Fate/SAO それ行け、はくのんwith赤い暴君   作:蒼の涼風

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こんばんは。
それ行けはくのん、第3話となります。
段々はくのんが暴走を始めています(笑)

それでは、どうぞ。


Art3:痩せ我慢と強がりは男の子の証

「知ってるぜ、サーヴァントシステム。まさかこんな低層で手に入れてるやつが居るなんて、思わなかったけどな」

 

 そう、そのの雰囲気を破ったのは“彼”だった。

 キリト。私よりきっと1つか2つ年下と思われるその少年が、いかにも悪ぶってますよーって顔してその場で立っていた。

「ある特殊な条件下で、フィールドボス並みのステータスを持った、通常のテイムモンスターとは比べ物にならないくらい強力な遣い魔がテイムできる。それがサーヴァントシステムさ」

 

 へー、そんなシステムあったんだ? ほへー。

 

「奏者よ、あの者の言っていることはブラフであろう。余はムーンセルの聖杯に飲み込まれたそなたを追って、ここに辿り着いた。そのようなシステムは知らぬ」

 

 ですよねー。そんな訳ないよねー。

 だからきっと、今悪ぶって注目を集めているのは、あの子の私やもしかしたら他のベータテスターって人へ悪意が行かないように、振舞ってるのか。

 やるじゃん、男の子。

 

「ベータテスター? あんな素人たちと一緒にされちゃ困るぜ。殆どはレベリングのやり方も知らない初心者さ。けど、俺は違う。俺はもっと上層で、とんでもない火力を持つサーヴァントをテイムする条件も知っているし、この先敵がどんなスキルを使ってくるかも知ってる。誰よりも先を見て、誰も知らない知識もたくさんあるのさ」

 

 煽ってる煽ってる。そんなに煽るもんだから周りの人たちは口々に、やれチーターだの、やれベータがどうだの。

 誰が言い出したのか、【ビーター】なんて造語まで飛び出す始末。

 

「ビーター! 良いなそれ、気に入ったよ。ボスのLAと一緒に俺がもらって置いてやるよ」

 

 そう高らかに宣言したキリト君は、手を軽く振って何かを操作する動きを見せると突然黒いコートを羽織った姿になった。

 わー、礼装? あれ礼装?

 コードキャスト使えるのかな、わくわく。

 

「奏者よ、こんな局面でもそんな顔ができるそなたは、やはり余と同類だな」

 

 そんな嬉しさ半分、呆れ半分って感じの声でセイバーが何か言ってるけど、気にしない。新しい物を見て心躍るのは、人の性なのです。

 

「二階の転移門は俺がアクティベートしておいてやる、おとなしく街で待ってな。ベータ時代にもよく居たんだよ。折角ボスを倒したのに、上の階の初見MOBにやられる馬鹿が」

「畜生……謝れ、謝れよ。ディアベルさんに謝れよ、ビィィタァアアア!」

 

 わざと悪ぶって響く、キリト君の声と彼を非難する剣士の慟哭。正直、私はどちらの気持ちも少し分かるから、どちらが正しくてどちらが悪いかなんてわからない。

 それでも、彼を追いかけなきゃと思ったのは、きっと自分に似たところを感じたからだろう。

 

「あの、武器貸してくれてありがとうございました。助かりました」

「かまへん。来る途中ドロップしただけやし、その剣やるわ。ジブン丸腰でどないするつもりか知らんけど、アイツ追いかけるんやったら……伝言、頼むわ」

 

 きっとこの人も、彼の意図した所を読み取ったんだろう。ガサツな印象を感じたけど、実は良い人なのかもしれない。そうだよね、一番に剣を貸しに来てくれたのもこの人だし。もやりんボールみたいな頭だけど。

 それはさて置き、もや……もとい、キバオウさんと言うらしい。彼に軽い挨拶をしたあと、キリト君が歩いて行った階段を駆け上る。

 

「まったく、奏者も物好きよな。何だ、折角また余と会えたのに、感動の再開はアレで終いか?」

「あはは……後でゆっくり、ね」

 

 当たり前のようについて来てくれるセイバーの頭を軽く撫でて、宥めてみる。よしよし。本当は、左手で疼いている痛みだとか、いきなり戦闘に巻き込まれてパニクってたりするけど、ここであの子を一人で行かせちゃいけないような気がした。

 

「――またな、アスナ。先に行ってるよ」

「ええ、すぐに追いつくわ」

 

 おっと、先客が居たみたい。あれは……アスナさん、だっけ。何だか楽しそう。そっかそっか、心配することなかったみたい。

 きっと、彼の傍には彼女が居てくれる。私の傍にセイバーが、凛が、ラニがいてくれたように。

 うん、ものの見事に私の周りには女の子しか居なかったんですけど。え、レオやシンジ?あー……うん。それはそれとして、ああいうボーイミーツガールみたいな雰囲気はいいね。顔がニヤけちゃいそう。にまにま。

 

「ハクノンさん!? いつからそこに!?」

 

 あー、見つかっちゃった。真っ赤になって慌ててるアスナさん、超可愛い。

 何あれ、ツンデレってやつ?

 

「私もキリト君に伝言預かってきたんだけど、お邪魔だったみたい?」

 

 にやにや。どうしても口元が緩んじゃう。うん……皇帝様の影響かな、何だか可愛い女の子を見ると無性に抱きしめて撫でたくなる。

 いや、ほんとにそんなことしたら、隣の暴君様のご機嫌がマッハで急降下するのは目に見えてるからしないけど。

 しないよ?

 しないんだってば。

 

「あの、ハクノンさん? それにセイバーさん、でしたっけ。ここで見たことはどうか」

「大丈夫、女の子の甘酸っぱい秘密は守るから。その代わりって行ったら何だけど、お願いしたいことが1つか2つか3つか4つ」

「いくつあるんですか」

 

 いや、いくつあるのか正直自分でも把握できてない。

 だって、異世界とりっぷなる物に巻き込まれた私は、文字通り右も左も分からない状態でさっきの修羅場だったのだ。

 

「とりあえず、順を追って話したいんだけど……それより何より、お腹が空きました。麻婆豆腐無いですか。贅沢言えば激辛」

 

 ぐぅ。そんな情けない音が私のお腹から響きましたとさ。

 

「麻婆豆腐とは行かないけれど、休憩するなら1層のトールバーナに行きましょ」

 

 ふむふむ、中世のヨーロッパ風な世界観だと感じてたけど、街の名前もそんな感じなのかな。

 

「うん、宜しく。それと、睨まないでセイバー。後でちゃんと時間とるから。涙目で睨まないの」

 

 こっちも、何とかしないといけなさそう。

 あはは、どの世界にいても私のスキル:女運の悪さEXって言うのは健在みたい。いや、私は悪くないはず。一級フラグ建築士なんて言われた事もあったけど、ちゃんと心に決めた人はいる。

 そんなこんなで!

 私達はアスナさんの案内でトールバーナという街にやってきた。街はボスを倒したって事で、皆「転移門」の前で、新しい街へ行けるようになるのを今か今かと待っているらしい。

 とりあえず入ったレストランで、食事を採りながら私の体験したことを話す。と言っても、月の聖杯戦争やら、ムーンセルやら、そう言ったことは伏せて。

 気がついたらボス戦に参加してたこと、正味何をどうしたら良いのか分かってないこと。

 やっぱりと言うか予想通りというか、訝しそうにしていたアスナさんだったけど、委員長タイプっていうのかな。しばらくの間一緒に行動することになりました。

 

「キリトくん……あの、ビーターって名乗った剣士の人と暫くパーティを組んでいたんだけど、今日解散しちゃったし。セイバーさんが強いのは今日見たし、あなたも指揮官って言うのかしら。飛ばしてる指示は割りと適格だったし」

「うむ、奏者の強みの1つだからな、その戦術眼は。奏者が読み間違えなければ、余は無傷でボスを完封することも容易い!」

 

 隣で胸を張るセイバーさん。ごめん、そこまで完璧な戦術眼なんて持ってません。と言うか高らかに宣言しないでください。

 

「とりあえずは、折れた武器の代わりになるものを探しましょうか。それは片手剣みたいだったけど、私が知ってるかぎりあなたは細剣を使ってたみたいだし……でも、手にとって見るのが一番よね」

 

 そう切り上げたアスナさんは、その足で私を武器屋に案内してくれました。ほへー、色んな武器があるんだなとキョロキョロしてる内に、何種類か見繕ってくれた武器が出てくる。

 短剣、もう1本持って【あいあむざぼーんおぶまいそーど】って呟いたところを止められました。片手剣、今ひとつ旨く刃を立てれず使いこなせない。両手剣、重くて持てませんでした。両手斧、いわずもがな。細剣、へし折れたのトラウマ。出来たら頑丈な方が良い。曲刀、さっき泣いてた男の人が持ってたやつだ。何となく止めておこう。

 そんなこんなで、新しい相棒はセイバーの意見と、振ってみたときに一番しっくり来た片手棍と盾って装備になりました。

 えーっと、【ソードアート・オンライン】なんだよね、このゲーム。

 鈍器?

 まじで?

 つまんなーい!

 




こんばんは、蒼の涼風です。
第3話、お送りいたしました。

お読みいただき、ありがとうございました。

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