ネタを小出しにしつつ……でも、ちょっと大盤振る舞い過ぎたかなと、反省もありきな試行錯誤の末の文面です。拙いですが、今回もよろしく。
2015/04/25最終投稿。
2015/10/20名前変更。
翌日の早朝。連日の修行の為か、なかなか起きてこないナルトを残して、カカシたちはタズナとともに橋の建設現場へと向かった。
今日の空は、いやに湿った空気が立ち込めている気配がした……
「――強敵(ライバル)出現ってとこだな…白(ハク)」
「そうみたいですね」
橋の上では作業員たちが傷つき倒れていた。視界を覆う程の霧の中、襲い来る再不斬の水分身をサスケが一蹴する。姿を現した装いの新たな再不斬と、その隣には先日追い忍を名乗っていたお面の子が並び立っていた。
「…え、……あの人…!」
「どうした、カミナ?」
顔色を変えたカミナに、カカシは再不斬たちからは目を離さずに声をかける。しかし、カミナはお面の子を見据えたままそれ以上答えることはなかった。
「……再不斬さん。彼だけでなく、あの赤毛の女の子の方も気を付けたほうがいいですよ」
「みたいだな……あの小娘、得体が知れねぇ…」
再不斬の鋭い眼光が、カミナを捕らえる。戦況はサスケが白と言うお面の少年と相対し、サクラとカミナがタズナを護衛、カカシが再不斬と対峙した。
片手印という珍しい技を繰り出した白は、しかしサスケの上回るスピードに蹴り飛ばされる。すると白は、今度は辺りに撒かれた水から無数の氷の鏡を作り出して、サスケをその中に閉じ込めてしまった。
「秘術・魔鏡氷晶!!――ボクの本当のスピードを、お見せしましょう」
「!(痛っ)――うぐぅっ!!」
「サスケ…!!」
「サスケ君!!」
まるで鏡の中に入り込むかのように消えた白は、鏡の檻の中にいるサスケに嵐のような高速の攻撃で襲い掛かった。
サクラは居てもたってもいられず、カミナにタズナを頼むように言うと、サスケの助けとなるべくクナイを鏡の檻の中に向けて投じた。しかし、それは難なく白にキャッチされてしまう。が、鏡の平面から上半身を出していた白に向けて、死角から手裏剣が投じられてお面に傷を付けた。
「うずまきナルト!ただいま見参!!」
……派手すぎるナルトの参戦は、敵ではなく味方の意表を突いてしまうのであった……。
◆◆◆
ナルトの短慮な行動から、サスケはナルトともども鏡の檻の中に捕らわれてしまうこととなり、白の早すぎる攻撃に二人は成す術もない。
「サスケ君!ナルトォ!そんな奴に負けないでェ!!」
「サクラ、だめよ!二人をけしかけちゃ!」
「え?ど、どーゆーことよ、カミナ?」
「……ナルトもサスケも、まだ人を殺したことがない…たとえあの術を破る方法があったとしても、二人を殺す気で来る白に、白を殺せないナルトたちが勝つことは、むずかし――(え?…でも、だったら、なんであのとき…!)」
「ククク、その小娘の言う通りだ……お前らみたいな平和ボケした里で、本物の忍は育たない。忍の戦いにおいて、もっとも重量な"殺しの経験"を積むことができないからだ…」
「じゃ、じゃあどーすんのよォ、先生!!」
「……………」
タズナの護衛が最重要である以上、この場を離れることができないカカシ。だからと言って、みすみすナルトたちを見殺しにすることもできない。
カカシの苦悩がその背中から感じ取れたカミナは、覚悟を腹に据えると、目の前で十字の印を結んだ。
「影分身の術!!」
「「カミナっ!?」」
「ほぅ……てめぇがオレ様の相手でもする気かい?」
再不斬の嘲笑は無視して、カミナはタズナの元に影分身を残すと、素早くサクラの元へ駆け寄った。
「サクラ、お願い。タズナさんを守って。ナルトとサスケのところには、私が行く」
「そんなっ、でも…!!」
「カミナ、無茶はやめろ!お前とて、まだ人を殺めたことは……!!」
「……他人の命を奪ったことなら、あります。木ノ葉隠れの里に来る前に……私が6歳の頃でした……」
「「「!?」」」
カミナの思わぬ告白に、サクラとカカシは驚きに息を飲む。そして再不斬は、カミナの瞳に浮かぶ夢も未来も見いだせないような暗い眼差しに……かつて野鼠のように薄汚れた姿で出会った幼き日の白と、その白の瞳に映りこんだ己の姿が、脳裏に過るのを感じた。
「どういった経緯でその人たちを殺してしまったのか、今ではもう覚えていません…ですが、他者の命を奪ったという事実と実感だけは、確かに私の中にある……それが心を殺してまで忍になりきろうとする白の覚悟に及ぶものとは思わないけれど、でも……白の夢が、貴方の夢を叶えることだと言うのなら、私の夢は木ノ葉の里を守り仲間を守ること。誰が相手であろうと、この忍道だけは、誰にも譲りはしない!!」
カミナの蒼い瞳に、鋭いまでの気迫が宿る。それは、カカシと再不斬ですら一瞬気圧される程のものであった。
「(この小娘(ガキ)、いったいッ―――)はッ!?」
カミナは瞬時に、再不斬の横を駆け抜けてナルトとサスケの元へ向かった。しかし、再不斬とてただで通すはずもなく、ナルトの時同様に目にもとまらぬ速さで手裏剣をカミナの背に向けて放った。
「しまった!!」
「カミナあぶないッ!!」
手裏剣がカミナの背に届いたのは、サクラとカカシの警告が言い終わるか否かの瀬戸際だった。
しかし、
――カカッ!!――
手裏剣が刺さったのは、変わり身用の丸太。そのすぐ隣を、本物のカミナが霧に紛れて駆け抜けた。
「チッ、あんな初歩的な忍術で……むッ!?」
「……三度目も、見逃すと思うな。――悪いが……一瞬で終わらせてもらうぞ」
「クク…写輪眼…芸の無ぇ奴だ」
膠着した戦場が、動き出す―――
◆◆◆
「ハァ、ハァ、ハァ……うっ」
「ハァッ、ハァ……クッ」
体力の限界に来たのか、地に倒れ伏すナルト。サスケも、全身のあらゆるところを白の千本に貫かれながら、しかし闘志は失わずに次の白の攻撃を見切ろうと、必死に視線を巡らせていた。
「君は…よく動く……けれど、次で止めます……」
白が再び、鏡の中で千本を構える。
「――ナルトっ、サスケ!!」
「カミナ!?」
「(再不斬さん、彼女の相手もボクに?……期待してくれるのは嬉しいけど、ちょっとキツイかなぁ…)」
鏡の檻の手前で足を止めたカミナは、隙間から体中千本だらけになった二人を見て息を飲んだ。
特に、地面に倒れ伏して動かないナルトの姿を目にして、一瞬血の気が引いた。
「ナルトッ!?」
「……だいじょぶ、だ…まだ生きてるぜ…それよりカミナ、ぜったいこっちに……」
「入るわけないでしょ。でも…助太刀はするからね!」
カミナは両手に、四枚の手裏剣を構えた。
「そんなもので、この氷の鏡は割れませんよ?」
「だったら…割れるまで攻撃し続けるまでよ!!―――ハッ、手裏剣影分身の術!!」
カミナは四枚の手裏剣を放つと、素早く印を結んだ。
四枚の手裏剣は空中で倍々に数を増やし、氷の鏡に届くまでには、千にも二千にもの数になって、絶え間なく鏡を攻撃し続けた。
――ガガガガガガガッッ……ピシィッ!!――
「なっ…!?(チャクラを宿しにくい手裏剣(物体)を、実体のある影分身で何倍もの数に増やすなんてッ…)」
尽きることのない手裏剣の物理攻撃に、氷の鏡はついに亀裂を走らせる。
「いいぞ、カミナ!」
「くっ……もう、少し…!!」
「――貴女は、少々厄介ですね」
「「ッ!?」」
突如、背後から聞こえた声音に――カミナは、自身の背後に形成されていた氷の鏡の存在と、その鏡の中から身を乗り出した白が冷気を帯びた腕でカミナを羽交い絞めにしようと腕を伸ばしていることに気づいたのは、ほぼ同時であった。
「カミナっ、逃げろ!!」
「ッ!?」
「秘術・魔鏡封じ」
氷の鏡の中に身体の一部が引きずり込まれたカミナは、そのまま鏡と一体化するようにして氷漬けにされてしまった。わずかに動く頭と手首だけが、虚しく空を掻く。
「その氷は徐々に貴女の体温を奪い、静かに死に至らしめます。少しでも命を永らえたければ、あまり体力は使わないことです」
「白っ、待って!!」
「恨まないでください……貴女の目の前で、貴女の大切な仲間の命を奪う、ボクを…」
「白ッ!!」
白はカミナの呼び止める声に振り向くことなく、再びサスケたちのいる鏡の中に戻っていった。
身動きのできないカミナの目の前で、再開された白のサスケたちに対する攻撃は熾烈を極めていく。しかし、そんな極限状態の最中に、サスケはうちはの血継限界・写輪眼を開眼した。それを知った白は冷静に状況を判断して、サスケに隙を作らせるためナルトに標的を移すのだった。
鏡から飛び出す白の軌道を、サスケの写輪眼は完全に見切っていた。しかし、白の標的が自分ではなくナルトであると気づいたとき……そして、それが罠であることを悟った瞬間、彼の身体は意識以外のところで動きナルトを庇おうとしていた。だがすでに、チャクラを込めた脚でも届かない距離に白の機影は迫っていた。
「(くっ…!!間に合え!!)」
「――水遁・水龍弾の術!!」
「「っ!?」」
龍の嘶きのごとく轟音を上げ、突如として霧を引き裂いた大量の水流が鏡の檻に押し迫ってきた。
白は咄嗟にナルトの手前でたたらを踏んで鏡の中に逃れると、サスケはチャンスとばかりに倒れたナルトの服を引っ掴んで、そのまま水流に乗って檻の外に逃れ出ることに成功した。
「(これは、再不斬さんの術!?まさか――!!)」
水流によって半分以上の氷の鏡を壊された白は、鏡の中から動きを封じたはずのカミナの方を見遣った。――体の半分は、まだ氷漬けにされたままのカミナ。しかし、彼女の右上半身を覆っていた氷は砕かれ、右手にはクナイを手にしたまま、氷に固められて動かない左手の元へ腕を伸ばして「酉(とり)」の印を組んでいた。よく見れば、カミナの右上半身は苦無の先で傷つけたような傷痕や、凍傷の痕が各所に見られた。
「(なんて子だ…クナイでボクの氷を砕いて、脱出を……張り付いた氷で、自らの身体が傷付くのも構わずに…)」
白はカミナの行動と覚悟に感嘆を覚えると同時に、千本を構え、鏡の中から姿を消した――
◆◆◆
「ハァッ!ハァッ!ゼェ、ハァ……」
己が身に過ぎた高等忍術の発動は、カミナのチャクラを根こそぎ使い切ることで成功した。今までに経験したことのない疲労感が身体を襲い、さらには未だ体温を奪う氷の封じも相まってカミナは苦しげに白い息を吐く。
先日、カカシから戯れに聞いた水遁の印は、成功するかどうかはある意味賭けだった。しかしどうやら、カミナの決死の覚悟はナルトたちの窮地を救うに至ったようだ。
……ナルトとサスケは無事だろうか。自分の身体とは思えないほど重い頭を、カミナはなんとか持ち上げる。が――カミナの視界を占めたのは、傷のついた不気味な面だった。
ヒタリ…と、冷たい感触が首筋に触れていた。
「――どうやらボクは、貴女の力を見誤っていたようです」
「ハ、ク……」
「前言を撤回しますね。貴女は、ボクを恨んでいいです。
貴女の大切なひとを、ナルト君を……悲しませてしまうボクを、恨んでいいです…」
白が手を当てた反対の首筋に、鋭利な切っ先が押し当てられるのを感じた。
チャクラを限界まで使い切ったカミナはもう、意識を保つのでさえ限界だった。
「………」
『オレってば、もっともっと強くなりてーの!――オレの里で一番の忍者になるため!みんなにオレの力を認めさせてやんだよ!
それにさ……オレってば、守りたいヤツがいるんだ。ずっとひとりぼっちだったオレのそばに、初めて一緒に居たいって言ってくれた…強くって、かわいくって、料理も上手でさ……オレの、いちばん大事なヤツなんだってばよ……!!』
脳裏を過ったナルトの笑顔を振り払い、白は、手にした千本に力を込めた。
◆◆◆
「うっ……ん…」
全身を刺すような痛みで、ナルトは意識を取り戻した。事実、身体のあちこちに刺さった千本が少し動くたびに傷口を抉るようで、痛くてたまらない。
気が付けばなぜか服はびしょ濡れで、視界を巡らせば、ドームのようにナルトたちを囲っていた鏡の檻を外から見ているという光景が目の前にあった。
オレたち、鏡の中から出られたのか…?
更に頭を巡らすと、傍らにはサスケが立っていた。自分にも負けないぐらい身体のあちこちに千本が刺さったサスケは……しかし、いつも気に食わないスカした目元をこれでもかというほどかっ開いて、どこかを見ていた。
何見てんだ…?
「…………、…ぇ………カミ、ナ…?」
鏡の檻は、半分以上が壊れていた。その檻を隔てた向こうに、お面ヤローは立っていた。
……ぐったりと、力なく目を閉じた、カミナを抱きかかえて。カミナの細く白い首を、長い千本が刺し貫いていた。
「……ナルト君、サスケ君。彼女は死にました。彼女は自身が逃れられないと分かっていながら、キミたちを守り、死力を尽くして…そして、ボクに殺されたんです」
「っ、ナルト…!!」
……お面ヤローの、言っていることが分からねぇ…
……サスケの声も、聞こえねぇ……
そこからは、一瞬だった。
面の奴が迫って来る。
サスケが、オレの前に出る。
サスケが千本で刺されて、それで……血を吐いた。
「え…?」
「こ、の…ウスラ、トンカチ…なに呆けてる……これじゃ、身体張ったカミナも…うかばれ、ねーだろ…が…」
「ッ!?……なんで……オレなんか……ッ」
サスケが、倒れてくる。オレは、ただそれを受け止めていた。
「知るかよ…そんなこと…」「身体が、勝手に…動いち、まったんだよ…バカ…」と、いつもカンに触ることばかり言うサスケからは想像すらできない、弱弱しい声。しかし、そのくせいつもより口数が多い。死ぬ間際の言葉とか?…ふ、ふざけんじゃねーぞ!!
「お前なんか、大嫌いだったのによ…………お前は、死ぬな…」
「っ!!」
――ドクン――
「…仲間の死は、初めてですか……これが、忍の道ですよ……」
「………うるせェ……」
――ドクンッ!――
この五月蠅い音は、なんだ?
オレの、心臓の、音?
ちげぇ……
――ドクンッ!!――
〈〈……コロシタイカ?〉〉
あぁっ…コロシたい!サスケを、カミナをコロシたヤツを!!ゆるさねぇ……!!!
〈〈イタイカ?クルシイカ?アヤツガニクイカ?〉〉
痛い、苦しい、憎い、いたい、くるしい、にくい、イタイ、クルシイ、ニクイぃいいいい――!!!!
「ああああああああああっっっ!!!!」
殺 し て や る !!!
ナルトの獣のような咆哮が、残りの氷の鏡を全て吹き飛ばした。
◆◆◆
――まっくらだった……
わたし、死んじゃったのかな……
カミナは、暗闇の空間の中に居た。どこかで水の気配がする。しかし、闇しかないその空間で、カミナが視界に捕らえられるものは何一つなかった。
――ジャラ……ギリッ……
カミナの身体には無数の鎖が巻き付いていて、カミナの身体を空中に縫い留めている。まるで蜘蛛の巣に捕らわれた羽虫か蝶のように、カミナの身体は自由を奪われていた。
「……なる、と……」
どこにいるの…?
さびしいよ……こわい、たすけて……
〈〈――今あの小僧を、呼ぶべきではないな。呼んでも、聞こえぬ……逆に貴様の魂が、ヤツの怒りに引きずり込まれる…〉〉
「……だれ?」
声が聞こえた。
応えの主の姿は見えない。でも、空間全体を揺るがすような腹に響く声音は、相手がとても大きいことを伺えさせた。
〈〈……応えられん。彼奴(きゃつ)のおぞましき封印が、あるうちは―――〉〉
封印? 不意に、鎖で雁字搦めになっていたカミナの身体の上に、さらに何かが巻き付くような不快な感覚が現れた。ぬめる鱗、節の無いからだ……その物体の正体に、カミナは生理的な嫌悪感を感じて喉をひきつらせた。
「ひッ…!!」
暗闇の中で、死んだ魚の腹のように白光りする鱗の光沢がわずかに垣間見える。腰のあたりから首に至るまで巻きついた太い胴は、カミナの抗いを封じ、嬲り殺すかのようにじわじわと華奢な身体を締め上げた。血の気を無くした唇から、苦悶の呻きが零れる。
「(へ、蛇…?!)あっ、く…ぁ…!!」
〈〈抗うな。時が来れば、彼奴は必ずこの封印を解く。それまで耐えることだ……ワシとて、ただ利用されるつもりはない――〉〉
「…あな、た…だれ、なの?」
〈〈応えられんと言っただろう。……もう、行け。"外"で小僧が、うるさいぐらいに喚いておる……〉〉
声が、遠ざかる。同時に、身体を戒めていた蛇と鎖の気配も、闇に解けるように消え去った。
カミナの意識もまた、さらに深い闇へと落ちていく―――
◆◆◆
「――ナ、……カミナ!目ぇ開けてくれ、カミナってば!!」
「っ……ナル、ト…?」
「ッ!?カミナ!?」
少々乱暴な揺すぶりに、重たい瞼を持ち上げれば、眼前には涙と鼻水と…とにかく顔から出る物全部だして、顔をぐしゃぐしゃにしたナルトが、心底ほっとしたような表情で横たわるカミナの身体を抱き抱えていた。その表情も、またすぐにうれし涙に埋もれていった。
「よかった、よかったってばよ!サスケが無事だったから、もしかしてって……ひぐっ、ぐず……ガミナぁ~、ぶじでよがっだぁぁ~~!!」
汚れた顔のまま、ナルトがカミナをしっかと抱きしめる。力を込められた腕は傷にさわって少し痛かったけれど、かすかに震えているナルトの身体がカミナの無事を心底喜び、失うことに恐怖していたのだということが十分に伺い知れた。
「うわっ、ナルト!あんた、そんな鼻水だらけの顔でカミナに抱き着くんじゃないわよっ!!」
「…ウスラトンカチだな…」
「サクラ、サスケ……カカシ先生も…」
カミナの周りに立っていた仲間たちは、サクラ以外皆満身創痍ではあったけれど、その様子から戦いは終わったのだと知ることができた。
「すべて終わったよ、カミナ。再不斬と白は、死んだ…」
「……そう、ですか……」
二人の死はカカシに告げられないまでも、彼らの遺体が身体を起こしたカミナの視線の先にあったことですぐに分かった。
しかし、白をあれだけ道具だと言っていた男が、彼の傍らで安らかな死に顔をしている様に……彼もまた、白と同じように忍(道具)などにはなり切れず…最後に人の心を認め、仲間の死を悼み死んでいったことが、嬉しくもあり悲しくもあった。
『きみには、大切な人はいますか?』
『人は…大切ななにかを守りたいと思ったときに、本当に強くなれるものなんです』
ナルトが白と出会ったあの日、ナルトはとても印象をうけた白の言葉をカミナに話していた。
思えばその言葉は、白自身の真実であり覚悟そのものであった。そして、白が凶暴な野心を持つ再不斬をそれでも大切な人だと想えていたのは……再不斬もまた、無意識の中でも白をかけがえのない存在と見なしていたからではないだろうか。
忍びとて人間であり、感情の無い道具…機械(マシーン)などには成れはしない。
ましてや、鬼でも……化け物でのも、ない。
私たちは、心と刃(やいば)を併せ持つ、忍(しのび)なのだから。
季節外れに降る雪が、尊い命の死を嘆いているかようだった―――
◆◆◆
それから二週間。巨悪の権化であったガトーが死に、橋作りの妨害もなくなった波の国では、橋の建設が急ピッチで進められ、ナルトたちが傷を癒して木ノ葉隠れに帰る日に橋は完成した。
イナリたちと涙の別れを惜しんだ後、ナルトたちは完成した橋を渡って里への帰路につく。
「ぐしっ――カミナ、行こうぜ!木ノ葉に帰るってばよ!!」
カミナに向けて、右手を差し出すナルト。再不斬と白の死を受けて、ナルトは己の忍の在り方を、忍道を見つけられたようだった。そしてその影響は、サスケとサクラにも及んでいる。奇しくも、それは良い影響ばかりではないようだが……
「ナルト、あんた何ナチュラルにカミナと手つなごうとしてんのよ?」
「…お前、最近カミナに対して少し過保護じゃねーか?」
「カホゴ?……そんなんじゃねーよ。ただ、今度こそ!オレが絶対に、カミナのこと守ってやるんだってばよ!!」
サスケの言うように、この頃のナルトは…とくに、チャクラを限界まで使い切りタズナの家でしばらく寝込んでいたカミナに過分な気遣いを見せるようになっていた。とはいっても、元来不器用なナルトの行動は、半分以上が空回りの結果に終わっているが。……仮死状態とはいえ、一度は死んだも同然のカミナを目の当たりにしたことで、ナルトはカミナを失うことをひどく恐れているようだった。
今回の任務は、痛みを伴うことで得た経験も多かった。里に戻ったら、ナルトを甘やかしてあげたいなぁと、カミナはそれこそナチュラルに考えたりするのであった。
「カミナ、手ぇ!」
「うん。(……外で手をつなぐなんて、出会った当時以来かも)」
サクラの呆れつつもどこかキラキラした視線と、サスケの面白くなさそうな視線の見守る中で、カミナはナルトの差し出された手を取る。
―――…ワガ チカラ イツカカナラズ トリモドス……―――
「ッ!!」
「えっ……、カミナ?」
「ん?カミナ、どしたの?」
突然ナルトの手を弾くように手を引っ込めたカミナに、困惑するナルトと、意外そうに目を見張っているカカシ。
今の声は、なに―――?
「あ…ご、ごめんね。ちょっと、静電気が…」
あははっと誤魔化しながら、カミナはもう一度ナルトの手を握る。今度は何の声も聞こえなかった。
気を取り直したらしいナルトは、カミナとつないだ手をぶんぶんと振り回しながら景気よく歩を進める。サクラの注意する声が飛び、サスケの呆れた吐息が零れる。マスクの下で、カカシは困ったような笑顔を浮かべていた。
ナルトに振り回されないように苦笑しながら歩を早めるカミナは、ふと無意識に…ナルトとつなぐ反対の手を、己の腹部に当てていた。
任務は終わった。
しかし、<物語>はまだ始まったばかりであることを、この時は、まだ誰も知らなかった―――
おまけ
――忍らしくなく、揚々と日の元を歩いて帰路につくカカシたちの姿を、うっそうと茂る木々の間から見ている者がいた。その者は、黒地に赤い雲の模様を描いた羽織を纏い、顔には渦を象ったような彫りのある面をつけていた。
「……<異物(イレギュラー)>の存在があっても、未来は変わらない、か……そろそろ、大蛇丸が動く…もう少し様子を見るか……」
面の内側にくぐもった声音は、その者の正体をあやふやにする。
その者を目にする者がいたら、事実、その姿が比喩でも何でもなくあやふやに見えたことに、腰を抜かしたことだろう。本来、ヒトが干渉することのできないはずの空間が歪み、渦潮のうずのごとく、その者を空間の″穴″に吸い込んでいったのだから。
最後まで残ったその″穴″からは、鮮血に染まりし写輪眼が、真紅の髪を持つ少女を見据えていた―――