特に違和感のない、普通の草原。ほどほどに晴れていて、日差しが暖かい。そんなところで、
「うーん……」
青年は唸っていた。
「ふぅ……」
何か考えているようだった。
黒いセーターに黒いデニム、黒いスニーカーを履いていた。セーターにはフードが付いていて、後ろに垂れ下げている。荷物は黒いリュックとウェストポーチが二つだ。リュックは青年の脇に置かれ、ポーチはセーターの下に巻かれている。
「どうしますか?」
女の“声”。だが、明らかに青年のものではない。クールな声をしていた。
「でももし……」
「それは承知の上です。しかし、こうして悩んではや二時間も経過しています。いくら優柔不断とはいえ、悩みすぎです」
「フーは見てるだけだからいいじゃん……。オレは死ぬかもしれないんだよ?」
“フー”と呼ばれた女の“声”は、
「確かにそうですが、何か行動しなければ何も始まりませんよ?」
「言いたいことは分かるんだけど……」
呆れていた。
「無視して再出発しませんか?」
「だって気になるんだ……」
青年の足元には、一つの箱があった。プレゼント用なのか可愛くラッピングされている。開けるには、リボンやら包装紙を取り除く必要がある。
「ダメ男、このやり取りだけで二時間も経過していることを自覚してください」
“ダメ男”という青年は、うろうろしていた。
「未開封の物を貰うと、無性に中身が気になる現象ですね」
「ただの作り話だと思ってたんだけどな……うーん」
ダメ男が気になるのは中身だけではない。なぜこの場所にあるのか、どんな目的で? いつから存在していたのか……など、深みにはまっていく。
「ではダメ男、こういうのはどうでしょう?」
「? 名案でもあるのか?」
「謎掛けで面白い方が決めることにしましょう。ちなみに採点はこちらで投票を集います」
「なんだよ、新しい挑戦か? 別にいいけどね」
「では、“ダメ男”と掛けまして“ギャンブルを断れない”とときます」
「その心は?」
「どちらも頭の中に“脳”が無いでしょう」
「……」
「フーっちです」
「そこまでマネんでいいっ」
「どうです?」
「“脳みそ”と“NO”を掛けたわけか」
「はい。点数は……三十点! うーん、なかなか厳しいですね」
「情緒がないし、オレを貶しているとしか思えない」
「そうですよ。でも、そこまで言うなら、ダメ男はできますよね? 情緒があって幽玄で、心に
「お約束だな。……そうだなぁ……“ゲリラ豪雨”と掛けまして“フー”ととく」
「その心は?」
「どちらも“いきなり降る”でしょう」
「三点」
「ダメ男っちで、って採点早いなおいっ」
「“雨が降る”のと“話をフる”ということはすぐに予想がついたらしいです。なので三点です」
「……厳しすぎるわ。しかも、フーが言ってるような意見だし」
「ともかく、これは私の勝ちですね。さぁ、開けてください」
「納得できないけど、仕方ない……」
しぶしぶダメ男は従った。するするとリボンを解き、丁寧にラッピングを外していく。
「どきどきしますね」
「そうだな。ここまで緊張するのは久しぶりだよ」
「どことなく力が入りますよね」
「あぁ。戦ってるわけじゃない、いや……闘ってるか……」
「ダメ男、慎重に開けるのですよ?」
「……分かった」
震える指が箱の
そして、中が露わになった。
「ん?」
「これは、“手紙”ですね」
そこには、一枚の手紙が入っていた。
「こんな箱に手紙が一枚だけ? どんなプレゼントだよっ」
「ダメ男、ツッコミは後にして手紙を確認しましょうよ。まだ気を抜いてはいけませんよ」
「そ、そうだな。……よし」
ダメ男は念のため、リュックからトングを取り出してそれを使って手紙を、
「うわぁぁっ!」
「ダメ男!」
取り出せなかった。
反射的に箱を投げ捨ててしまった。手紙は目の前に落ちている。どうにか見ることはできるようだ。
「危なかった……。これで取ろうとしなかったら……」
「まさか、こんな仕掛けがあったなんて、恐怖です」
箱の中には、おびただしい数の針が箱の中へと飛び出していた。どんな仕組みなのかは分からないが、罠だった。
ダメ男は念のために、針地獄の箱から数十メートル離れた。
息を整える。
「ふぅ……」
「さぁ、手紙を見ましょう」
「……」
無言で
「え?」
「えっ?」
そこには、こう記されていた。
[“なにかあるとこ”はここでおわり! ここからは“あとがき”のはじまりだよ!]
「……」
「これはもしや、」
「オレはこんなことのために何時間も迷ってたってことかよ……」
「ダメ男?」
「ふざけやがってぇぇ! 今まで悩んでたオレの時間と汗と涙とその他諸々返せっ!」
「お疲れ様でした」
「こんなので片手がなくなってたかもしれないんだぞ! こんなことなら、開けなきゃよかったわ!」
「そういうことを言ってはいけませんよ、ダメ男。手紙の“差出人”の意図を探らないと、どうにもなりません」
「はぁ……早く“あとがき”いけよ……。緊張が緩んで疲れた……」
ダメ男が寝転がって空を眺めるも、“あとがき”が割り込んでくる。
どうも、水霧です。まずは、本作を読んでいただいている方々にお礼を申し上げます。どうもありがとうございます。(改訂済みです)
本章はいかがでしたか? と言ってもまだ二話しか読まれてないですよね(笑)
このアイデアも水霧のではないので悪しからず。もし気になるようでしたら原作『キノの旅』を読まれることをお勧めします(宣伝になってしまいました)。
本章は少し丁寧に仕上げたつもりです。もちろんいつも推敲や改稿は欠かしていないのですが、それでも読み直してみると、誤字脱字のオンパレード……。皆様に大変申しわけなく思っています……。
本章の話の流れのままでお話ししますが、スペシャルストーリーを第七話で付けました。このスペシャルの意味するところは……もうお分かりですよね。
短めですが、“あとがき”の残りは後ほどへ。ここからも楽しんでいってくださいね。