ベリオリ☆ベリオン   作:四乃宇内

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第1話

自分と同じコーディネートのハンターを目の当たりにして、私は面食らっていた。死に物狂いで素材を集めて作成した、愛着の深い装備である。その苦労から被ることはあるまいと高をくくっていたが、まさかほぼ一緒という輩に出会う日が来ようとは、夢いささか思いもしなかたったことである。

 

驚愕する私を尻目に、同じ防具に身を包んだハンターが口を開いた。掲示板に貼り付けられたギルドクエストの依頼書を指差し、そして私を凝視しながら。

 

「このクエストは君が?」

「あ、ええ。ディアブロス亜種は苦手で」

「手を貸そう。ぜひとも同行させて欲しい。ヒューガルデン・ホワイトだ。仲間からはヒューゴと呼ばれている」

「ありがとう。助かるわ、ヒューゴ。私はケストリッツァー・シュヴァルツ。リズと呼んで」

 

男勝りな口調と、背に担いだ銃槍が印象的な女――ヒューゴと、私は握手を交わした。そして同時に、ヒューゴの頭のてっぺんから足の先までを、まじまじと見つめた。

 

「そのべリオロスの。商人にふっかけられなかった?」

「仕事でタンジアに足を運ぶことがあってね。そのついでに狩猟してきたんだ」

「いいなあ。タンジア行ってみたい」

「ビールが美味しかったよ」

「有名だよね。ああ、羨ましい」

 

まず胴体を守る鎧は、異大陸のモンスター――氷牙竜の特別に厚い毛皮と内臓器を必要とする。ここバルバレの地では、あこぎな商人に法外な対価を支払って入手しなくてはならない。私が手配した際には、取引に先立って白猿狐や絞蛇竜などのモンスター討伐を課せられたのだ。足元を見やがってと、内心で毒づいたことをよく記憶している。

 

「リベリオンのウエストアーマーって可愛いよね。他の防具と、よく合うし」

「そうだね。バストメイル使ってる人は、よく見かけるけど」

「皆と同じって、なんか嫌じゃない?」

「ああ。異論ない」

 

次に腰の装備だ。こちらは未知の樹海から出土する発掘品である。ピッケル一つで誰でも掘り出すことが可能ではあるが、しかし面倒なことに近隣に炎王龍やら天廻龍やら、つまり古龍種が生息する特別警戒区域でもある。一握りのハンターに与えられる特別許可証を所持していないと、入域はおろか、近づくことさえ許されないというアンタッチャブルゾーンだ。偽造した許可証を片手に、高ランクハンターの一行に紛れ込み、猛り狂うモンスター尻目にピッケルを振るったことは良い思いでとして、私の記憶に刻まれている。

 

「このソックスさ。黒以外の色が欲しいんだよね」

「例えば何色?」

「色っていうか柄かな」

「ストライプとか?」

「そうそう」

 

足を通すソックスとブーツは、存外に簡単に手に入れたのだった。ギャンブルで巻き上げたコインを加工屋に持ち込んだら、こしらえてくれた代物である。だが、なかなかどうしてデザインが可愛く、今では愛用している。あの加工屋、いかめしい外見とは裏腹に少女趣味なのでは、いや、かたわらにいた少女の仕業か、まさかロリコンの類――いやはや、行くたびに邪推せずにはいられない加工屋である。

 

「この腕の、この尖ったトコ、ジャマじゃない?」

「それな。ガンランスをしまう時、引っかかって困るんだ」

「分かる。デザイン的にも要らないし」

 

そして極めつけが腕の防具だ。あの祖龍、伝説のあの祖龍の角だの殻だのをふんだんに用いた防具、目にしたらまず贋作を疑うべきレアモノである。しかし自らの腕につけた本物と見比べても、微塵も遜色はない――ように見られる。

生なかには信じられず、気付けば私はヒューゴを問い質していた。

 

「て言うか、大変だったでしょ。手に入れるの」

「そうだね。あのミラルーツだから。君も苦労しただろう」

「え、う、うん」

 

祖龍と交戦したことなどなかった。あるのは祖龍を討伐したハンターと一夜を共にし、意気投合した結果から、素材を譲り受けた経緯があるだけだ。そう。あくまでも腕の立つ一流ハンターから、善意で素材を頂いたのである。

返事代わりに微笑む私に、出発を促すようにヒューゴが手を差し出した。

 

「さあ、行こう」

「二人で? せめてあと一人いた方が」

「太刀とガンランスのパーティだよ。同行を願い出る奇特なハンターが、果たしてどれだけいるかな」

 

嗚呼と声が漏れた。ヒューゴの持つ銃槍は、往々にしてモンスターもろとも同行するハンターをも吹き飛ばす。似たような理由から、私が得意とする太刀もまた評判が悪い。どちらも迷惑者として、煙たがられることの多い武器である。ゆえに同行を拒否するハンターは、ことのほかに多い。悲しいかな、太刀を担ぐ私があたりを見渡せば、目に付いた端からハンターがそっぽを向き、あるいは顔を伏せる。そんな状況が、全てを物語っている。ヒューゴの指摘通り、銃槍と太刀のパーティに好んで加わるハンターなんぞ現われやしない、と。

 

「時間が惜しい。さあ」

 

手を差し出したまま、即時出発をとヒューゴが私に詰め寄った。目と声に力をみなぎらせて。

おかしなヤツだ――とは終ぞ口に出さず、私は狩場へと連れ出されたのだった。

 

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