フーと散歩   作:水霧

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おまけ

「ねぇ」

「なんだい?」

「本当にあんなの受けていいの?」

「むしろ喜んで引き受けるね」

「だって滞在するのは三日間だけって決めてたじゃないか」

「そうだね」

「いや、そうだねって話が終了しちゃってるよ」

「じゃあこういうことにしよう。新たに三日間滞在し直すってことで」

「なにその裏技っ」

「何事にも例外はあるんだよ××××」

「ただ報酬に釣られただけでしょ? カッコよく言わないでよ」

「それより見て。すごいことになってる」

「話そらした……」

 謎の旅人と謎の乗り物(?)はとある国を訪れていた。硬そうな城壁を囲い、中にはみっちりと硬そうな住宅が並ぶ。空き地というものがなく、道というのは家が作るものだ、とも言いたげに敷き詰められている。

 そんな場所に悪臭が(ただよ)っている。凄まじい硝煙(しょうえん)の臭いと動物的な生々しい臭い。できたてホヤホヤの焼肉の悪臭が充満していた。

 臭いだけではない。兵士たちが黒ずみになった何かをせっせと片付けている。まるで洗脳されているかのように、機械的に、当たり前のように。

「すごかったよね。内乱を第三者として傍観する気分はどうだった?」

「特に何も。痛そうだなぁとか、あの弾丸はどんな仕組みかなとか」

「冷血人間にもほどがあるよ」

「そうかもしれないね」

「“かも”じゃなくて“そう”なのっ」

「あ、(かも)料理とかもいいね。どんなおもてなしなんだろう」

「また話をそらす……」

 旅人は乗り物を押して散策していた。

「おい」

 誰かが話しかけてきた。

「貴様、脚に付けているものは何だ?」

「護身用の武器です」

 緑の制服を着た男だった。

 旅人は普通に返答する。

「この国では武器の携帯は警察と王族およびその関係者にしか許されぬ。銃刀法違反で連行する」

「あぁ、ボクはこういうものです」

 旅人は一枚の紙切れを男に渡した。

「……!」

 顔色が一変した。そしてなぜか敬礼した。

「し、失礼しましたっ! どうかお許しを……!」

「いいですよ。旅人は怪しい人が多いですから」

 男は深々と頭を下げ、その場を立ち去った。

「これすごいね」

「うん。警備隊隊長との血判(けっぱん)付き契約書がこんな効力を示すとは。法律を利用したものが味わえる優越感ってやつだね」

「いや、ボクはそこまで思ってないよ。身分証明として出しただけだし」

「あれ、さっきまであんな冷めてたのに」

「冷めてないよ」

 旅人はさらに歩き出した。

「この国はとても犯罪に厳しい国で、ちょっとした犯罪でも死刑にするみたいだよ。中には“簡略的死刑”というのがあるみたい」

「なにそれ」

「あ」

 旅人が視線を移した。そこは長蛇の列を成している店の入口だった。最前列で男と女が言い争いをしている。そして女が男にビンタをかました。

 それを遠目で見ていると、

「なんか来た」

 先ほどの緑の制服の男がやって来た。女は違う違う! と叫びながら連行される。とは言っても、十数メートルも離れていないところで解放される。次の瞬間、

「お」

 ぱん。

 おもちゃの鉄砲のような、軽い銃声がした。女は一瞬硬直し、その場に倒れ込んだ。よく見ると額に穴が空いている。

「女子供にも容赦ないんだねぇ」

「ある意味男女平等だね」

 旅人は散策を続ける。

「三日間いたけど、あんなことはなかったのなぁ」

「そりゃみんな死にたくないさ。ちょっと小突いただけで風穴空けられちゃ、たまったもんじゃない」

「確かに」

「だから××も毎朝ぼくを小突くのはダメだからね」

「じゃあ××××は豚とか注射が嫌いなんだーとか馬鹿にしないでよね。名誉毀損(めいよきそん)だよ」

「なんだよそれー!」

「お互いがお互いに犯罪すると、罪が相殺されるって言ってたよ」

「なんかずるいっ」

 仲良く(?)散策を続ける。

「そういえば、依頼はいつやるの××? もうこの国は散策し終えたし、必要なものはそろえたし」

「今からするのも時間が良くない。けっこう離れた所にいるからね。だいたい三時間、ってところかな」

「あぁ、もう夕方になっちゃうかー」

「うん。もう一泊してから出発する。そう伝えてある」

「ただ日にち稼いで美味しいものいっぱい食べようって魂胆(こんたん)じゃないよね××?」

「………………そ、そんなことないよ」

「今の間はなに?」

「あぁいや……とにかく引き受けたからには達成しないとね」

「そだね。契約不履行・任務失敗も死刑の対象だからね」

「……」

「あれ、もしかして気がつかなかったの? てっきり把握してるかと」

「……」

「こりゃやっちまったね××。“航海先にあべしっ”だね」

「もうむちゃくちゃだよ。とにかく、時間なんて言ってられない。さっさと探しに行こうか」

「はいよ」

 謎の旅人たちは国を出ていった。

 

 

 




 またも会いましたね、水霧です。このネット小説、本で言う一巻二巻が繋がっているので、またお前か! と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
 いかがだったでしょうか? 改めて見ると、“まもるとこ”がダントツで長かったですね。もう読んでられるか! ということで飛ばされた方も少なくないかも(汗)
 この章、『キノの旅』の雰囲気から遠ざかっているような感じがしました。次章ではそれに戻していくような内容になると思いますので、お楽しみあれ。
 ここで登場した“ハイル”は一応新キャラです。原作『キノの旅』でも主人公以外に登場しましたが、そんな感じです。今後よろしくどうぞです(笑)
 『キノの旅』といえば、“きびしいとこ”や“おまけ”についに登場しましたね。例の……ごっほん。ネタバレは好きでないので詳しくは話しませんが、ご期待通りになるかと。というより、目次でバレバレやないかーい! こちらもお楽しみに!
 ちなみにこの“あとがき”も改訂しております。悪しからず。
 それでは“あとがき”もここまで。次章も楽しんでくださいね。ありがとございました!


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