Fate/SAO それ行け、はくのんwith赤い暴君   作:蒼の涼風

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こんばんは、お待たせしました。12話をお送りします。




Art12:青い槍兵

 どれくらい走っただろう。リポップしたブルバス・バウの突進を避けて、マロメに向かってひたすら走って。

 正直なところ、迎撃しようと試みたこともあったけど、曲がりなりにもボスのキャラクター。セイバーと私だけでHPを削りきるのは困難と判断してすぐに逃げに徹したのだ。

 ただ、上手く誘導して逃げるなんて器用なことが出来るわけもなく、マロメの村には近づけないし、引き返すにはボスの射程圏内に居すぎる自分の位置としては、正直にっちもさっちもいかない。

 

「奏者よ、どうする? 離脱するにしてもこのままではジリ貧だぞ」

 

 珍しくセイバーの声にも焦りの色が見て取れる。まずい、ひじょーにまずい。

 打開策が見当たらないってもんじゃない、コレは詰みだ。ああもう、うかつな行動が死に繋がるなんてあの学校で散々思い知ったのに、なんだってこんな事してるんだろうか……そんな自分の頭の中の声に、思わず苦笑いを漏らす。

 だって、仕方ないじゃないか。見てしまったんだから。

 

アスナ(仲間)の泣き顔を見ちゃったら……何とかしようとするしか、無いよね」

「まったく、コレだから奏者は一級百合フラグ建築士などと言われるのだ!」

 

 まった、待って欲しい。それは幾らなんでも思い当たる節が……無いわけじゃないけど。

 

「しかし、マスターが踏ん張ると言うのに余が踏ん張らぬ訳にはいかんな。仕方ない……帰ったら存分に余の頭を撫でるのだぞ!」

 

 ふんす、と剣を構え直すセイバー。何だかんだ言っても付き合ってくれる辺り、まじ天使。私もメイスを握りなおして、もうボロボロなバックラーを胸の前で構える。正直、大型盾を持ったタンクでないとあの突進は防御で防ぐなんて出来ないから、私のバックラーじゃ心元無さ過ぎるけど。

 

「もう1時間もこうやって遊んでおるのだ。いい加減貴様の顔も見飽きたと言うもの。余は眠いのだー!」

 

 がーっと吼えながらボスへと斬りかかるセイバー。あ、キレた?

 そっかそっか、さっきから何処となくイライラしてるような感じがしてたけど、眠くなってきてたんだ。もう、21時も30分をまわって、普段のセイバーなら寝てる時間だもんね。コレと言った用事が無い限りは。

 

「なら、さっさと終わらせなきゃね……行くよ、セイバー」

 

 そう、さっさとマロメの村に行ってセイバーを休ませて。その間にキバオウさんと交渉しないと。

 そんなよそ事を考えていたのがいけなかったのか、ブルバス・バウの突進を避けようとした際に足がもつれてしまった。いけない、このまま突進に巻き込まれたらアウトだ。

 

――ブルモォォォ!――

 

 なんてボスが唸り声と共に突っ込んでくる。やばい、と思って思わず目を閉じるものの、何時までたっても衝撃は襲ってこない。

 それどころか、声も近づいてきていない?

 

――その心臓、貰い受ける――

 

 そんな声と共に目の前に広がるのは真っ赤な閃光。物凄い速度で駆け抜けてきたのは、青い衣装に全身を固めた、青年。

 かつて、一度だけ見たことがある。あの決闘場(アリーナ)で、彼女を救うために自分の命と引き換えに活路を見出した。本当にそれだけの関わりだって言うのにとても印象深かった、正しく兄貴分とはこの人のためにあるのだろうと思われる言葉。

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

 ランサー。それも、幾度と無く自分の窮地を救ってくれた友人、遠坂凛のパートナーとして月の聖杯戦争を戦っていた人物だ。

 そして、【ゲイ・ボルク】と言えば、ケルト神話に出てくる光の御子『クーフーリン』を象徴する魔槍じゃないか。

 曰く、投げると30本の鏃となって敵を殲滅するだとか、突き刺すと30本の棘が生えて心臓を貫くだとか。つまりは、確実に心臓を貫く攻撃ってわけで。聖杯戦争のとき、このサーヴァントと戦っていたら自分は勝てていたのだろうか。

 その槍の一撃でもって、ブルバス・バウは粉微塵に消え去った。え、ほんとに一撃で? そんなんチートや!

 

「よう、嬢ちゃん。月以来じゃねえか。相変わらず面倒ごとばっか巻き込まれてんだな」

 

 にやり、なんて表現がぴったりな彼の表情に、そう言えば凛も何やかんやと口喧嘩していたなぁなんて思ってしまう。

 

「ランサー? どうしてここに?」

「ああ? 何故ってそりゃマスターの命令だからだろうよ。そこのセイバーや、ヴラド三世なんてバケモンが居て、俺がいねぇ道理は無いだろ」

 

 さも当然のように伝えてくる言葉。マスターの命令とな。

 

「おら、さっさと立て直せ。今からまだマロメに行くんだろうが……まあ、その必要も無いみたいだけどな」

 

 ふと、ランサーが指差した方角から走ってくるのは、キリト君とアスナ、それにアルゴさん!?

 あちゃー、バレちゃったなんて考えている間にランサーはどっか行っちゃうし。

 

「ハクノンさん!」

「ハクノン」

「ハーちゃん!」

 

 3人とも、いっせいに声をかけてくる。それぞれに切羽詰った顔をしているのを見る辺り、私がどんな目に遭ったのかは知っているらしい。てかそうだよね、知らなきゃそんな慌ててこないし。

 

「何て無茶だ、こんな時間に一人でフィールドを出歩くなんて!」

「どこも怪我してないカ? というか、ブルバス・バウはどうなったんダ!?」

 

 キリト君とアルゴさんが心配して声をかけてくれる。どこもおかしなことはないし、ボスも助けてくれた人が居て倒しちゃったことを伝える。

 ふとアスナの腰に目が行くと、つい数時間前に消えてなくなったはずのウインドフルーレが元通り、アスナの腰に戻ってきている。

 

「むむ、む? よく分からないけど良かった……剣、戻ってきたんだね、アスナ」

 

 アスナの剣が戻ってきた。それが嬉しくてつい笑っちゃったんだけど、アスナの目には涙か浮いている。あれ? 何か変な事言いました?

 ちょっとセイバーさん、一人非難して何か拾ってる場合じゃなくて! 助けて!

 

「なんで、こんな無茶したのよ。ボスがリポップするのは知らなくても、一人で出歩くのが危険なのは分かってたでしょ」

 

 声が冷たいです、アスナさん。うう……怖いよう。

 

「一人じゃないよ、セイバーも居たから」

 

 一応の反論を試みてみるものの、キッと睨まれてしまったら反論の使用が無くなるわけで。

 

「ごめんなさい。私一人で大丈夫だと自惚れてた。凄く心配かけたね、アスナ」

 

 素直に頭を下げる。許してもらえるのか怪しいところではあるが、私の精一杯の誠意を見せるには他に手段も無いし。

 

「無事で、良かった。タランに戻りましょう?」

 

 そう言って抱きついてきたアスナは、何だかとっても可愛らしく見えて。あ、なんだかキリト君が面白くなさそうな顔してる。アルゴさんは両手でピースしてるので、私も両手でピースしてみる。ぶいぶい。

 取り敢えず4人でタランの町に帰ることになり、その間に私が何故一人で出かけたのかをしつこく聞かれ、白状した後に……アスナさんの雷が落ちるのであった。まる。

 




お休みが欲しいです、一日小説かいてても何もいわれないお休みが…!

ちらっと、Fateキャラ参戦。すぐ消える。
サブタイ詐欺とはこのことかもしれない……!

はい、それではまた次回。

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