【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第九話~初めての想い!感じる平穏~

 時は少し遡って。

 

「なんで、こんなことに……」

「……?キャッ!キャッ!」

「……はぁ」

 

 ウォーグレイモンからトコモンを預けられたドルグレモンは途方に暮れていた。

 ウォーグレイモンにもただならぬ用事があったようであるし、別に彼を恨んではいないが――この無邪気にはしゃぐ子供(トコモン)をどうすればいいというのか。

 ドルグレモンは今までずっと一人だった。記憶を失った状態でこの世界にポツンと一人。幸いに知識はあったために、生きていくことに不自由はなかったが、それでもこの過酷な世界で一人生きてきた。そう、一人で。

 つまり、何が言いたいのかというと――。

 

「アウ!アウ!キャッ!キャッ!ガゥウウ~!キャッ!キャッ!」

「……」

「アウ?ウ~?」

 

 ――何が言いたいのかというと、ドルグレモンはトコモンに対する接し方がわからないのである。

 無邪気にはしゃぐのはいい。だが、いまいち考えていることがよくわからないのだ。ただ唸って、跳んで、歩いているだけ。それだけで、はしゃぎ、喜んでいる。そんな、なんでもないことだけで。

 はっきり言って理解不能過ぎる。

 未だウォーグレイモンと別れて数十分しか経っていない。ウォーグレイモンがいつ帰ってくるのかはわからないが――ウォーグレイモンが戻ってくるまで、トコモンとやっていける気がしなかったドルグレモンだった。

 

「アゥウウ?」

「ああ、大丈夫だ」

「アウ?アウ!アウ!キャッキャッ!」

 

 何がそんなにトコモンの琴線に触れるのかはわからないが、トコモンはとにかく彼方此方を見て回っては、はしゃいでいた。それはやはり、子供にとっては見るものすべてが面白いということなのだろう。少しでも子供と一緒に過ごしたことのある者なら、なんとなく想像がつくはずだ。

 とはいえ、ドルグレモンにはそんな経験などなく、だからこそ、そんなトコモンを理解できなかったのだが。

 

「アウ~!」

「はいはい、今行くよ。……本当に、何がそんなに面白いんだか。はは……」

「アウ!アウ!」

 

 だが、だからと言ってドルグレモンは嫌ではなかった。確かに、トコモンに振り回されていたが、嫌とは思えなかったのだ。

 その時、久しく感じなかったほど、ドルグレモンは穏やかな心持ちとなっていたのだが――そのことに彼が気づくことはなかった。

 ともあれ、そんなこんなで、この穏やかな時は過ぎていく。

 ある時は――。

 

「アウ……?」

「どうした……?ああ、あの木の実が食べたいのか?」

「アウ!」

「……ふう。よっと」

 

 ――ある時は、木の上に生っている木の実が食べたいとせがむトコモンのために、ドルグレモンは後ろの二本足で立ち上がり、その巨体を活かして木の実をもぎ取った。

 またある時は――。

 

「アウ!アウ!」

「……ん?空?空がどうかしたのか?」

「アウゥウ……」

「飛びたいのか……?」

「アウ!」

「……はぁ。仕方ないな」

 

 ――またある時は、空を飛びたいと騒ぐトコモンを背中に乗せて、ドルグレモンは空を飛んだ。

 この世界は弱肉強食の世界であるはずなのに。それを感じさせないほど、穏やかな時間が流れていた。ドルグレモンが、いっそこの時間がずっと続けば良いと思えるほどの。

 だが、そんな時間も長くは続かない。どんなに穏やかな時間が過ぎようと、この世界が過酷な世界であるという根本的な部分は変わっていないのだから。

 

「アウ……アッ……ウゥ……」

「おいおい、大丈夫か?」

「アウ!」

 

 石に躓いて転んでしまったトコモンを、ドルグレモンはその前足を器用に使って助け起こしてやる。

 当のトコモンは涙目だったが、ドルグレモンに助け起こされると、なんでもないとばかりに元気に駆けていった。

 

「本当に元気だな……っ!」

 

 そんな時だ。ドルグレモンが、何かを感じたのは。ピリピリとした、まるで恐ろしい何かが近づいてきているかのような、そんな何か。悪寒と言いかえてもいいだろう。

 その悪寒を現実のものとするように、近くにあった丘を越えて、丘の向こう側から大勢のデジモンたちがやってくる。

 通常デジモンに、X抗体デジモン。飛行型に、恐竜型、さらに昆虫型、と統一性がない。だが、そのデジモンたちにただ一つ共通して言えるのは、彼らの顔に恐怖の二文字が張り付いていたことだ。

 

「何が……」

「アウ~?」

 

 そして、次の瞬間。

 青い閃光が世界を駆ける。次いで訪れる凄まじい衝撃波。その二つが、数百はいるデジモンたちを残らず吹き飛ばして――後に残ったのは、形が無残に変わった丘だけだった。

 そうして、そんな丘の遥か遠くからやって来るのは――オメガモンで。まず間違いなく、先ほどの攻撃はオメガモンが行ったのだろう。

 ドルグレモンはオメガモンのその姿を確認したその直後――。

 

「っ!ここに隠れてろ!いいな!」

「アウゥ?」

 

 ――その直後に、トコモンに隠れているように指示し、返事を待つことなくオメガモンの前に飛び出した。

 敵わない相手の前に姿を現す。現状でドルグレモンにはそれしかできなかった。

 逃げることは元より不可能。さらに、隠れようにも、ドルグレモンの巨体が隠れられるような場所など、近くにはない。もし、ドルグレモンが進化していなかったら、隠れられたかもしれないが、所詮は仮定の話。

 初めから選択肢は一つしかなかったのだ。

 まあ、とはいえ。何の策もなく、勢いのままに飛び出していったのは下策でしかない。実に愚かな選択だったが――。

 

「……なんでだ?」

 

 ――そんな下策に、一番驚いていたのは、ほかならぬドルグレモン自身だったりする。

 

「……ふん。生き残りか……」

「……っく!“メタルメテオ”!」

 

 こうなったらやるしかない。自分の行動に多少の疑問を抱かずにはいられなかったものの、ドルグレモンはそう思って攻撃を開始する。

 放たれるのは、ドルグレモンの十数倍の質量を持つ、超が付くほどの巨大な鉄球。それは真っ直ぐにオメガモンの下へと落ちて行って――。

 

「ふん!」

「なっ!」

 

 ――落ちて行って、オメガモンの左腕のグレイソードによって、真っ二つに切り裂かれた。

 自分の全霊をかけた必殺技が、手傷も負わせられずにあっさりと破られたことに、ドルグレモンは驚きを隠せなかった。

 だが、そう言えば、と。ドルグレモンはその直後に、同じロイヤルナイツのエグザモンもあっさりと破っていたことを思い出して。ロイヤルナイツのバケモノっぷりに舌打ちしたい気分になった。

 とはいえ、今は戦闘中。舌打ちするより前に、オメガモンを何とかしなくてはならない。ドルグレモンはオメガモンに向かって突撃しようとした――。

 

「はァっ!」

「ぐあっ!」

 

 ――が、その直後。ドルグレモンよりも先に距離を詰めるべく行動を始めたオメガモンに体当たりをされ、吹き飛ばされた。

 グレイソードやガルルキャノンといった武器で攻撃されなかったのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。それらで攻撃されていれば、ドルグレモンは今頃この世にいなかっただろうから。

 だが、それでも、オメガモンの体当たりは相当な衝撃を持っていて。地面に叩きつけられたドルグレモンはかなりのダメージを負ってしまった。

 これはまずい。立たなければ。そう思ったドルグレモンは、態勢を立て直そうとして――。

 

「ガウ!ガウ!ガウ~!」

「……?」

「なっ!トコモン!?」

 

 ――影から飛び出してきたトコモンに庇われた。

 まあ、庇われたと言っても、トコモンではオメガモンには天地がひっくり返ったとしても敵わない。

 やめろ、と。そうドルグレモンが言うよりも早く、トコモンはオメガモン目掛けて突撃する。とはいえ、突撃したところでどうなるわけでもなく。オメガモンの腕のひと薙ぎであしらわれ、吹き飛ばされたのだが。

 当然の結果。だが、ドルグレモンはその光景を見た瞬間、頭に血が昇るのを感じていた。ここまで怒ったのは初めてかもしれない。そうドルグレモン自身が思えるほど、彼は怒っていた。

 

「あぁぁああああああ!お前はぁああああ!」

「……?なぜだ?」

 

 感情のままに、ドルグレモンはオメガモンに突撃する――が、そんな稚拙な動きがオメガモンに通じるはずもない。先ほどのトコモンの時の焼き回しのように、ドルグレモンも吹き飛ばされた。

 だが、その瞬間。まるでドルグレモンと入れ替わるように、トコモンがオメガモンめがけて突撃する。無論、結果は先ほどと同じ。

 そして、そんなことをするオメガモンに激怒して、ドルグレモンも立ち上がり、オメガモンへと向かっていき、先ほどと同じように吹き飛ばされる。

 そんなドルグレモンを庇うように、トコモンがオメガモンへと向かい――そんなことが、何回も続いた。

 

「……なぜだ?なぜ……敵わぬとわかっているのに……抗う?」

 

 そうやってポツリとオメガモンが呟いたのは、ドルグレモンとトコモンが動けなくなった後だった。いや、ドルグレモンはまだ動こうとしているか。だが、その意思に反して、体は動かないようだ。

 そんな彼らを見て、オメガモンはその左手の剣を構える。わからない疑問に時間を取られるべきではないと悟ったのだ。

 そして、そんなオメガモンの凶刃を見ても――。

 

「ぐぅううううう!」

「無駄だ。もう立てるはずもない」

「……まだだ」

「何?」

 

 ――見ても、ドルグレモンは未だ立ち上がろうとしていた。

 このままでは殺されてしまう。死んでしまう。だから、生き残りたい。生き続けたい。その思いはドルグレモンの根底にあるものだし、それだけで今日までやって来た。だからこそ、ここで立ち上がるのは、いつもと同じその思いがあるからなのだ――が、今日は()()()()()()()()()()

 ここに来て、死を間近に感じて、ドルグレモンはようやく気付いたのだ。

 今日は楽しかった、と。

 トコモンと遊んで、自由気ままに生きて、そして楽しかった。無邪気に笑うトコモンの姿に、ドルグレモン自身も癒された。

 今まで自分の命のためだけに生きてきたドルグレモンが、初めて思ったのだ。トコモンを死なせたくない、と。

 だからこそ、ドルグレモンは立とうとしていた。立たなければならなかった。

 ここでドルグレモンが立たないということは、トコモンも死んでしまうということだから。

 だから――。

 

「オ、メガモン……お前はロイヤルナイツだろ……なんでこんなことをするんだ……!」

「……イグドラシルの命令だからだ。それが、この世界の正義だからだ」

「セ、イギ……そんなので……そんな、もので……なら――!」

 

 ――だから、ドルグレモンは望む。この状況を打破できる力を。この目の前にある正義をねじ伏せる、圧倒的なまでの力を。

 そして、その瞬間、ドルグレモンを光が包む。それは、進化の光で。

 一瞬後に光を払って現れ出てたのは、白銀の竜。分厚く硬い甲殻を身に纏った、ドルグレモンとは似ても似つかぬ獣竜。それこそが、ドルゴラモンと呼ばれる究極体デジモンだった。

 

「な、に……?貴様は……!」

「ああ……アアアアアアア!」

「っく!」

 

 直後のドルゴラモンの咆哮に、オメガモンが初めて焦ったかのような表情をする。

 オメガモンもわかったのだ。

 目の前にいる竜は、自分たちに届きうる相手であるということが。自分たちロイヤルナイツの――ひいてはイグドラシルにとっても、究極の敵になりうる可能性がある相手であるということが。

 

「オマエラが正義だと言うのなら……オレがそんな正義(オマエラ)の敵となってやる!」

 

 圧倒的なまでの存在感。強大な破壊の権化。ドルゴラモンを言い表すのに、それ以外の言葉は不要だった。

 そして、オメガモンとドルゴラモン。二人の戦いが始まる――。

 




というわけで、第九話。
久しぶりの主人公の出番です。
この物語の前半部分もいよいよ佳境ですね。

さて、次回はオメガモンとの激闘……とその後に?です。

それでは次回もよろしくお願いします。

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