半電脳体となってしまった少年が電脳探偵となってしばらくしたある日。
とある交差点で行われた儀式に惹かれるようにして、とある少年が再び降り立つ。

かつて異世界での生存闘争を生き残り、世界を救い、歴史書を記したと言っても過言ではないその少年。

その少年が電脳探偵と出会う時、物語が進化する。
これは過去と未来が交わる物語。




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注意。
これは自分が書いている小説の息抜きで作成した小説です。
長編のプロローグを意識していますが、同時投稿したゼヴォの小説や本来書いている小説もあるので、続きを書くかどうかは未定となります。


プロローグ

――頼……す……イグド……私……代わりに……調……――

 

 奇妙な声が聞こえる。

 男性のような、女性のような。いや、そもそもが声などという音ではなく、まるで文字が直接脳に刻み込まれてくるかのような。

 そんな、不思議な現象。だが、それでも。それは確かに声だった。

 

「あれ?」

 

 そんな声が聞こえたのと同時に、彼は目を覚まして――直後、感じた悪寒と背後で鳴った甲高い音、そしていたるところから上がった悲鳴を前にして、その場から飛びずさった。

 急にその場からバックステップで飛びず去るという、傍から見れば“こいつ何してるんだ”的行動だ。だが、そんな彼を見ておかしいと思う人はいなかった。

 なぜなら――。

 

「危なかった……!」

 

 ――なぜなら、一瞬後に彼のいた場所を大型トラックが通り過ぎていたのだから。

 つまり状況を説明するのならば、一瞬前まで彼がいたのは道路のど真ん中ということで、あのままであったら彼はトラックに轢かれていたということだ。

 見れば、数人の男女も同じような状況になっていた。

 道路の真ん中で茫然自失するのが流行っているのだろうか、とそう思って彼は首を振った。道路、それも渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で茫然自失とするのが流行りなど、ありえないからだ。

 ともあれ、命の危機は去った。やれやれと一息ついて――彼は、「ん?」と疑問に首を傾げていた。

 

「いやいやいやいや、なんで!?」

 

 周りの人々が奇妙な目で自分を見てくることにも気に止めず、彼は混乱のままに叫ぶ。一瞬前に道路の真ん中で茫然自失していたこともあって、ともすればただの変質者だ。

 だが、他人にどれほど奇異の目で見られようと、そのことに気づけないくらいに彼は混乱していた。

 まあ、それも彼の事情を知れば納得するだろう。誰だって、()()()()()()()()()()()()、混乱もする。しかも――。

 

「小さい……!」

 

 ――しかも、彼の体は十歳かそこらまで若返っていたのだから。確かに若返りと言えば若返りだが、それにしても限度がある。

 なぜこうなったと彼は頭を抱えるが、いくら考えてもわからなかった。

 ついでとばかりに、記憶も手繰ってみるが、それらしき記憶は見つからない――というか、前後の記憶があやふやだった。

 小学生の時、かの世界を旅したことは覚えている。それ以外にも、さまざまな記憶がある。けれど、今の自分が何歳で、一昨日昨日と何をしていたのか。そんな直前の記憶が彼には思い出せない。

 そうやってかなりの時間、混乱の最中にあった彼だが、そろそろ彼は自分がどう見えるか自覚するべきである。

 小学生くらいの子供が、この大都市のど真ん中で混乱していたら、周りからどう見られるのか。少し考えればわかることだ。

 

「どうして……!」

「お前さんちょいといいか?」

 

 そうして、混乱の最中にあった彼だが――その混乱は、後ろから肩を叩いて話しかけてくる一人の男によって中断されることになった。

 思いもよらない方向からの刺激に、彼はビクッと肩を震わせて振り向く。そこにいたのは、軽く着崩したスーツに、深緑色のコートとベレー帽を被った男性だった。

 

「俺ぁこういうもんだ」

 

 そう言って男が見せたのは、警察手帳。又吉吾郎と書かれたそれは、この上ない身分の証明となる物品だ。役職も合わせると又吉警部ということになる。

 又吉警部が彼に話しかけてきたのは、言わずもがな、小学生くらいの少年が挙動不審だったからである。まあ、犯罪を未然に防ぐという意識と親切心からの行動だ。

 話しかけられたのはいいが、彼もどう自分のことを話していいのかわからなかった。いつの間にか交差点の真ん中にいて轢かれそうになり、しかも若返っていて、記憶も微妙にあやふやです。誰もこんなことを信じてはくれないだろう。

 とはいえ。黙っていては不審に思われるだけだ。

 

「名前は?」

「オレは……堂本コータ」

 

 そうして、彼は自分の名前を名乗る。堂本コータ。それが彼の名前だった。

 コータはその後も又吉警部の質問に答えていくのだが――どうしても、年齢やその他諸々答えられない質問が存在していた。

 そんなコータのことを見て、何か特殊な事情がある、と又吉警部は察したのだろう。とはいえ、だからといってコータを見逃すことは職業上できるわけがない。よって――彼が選択したのは、とりあえず身柄を預かるということだった。

 

「お前さん、ちょいと着いて来てもらうぞ。何、悪いようにはせんから」

「……わかりました」

 

 警察から逃げられるはずもないし、逃げてもいいことはない。だからこそ、コータは又吉警部についていくことにする。その中で、自分の見たこともない携帯を何度も又吉警部が使っていたのが、コータの印象に残っていた。

 そして、車に乗せられてしばらくして。

 何度目になるかもわからない連絡を又吉警部が受け取った直後。車の進路が変化した。先ほどまでとは違う方向へと進んでいったのだ。

 

「……どこへ行くんですか?」

「署まで行こうとしたんだがな。お前さんは相当変わった事情があるみてぇだ。だから……こういう時に頼りがいがある場所を頼ることにした」

「……?頼りがいのある場所?」

 

 そして、途中にあったコインパーキングに車を停めて、又吉警部はコータを連れて歩いて行く。

 やがて着いたのは、中野ブロードウェイという場所。いくつもの店が集まる大型の建物である。コータは来たことがなかったが、その存在だけは知っていた。

 だが、知っているからこそ解せない。又吉警部の言う、“こういう時に頼りがいのある場所”とやらがこんな商店の並ぶ場所にあるとは、コータにはとても思えなかったのだ。

 このまま着いていってもいいものか。そんな疑惑を覚えながらも、コータは又吉警部についていく。やがてたどり着いたのは、“暮海探偵事務所”と書かれた場所だった。

 

「探偵事務所?」

「おう、そうだ。ここの探偵とはちょいと知り合いでな。それなりに頼りにしてるのさ」

「……普通、警察と探偵ってウマが合わないのでは?」

「ハッハッハ!俺ァ見ての通りはみ出し者でな。じゃなきゃ、お前さんの言う通りさ」

 

 直後、複数人の学生らしき男女が扉から出てくる。おそらくは客なのだろう。どうやら、この事務所は探偵にありがちな客不足とは無縁のようだった。

 去っていくその学生たちを見送って、コータに入口で待つように告げてから、又吉警部は探偵事務所の中に入っていく。

 手持ち無沙汰になってしまったコータ。だからかもしれない。少し好奇心が働いてしまった。扉に耳をつけて、中の会話を聞く。まあ、傍から見ているとだいぶ怪しい。コータの見た目が小学生相当でなければ、きっと通報されていただろう。とはいえ、流石に会話を聞き取ることはできるはずもなかったのだが。

 さて、コータが無駄な努力をしている一方で、部屋の中へと入った又吉警部は、中で寛いでいた金髪の女性と、高校生くらいの赤髪の少年に会っていた。

 

「ん?又吉警部!こんにちは」

「おう、何やら客が来てたみたいだな。キョウちゃん、今いいかい?」

「おや、おじさん。依頼ですか?ええ、いいですよ」

 

 又吉警部とキョウちゃんと呼ばれた金髪の女性はよほど仲が良いらしい。あだ名で呼び合っていることや、お互いの口調からもそれがわかる。

 探偵事務所の部屋は、テレビやパソコンのような日常家電もあれば、ホワイトボードや相当数のファイル資料があったりと、一見するとごちゃごちゃした感じだ。

 だが、部屋の真ん中に置かれた向かい合ったソファーと机だけは綺麗である。そのことからも、そのソファーと机が来客用であることが伺える。

 

「おう、ありがとな。依頼内容を簡単に言うと、少年を一人預かって欲しいんだよ」

「……ウチは託児所ではありませんよ。おじさん。それに話ならどうぞ……座ってください」

「少年といっても……ワケありでな。こっちにまわす方がいいと思った」

「ワケあり?」

「そうだ。本人に聞かせるのも忍びないんでな」

 

 又吉警部の口調からして、そのワケは本人も知らないということなのだろう。本人も知らないワケ有り。正直言って、金髪の女性も興味をそそられた。

 だからこそ、二人に他言無用の念を押して、又吉警部は話し出した。

 

「怪しいと思ったんで、そいつの名前をちょいと調べてもらったんだよ。そしたら……」

「そしたら?」

「……そいつ、()()()()んだよ。数年前に老衰で」

「老衰?少年ではなかったのですか?……いや、だとしたら偽名を騙っているという線も……」

「写真を送ってもらったが、そいつ自体は数年前に死んだ奴と瓜二つなんだよ」

「でしたら、孫とか……」

「いや、()()だ。信じられない話だが、俺の勘がそう言っている」

 

 勘。普通ならば信じるに値しないものだ。いくらなんでも、死人が若返って生き返るなどありえないのだから。だが、それでも又吉警部はそれを信じる気になった。

 だからこそ、ここを頼ってきたのだ。

 

「……ふむ。それは気になりますね。それで?その本人はどこに?」

「この話を聞かせていいものか悩んだんでな。扉の前に待たせてある。ちょっと待ってろ。今連れてくるから」

「いえ、それには及びませんよ。おい、君の出番だぞ。助手くん」

「はいはい、わかりましたよ」

 

 金髪の女性に助手くんと呼ばれた赤髪の少年は、やれやれといった様子でドアの下まで向かっていく。どうやら、この少年は顎で使われることになれているようだった。

 ドアの前までたどり着いて少年は、そのままにドアを開ける。その瞬間に――ゴン、と鈍い衝撃がドアの取っ手を持つ少年の手に伝わってきた。慌てた少年がドアの向こうを見る。そこにはコータが頭を抑えてうずくまっていた。

 

「ちょ、ごめん!大丈夫!?」

「いや、オレも馬鹿なことしてた……!いてぇ!」

 

 まあ、何があったかは誰だって察することができるだろう。コータは盗み聞きなどできないのにずっと扉に張り付いていて、少年が開けたドアに頭をぶつけた。それだけのことである。

 頭を摩るコータ。まあ、コータの自業自得ではあるのだが、そんなことを少年が知るはずもない。少年には哀れなことだが、この状況では少年の方が悪いと見られても仕方がなかった。

 この場に人が通らず、現場を見られなかったのは少年にとっても、コータにとっても幸いなことだったと言えるだろう。

 とはいえ。いつまで経ってもコータを連れてこない少年に、中にいた又吉警部と金髪の女性も不審がった。しかも、少年がずっとドアのところにいるのだから、なおのこと。

 だから、二人が何があったのかを把握するために、少年たちのもとにやって来たのは、当然の帰結だった。

 

「遅いぞ、依頼人を待たせるな」

「え?あ、いや……」

「おい、頭をぶつけたのか?お前さん、ドジ踏んだなぁ……ああ、こいつがさっき言ってた――」

「っ!?……コータ?」

「え?」

 

 又吉警部が紹介するよりも早く。金髪の女性が呆然と呟いた。コータ、と。確かに言った。

 

「なんだ、知り合いだったのか?」

「いや、こんな美人知り合いにはいないよ」

「どういうことだ?別人?いや、しかし……」

「杏子さん?と、とりあえず中へ……」

「あ、ああ。そうだな」

 

 赤髪の少年の言葉で、中に迎え入れられたコータだったが、どうにも落ち着かなかった。理由は、先ほどからチラチラとコータのことを金髪の女性が見てくるからだ。

 一応、コータと金髪の女性は初対面である。初対面のはずである。であるのに、どこか懐かしい感じがしたり、名前を知られていたり。そんな不思議な感覚が、コータを戸惑わせていた。

 

「と、とりあえずようこそ、暮海探偵事務所へ。私はここの所長の暮海杏子だ」

「ボクは助手の相羽タクミ。よろしく」

「オレは堂本コータ」

「ふむ……それでだ、コータ」

「……?」

「又吉警部から君をここで一時的に預かる案が出ている。私としてはもちろん大歓迎だが……君としてはどうだ?」

「あれ、さっき託児所じゃないって……」

 

 先ほどと言っていることから一転して、歓迎ムードを顕にする杏子。杏子の急激な意見の変化に、タクミも又吉警部も戸惑うしかなかった。

 とはいえ、そんな戸惑う二人を置いておいて、コータは考える。先ほどから感じる懐かしい既視感。そして、自分を取り巻くこの不可思議な現象の数々。それらを総合して考えていると、ふと杏子が期待しているような目で自分を見てきていることにコータは気づく。

 その目に負けたわけではないが、結果としてコータは――。

 

「わかった。世話になる」

 

 ――杏子たちの世話になることを選んだ。

 

「そうか!それは良かった!」

「え?杏子さん、よかったって……?」

「ふふふ……そうと決まれば歓迎会だな。コーヒーを入れよう!」

「うぇ!?ちょ、杏子さん!それは……」

「キョウちゃん、俺はお暇するとするよ。仕事もあるんでな」

「え?もうですか?コーヒーは?」

「いい!コーヒーはいいよ!……コータ。連れて来て難だが、コーヒーには気をつけろ。それと坊主」

「……はい?」

 

 くいくい、と又吉警部はタクミを手招きし、杏子に聞こえないような位置に呼ぶ。場所的に、それから声量的に、杏子には聞かせられない話なのだろう。

 険しい顔をする又吉警部を見て、自然とタクミも表情を固くした。もしや、コータにはまだ何かあるのかと。

 

「俺はここ数年……コーヒー以外であんなにテンション高いキョウちゃんは見たことねぇ」

「そうなんですか?」

「ああ。……まさかあのキョウちゃんがああいう趣味だとは思いたくはないが……」

「……趣味?……まさかっ!?」

「いざとなったら、お前がコータを守ってやってくれ」

「……はい」

 

 神妙な顔して頷くタクミに満足して、又吉警部は部屋から出て行く。

 後に残ったのは、テンションの高い杏子と混乱するコータ。そして、杏子のことを若干勘違いしたタクミだけだった。

 

 

 

 

 

 こうして歴史書は再び開かれた。

 電脳探偵が邂逅したのは、かつて歴史書を記せし者。

 この出会いがもたらす結末は――。

 

 

 

 

 

 




はい、前書きに少し書きましたが、最近、自分が書いているA&Aの方がスランプ気味、そしてモチベーションが下がり気味だったので……気分転換としてゼヴォの方と一緒に書きました。
短編というよりは長編のプロローグ部分という意識で書いたので謎がありますし、ゼヴォの方と違って突貫なのでいろいろと甘いです。すみません。

書いた経緯としては……サイスルの小説をせっかくだから書きたい
→どうするか……ん?そういえば、杏子さんってアレなんだよな。
→プロットだけ作成したゼヴォの方を見る。
→よし!クロニクルとクロスさせよう!
こういう感じですね。

まあ、いつか続きを書こうとは思っていますが……A&Aもありますし、同時投稿したゼヴォの方とは違ってプロットも何も出来ていません。
サイスルはストーリーの確認に時間がかかりますし、ゼヴォの方も書きたいですし……。
ですので、やはりどうなるかは未定です。
ですが、もし続きを書いたその時はよろしくお願いします。

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