Fate/SAO それ行け、はくのんwith赤い暴君   作:蒼の涼風

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こんばんは。
はくのん7話、投稿させていただきます。


Art7:訪れる殺意、彼女の決意。

 翌日、フィールドボス【ブルバス・バウ】攻略戦。既に多くの参加メンバーが集まっており、パーティーも組まれていた。2人+αな私達はなんと言うか、あぶれ組みって感じである。

 もっとも、アスナは昨日言ったとおりウインド・ワスプ目当てのためこれといって他の人に声をかけるつもりは無いようだし、私もそこまでボスに挑みたいというつもりもない。

 セイバーやや不満そうだったけど、私の鍛錬も兼ねていると納得してくれた。それにしても大きい牛だなー。

 食べるならお肉の味が直に分かるステーキも良いけど、皆でわいわい食べるバーベキューも捨てがたい。

 

「ジブンら、もう一人はどないした? 2層来てから前線でもよう見かけんけど」

 

 そう声をかけてくれたのはキバオウさん。何だかんだ私達を気にかけてくれてるし、口は悪いけど面倒見の良い兄貴分ってとこかな?

 

「さあ、知らない。わたしもあの人も基本的にソロなの。誤解しないで」

「ほんなら、あっちに4人のパーティーがあるさかい、話通しといたろか」

「言ったでしょ、ソロだって」

 

 そうやって、気にかけてくれている。こういう人が居ると、私達あぶれ組みも場に馴染み易いのだけど、アスナは今回本当にボス攻略にはタッチしないつもりみたい。

 

「アスナ? もしかしてソロが良かった? 私邪魔?」

 

 彼女の冷たい声を聞いてしまうと、何処と無く不安になってくる。しょぼーんとしながら聞いてみるとすぐに苦笑いを浮かべた彼女が首を振って否定してくれた。

 

「ごめんなさい、そう言う意味で言ったんじゃないの。3人でがんばりましょう」

 

 ええ子や。ジーンときちゃう。なんて遊んでいると、今度はリンドさんがこっちに来た。心なしか、以前亡くなったディアベルさんって人に雰囲気が似ているような……?

 

「奏者よ、誰かに見られている。余は気に食わぬ、この感覚は」

 

 不意にセイバーが剣を抜いて、警戒モードを上げた。そう、警戒しないといけないような相手に見られている。けど、何で?

 いや、理由はいくつか想像できるんだけど、セイバーが警戒しなきゃいけないレベルの人?

 

「私達は2人で狩りに専念するからお構いなく……と言いたいところだけど!」

 

 ふと、リンドさんと話していたアスナが茂みに手を突っ込むとそこに居たのはキリト君!? わー何だか久しぶりだ。

 

「え、ええ!? 何で、隠蔽(ハイディング)スキル使ったのに!?」

「出歯ガメの現行犯。罰としてわたしの素材集め手伝いなさい」

「……! ビーター……っ」

 

 キリト君の登場で、一気にその場が騒然となる。そりゃそうだよね、あんだけ周りの敵意を集めて行ったんだから。

 さっきの視線、キリト君なのかな? セイバーに目を向けるとやれやれって感じで首を左右に振ってる。

 

「蜂担当、一人追加ね。大丈夫、牛さんに手出しはさせないから。あなた達本体がしっかりやっている間は、ね?」

 

 なんて挑発しているアスナと、居心地の悪そうなキリト君。

 

「あー……やっぱごめん。小心者の俺としては、この針のムシロはちと堪え……」

「見くびらないで。仲間と思われるのが嫌なら、最初から引きずり出したりしないわよ。あなたがSAOのプロなら、女子校育ちのわたしは心理戦のプロなんだから。キリト君が何を考えているかなんて簡単に分かるわ」

 

 何これ、にまにますれば良い?

 それともリア充爆発しろって言えば良い? 何となく、面白いような面白くないような。

 

「うむ、そなた達2人とももう爆発するが良い! 青春・葛藤大いに結構、2人まとめて余のハレムに加えよう!」

 

 何言ってやがりますか、ここの暴君様はー!?

 見てよほら、不思議そうな顔してこっち見てるし。というか、いい加減始めようよ。

 

 

 

 結局、フィールドボス戦が開始されたのはその30分程後。

 順調、うん。本当に順調だった。キバオウさんとリンドさんの部隊の連携が少し悪くて、両方とも自分達を標的にさせようとヘイトの奪い合いをするくらい。

かつて、あの場所で【死】を撒き散らした彼らが現れたことに比べれば。

 

「ケヒャ、ケヒャヒャヒャ。ゴチソウ、イッパイダァ」

 

 心底、ぞくりとくるこの声。

 いやいや、そんな馬鹿なと思って振り向いた先に居たのは、ピエロを髣髴とさせるどこかのバーガーチェーン店のマスコットみたいな衣装を身に纏った()()と、巨大な槍を持った漆黒の男性。

 

「……そん、な」

 

 思わず、喉が引きつる。あなた達は死んだはず。そんな言葉が漏れそうになる。

 そう、そこには間違いなく、私がこの手で殺した二人がいた。ランルー君と、そのサーヴァント【ランサー】が。

 

「久しいな小娘! 貴様のセイバーに斬り捨てられたこの傷、まだ疼く。だがしかし、神は今一度我が妻に、人を愛する機会を与えたもうた!」

 

 嫌な汗が噴き出る。全員を逃がさないと。アレは、ただの人間が敵う相手じゃない。

 

「おいおい、何なんだよアンタ。今更合流して、経験値でも分けてもらおうって……え?」

 

 リンドさんの取り巻きの一人がそう詰め寄った次の瞬間、その体は槍で貫かれ、一瞬にしてガラス片が砕け散るように消滅した。それは紛れも無く、一人の命が奪われた瞬間だった。

 

「消エチャッタ、消エチャッタ。生キタママ食ベナイト」

 

 ケタケタと笑う、ピエロ。ランサーは無造作に槍を構えると、呆気に取られているリンドさんにその切っ先を向けた。

 

「……! セイバー!」

「任せておけ、奏者よ! 未だ迷いを捨てられずに、このような所まで贄を求めるか、ランサーのマスター!」

 

 振り下ろされた槍を、渾身の一撃でセイバーが弾き飛ばす。

 すぐさま、私もセイバーの傍に駆け寄って、迎撃体制を整える。

 

「ニエナンテイラナイ、ゴチソウ! オ腹ガスイタ、食ベルノダ!」

 

 決着が付いたその瞬間まで、その空腹感に苛まれ続けたランルー君。その空腹感は、決して満たすことを認めちゃいけない。

 

「ハクノン、さん?」

 

 どこか不安そうに私に視線を向けてくるアスナと、キリト君。上手く笑えたかな、私。

 

「大丈夫、アスナ。キリト君、アスナをお願い……これは、決闘なんて生易しいものじゃない。ゲームですらない。君達は見ちゃいけない、殺し合いだよ」

 

 ああ。アスナと過ごした数日間、本当に楽しかった。でも、この後きっと話さなきゃいけなくなるだろう。きっと、私を見る目も変わるだろう。

 でも、目の前の【死】が、皆を狙うと言うなら。私は立ち止まるわけにはいかない。怖い、数秒後に訪れる死の気配が。それでも、臆病であっても、蛮勇であれ。仲間を、守るんだ。

 

「あなたの相手は私達だよ、ランサー。セイバー、お願い。皆を守るんだ!」

「うむ! さあ、奏者よ弦を執れ。そなたの指揮、久方ぶりに堪能させてもらうぞ!」

 

 




はい、ブルバス・バウ攻略戦と見せかけての、彼女の登場回でした。
私はどうしても凛を見捨てられず、EXTRAは凛ルートばかり通っていたからか……かなり印象深い主従なんですよね、この2人。

それでは、また次回。

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