とある街にあるとある真っ白な施設。それほど大規模なものではないが、最新の防衛システムと防災システムを兼ね備えた施設だ。
一階分の高さしか無いが、横に大きく広がっている。ゲートでは警備員が常駐し、車やら人間やらを区別していた。中身を露わにしないために窓は最小限に、そして出入口は鉄の扉という徹底ぶり。
中に入ると白衣を着た人間でごった返していた。性別年齢は関係なく、老若男女が溢れていた。中には子供までいた。
ある一部のグループの会話を覗かせてもらう。
「だから、能力開花のプロセスでは危機的状況が必須だって言ってるでしょ?」
「それはあくまでも一つの要素に過ぎないだろ? 高度落下実験でも証明されなかったじゃないか」
「あれは命が保証されてるからよっ。本当に死ぬかもしれないってくらいに追い詰めないと意味が無いわっ」
「君はなかなかの強情っ張りだなあ」
と、専門分野の議論が交わされているようだ。
さらにもう一つのグループも覗いてみる。
「こんにちは。私はション研究員です。早速ですが、あなたはここで三日間の研究に協力してくださるのですね?」
「あぁ。ちょっと楽しそうに見えたから」
「ありがとうございます。では、ここでは本名を名乗ることが禁じられています。……そうですね。勝手ながら、あなたは“スール”と名乗っていただきます。よろしいですか?」
「いいよ」
「ではスールさん、今回の実験について説明をさせていただきます」
「うん」
「まず、三つの実験を行いたいと思います。本日の午前中にこちらが用意したテスト三教科を受けていただきます」
「テスト?」
「はい。外国語分野、数学分野、IQテストの三つです。スールさんは外国人のために、外国語はスールさんの母国語で実施したいと思います」
「分かった」
「そして午後から体力測定を行います。全部で八項目です。握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、1500m走、50m走、立ち幅跳び、ハンドボール投げをします」
「うーんと……握力と上体起こしと……なんだっけ?」
「あ、大丈夫ですよ。後ほど説明用紙をお渡ししますので」
「そうなの? 助かるよ」
「いえいえ。……そして明日の午前中に実戦をします」
「実戦?」
「はい。こちらで対戦相手を用意し、殺し合いを意識した実戦を行います」
「はぁ~。実験なのにそこまでするんだ……。殺しちゃったらどうすんだ?」
「それは誰も責任に問われません。対戦相手もこちらできちんと契約をした人間ですので」
「うーん。……まぁ頑張るよ」
「ありがとうございます。で、明日の午後は軽くインタビューに協力していただきたいのです。実験の感想と実験結果の小話を少し……」
「いいよ。で、三日目はなんなんだ?」
「三日目はお休みです。街の観光や施設の見学などご自由にどうぞ。ただ、宿泊はこの施設でお願いします。最後に誓約書など書類を記入していただきたいので」
「つまり、出発は四日目ってことか」
「そういうことになります」
「分かった。協力するよ」
「ありがとうございます。早速ですが、実験を行いたいと思います。最初はテストですが、外国語をテストするにあたって、母国語を伺いたいのですが……」
「それならこの国の言葉でいいよ」
「え?」
「ただ、一つだけお願いがあるんだ」
「なんでしょう?」
「翻訳機の使用を許可してほしい。オレの国の言葉は多分マイナー過ぎて知らないと思うんだ」
「そんなことはありえません。我が研究所では全ての国の言語を把握しております」
「じゃあ翻訳機の準備してくれ。オレが話すから」
「……分かりました。少々お待ちを…………」
「……」
「……お待たせしました。お願いします」
「×○△□%&$#♭○○×%□」
「…………? 変ですね。何も表示されない……」
「△=¥#×□」
「…………表示しない……」
「な? 国によっては外部と全く連絡しなかったり他国の言葉を使ったりするんだ。自分の出身国を悟られないために」
「そうなんですか。……分かりました。翻訳機の使用を許可します」
「ありがと」
「では、実験に移りましょうか。……その黒いのは……?」
「これ? さすがに翻訳機の音声を垂れ流しにするのは、ちょっと恥ずかしいだろ? だからイヤホンで繋いでるんだ」
「そうでしたか。翻訳機ならこちらでお貸ししますが」
「操作する時間をできるだけ省きたいんだ。慣れてないのでやると、絶対に焦るからな。その時間はテストには全く関係ないだろ? 自前だからカンニングに注意したいんだろうけど、オレ一人なら全く意味ないし」
「確かに。それに、ここでは妨害電波を流していて、通信はできない仕組みになっています。外部との連絡も不可能です」
「それなら全く問題ないな」
「はい。……では、テストをしましょう。部屋を案内します……」
「はいよ」
「……」
「テストか……久しぶりだな……」
〈そうですね。しかし、あなたが意外とずるい男だとは思いもしませんでした〉
「基本的にはオレがやる……」
〈数学分野はこちらに任せてください。あなたの鳥頭では数式すら書けないとは思いますが〉
「うっさい……」
黒い男は白衣を着た女に案内され、どこかの部屋に入室していった。
あなたとの再会を大切に……水霧です。なんか急にすべった感満点ですみません。(改訂済みです)
“なにかあるとこ”で“あとがき”は終わっていますが、やはり水霧は小言が言いたくて仕方がありません。今回もぜひお付き合いいただきたく思います! イヤとは言わせませんよ! ……本当につまらんという方はそのまま下へお進みください……。
本章もいろいろと挑戦してみました。“なにかあるとこ”でのまさかの“あとがき”の差し込み。そして、“はかるとこ”でのダメ男のテスト、これは水霧がとある友人に話を聞いて作り上げたものです。医学系の論文を、水霧が頑張って練り上げてみました。水霧はその分野ではちんぷんかんぷんなのですが、やってみたくてやっちゃいました(笑)
ちなみに当時、友人曰く、これじゃ恥ずかしくて論文投稿できないよ、と言われました。こうなりゃ強行突破じゃい! というわけで、未熟な研究者という強引な設定でねじ込んでみました。
“たしゅたようなとこ”では、ダメ男の意味深な発言で終わっています。これもきちんとした理由があるのですが、ネタバレを下に記しておきました。知りたい方はそのまま下へお願いします。
シメに“はこにわのようなとこ”です。ハイルが登場した第二章第六話“まもるとこ”に迫る長さでした。このお話は同国に長く滞在してみようという試みから、文字数まで長くなっちゃいました。ちょっと如何わしい表現も挑戦しています。
また“――まで”では原作『キノの旅』にあったお話を、ハイルに行かせてみました。このお話は意外と書きやすかったです。お姉さんとかお姉さんとかお姉さんとか、取っ掛かりが多かったからです。あ、それと、このお話は水霧の妄想で成り立っています。詳しい内容は『キノの旅』をお買い求めていただきたく思います。これも水霧が好きなお話です。
ちなみに、遠い昔のことですが、第一章にあった“たすうけつのくに”も好きです。こちらも同様に『キノの旅』に登場しています。
さて、“あとがき”(水霧の小言)もこのくらいにしますね。お付き合いいただき、ありがとございました! 次章もお楽しみくださいね。
――ネタバレ――
お気付きの方もいらっしゃると思いますが、“たしゅたようなとこ”でダメ男が面白いと感じた点、それは“たしゅ”がよく使われていることでした。
“たしゅ”がよく使われる→“タシュ”を多く使用→タシュ多用。つまり、“多種多様”で“タシュ多用”というダジャレに、ダメ男は面白いと感じたのでした。なんか稚拙なことでごめんなさい(笑)
これからももっと面白いアイデアを入れたいと思います。ご覧いただき、ありがとうございました!
――ネタバレ以上です――