Fate/SAO それ行け、はくのんwith赤い暴君   作:蒼の涼風

15 / 28
こんばんは、お待たせしました。
第十五話、お送りします。


Art15:募る不安

 第2層のボス部屋へと向かう途中、それぞれの役割分担を確認する。キリト君とアスナ、クラインさんとセイバーがそれぞれタッグを組み別方向から攻撃を仕掛けてHPを削りながらボスの攻撃パターンを引き出す。アルゴさんは万が一のために扉が完全に閉まらないように支えててもらう。そんでもって私は、ちょこまかとボスの周りをかく乱する。

 

「あとは……みんな分かってると思うけど、あくまでこれは偵察戦です。ある程度ボスの攻撃パターン等の情報が得られたら撤退し、然るべき準備をした後にリンドさんたちのレイドと合流して……そこ、あからさまにやる気満々って感じでメイスの手入れしないの」

 

 あう。アスナに怒られた。せっかくなら倒してしまっても良いと思うのです。

 

「奏者よ、今回はいわば猶予期間(モラトリアム)中のアリーナでの遭遇戦というところだ。今は情報を集めるだけ集めるのを優先しよう」

「そっか、なら仕方ないかな。情報を集めなきゃいけないのはどこも同じかぁ」

「んじゃ、行こうぜ。“バーサーカー”さんとやらを見にな」

 

 ちくっと窘められた私の反応を見た後、クラインさんが締めてボスの部屋の扉を開く。

 真っ暗な部屋だったけれど、少し進むと周囲に灯りがともって部屋全体が見えるようになった。そして、私たちの前に立ちはだかったのは牛頭で上半身裸の人間の体、下半身もボロきれとでも呼べそうな布を纏っているモンスターだった。見た瞬間、私は悟ってしまった。

 あれは、“本物”だと。

 

「■■■■■■――!」

 

 迷宮全体が揺れるのではと感じるかのような、とんでもない咆哮。そして、振るわれる2本の腕。武器を持っていない……いや、背負っているのに使ってこない?

 

「キリト君、セイバー! お願い!」

「ああ!」

「任せろ奏者よ!」

 

 私の言葉が飛ぶのと同時に、キリト君とセイバーは剣を振るった。キリト君は水平斬りソードスキル『ホリゾンタル』で、セイバーは体の回転を加えたブレイク攻撃でそれぞれ迎撃して相殺する。

 

『スイッチ!』

「よっしゃあ!」

「やああぁぁ!」

 

 セイバーとキリト君の声が重なり、クラインさんの曲刀スキル『リーパー』とアスナの細剣スキル『リニアー』がバーサーカーの体を捕らえる。ちまっとHPが減ったのを確認する限り、こっちの攻撃は通る。

 ヴラド三世みたいに出鱈目な攻撃もしてこないはず。

 

「■■■■■■――!」

 

 けれども、力任せに振るわれるその腕がすぐに背中の斧に動くと、そのままソードスキルの光を纏って振るわれた。

 あれは見たことある、1層ボス戦でエギルさんが使ったソードスキル『ワールウインド』だ。

 

「セイバー!」

「うむ、皆まで言うな! 天幕よ、落ちよっ!」

 

 私の号令だけで、セイバーが跳び上がり花散る天幕(ロサ・イクトゥス)で迎撃する。

 耳障りな金属同士のぶつかり合う音が響く中、私はミノタウロスの背後に回ってメイスで攻撃する。表示されるダメージ値は微々たる物だけど、その分ソードスキル後の硬直が無いので手数は稼げる。

 

――虐殺するは7の雄――

 

 ふと、目の前にそんな文字が浮かび上がるとこれまで一撃は重くても鈍重だったバーサーカーとは思えないくらい俊敏な動きで、横なぎに斧が振るわれて私達は吹き飛ばされる。これで、クラインさんとアスナ、私は中々痛いダメージを受けた。まずい。

 

「■■■■■■――!」

 

 にやり、とバーサーカーが嗤ったような気がする。振り上げられた斧は私目掛けて振り下ろされてきて、咄嗟に体を転がして直撃は避けるものの、衝撃だけでもHPが削られるみたい。

 

「くそ、下がれハクノン!」

 

 キリト君の声が響き、私とバーサーカーの間に割って入ってくれる。スネークバイトと呼ばれる左右からの剣の連撃を膝に叩き込み、隙を作ってくれた。けど、何故かターゲットはキリト君に移らずにその目は私を捉えたまま。次の瞬間、目の前に浮かび上がったのは新しいスキルの名前。

 

――慰むは7の花――

 

 次の瞬間、とんでもない速さで振り下ろされた斧を避けられたのは偶然でしかなかった。嫌な予感がしてその場から飛び退いたら、地面がひび割れるほどの勢いで斧が叩きつけられていたのだ。

 

「ボスのスキルを2つ見たな……そろそろ頃合じゃないか」

「でも、こんな猛攻じゃ撤退しようにも……っ」

 

 少しでもボスのターゲットを自分たちに向かせようと、攻撃を仕掛けているアスナとクラインさんにも、焦りの色が見える。

 連続して攻撃を仕掛けているのにも関わらず、目が私しか向いていないのだ。なに、サーヴァントは魔術師を感知できるってやつ?

 

「この、こっち向きやがれ!」

「■■■■■■――!!」

 

 クラインさんが半ばやけくそで石を拾い、投げつけるとその石はバーサーカーの角に当たり、悲鳴を上げる。

 その叫びは明らかに痛がっており、私たちにそれが弱点なのだと知らせたのだがどうにも高すぎる。それに、投剣スキルは趣味スキル過ぎて上げてる人間なんて殆ど居ないと言っていた。

 ……困った。

 

「兎に角、脱出を! 俺たちで持ちこたえられるなら、盾を持ったタンクをきちんと用意すれば勝てる相手だ!」

 

 キリト君の声が響くと、私達は今度こそ駆け出してアルゴさんが待つ出口から飛び出した。情報はある程度拾った、このスキルの情報があれば何とかかなるだろうと皆息を切らせて相談する。

 どれだけ走っても疲れないのに、息が上がるような気がするのって不思議。

 

「凄いじゃないカ。これなら、攻略の目処も立ちそうだナ」

 

 アルゴさんもそう声をかけてくるのだけれど、私としては今ひとつすっきりしないものを感じている。

 しきりに出てきた7と言う数字。それに、相手がサーヴァントであるのなら当然持っているであろう“宝具”に付いての情報は、きちんと得られなかった。たしかにあの攻撃は脅威ではあったものの、宝具級の威力かと聞かれたら首を傾げざるを得ないと思う。

 

「奏者よ、今は帰ろう。なに、真名は知れておるのだ。余には宝具の見当も付いた」

 

 セイバーのその言葉を受けて私達はタランの町へと戻り、集めてきた情報を伝える。その情報を元にエギルさん率いるタンク隊を多めに配置して、持久戦の構えでボス攻略を行うことになった。

 作戦結構は、明日の正午。キリト君とアスナは少し野暮用があるって言っていたため、私はフリー。

 少し早いが、体を休めることにするのだった。

 




ぶっちゃけノリでサーヴァント作ろうとしたらえらい目にあったよ!
何回wikiを行ったりきたりしたか(笑)

少しでもバーサーカーの脅威が伝われば良いのですが…それでは、また次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。