考えているとノックがされた。
『提督。長門型二番艦 戦艦・陸奥です』
「どうぞ、入ってくれ」
『失礼します』
竹早の思考を妨げるタイミングで入ってきたのは陸奥だ。
クールの中に優しさの様なモノを感じる艦娘に竹早もいささか安堵の息。さすがに長門の様な艦娘との連戦はきついのだろう。
もう一度敬礼し竹早の前にやってくると、抱えた書類の束を机に置く。
「長門から頼まれました。こちらが前提督からの引継ぎになります。前提督が作成せずに当鎮守府を去られましたので、主に私が作成致しました」
「そうか。苦労を掛けたね、すまない」
「? いえ」
「どうした? 何か私は変な事を言ったかな?」
怪訝そうな表情を見せた陸奥に疑問を呈したが、陸奥としても疑問に思っただけなのだ。前任の提督の落ち度を新任の提督が謝るという行為に。
過去数人の提督に使えた陸奥ではあるが、今までのどの提督よりも竹早は異質に思える。
(……腰が低いのね。大丈夫なのかしら?)
要するに、頼りないのであろう。
「いえ、なんでもありません。お渡しした資料について不明の点などありましたら何でもお聞きください」
「あぁ、助かるよ」
渡された書類に目を通していく。
あらかじめ元帥に資料を渡されていなければ可也の割合で困惑していただろうが、そこは既にクリアしてきている。
鎮守府に在籍している艦娘の情報にも特に目新しい物はない。
自分が書類に目を通している間に「コーヒーでもお入れしましょうか」と申し出てくれた陸奥に礼を言い、良い香りのするコーヒーが机に置かれた。
「ありがとう」
「いえ」
笑顔を見せながら口を付け更に書類を進んでいくと――――「っ!」
ブッーーーー! と噴出した。
「ちょ! 提督どうしました!? なにかお味に」
咳き込む竹早の姿に流石に陸奥も驚く。なにかコーヒーにとんでもないものでも混ざってしまったのかと疑っていると
「なんだこれわ!」
「……はい?」
竹早は数枚の書類の束を抜き出して机の上に置いていた。
「軍令部への物資の要請書ですが、それがなにか?」
「これが要請書なのは私にも分かる」
彼が問題にしているのは
「聞きたいのはこの要求している量だよ量。その、幾らなんでも」
その量は一鎮守府が一度に要求する物量を超えていた。
現場である鎮守府からの要求はある程度はそのまま通るのが慣例ではある。ではあるが、ものには限度というものもあるのは確かだ。
竹早の目から見て、手元に渡された要請書は明らかにその限度を逸脱していた。
「現時点において当鎮守府が必要としてる物資です。必要な物を必要なだけ記載致しましたが、それではいけなかったでしょうか」
「どこの世界にこれだけの物資の必要に迫られる鎮守府があるんだ」
「ここに御座います」
「ここにって……だったら今工廠や入渠ドックにある物資や資材はどうなるんだ。使い切れとは言わないがある程度の消費を済ませてから」
「ですからその上で要請書を作成致しました」
「…………どういう意味だ」
「…………」
陸奥の視線が長門のものと同じものになるのが分かった。
冷たく、硬く、鋭利だ。
「…………工廠へ行く。どこだ」
「府を出て右方向、500メ」
「分かった」
陸奥が言い終わるのを待たずに部屋を出た竹早は廊下を歩き出口へと向かい――歩く――足早に歩く――小走りに――――府を飛び出した時には既に全力で駆け抜けていた。
そのまま工廠に飛び込むとすぐ手近にいる人物に目をつける。
「私は本日付でここの提督に着任した竹早だ。君は?」
「え? あの、提督って」
「君の艦・姓名はっ!」
「は、はいっ!」
慌てて敬礼をするのは
「工作艦・明石です! どうぞ、よろしくお願いいたします!」
目を白黒させている艦娘に申し訳ない気持ちもあるが、今はどうしても気が急いている。
言葉や行動の端々が若干荒れている自覚もあるが、それを自制している場合でもなかった。
「了解した。では突然で済まんがこの工廠にある全ての資材を見せてくれ」
「は? 資材、ですか?」
「そうだ! 今すぐにっ!」
「は、はい! どうぞこちらです」
「済まない!」
慌てて案内する明石に申し訳ない気持ちで、だが急かす様に歩かせた先で「こちらです」と見せられた物は、僅かばかりの資材だった。
「…………」
「あの、提と」
「他には」
「え?」
「他に置いてある場所は有るのかと聞いている!」
「あ、ありませんっ! ここに有るの物で全てです」
「…………騒がせて済まなかった」
どこかぼんやりと工廠を出ていく竹早を明石は不思議なものでも見るように、ただ見送ったのだった。
「どういう事だ? 物資が底を付くなんてどう考えても、ん?」
視界のスミに人影が映ったかと思えばそれは五人の人影だと分かる。
会話の端々に「やっと終わったです」や「私は報告をしてくるから皆は宿舎に戻っててね」などの言葉が聞こえる。
(そういえば一隊五艦が帰投中と言っていたか)と思い出した。
彼女達がその帰投した艦娘なのだと判断した竹早は五人の進路に入るように進むと、笑顔を見せた。
「任務ご苦労様」
「? あの」
「貴方はだれよ?」
一人背の高い少女と残りの四人は女の子だ。おそらくは駆逐艦だろうと踏む。
「初めまして。私は今日からこの鎮守府の提督になった竹早と云う。よろしく頼むよ」
「あ、提督でしたか! 失礼しました!」
「ハラショー!」
皆が慌てて敬礼するのだが、そのドタドタした動きもまた微笑ましいと思う。先程までの些かささくれ立った心も収まっていくようで嬉しかった。
「第六駆逐隊。旗艦、駆逐艦・如月です」
「同じく第六駆逐隊 駆逐艦・暁よ」
「第六駆逐隊……響」
「第六駆逐隊の雷です」
「同じく駆逐艦の電なのです」
「よろしく頼むよ」
はいっ! と元気に返事をする四人を笑顔で見詰めるが、ところどころ怪我や服が裂けている部分も見受けられた。
哨戒任務からの帰投である。小さな遭遇戦のひとつもあったのだろうと予想は立つ。
「皆はこれから入渠かな? それとも装備品でも」
「いえ。この子達は補給を済ませてから宿舎で休息します」
「…………え?」
代わり答えた如月に視線を送るが「でもお腹一杯にはならないのよね」「食べれないよりまし」「任務に出た分だけ優先してもらってるんだから贅沢言わないのよ」「すぐに眠れば問題ないのです」と四人はわいわいと言い合ってる。
竹早には如月の言葉を待つしかないが
「十二時間の休息の後、夜間哨戒任務に出撃しなければなりませんので、これで失礼させて頂きます。さ、みんな」
「「「「は~い」」」なのです」
自分を通り過ぎる五人を「ちょっと待ってくれ」と呼び止めると
「なんで君達が? ってそれよりダメージがあるじゃないか! 再出撃するならドックに」
「でも私達は小破程度ですから」
「順番もあるし仕方ないのよね」
「不死鳥の様に……海に舞い戻るだけ」
「小破って、そんな状況で出撃なんて」
「私達が出るほうが――――」
静かに、どこか冷たく、如月は言い残した。
「……
「………………」
「あ、こちらに居らしたのですか提督。工廠の方に居なかったものですから探し」
「入渠ドックはどこだ」
「……は?」
「入渠ドックだっ!」
厳しい表情で突き詰められ、思わず指差しだけで応えてしまった陸奥に頓着する事無く、竹早は走り出した。
「またですか提督~」
慌てて陸奥も追う事になるのだが、竹早は構わず全力疾走した。
「どいてくれっ!」
「え? ええええぇっ!!」
「きゃあああああああ」
「なになになにっぽいっ!」
丁度これから入渠しようと服を脱いでいた駆逐艦の吹雪・睦月・夕立の悲鳴などまったく気にも止めずに竹早は入渠ドックに乱入。入渠の予定表を食い入る様に見詰め何ページも遡り調べている。
後から飛び込んできた陸奥も流石にこれはと
「て、提督! いくらなんでも入渠ドックに入るなんて困りますっ!」
「陸奥さ、って、提督って、し司令官ですかーー!?」
「うそーー!」
「セクハラっぽい! ぽいいいいい!」
周囲が騒がしい。
集中が出来ない。
否、集中するまでも無く、今目視してる情報の異常性は認識していた。
「…………なんで高速修復材を使わない」
入渠の予定表は過去も未来もびっしりと埋まっている。
そのどれもが長時間の入渠を余儀無くされており、挙句全てに時間の短縮が見られない。
長時間である。必要時間から逆算すると中破以上の損傷の艦娘に限られている様だ。先程見た様な駆逐艦の子達の様な小破であればこれほどの時間は必要としないだろう。
すでに大破や中破のものですら順番を待っている状態であるのならば、小破に番が回って来ないという理屈は分かる。
だが、だからこその高速修復材ではないのだろうか? そう考えて止まない竹早の耳には、もう何度言えば分かるのだろうかと呆れを含む様な声が聞こえた。
「高速修復材はもうありません。通常の入渠にて修復を行うより他に方法はあ! 提督!? ちょっ、提督っ!」
また、陸奥の言葉を最後まで聞かずに竹早は走り出したのだった。
「ふざけるなっ! こんな馬鹿な話があるかっ! 冗談じゃないぞっ!!」
提督室に戻った竹早は手当たり次第に書類をあさり出した。
机の引き出しの中の物を全て書き出し、書類棚に収まっている物を開いては投げ捨て開いては投げ捨て――さっきまで整然としていた提督室が雑然としても手は止まらない。
「て、提督!」
「…………」
「もう」
自分の声も聞こえないかの様な竹早に陸奥はもう諦め顔だ。
「今度は何をお探しですか? 提督」
「…………この鎮守府の物資搬入の記録を見たい。何時、何が、どれだけ運び込まれたか、どんな使い方をしたのかを知りたい」
「うちの、ですか?」
「そうだっ! どこだ、どこだ!」
いったいぜんたいどういう使い方をすれば物資の枯渇なんて異常事態が起きるのか見当が付かない。こんな鎮守府は見たことが無かった。
戦線の拡大、戦争の長期化、国全体での物資の不足。
もちろん、戦争において物資が不足する事態もあるだろう。この鎮守府の様な状況だってこのまま深海棲艦との戦いが続いていけば十分有り得る可能性のひとつだ。そんな事は分かっている。
だがまだその時期じゃない。
つい先日まで横須賀鎮守府の副官を務めていた竹早だ。大本営に詰める事もしょっちゅうだった。
その自分の目に、この国の資源や物資が切迫した事態とは程遠いのは厳然たる事実なのだ。
他の鎮守府と同様に、普通に物資を手に入れ、普通に消費すればいい。たったそれだけの事が、なぜここまで狂うというのか。
部屋を散らかし続ける竹早を呆れ顔で眺めていた陸奥だったが、彼が投げ捨てた書類の束を見やり「あぁ」と拾い上げた。
「提督のお探しのものはこちらですか?」
「ん!」
急いで振り向いたが視線は依然厳しいままだ。
「それは見た。それは二ヵ月前の納入記録だろう。そうじゃなくて私は一番最近の」
「ですから、提督がお探しのものはこちらですと」
「だからそれは二ヶ月前だと」
「ですから」
厳しい自分、以上に、陸奥の表情が厳しい事に気が付いた。
「おい……ちょっと、待ってくれ」
「こちらが、当鎮守府に届いた最新の物資納入記録になります」
手に取るまでもない。
先程見たその書類は記憶に新しい。
日付も、内容も。
(…………あぁ…………なるほど、な)
急に長門や陸奥、明石や如月の言葉を理解した。
すとん、と椅子に座ると天井を見上げてしまう。
「…………君達は……」
「は?」
「前任の伊佐名提督に物資の要請はした、んだよね……」
「…………無論です」
「だよなぁ……」
ははは、と力無く笑う竹早に陸奥も怪訝な顔を見せるが、竹早はそのまま俯いてしまう。
(元帥……些か問題のある軍人? …………些か、どころか…………その元提督は…………馬鹿提督は………………)
「大っ問題だっ!!!」
ダンっ! と机よ砕けよ! とばかりに拳を叩き込んだ竹早はすっくと立ち上がる。
「陸奥君」
「はい?」
その表情には先程とは違い迷いが無い。
「先程の要請書を今一度見直してくれ」
「え?」
「私が思うにあれでは足りない。遠慮呵責無く必要な物を必要なだけ要求する要請書を作成してほしい。可能な限り迅速に、だ。頼めるか」
「え、あの」
「頼めるか」
その真剣な視線に、陸奥もまた表情を変える。
「宜しいのですか? 先程の要請書も私は結構控えめにお書きしたのですが」
「構わない。本来控えめに書く必要の無い書類だ。思う存分書いてくれ」
「分かりました。五分でお持ちします」
「頼む」
「でわ」
敬礼を退室しようとする陸奥に竹早も続く。「?」と視線を送ってくる陸奥に
「長門君は発令所だな」
「はい。そうですが」
「私も発令所に行く。書類が出来たら持って来てくれ」
「……ふふ」
「どうした?」
どこか楽しそうな陸奥に疑問な竹早だったが
「こんなに楽しいのは久しぶりだと思いまして」
「私はあまり楽しい気分では無いのだがな」
「それは申し訳ありませんでした。でも提督――」
陸奥はイタズラっぽい笑みを浮かべると楽しそうに
「あまり長門さんをいじめないであげてくださいね」
「心得とくよ」
二人は別れるとそれぞれの目的へと歩き出す。
発令所の扉をバン! と開けると驚く皆を尻目に竹早は中央まで歩き地図を見入る。
「提督、なにか御用でしょうか」
「……」
「提督! 御用が無いのでしたら」
「哨戒線は?」
「っ」
長門の言葉を遮るが視線は地図に向けたままだ。
渋々、とばかりに長門も地図に寄ると指を指す。
「ハ島、ミ島を基点としてナ島を含むこのラインを哨戒線としております」
「…………ナ島、か」
「三ヶ月前に敵棲姫より奪取した海域になります」
「……」
しばらく地図を見詰めていた竹早は
「このラインまで哨戒線を引き戻す」
と戦線の後退を示した。
「哨戒線を下げると仰いますかっ!」
「あぁそうだ」
あくまでも涼しげに言い切る。
「馬鹿な。それでは敵勢力が」
「現時点の当鎮守府にここまでの哨戒線の維持は困難だ」
「しかしそれではナ島が」
「ナ島は放棄する」
「提督っ!」
手に入れた島をあっさりと放棄するという竹早に怒りよりも驚きが先立つ。
深海棲艦に利することを示すとは思わなかったのだ。
「正直、ナ島をこの時期に奪還するのはナンセンスだ。戦略的価値は殆ど無く防衛するに難い海域でもある。うちの損害もこの海域での遭遇戦が殆どではないのか?」
「それは」
確かに、ナ島周辺での遭遇戦により多くの艦娘が被弾し、入渠ドックの混乱を招いているのは事実だ。
「しかしみすみすナ島を深海棲艦に渡すなどと! 奴らに良い様に攻められるだけで守りに徹するなど」
「もちろん守ってばかりじゃ戦争には勝てないな。だが戦況や戦線によって攻撃対象の優先順位は変化する。正直今、我々は深海棲艦に圧されている状況で、より重要な場所をより効果的に攻撃しなければ戦線の拮抗もまま成らない。こちらが圧倒していて残敵掃討や各個撃破作戦の対象としてならばナ島攻略も有りだが、現時点でナ島を攻略したところで意味があるとは思えない。今は放棄しても問題ない」
「ですが敵がまた占拠してしまえば」
「問題ない」
必死な長門に対し余裕を見せる竹早は
「守るに難いという事は攻めるに易いという事だ」
「え、それは」
確かに、あの提督の雑な作戦や艦隊編成ですらナ島は攻略できた事を思い出す。
「欲しい時には取り戻せば良い。今はその時じゃないだけだ。悪いがこれは決定事項だ。問答の余地は無い。いいな」
「……提督がそうおっしゃるならば秘書艦たる私に異存はありません。すぐにその様に手配をします」
「頼むよ。あぁ、それから」
「まだなにか」
さっさと全てを済ませてほしいとばかりに返事を返すと
「少し
「……は?」
また接待にでも行くのだろうかと目を細める長門が言葉を発する前に「失礼します」と陸奥が入室し竹早に「要請書をお持ちしました」と物資の要請書を竹早に渡していた。
「
「ですからすぐに物資の要請を」
「それでは間に合わんよ」
要請書を確認しながら話す竹早に詰め寄る長門だったが
「軍令部は実のところお役所仕事だからな。なにをどう言っても二・三日納入が早まるのが限界だろう」
「だったらどうしろと」
「他から融通してもらおうと思う」
「他? それは」
「他は他だ」
それは他の鎮守府や泊地。軍港だろうと臨時基地だろうが関係ない。有ると思うところは何処でも構わない。使える物資に色は無いのだから。
もっとも
「そんな事は我々もやりました。他の鎮守府への陳情も泊地や基地にも、艦娘の知り合いやツテを使って試みはしたのです。ですが」
「だがまだ提督自らは頼んでないだろう」
「それは」
無論、それは無い。なにしろこの事態を招いたのは他ならぬその提督自身なのだから。
「私が出向いて折衝してくる。その間に鎮守府との連絡を取れる艦娘を一艦付けて欲しい」
「……それでは大淀を。作戦行動中には全艦隊への通信網を引き受ける者ですので不足はないでしょう。いいな、大淀」
「はい!」
立ち上がった大淀は敬礼をすると
「大淀型一番艦 軽巡洋艦・大淀です。鎮守府との通信はお任せください」
「よろしく頼むよ、大淀君」
「はい」
笑顔を見せる大淀と握手を交わしている竹早に「提督っ!」と長門は声を張る。
「私が先程も言ったように」
「
「っ!」
笑顔で。だが凛とした声と視線で竹早は長門を見詰めた。
「やはり私にはこの方がしっくりくる様だ。申し訳ないが敬称を受け入れて貰おうかな」
「……それは命れ」
「これは命令だ。いいかな? 長門君」
「……了解しました、提督」
「ん。ありがとう」
竹早と大淀はすぐさま府を出ると、竹早は自分の車の運転席に飛び乗り慌てて大淀も乗り込む。
「あの、提督」
「なんだ、大淀君」
エンジンを掛けるとシートベルトを締めるように促しギアを入れた。
「その、心当たりはあるんですか? どこか物資を分けてくれそうな」
「さぁてどうだかなぁ。だがまぁ」
ハンドルを握ると一気にアクセルを踏み込み、鎮守府を後にするのだった。とりあえずは――――
「なんとかせにゃあなるめぇにっ!」
第2話投稿です。
前回のあとがきで文字数を書きましたが、なんとも今回は約8000文字となってしまいました。もう余り考えないことにしましょう(汗)
さて、お気付きの方も多いとは思いますが、私の知識の偏りにより、どうやら本作の鎮守府在住艦娘はアニメ基準になりますね(一番脳内で元気に動いてくれますので)
それを踏まえて今後もお付き合いして頂けると幸いです。
それではノシ