Fate/SAO それ行け、はくのんwith赤い暴君   作:蒼の涼風

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暫くお休みをいただいていましたが、最新話投稿させていただきます。
それでは、どうぞ。


Art21:たった四人の突入作戦

「それでは、ラフコフのアジトの襲撃は明日の夜0時調度に行います。大丈夫、いくら殺人者(レッド)ギルドだと言っても、彼らだって自分の命は惜しいはずだ。ぎりぎりまでHPを減らして、降参してきた奴をかたっぱしから【黒鉄宮】に送ればミッション完了、また攻略に戻れるさ!」

 

 そう言葉を締めくくったのは、聖竜連合のリンドさん。ここ最近、猛威を振るっている殺人者ギルド笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の被害が増大している。そこで攻略組から有志を募って、討伐してしまおうという話だ。

 正直なところ、彼らの作戦は不安を覚えている。それは私が【人の命を奪う】と言う行為に触れすぎていたが為の違和感なのかもしれないけれど、討伐と言いながら敵が投降することを前提としての作戦であるのが一番。

 

「もし、HPがレッドゾーンに入っても、降参しなかった場合は?」

 

 私がそんな質問をしたのがまるで意外だと言うかのように、一斉にこちらを振り向いた。

 

「奏者の疑問ももっともだ。彼奴ら全員が降参してくるわけが無い。その時になって、敵のどう動くか、考えていたほうが良いのではないか?」

 

 セイバーも後押ししてくれているんだけど、どうもリンドさんは1層でのボス戦以来相性が悪いと言うか、何かにつけて異を唱える私を良く思っていないみたい。

 今も一瞬凄い顔で私を睨んでから、すぐに笑顔を作る辺り、役者だと思う。

 

「大丈夫、HPが無くなったら死ぬのは彼らが一番良く知っている。必ず降参してくるよ。それじゃあ、明日一日準備に当ててくれ。解散」

 

 そう締めくくって、会議は終了した。時刻は20時で、今からどこかに出かけるにはすこし遅い。

 

「ハクノン、どうしたの? 凄く難しい顔してるけれど」

「アスナ……ん、いや何でもないよ。そう言えば、このラフコフ討伐、ヒースクリフさんは参加しないんだね?」

「そうね、団長は次のフロアボス攻略に向けて団のレベルの底上げを行っているわ。この層を攻略したら、いよいよ70層だもの」

 

 ぐっと拳を握っているアスナは、最近ますます綺麗になったと思う。いや、アバター自体は変わらないから、見た目の話じゃなくて、雰囲気が。

 

「フロア攻略も良いけど、キリト君の攻略具合はどうなってるのかなー?」

 

 なんてからかってみると、ボンと音がしそうなくらい真っ赤になるアスナまじ可愛い。……よし、決めた。

 

「大丈夫だよ、アスナ。全部上手くいく、私が何とかして見せるから」

 

 別れ際に軽く手を振って宿に入る。先に宿に戻っていたセイバーは、私が何を考えているのか既にお見通しと言った表情で、呆れたように笑っている。

 うん、アスナにも、キリト君にも。クラインさん、エギルさん……皆、この世界は遊びじゃなくても、せめてゲームであり続けてもらえるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の深夜23時30分、私とセイバーは会議中に開示されたラフィン・コフィンのアジト前に来ている。

 目的はひとつ、ラフィン・コフィンの討伐のために。

 

「良かったのか、奏者。今回の単独行動が知られれば、今までの比ではない位に他の攻略組の面子から嫌われることになるのかも知れないのだぞ?」

「良いんだよ、セイバー。人の命をなんとも思ってない相手と戦うんだ、そう言うのはやっぱり……そう言う戦いを生き抜いた私たちがやるのが、良いと思う」

 

 心配そうに私の顔を覗いてくる。私としては、そんな建前はどうでも良くて……もっと本音を言ってしまえば、アスナやキリト君が危険な目に遭わなければ、その方いいと思っているのもあるんだけど。

 

「奏者。そなたは時々そうやって自分を卑下する傾向があるというか、『自分は他人の命を奪った経験があるから』と、周囲と一線を引いている傾向がある。余は、それはあまり好きではない。……余が愛した奏者は、目線だけは常に前を向いて進んでいた英雄だぞ」

 

 セイバーから『英雄』と評価されたことが、なんだかこそばゆくて。私にとって、やっぱり英雄って言うのはセイバーだから。

 もう、だめだって状況で必ず手を差し伸べてくれて、助けてくれたのは他でもない暴君ネロ……その人に英雄だと称されたことが物凄く嬉しくて、誇らしい。

 

「そうだったね、ごめん。じゃあ……ここからは気分を変えよう。私はリンドさんの作戦に不安があるから単独行動を行って、ラフコフのアジトを壊滅させる。明日から当たり前に攻略が進むように」

「うむ。ならば余は奏者の往く道を切り開こう!」

 

 さあ、突入しよう。この世界に恐怖を撒き散らした恐るべき殺人集団が待ち構える巣穴へと。

 

「お、相談は終わりかい。なら、俺達も一緒に連れてけよ」

 

 ふと、そんな声が響いてきた。二人そろって後ろを振り返ると、そこに居たのは青い衣装に身を包み、赤い魔槍を片手にゆっくりと姿を現した。

 ランサー。かつて私のピンチを助けてくれたものの、それからめっきりと姿を見せなかった彼が、今になって姿を見せるなんて。

 

「どういう風の吹き回し?」

「なに、今回は俺のマスターも同じ考えだったもんで、オーダーに従っただけだ。だろ、いい加減影からの支援者じみた真似は止めりゃ良いんじゃねえの、嬢ちゃん」

 

 ランサーが声をかけた場所に居たのは、白と赤の衣装に身を包みその綺麗な金髪をツインテールに結った、懐かしく凛々しい少女。

 

「……ひさしぶり、凛」

「ええ、あなたがこの世界……と言うか、月から脱出できているとは思わなかった。また会えて嬉しいわ」

 

 血盟騎士団の参謀長、遠坂凛。彼女もやっぱり、ラフィン・コフィンを放置するべきではないと判断してこの場に来てくれていた。

 それだけでずっと心強くなる気がしたのだから、我ながら現金と言うか何と言うか。

 

「ところで、どうして凛がここに?」

「……あんたが言う? わたしがここに居る理由を……あんたが聞いちゃうんだ? ふーん、へーえ」

 

 あれ、何だか凛の眼が怖いぞ。私そんなにおかしなことを言ったのだろうか。

 

「月から脱出させてくれたのは良いけど、眼が覚めたらこんな世界に放り込まれていたんだけど? ねえ、はくのん。これって、どうして私がここに居るのか、1から10まで説明しなくても伝わるわよね?」

 

 あ、私のせいですね、はい。どうやら月からの脱出を聖杯に願ったときに、手違いがあった様でこのソードアート・オンラインの世界に私と一緒に飛ばされてしまったらしい。

 ……他にも飛ばされた人間、てかNPCもいたりとかしないよね。胡散臭い神父で最後だよね。

 

「兎に角、私とはくのん……あなたが組むんだから、これ以上最強のコンビってのもそうそう無いでしょ。ちゃちゃっとラフィン・コフィンのアジトを壊滅させて、聖竜連合の鼻持ちならない代表に恥でもかかせちゃいましょ」

「いや、そこまでは。そこまでしなくても」

 

 あはは、なんて苦笑いを浮かべてごまかそうとするものの凛はいたって本気のようです。おそらく、大規模ギルド間の定例会議で相当腹に据えかねたものがある様子。

 何があったかは教えてくれないんだけど、あの雰囲気はきっとそうに違いない。こっちに飛び火してきませんように。

 

 

「行くわよ、ランサー。殺人ギルドなんてふざけた集団、今日で終わりにしてやるんだから」

「応さ。気合入れてけよ、嬢ちゃん」

「セイバー、私たちも負けていられない。行くよ!」

「うむ、ここは大一番と言うもの。そなたの活躍の舞台、余が直々に飾りつけよう!」

 

 四者四様、それぞれに自分たちなりに気合を入れて。突入する。

 始まる、たった四人の突入作戦が。

 




ラフィン・コフィン討伐戦。
原作でのキリト君の回想ぐらいしか資料が無かったのですが、今回は大きく話しを変えて行こうかなと。

最近キリト君の出番が少ないのですが、彼ははくのんの物語の裏側で着実にハーレムフラグ建築中……はくのんと2人そろったら、ハーレムだらけでえらいことになりそうです。

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