金色の狐、緋色の尻尾   作:花海棠

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お久しぶりです。前回の投稿から、ずいぶん間が空きました。
この予選篇が、思いの他難産で……ぶっちゃけ、まだ書き終わってない。
だれか、脳内の妄想を文章化するスキルをくれーー!!

2015/06/06最終投稿。
2015/10/20名前変更。



10.『中忍試験編・予選〈1〉』

――……まるで、流れゆく水の中を漂っているようだった……

 

肉体という頸木(くびき)を離れて曖昧な形を保つひとつの意思が、ただ流れに身を任せて、記憶の海へと流れ着く……″過去″から″現在″、そして″未来″へと……

 

 

『おい!そこのお前…名は何て言う?』

『……砂瀑の我愛羅……オレもお前に興味がある…名は?』

『うちはサスケだ……』

 

いつもの任務の帰り道。このときナルトたちは、中忍試験を受けるため砂から来た我愛羅たちと出会っていた。

――……なぜ、この光景が?…〈わたし〉は、このとき〈ここ〉には〈居なかった〉のに……

 

『まったく!青春してるなー!お前らーっ!!!』

『!』

『!!』

『うっ…うっげぇええええええーーっ!!もっと濃ゆいのが出て来たってばよーー!!』

 

中忍試験の直前。思わず笑いが込み上げてくる、衝撃的な出会いの場面(シーン)。しかし彼らは、そんな突飛な出で立ちとノリの良さとは裏腹に、努力が自身を裏切ることはないということを、身を持って体現している己が信念に誠実な人たちだ。

――……どうして…〈この場〉にも……〈わたし〉が〈居ない〉……?

 

『なめんじゃねー!オレは逃げねーぞ!!』

『もう一度訊く…人生を賭けた選択だ。やめるなら今だぞ』

『まっすぐ、自分の言葉は曲げねえ…オレの、忍道だ!!』

 

第一の試験。ナルトの言葉は、皆の不安を一瞬で蹴散らした。

――……凄いよ、ナルト。あなたの言葉には、人の心を変える力がある……なのに、どうして〈わたし〉は…こんなにも、苦しくて…切なくなるの……?

 

『…フフフ…ナルト君、正解よ。巻物なんて…殺して奪えばいいんだからね…!!』

『ふざけんな!!』

 

第二の試験、死の森で。襲いかかってきた草忍が大蛇を口寄せし、ナルトを叩きのめす。強烈な攻撃に、ナルトが血を吐いた。

――……お願い、やめて……

 

『私の名は大蛇丸。――サスケ君は必ず、私を求める…力を求めてね……』

『ぐわぁ!!』

『サスケ君!!』

 

大蛇丸が、サスケに忌まわしい呪印を刻み付ける。泣いているサクラ……

――やめてッ…これ以上、私の大切な人たちを傷つけないでっ!!

 

 

水流が、荒れ狂う――荒波のごとく、暴れまわる水の流れにもみくちゃにされて、〈わたし〉は溺れそうになった……――どぷんっ、と…いきなり、黒くて重い水の中に身体が投げ出される……

 

『――……やはり、術式を皮膚ごと移植しただけでは、九尾の力は使えないようね……物言わぬ人形に、九尾の人格でも宿れば使えると思ったのだけれど……九尾を封じた屍鬼封尽の術そのものを、どうにかしないとダメかしら……』

 

薬品に満たされた水槽の中で、標本のごとく〈わたし〉の身体を検分する、探求者の瞳――

 

嫌…イヤっ……もう、なにも分からない…この記憶はなんなのっ?

 

 

どうして〈わたし〉の知らない光景が見えるの?

どうして〈わたし〉が居たはずの場所に〈わたし〉が居ないの?

 

……いや、イヤ…怖い、苦しい……助けて、ナルト……たすけて、クラマっ―――

 

 

<――落ち着け>

 

震えてうずくまる〈わたし〉を、大きくて温かなぬくもりが包み込む。寄り添う柔らかな緋色の毛並みに安堵して、〈わたし〉はソレに縋り付いて泣きじゃくった。

 

<混在する記憶と情報に、翻弄されるな。…すべては事実、それが主の力だ……眠れ、その尊き魂を壊さぬように…そして思い出すのだ、自ら求めた己が運命(さだめ)を――>

 

低く響く声音が心地よく、カミナを闇の眠りに誘う。泣き濡れた頬を、優しい手に拭われた――

 

 

◆◆◆

 

 

――バターンッ!!――

 

 

「――…痛ったー……」

 

「「「カミナっ!?」」」

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

突如として、重い砂袋が落ちたような、異様な音が広い会場に響き渡った。そして、幾人もの驚く声音と気配。

 

ここは、死の森の中心にそびえ立つ塔と呼ばれる建造物の中。無事二本の巻物を揃えて塔にたどり着いたナルトたち第七班は、定刻ギリギリ、口寄せの術で現れたイルカによって第二の試験合格を言い渡された。しかし、喜びに浸っていたのもほんのつかの間、此度の第二の試験通過者が多い為、本選へ進む受験者を減らすべく、これからすぐに″予選″が行われることになったのだ。

「体調のすぐれない方…これまでの説明でやめたくなった方は、今すぐ申し出てください…」と、この場に居る人間の中で誰よりも顔色の悪そうな審判役・月光ハヤテが受験者たちに確認を取っていたところ……第七班の最後尾に並んでいたカミナが突然倒れ、以下冒頭の光景に戻るわけである。

 

「カミナ!大丈夫かってばよ!?」

「んー……いたい、でも大丈夫よ…」

 

ナルトが慌てて、倒れたカミナを助け起こす。受け身も取らずに倒れたため、思いのほか床を打つ衝撃音は大きく響き、カミナ自身、全身を強打した痛みに目の前が少しチカチカとしていた。おでこにタンコブができたかもしれない……しかし、その痛みはかえってカミナを襲う原因不明の眠気を、一時的にでも退散させる結果に至った。

……会場に入ってから、カミナの頭には三代目火影による中忍試験の真の目的についての説明や、この場で本選へ進む人数を減らす理由などの周囲の声は、まったくと言っていいほど頭に入ってきていなかった。彼女はただひたすら、襲い来る眠気と孤独な攻防を繰り広げていたのだから……結局、またあの摩訶不思議な″夢″からは逃れられはしなかったが。

 

「カミナっ!――(……ねぇ、カミナも、ここで棄権した方がいいわ!!)」

「(サクラちゃん!?)」

 

今しがた、呪印の痛みに苦しむサスケにも棄権するようにと説得していたサクラは、すでに半泣きの状態であった。サスケはサクラの意見を突っぱねたのだろう。それがたとえ、サクラの優しさを無下にする行為になったとしても……心を傷つけ、それでも小声でカミナの身を案じて辞退を願うサクラの無意識の気遣いは、残念ながらカミナにとってありがたいものとなった。

カミナはナルトの手を借りて立ち上がると、「アナタも…棄権しますか?」と尋ねてきたハヤテに「…いいえ、棄権はしません」と、はっきり告げた。その選択にはサクラだけでなく、様子を伺っていた周囲は皆驚いた表情を浮かべていた。

 

「(カミナッ…どうして!?)」

「(サクラ、説明はあとで……)」

 

不安でいっぱいいっぱいなのだろうサクラを、カミナは苦笑を浮かべることでうやむやに誤魔化した。結局、自主棄権したのは薬師カブトひとりだけで、ナルトはひどく残念がっていたが、カブトはナルトを励ますように軽く手を振って未練なく会場を去って行った。

 

予選・一回戦目の組み合わせは、うちはサスケvs赤胴・ヨロイ。二人を残して、残りのメンバーは上のギャラリーへと移動する。

 

「サスケ……あまりサクラを、悲しませないで。…それと、無茶もしすぎないでね」

「フ……お前も、人のこと言えた立場かよ」

 

それはサクラのことか、無茶のことなのか……お互いに身に覚えと自覚があるだけに、カミナは苦笑を零してギャラリーへ続く階段をゆっくりと登った。

先に観覧席を決めて待っていたナルトとサクラ、カカシの前を通り過ぎて、カミナは会場がぎりぎり見渡せる壁際の隅っこに座り込む。……先ほど打ったデコやら肘はまだ痛いが、それよりも眠気がすでに痛みを凌駕しつつある……最悪、試合途中で突然寝てしまう可能性も出てきた。

 

「カミナ……どうして、棄権しなかったの?そんな状態で、まともに戦えるわけないじゃないっ!!」

「サ、サクラちゃん…」

 

サクラの剣幕に、ナルトもたじたじだった。サクラの目には、カミナもサスケと同じように、なにかに意地になって試験を続けようとする無鉄砲玉にしか見えないのかもしれない。心配をかけてばかりの友人に、カミナは困ったような笑みを浮かべるほかなかった。

 

「無理だと思ったら、すぐに棄権するわ……それよりも、私が試験を続けることで、火影様たちの反応を見たかったの……」

「……どういうこと?」

 

サクラは、訳が分からないと云うように首を傾げた。カミナが少し視線を上げると、カカシと目が合った。その様子から、カミナの意図することをすでに理解しているのだろう。

 

「サクラ……きっと、私はあの時、大蛇丸って忍になにかされたんだと思う。おそらく、サスケと似たような、あのアザみたいななにかを……試験官や火影様たちが、気付いていないはずないわ。なのに、私もサスケも試験を止められていない……おそらく、中忍試験を中断させないようにと、大蛇丸に脅迫でもされてるんじゃないかしら……」

「そん、な……どうして…」

 

サクラは顔を真っ蒼にして、カミナと闘技場に居るサスケを見比べた。今、サスケの試合が始まった。ナルトはすでに、サスケの試合を食い入るようにして見入っている。

 

「…あの大蛇丸は、ただ者じゃない……あいつにはもっと大きな、恐ろしい計画を企てているような気がするの…」

「恐ろしい、計画?」

 

奴の狙いは、おそらくサスケ。カミナ自身はどうなのか分からないが……しかし、一介の下忍にちょっかいを掛けるためだけに、もとより警戒厳重な木ノ葉の里に忍び込むような真似などするはずもない。あの忍は、恐ろしく強い。そして、再不斬以上に良からぬ邪心を抱いているように思えてならなかった。

――それに、この厄介な眠気とともに見るようになった、どこか食い違いのあるカミナがナルトたちと経験した〈過去〉の記憶の夢。さらにその夢の合間には、カミナと大蛇丸の接点を示すような光景も垣間見えていた……もし、かつての自分は大蛇丸側の人間だったのだとしたら……

 

「(それでも、″今の″私が選ぶのは……)……その辺はきっと、火影様たちがすでに調べていると思うから…今は、サスケの応援をしてあげよう?」

 

ね?とカミナが提案すれば、サクラは渋々ながらも視線を試合会場へ移していった。やはり、呪印の影響かいつものように動きにキレがないサスケを心配して、サクラの視線は試合に釘付けとなる。

サクラと入れ替わるようにカミナの元へ下がって来たのはカカシだった。皆サスケの試合に集中しているため、いまカミナとカカシの会話を耳にする者は居ないだろう。

 

「…カミナ、大丈夫か?」

「カカシ先生……あまり、大丈夫じゃないです。眠くて…」

「みたいだな、報告は受けている。……カミナ、予選に進んだ以上、試合に出るまで途中棄権はできない。なるべく早く順番が回って来ればいいが……――試合が始まり次第、すぐに棄権しろ。サクラの言う通り、今のお前は戦えるような状態じゃない」

「……順番が来てから、考えます」

「っ!お前……」

 

薄く微笑んだカミナの瞳が、彼女が易々と試合を棄権するつもりが無いのを物語っていた。

 

本当は、カカシとてすぐにカミナを棄権させたかったのだ。彼女の場合、サスケとは状況が違う。

数日前、アンコからもたらされた大蛇丸の情報……その報告を三代目から聞かされた時、カカシは、一瞬己が耳を疑ったものだ。

 

『カミナが……大蛇丸の!?』

『うむ……暗部からの報告では、うちはサスケと同様に何か知らの術を施された可能性がある。呪印か…または別の術か……』

『……どう、なさるおつもりなのです?』

『奴がわざわざアンコに脅しをかけてきた以上、中忍試験は継続するしかあるまい。そして……サスケは呪印の暴走、カミナは危険を伴う異変が見られ次第すぐに試合を止めさせ、以後暗部の護衛・監視下に置く』

 

″危険を伴う異変″――それは、カミナに対しての危険なのか、周囲に対しての危険なのか……いずれにせよ、大蛇丸に対する警戒態勢中に在るとはいえ、それらはいささか寛容すぎる対応にも思えた。

 

『予選の後…サスケの護衛にはお前が当たれ、カカシ』

『御意……しかし、三代目。もし、カミナが………大蛇丸と何らかの繋がりが、ある…可能性は――』

 

カカシの本心は、自身の感情と忍としての責務の狭間で揺れ動いていた。暗部に居た頃の自分には、ありえないことだっただろう……担当上忍師として、下忍の幼くも部下であり教え子らを得て、カカシも変わったのである。

カカシとて、自分の部下を疑いたくはなかった。なによりも、カミナは忍として類まれなる優秀な才を秘めており、そして忍に似つかわしくないぐらい心根の素直な優しい少女であった。あの表情が偽りの物とは思えない。そして、亡き師の忘れ形見に寄り添う温かな光として、あの腕白坊主とともにずっと見守り続けたいと思っていたのだ。

 

『……それはない。カミナの心は、この木ノ葉の里に……ナルトと共にある』

『……三代目は何故、それほどまでに彼女のことを…』

『…………カカシよ。予選が終わり次第、お前に話すべきことがある』

『?……御意』

 

 

――三代目の話とは、一体なんなのか……すでに今から、胸中もやもやとした霧が晴れなかった……

 

「――カカシ先生、サスケの試合が…終わりますよ」

「!」

 

カミナの眠たげな視線の先で、サスケが対戦相手のヨロイを天井近くまで蹴りあげていた。――チャクラを吸引するヨロイの能力に呪印の影響もあって苦戦していたサスケは、咄嗟に以前リーとの戦いでコピーした強烈な蹴り技を繰り出した。その際に呪印の力が暴走しかけるも、仲間たちの声がサスケに力を与え、気力で呪印をねじ伏せた。影舞葉から続けて繰り出された連続の蹴撃に、ヨロイは床に叩き付けられ戦闘不能、予選・一回戦はサスケの勝利となった。

 

カカシは試合終了とともに闘技場へ降りると、倒れかけるサスケの背を足で支え……ギャラリーにいるカミナに一瞥をくれてから、サスケの呪印を封じるべくその場を離れた。

 

カミナは再び、深い夢の闇へと墜ちていた―――

 

 

◆◆◆

 

 

予選は順調に進んでいく。

 

第二回戦、ザク・アブミ VS 油女シノ

シノの力を侮り、これ以上大蛇丸の前で失態をさらせない状況がザクから冷静さを奪い、結果ザクはシノの放った寄壊蟲の罠に気づけず自らの両腕を吹っ飛ばして戦闘不能、シノの勝利となった。堂々とチームの元へ戻っていくシノが、「(サスケ達に、ヤツの能力を聞いておいたのが功を奏したな…)」などとひっそり安堵していたことなどは、シノの勝利をまざまざと見せつけられて憤るキバは知る由もなかっただろう。

 

第三回戦、剣・ミスミ VS カンクロウ

カブトのチームメイトであった木ノ葉の忍と、傀儡という砂隠れの里で独自に発展した人形使いの戦いは、両者が宣言した通り″速攻″で決着(ケリ)がついた。ナルトは2対1で卑怯だと喚いていたが、傀儡も歴とした忍具、当然戦闘には有効な武器であるという説明になんだか釈然としない気持ちになった。

 

第四回戦、春野サクラ VS 山中いの

もとより親友同士であり恋のライバルでもあった二人の戦いは、壮絶な殴り合いと意地のせめぎ合いで占めた勝負の末、両者相打ちという引き分けによって二人ともに予選敗退となった。

 

 

 

――試合が終了し、闘技場で気絶したサクラといのを、カカシとアスマが抱えてギャラリーへ戻って来る。二人とも打ち身だらけではあるが治療班が必要なほどではなく、しばらくすれば目を覚ますだろうと言う先生たちの言葉にナルト達はほっと胸をなでおろした。

 

「……なぁ、ナルトよぉ、カミナのヤツ大丈夫なのか?もういつ順番が回って来ても、おかしくねーぞ?」

 

そうナルトに尋ねてきたのは、シカマルだった。壁にもたれかかるサクラといのの傍には、二回戦の開始時から眠り続けてるカミナが居る。規則正しく零れる小さな寝息は、一見この試合会場には場違いにも見え……しかし、永遠に目を覚まさないではないかという不安と恐ろしさを近しい者たちには与えていた。

 

「オゥ…だけど、できるだけ休ませといてやりてーし……」

 

いつもの元気印なナルトの不安げな表情は、いささか居心地が悪いものがある。幸か不幸か、カミナの順番はまだ巡ってこない。しかし、いくら直前の第二の試験でチャクラや体力を消耗したにしても、このような状況下で眠り続けるカミナの様子は誰の眼にも異様に映っていた。他のチームの者達も、それに気づきつつある。

 

「(……あの赤毛の嬢ちゃん、まだ寝てんじゃん?フツーこんな時にガチ寝するか?)」

「(……カミナのやつ、様子がおかしいな…第二の試験で、何かあったのか?)」

「(…………。)」

 

「(……大蛇丸様、あの娘にもなにかしたようですね……)」

「(…ザクが負けた以上、これ以上音忍が醜態をさらすわけにはいかない!……あのくノ一なら、ラクに勝てそうね…)」

 

各方面からの視線にはカカシも気づいており、第五回戦・テンテンVSテマリの組み合わせが発表されて、両者が闘技場に降りていく最中、カカシは先ほど……思いもよらぬ対面を果たした、彼の忍の言葉を思い返していた―――

 

 

 

――封印の間で、カカシがサスケの呪印に封印を施した直後、そこに大蛇丸が現れた。くだらない野望の為、サスケを…うちはの写輪眼を欲する大蛇丸。今頃予選を戦っているであろう部下の音忍たちを捨てゴマと言い切り、ゆっくりとカカシを恐れることもなくサスケに歩み寄る。

 

『サスケにこれ以上近づくな!!――答えろ、大蛇丸。カミナに何をした?あの娘はアンタにとって……どんなコマだ?』

 

バチバチと、カカシの右手の中でチャクラの雷光が弾ける。しかし、カカシ自身は気づいているのだろうか…彼のチャクラは自身の迷いを投影するかのようにその閃光に揺らめきを見せていることを……哀れだと思った。誰よりもこの木ノ葉の里を愛する彼女の心が、その里の者達に信じられていないことに。…まぁ、その原因を作っているのが大蛇丸(自分)という存在に他ならないのだが。

 

『――優秀であり利用価値のある手ゴマ、よ……でも、彼女が木ノ葉を裏切るんじゃないわ……オマエたちが、彼女を裏切るのよ…』

『!?――どういう意味だ!!』

 

言葉の通り、カカシには大蛇丸の真意が分からなかった。カミナを裏切る?オレたちが?――そんなこと、ありえない。しかし、ここではっきりとしたことは、やはりカミナと大蛇丸には何かしらのつながりがあると言うこと。そして、おそらく……カミナ自身はそのことを、なにも知らないのだ――

 

大蛇丸は、サスケには何もせずその場を立ち去った。封印など無意味だと、サスケは己の意思でやがて大蛇丸の元へ行くのだと大蛇丸は言った。そして……かつて三忍のひとりと謳われ、それに相違ない彼の忍の殺気を受けて、カカシは己の死のイメージしかできなかったことに、言いようのない憤りと無力さを感じるのであった。

 

 

◆◆◆

 

 

――……第五回戦が始まった。対戦するのは、テンテンさんとテマリさんだった……

 

「(テマリ、お姉さん……)」

 

カミナは、予選の試合模様をずっと″見ていた″。

二回戦の蟲使いのシノ戦いも、三回戦の傀儡人形の戦いも……黒装束の彼は、我愛羅の実のお兄さんだったのだということを初めて知った……いや、本当に″初めて″知ったのは……彼らが第二試験の死の森の中で、雨隠れの忍と対峙した際。むやみやたら人を殺そうとする我愛羅を、彼が止めた時だった。

 

『――いい加減にしろ!たまには……兄貴(アニキ)の言うことも聞いたらどーなんだ我愛羅!!』

『お前らを兄弟と思ったことはない……邪魔をすれば…殺す』

 

――やめて……そんなことをしないで、我愛羅!!

カミナの叫びは、当然″その時″の我愛羅たちには届いていない。

 

カミナの視点は再び、目の前で繰り広げられる″試合″に戻っていた。

テンテンが繰り出す嵐のごとき無数の忍具の攻撃は、テマリの風遁の竜巻によって全て吹き飛ばされてしまった。明らかな戦闘スキルの相性の悪さにテンテンは戦闘不能、テマリの勝利となった。

 

「(テマリおねえさん……遊んでもらったことがあるのは、たった2回だけ……私と我愛羅に絵本を読んでくれた。私が無理を言って強請ったんだ…今思えば、あの時のテマリさんは結構戸惑っていたのかも……彼女も、里の人たちのようにどこか我愛羅を避けていたから…けれど、絵本を読んでくれる声は優しかった……)」

 

絵本のへんてこな挿絵を指さして我愛羅と笑い合っていると、何故かテマリの本を読む声が止まってしまい、その度に続きをせかしたこともあった。一度目は偶然出会い、二度目も偶然で、でもテマリからまた本を読んであげようかと言ってくれて……もちろん我愛羅も一緒に。いつも二人だけで遊ぶ時間は、三人で居るともっと楽しくなった。

それから、三回目の約束をして……私は約束の日の前日に、砂隠れを去ることになってしまった。

 

なぜ……あの日、夜叉丸はカミナを砂隠れの里から連れ出したのだろうか。追っ手がかかろうと、身を挺してまでカミナを逃がして……そして、なぜ彼は死んでしまったのか……分からない。分からなくて、カミナの胸は苦しみと悲しみに、痛んだ……

 

 

カミナが過ぎし過去を思い返している間にも、予選の試合は進んでいった。

 

第六回戦、奈良シカマル VS キン・ツチ

試合自体は応酬の少ない、前試合と比べれば派手さの無い戦いとなったが、互いに心理戦と知略を駆使した戦術的攻防に、あのやる気のないシカマルが初めてカッコよく見えたなどと、本人が聞けば多少怒りそうな感想を抱くほどに、シカマルはスマートな勝利を収めた。

 

第七回戦、うずまきナルト VS 犬塚キバ

……誰もが試合開始前から結果を予想していた。アカデミーいちの問題児・万年ドベだったナルト相手には、同じ問題児グループであったが忍犬を伴い実力を有するキバが勝つであろうと。しかし、カカシとサクラ、そしてナルトに密かに思いを寄せるヒナタだけは、そんな未来など信じていなかった。

 

「オレを、ナメんなよ!!!」

 

キバを含め、アカデミー時代のナルトしか知らない同期たちは、予想だにしていなかった。いまでこそナルトは、当然のように影分身の術を多用しているが、アカデミーの卒業直前までは分身の術ですら満足にできない不器用さであったのだ。それが今や…影分身を駆使して、そこに変化の術まで応用したキバへの反撃ぶりに、誰もが驚きを隠せなかった。

 

「(へっ、カミナに術の練習に付き合ってもらってて、よかったってばよ!!)」

 

波の国の任務以来、ナルトは任務に猛進して取り組んでいたが、修行の方も怠らなかった。座学は眠くなるためもっぱら体術の修行に偏りがちになっていたが、それでも一人で修行するよりカミナと二人で組手などして修行する方が頭も使うため、着実にそれはナルトの強さになっていった。

――ある日のことだ、カミナが変化の術の練習をしようと言い出した。影分身の術ができても未だに分身の術ができないナルトだか、かろうじて変化の術は合格点をもらえるレベルには扱えている。この間の波の国の任務でも、風魔手裏剣に変化してあの再不斬を出し抜いたほどだ。

 

『えー、変化の術ぅ?いまさら練習しなくても、オレってば変化の術は完璧だってばよ!見てろ、おいろけの――』

『ストップ!……ナルト、お色気の術は基本使用禁止って、私この前言ったよね?(にっこり)』

『は…はひっ!!(ゾクリッ)』

『基礎はいつまでたっても大事よ。それにね、ナルトはせっかく影分身が使えるんだから、これを応用しない手はないと思うの』

『おーよー?』

 

頭で考えることが苦手なナルトは、カミナの丁寧な講義に耳を傾けた。カミナは料理や掃除だけでなく、術の説明をするのも上手だ。なにより、ナルトのことを考えて分かりやすく話をしてくれるのが嬉しくて、ナルトもついつい半分ふざけながら何度もカミナに説明を強請ってしまうのだ……ガキっぽいと思われようと何だろうと、ナルトにとって、カミナが自分の傍に居てくれることは何よりも嬉しいことだから……

 

「(――カミナ、見てろってばよ!オレは、絶対に勝つ!!…そんで、オレは火影になるんだってばよ!!)」

 

ナルトは――キバに変化した姿で、本物のキバにぶっ飛ばされながらも、殴られた痛みに耐えて印を結んだ。

 

『ナルト、おさらいだけど変化の術の基本はまず、変化する相手の姿をよく見ること。相手の姿を細部まで記憶して、そのイメージをチャクラで形作るの。それからね――』

 

「(おめーのアドバイス、忘れてねぇってばよ!!)――変化!!」

 

ナルトが変化したのは……キバの愛犬であり、相棒の赤丸の姿。予想通り、キバは動揺して″本物の″赤丸を殴りにかかり、変化が解けた相棒の姿に愕然としているところへ、ナルトは渾身の蹴りをお見舞いする。

 

「術は良く考えて使え!だから逆に利用されんだってばよ!バーカ!!」

 

以前、カカシに言われて悔しかった台詞を、ナルトは得意げにキメて見せた。(パクリ?かっこ良けりゃいーんだってばよ!!)

 

『――たとえ最初の術が失敗したとしても、そこから次へ繋げるチャンスを見逃さないで。ぶっ飛ばされたって、諦めなければ必ず活路が見えてくる。諦めたらその瞬間すべて、仲間も自分も守れなくなるのよ……』

 

「(オレは火影になるまで、あきらめねーよ!!)――とっておきの新必殺技で、ケリつけてやるってばよ!!」

「くらえーー!!」

 

それからナルトは、″おなら″でキバをひるませるというなんとも意外性ナンバーワン忍者の名にふさわしい術(?)を披露し、先のサスケの体術まんまパクリな「うずまき・ナルト連弾!!」でキバにとどめをさして、見事勝利を勝ち取った。

 

 

続く第八回戦、対戦相手は……日向ヒナタ VS 日向ネジ

 

 

 

 

 

そして、ちょうどキバとナルトの試合の決着がついた頃……

 

塔内部、緊急治療室にて。

 

 

「――…さて。大蛇丸様も、変わった注文をしますねぇ……」

 

照明が落ちた暗い室内で、傷を治して身なりを整えた薬師カブトが、集中治療に必要な医療機材の前に立っていた。彼が手にしているのは、一本のクナイ。そして、鈍色に黒光りする刃を、機材の配線へと近づけた……――

 

 

 

 

 

 

 




駆け足で書き綴る予選模様。そして、時間軸もいろいろ前後する。
もっともっとあっさり書きたいのに、最近は内容じっくりになっている気がする…これ以上端折ると、わかんなくなると思うので。主に自分が;;
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