初投稿になります。
当作品は、描写などは最低限に要約してすったか進む予定です。テンポの速い文章を目指します。
2015/04/19最終投稿。
2015/10/20名前変更。
<序章>
――いい歳をして、未だにこんな読み物をしているなんて、きっと周りの人たちは呆れているのでしょうね。だっていいじゃないですか。日がな一日、ずっとベッドで寝ている身としてはこれが唯一の気の紛らわしなのですから。
これから読むのは、先日買ってきてもらったばかりの新刊です。
さて、あれから主人公たちはどうなったのでしょう。
せめて、この物語が完結するまで
生きていたいものですね―――
『――…ねぇ、アナタ。あの子の運命が気になるの?』
――そうですね、気になります…だってあの子は、とっても元気で明るくて優しくて、そして独りの寂しさを知っている心の強い子だから……
幸せになってほしいと、思うのです……――
『なら、アナタがあの子を幸せになっておあげなさい。似た者同士、きっと気が合うことでしょう。ワタシがアナタに、力と身体を用意してあげる。
……かわりに……』
―――代わりに?―――
『……ワタシの実験に、協力してちょーだい?』
<アカデミー卒業編>
木乃花 カミナ(このはな かみな)、12歳。
火の国、木ノ葉隠れの里の忍術アカデミーに通うくノ一の女の子。
トマトのような真っ赤な髪と、水底のような深い蒼の瞳。成績は中の中という極めて平均的な能力を有し、その髪の色以外には特に目立つことのない大人しい子。
今日も彼女は、歴代火影の顔岩にラクガキをするというとんでもないイタズラをしでかした″うずまきナルト″の行いに、騒めく教室の中で、いつものように興味のない"ふり"を続けて、昨日図書館で借りた忍者料理の本を眺めていた。
◆◆◆
「ナルトー、ご飯できたよー」
「今行くってばよー!!」
そんな二人は、実はアパートのお隣同士。
いつものようにナルトの部屋で二人分の料理を並べて、仲良く夕食を食べ始める。
二人はともに親もなく、片方は腹に九尾の妖孤を封印された里のキラワレ者、もう片方は里の外から来た余所者として、互いに孤独を知る者同士だった。
6年前に出会ったあの日から、ナルトの傍にはカミナが居た。カミナの傍にはナルトが居た。
いつしか二人の間には幼馴染を越えた、互いを結ぶ強いつながりが出来ていた。
それを恋と呼ぶには、二人はまだ幼い子供だった。
◆◆◆
『――…カミナ、オレたち一緒にいちゃだめだってば。オレと一緒に居たらカミナも里の奴らにキラワレちまう…』
『イヤっ!私はナルトのそばにいたい!!もう一人にはなりたくないの!!』
『オレだって!オレだって……ずっとカミナのそばに、一緒にいたいってばよ……』
余所者と、キラワレ者。
カミナはともかく、里の人間のナルトに対する待遇は冷たかった。
一緒に居れば、カミナも同じ目に晒される。
ナルトは、それが堪らなく嫌だった。
故に、幼い二人は約束をしたのだ。
外では他人のふり。
でも二人はかけがえのない友達だと。
そして、一緒に立派な忍者になろうと。
◆◆◆
アカデミーの卒業試験の日。
ナルトは合格できなかった。
慰めるカミナの言葉も、今のナルトには憐れみにしか聞こえず、つい八つ当たりして怒鳴ってしまったナルトは、涙を堪えて走り去るカミナを追うことができなかった。
彼女が落としていった額あてを拾い、とぼとぼと当てもなく里の中を歩いていると、アカデミーの教師ミズキがナルトに声をかけてきた。
『――仕方ない、君にとっておきの秘密を教えよう。
これで君は、間違いなく卒業できる。
きっとカミナちゃんとも、仲直りできるよ』
◆◆◆
あれからアパートに駆け込んで、ベッドで泣いているうちに眠り込んでしまったカミナ。
目が覚めると外は真っ暗で、そしてなぜか里が騒がしかった。
ナルトが、火影邸から封印の巻物を持ち出した。
イタズラでは済まされない此度の事態に、里の忍たちは殺気立っていた。
カミナは急いでナルトを探しに行った。
その後ろ姿を、三代目火影だけが気づいていた。
◆◆◆
「――つまりお前が、イルカの両親を殺し!里を壊滅させた九尾の妖狐なんだよ!!」
「ちがうっ!!」
衝撃の事実にショックを受けたナルトに襲い掛かる、ミズキの放った手裏剣とクナイ。
先刻、ナルトを庇って手傷を負っていたイルカは動けない。目の前で散るであろう教え子の鮮血と絶望の光景を思い描いた瞬間――木立の合間から飛び出してきたカミナが、その身を挺してナルトを転ばせて攻撃を避けたのだった。
尻もちをついたナルトの前で、カミナ自身避けきれなかったクナイで傷付きながらも、それでもナルトの無事に心から安堵の笑みを浮かべていた。
「ハァハァ……ナルト…ケガ、ない…?」
「カミナッ!?なんでっ…!!」
「カミナっ、ナルトを連れて逃げろぉ!!」
「はいッ!ナルト立って!走って!!」
「えっ…うわっ!!」
「チッ!逃がすか!!」
カミナはナルトの手をしっかりと握って、夜の森を駆け抜けた。
◆◆◆
「――あぐっ!うッ…!!」
「余所者のガキが、舐めた真似をしやがる。さぁ!ナルトはどこだ!!どうせこの近くに隠れているんだろぉがっ!!」
ぎりぎりとカミナの細い首を絞め上げるミズキが、隠れているだろうナルトにも聞こえるように大声で叫ぶ。
――ナルトを追って来たイルカに、ナルトが体当たりを喰らわした。そのイルカはミズキの変化であり、それを見破ったナルトはカミナの変化だった―――
それから体術で応戦するも、傷の痛みで隙を作ってしまったカミナはミズキに捕らえられてしまったのだ。
「てめぇも物好きなガキだよな。ナルトが里の人間から疎まれているのを知りながら、わざわざ世話を焼いているんだからよぉ。ま、余所者とバケモノ同士、孤独な傷の舐め合いでもしていたんだろうけどなぁ!!」
「う、うぐッ…!!」
「やめろ、ミズキっ!!」
遅れて駆けつけたイルカが、クナイを投じてカミナからミズキを引き離す。
しかし、飛び退きざまにミズキから投げられた大型手裏剣をイルカは避けることができず、身を挺してカミナを庇い、自らの背中でその攻撃を受けとめた
「ぐっ……!!」
「げほっ、ごほっ!!――イ、イルカ先生!?」
血を吐き、苦しげに身体を崩すイルカの腕の中からカミナの驚いた悲鳴が上がる。
「なぜそこまでナルトを庇う、イルカ……てめぇだって、両親をバケ狐に殺されたクチだろうが。
ナルトもオレと同じなんだよ。あの巻き物の術を使えば、なんだって思いのままだ。あのバケ狐が力を利用しないわけがない。あいつは、お前が思っているような――」
「ああ!……バケ狐ならな」
イルカの答えに、少し先の木の裏に身を隠すナルトが、動揺した気配が分かった。
しかし、それは杞憂であることをカミナは知っていた。イルカの瞳はこれまでずっと、バケ狐ではなく"うずまきナルト"を見ていたのだから。
「あいつはこのオレが認めた、優秀な生徒だ。…努力家で一途で…そのくせ不器用で、誰からも認めてもらえなくて……カミナが居ても、寂しかったはずだ。あいつは、カミナには守られてばかりじゃなく、お前を守れるような忍になりたいと言っていた。そして火影になって、里の皆に認めてもらいたいと」
「!!」
「あいつはもう、人の心の苦しみを知っている……今はもう、バケ狐じゃない…あいつは、木ノ葉隠れの里の……うずまきナルトだ!!」
激昂したミズキが、再び手裏剣を構えて動けないカミナとイルカに襲い掛かる。
――ドカッ!!――
突然、ミズキが吹っ飛んだ。
ズザザザザッ!!と砂煙をあげて地に足を付いていたのは、巨大な巻き物を手にしたナルトだった。
「……イルカ先生とカミナに手ぇだすな……殺すぞ……!!」
それから、ナルトは禁術の書で会得した影分身を1000体以上も出してミズキをブッ飛ばした。
イルカはナルトを呼び寄せると、自身の額あてをナルトの額に巻いてあげた。それから満面の笑みで「卒業おめでとう」と祝いの言葉を贈ったのだ。
ナルトは、感極まってイルカに飛びついた。傷だらけで泥んこの顔を、涙と笑顔でぐしゃぐしゃにしながら。
「――ひっく、ぐず…あ、そうだカミナ!……あのさ、昼間はごめん…それから、助けてくれてありがとな!」
「ナルト……ううん、もういいの。卒業おめでとう、ナルト」
「へへへっ……カミナも、卒業おめでとうだってばよ!」
「あ……」
ナルトは昼間カミナが落していった額あてを取り出して、自分の手でカミナの頭に結んであげた。
へへへ、と照れ隠しに鼻を擦って笑うナルトは、昼間とは違い心からカミナの卒業を祝ってくれていた。やがて嬉しさのあまりにぽろぽろと涙をこぼし始めたカミナに、このあとナルトが大慌てしたとか。
お互いに傷だらけで、涙で頬を濡らしたまま笑い合っているカミナたちを、イルカはとても優しい眼で見ていたのだった。
「(木乃花カミナ……ナルトが化け物にならなかったのは、お前がナルトの傍に居てくれたからだ…ありがとう……)」
満月が、新たな忍の誕生を見守っていた。