Fate/SAO それ行け、はくのんwith赤い暴君 作:蒼の涼風
それ行け、はくのん。最新話を投稿させていただきます。
どれ位眠ったのだろう。窓のカーテンの隙間から、光が差し込んできている。もう朝なのかな。ん、あれ……なんだか手のひらに柔らかい物が。むにむに。
ずっと触っていたいかも。この弾力、この肌触り、ないす。
「奏者よ。その……夜這いを仕掛けてくるのならせめて、自分は起きているべきではないか? それでは余も楽しくはない」
ふと。耳元で囁かれる声には、どこか恥じらいとか照れとか混じってるように感じる。ゆっくり目を開くと、顔を赤く染めたセイバーが隣で寝ていた。そして私の手のひらはそのお胸さんに当たっていた。
「あー。おはよう、セイバー。よく眠れた?」
「あれだけ余の胸を堪能しておいて感想も無しだと!? 泣くぞ、余は泣くぞ!?」
触ってたことよりも、感想を言わないことにお叱りを受けました。だって、セイバーの胸が触り心地最高なのはよく知って……こほん。
とりあえず、もう一回おはようと伝えて頭を撫でてお茶を濁しておく。そろそろアスナも起きて来そうだし、出発するなら準備もしないといけないしね。あと、昨日寝る前に物珍しくてメニュー画面を弄ってる時に気がついた私のスキルについても、二人には相談しておかないといけない。取り敢えず、朝ごはん!
「武器熟練度が上昇しない上に、ソードスキルが使えない?」
うんうん、伝えなきゃいけないことはさらっと伝えて朝ごはん。この宿屋さんはシンプルにトーストと目玉焼きを出してくれるんだね。私はどっちかと言うとゆで卵の方が空きなんだけど、トーストに目玉焼きを乗っけて食べるのも悪くない。
「いやいやいや、ご飯食べてないで! 武器熟練度が上昇しないってどういうこと!?」
んぐ、揺さぶらないでください。のどに詰まる、トースト落としちゃう。セイバーは……うん、自分の食事に忙しいみたい。
「どうって言われても。ほら、これ……エクストラスキル【従者使役】。自らの剣となって戦うサーヴァントを従える事が出来る。サーヴァントは本来使役者が得る武器熟練度を自身の経験地として成長するって」
自分のメニューを可視モードというものに切り替えて、アスナに見せる。多分セイバーと言う存在を無理やりねじ込んだために起こったデメリットなんだろう。続いて、もうひとつのスキル画面に触れてもう一度アスナに見せる。
「それとこれ。エクストラスキル【令呪】。従者使役のスキルを持つ者は、自らのサーヴァントに対して3度限りの絶対命令権を保有する。その使い方次第では不可能を可能にすることも出来る。代償として、一切のソードスキルを使用することが出来ない……って」
読めば読むほどデメリット大きくないですか?
ちょっと運営スタッフ、そこんとこどうなのさ。
「別に、何ら問題ないではないか。余は奏者の剣であり、アートとは芸術。剣の芸術――つまり至上の芸術にして、至高の名器たる余にこそ相応しい。心配は要らぬ、
何てことはない、と言う風に告げるセイバー。口に卵が付いてなかったら格好良くて惚れちゃうところだけど。
や、もう惚れてるのかな?
ん、まあ良いか。取り敢えずナプキンで口をぬぐってあげる。
「まあ、レベルは上がるみたいだし。適材適所、かな。取り敢えず、2層に行ってみましょう」
朝食と相談を切り上げた私達は、その足で転移門へと向かい2層へ行くことにした。
うえ、転移って気持ち悪い。リターンクリスタルをアリーナで使ったときみたいな、よく分からない浮遊感。これって慣れるのかな。
一瞬の浮遊感と、光の後には今までとまた違った雰囲気の街に到着した。転移指定したアスナの話から、ここが2層の主要都市、ウルバスと言うんだろう。
「何だかもの寂しい雰囲気。BGMのせいかしら、こんなに人が多いのに」
そう呟いたアスナは、風で流される髪を押さえてケープを被りなおしていた。セイバーはと言うと、自分ならばこういった街ではもっとこう華やかな音楽を……などと、ぶつぶつと言っている。
確かに、弦楽器での明るい音楽が流れていたさっきまでいた町と、オーボエが主旋律を担当しているこの街とでは全く印象が違う。
「取り敢えず、道具屋に行きましょう。もうアルゴさんの攻略本が出回っているはずだから、今後の行動の指針にしたいの」
「分かった。あ、でも私もうお金がないんだけど……攻略本、買えるかな?」
そうなのだ、私は新調した武器と、左腕に装備したバックラー、それと幾ばくかの防御力が上がる服を購入して最低限の装備を整えたらスッカラカンなのである。
セイバーがアレほしい、これほしいと言っているのを嗜める自信もないのである。
「はは、は。大丈夫、アルゴさんは後続のプレイヤーのために、攻略本は無償で提供してくれているの。きっと、何人かのベータテスターって呼ばれてる人も協力してくれていたんだと思うけど。昨日の騒ぎでそういう協力を嫌になったテスターが何人出たか」
どこかしょんぼりとした様子のアスナが気にしているのは、やはりキリト君の事だろう。ベータテスター、その中でも一段上の存在として周囲からの敵意を集めた彼は、今どこで何をしているのだろう。なんて、三人であれやこれやと話をしながら道具屋に行き、アスナに操作方法を教えてもらいながら攻略本を受け取る。
「取り敢えず、この街周辺のMOBを狩ってみましょう? もう、最前線は違う町に移りつつあるみたいだから、他の人と経験地の取り合いになることも少ないと思うわ」
「了解。じゃあ、行こう。少しでもアスナの足を引っ張らないようにしなくちゃ」
なんて言いながら、街の外に出る。何でも、アスナが持っているウインド・フルーレというレイピアの強化素材を落とす蜂型モンスターが目当てらしい。
蜂かぁ、あんまりいい思い出がないな。確か、1回戦で初めて入ったアリーナでも、苦戦したのは蜂型だったし。
「余は何でも良いぞ。久しぶりに存分に剣が振るえると言うものだ。うむ、蜂とは言わず、中ボスクラスを相手にしても良い」
「中ボス……フィールドボスの事? その攻略はもう少し先だし、今はお互いの戦力増強を考えましょう?
そわそわと歩みを進めるセイバーの言葉に、至極生真面目に返答するアスナ。もしかして、この二人は正反対だからこそ良いコンビネーションを見せると言う関係になるのだろうか。むむ、じぇらしー。
「……ハクノンさん、あそこにいるわ」
アスナが指差した先には数匹の蜂型モンスター。てか、蜂。
私達はそれぞれに武器を取って、まず手始めに近い位置からモンスターを順番に倒していくことにした。
因みに、私が片手棍が使い方次第で意外と楽しいときが付くのに、30分もかかりませんでした。
あは、気絶するんだ。ぼこぼこ殴ってごーごー。あ、くすくす笑うんだっけ?
「奏者よ、それ以上は
む、何か嫌なことを思い出しそう。
三人でそんな他愛ない話をしながら楽しく。本当に楽しく、心から冒険と言うものを楽しめたと思うよ。
はい、全く持って話が先に進んでいません。
ここ最近現状確認と設定固めしかしていないような気がしてきました。
そろそろ、第2層での事件が起きる……かな?
それではまた、次回。