【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
新たに進化したドルゴラモンの圧倒的な存在感に、オメガモンは知らず知らずのうちに苦い顔をしていた。それほどまでに、ドルゴラモンというデジモンに脅威を感じていたのだ。
まあ、それはあくまで無意識的なことであり、そんなことを感じているなど、オメガモン自身は決して認めないだろうが。
「敵……となるだと?異分子の分際で……なぜ貴様らは……イグドラシルの決定に抗う!」
「黙れ。そんなの……生きたいからだ。生きて……命を繋ぎたい。それ以外に理由がいるか!」
「……!イグドラシルは……それを望まない」
オメガモンの言葉に、ドルゴラモンは自然と啖呵を切って反論する。それは、彼の根底にあるモノだ。他人の言葉を押しのけてでも、貫きたいほどの。
そんな、純粋に“生きたい”という思いを見せつけるドルゴラモンに、オメガモンは一瞬言葉を詰まらせてしまう。いや、それだけではない。なんとか絞り出した言葉も、どこか弱々しい、普段の彼からは考えられない言葉だった。
「知ってる!だから、……お前らを倒して、オレたちは生きる!」
「っ!」
ともあれ、ドルゴラモンはそんなオメガモンに構うことなどない。オメガモンを警戒しながらも、ドルゴラモンは行動する。
そんなドルゴラモンが、倒れ気絶したトコモンを握り潰さないようにその手に持ったのは、苦肉の策だった。
そう。有り余る自分の力を感じ取り、そんな自分がオメガモンと戦えばこの辺り一帯がどうなるか、ドルゴラモンにはわかってしまったのだ。
そしてその時、傷つき動けないトコモンがどうなるか。火を見るより明らかだ。だからこそ、危険と承知ながらも、ドルゴラモンはその手にトコモンを握ったのである。
「……行くぞ!」
「っく!」
そうして、オメガモンとドルゴラモンはぶつかり合う。
驚くべきことに、先ほどまでとはうって変わって、オメガモンが押されていた。それも、圧倒されていると言ってもいいレベルで。ドルゴラモンはトコモンを持っているために片手が使えないというのに。
その理由の一つに、ドルゴラモンのスペックがある。強大なドルゴラモンのそのスペックは、もはや並の究極体デジモンを超え、ロイヤルナイツに匹敵、あるいはそれ以上かもしれないほどのレベルであるのだ。
だが、オメガモンとて歴戦の勇者たるロイヤルナイツ。それだけではここまでの差は生まれない。オメガモンは、伝説に名だたる怪物たちや圧倒的不利な状況を覆して勝利を掴んだことなど、それこそいくらでもあるのだから。
そんなオメガモンが何故圧倒されているのか。それは――。
「はっぁああああ!」
「っぐ……!」
――それは、今日戦ったロードナイトモンの置き土産とでも言うものだった。
ようするに、オメガモンはロードナイトモンの最後の“アージェントフィアー”のダメージが抜けきっていないのである。
今までは格下との戦いで、一瞬で蹴散らせたから良かった。だが、今は違う。ドルゴラモンはオメガモンと同格以上の相手。だからこそ、その残っているダメージが命取りなレベルでオメガモンに不利に働いているのだ。
まあ、それ以外にも、オメガモンの中に無意識的にでも生まれた迷いが、彼の剣を鈍らせているのだが――オメガモンがそれに気づいてはいなかった。
「はっ!ふっ!」
「片腕でここまで……!」
「オレも必死だからな!」
思わず、脳裏に思い描かれたロードナイトモンが、ざまあみろとばかりに歌っているような気がして――そんなロードナイトモンを全力で殺したくなったオメガモンだったが、そんなことを考えても現状は何も変わらない。
ドルゴラモンは本当に強かった。オメガモンが“ガルルキャノン”を放てば、ドルゴラモンは最小限の動きでそれを躱す。“グレイソード”で斬りかかれば、ドルゴラモンはその拳で剣を弾く。
オメガモンがどんな行動をしても、ドルゴラモンはその行動に対応し、カウンター攻撃を決めてくるのだ。
「ぐぅ……!」
「これで終わりだ……“ブレイブ――」
「マズイ!“グレイ――」
これで終わりにするとばかりに、ドルゴラモンは必殺技を使うことを決意する。足に力を溜めて――その光景を見た瞬間に、オメガモンに悪寒が走った。あれは危ない、と。あれはマズイ、と。
その悪寒に従うままに、オメガモンは左腕の剣を振るって――。
「――メタル”!」
「――ソード”!」
ドルゴラモンとオメガモン。二人の必殺技が、ぶつかり合い、世界を削る。
オメガモンの左腕から放たれた斬撃が、世界を切り裂きドルゴラモンへと飛んでいく。対して、ドルゴラモンの必殺技は、ただの突撃だった。
だが、侮るなかれ。ドルゴラモンのソレは全身全霊をかけた凄まじい突撃。小細工などいらない。どんなものでも、ただ圧倒的な力だけでもってねじ伏せる。
空気の壁も、世界も、オメガモンの誇る斬撃も、そのすべてを突き抜けて直進するその姿は、まさに破壊の権化で。
「なっ!」
まさか、“グレイソード”が真正面から打ち破られるとはオメガモンも思っていなくて。その突撃の勢いが乗せられたドルゴラモンの拳が、オメガモンに直撃する。
奇しくもそれは、ロードナイトモンの“アージェントフィアー”が当たったところで。
「がはっ……!」
苦しげな声を漏らし、膝をつくオメガモン。
オメガモンが膝を付くなど、久しくなかった事態だ。そして、その久しくなかったという事実が、今の事態がどれだけ異常であるかを知らしめていて。
自分が追い詰められているという異常事態に内心で苦い顔をしながらも、オメガモンは立ち上がろうとする。イグドラシルの命令を実行するために。内心に生まれた迷いを無視するために。
「ぐぅうううう!」
「まだやるのか……!」
だが、フラフラと立ち上がったオメガモンは、さらなる異常事態に気づく。
そう。左腕の剣が、無いのだ。いや、オメガモンの剣であるグレイソードは、左腕と一体化している。失くなったり、落とすようなものではない。
無い。より正確に言えば――折れて、いた。グレイソードが。無敵の剣とデジモンたちの間で伝説となるほどの、その剣が。
先ほどドルゴラモンによって、折られたのは明らかなのだが――それでも、膝をつき、剣まで折られるなど、異常事態では言い足りないほどでさえある。
それでも、戦わなければならない。混乱しながらもそのためにオメガモンが、ドルゴラモンをキッと睨んだ次の瞬間に――。
「膝をつかされ、剣まで折られるか。鈍ったか?オメガモン……!」
――次の瞬間に、新たな乱入者がこの場に現れて。
オメガモンに苦言を呈しながら、されど彼を庇うように現れたそのデジモンは――彼と同じロイヤルナイツのデュナスモンで。
新たなロイヤルナイツの参戦に、ドルゴラモンは苦い顔をせざるを得なかった。
「新手か……!?」
「……ふん。このままでは我らロイヤルナイツの体裁に関わる。卑怯かもしれないが……ここで終わりとさせてもらおう!」
「っ!」
直後、凄まじい威力で足を踏み込み、向かってくるデュナスモンを、ドルゴラモンは迎え撃つ。
デュナスモンのパワーはオメガモン以上で、さらにオメガモンにあった動きの鈍りがない。いかに先ほどオメガモンを圧倒したドルゴラモンといえども、片腕の状態では勝つことは厳しかった。
「ぐぅ!あぁああああ!負けるか!」
「っく!オメガモンを倒しただけはあるということか……!だが、この程度……!」
パワーを重視するタイプである二人がぶつかり合う。
片腕しか使えず、苦しい戦いを強いられているドルゴラモンは内心で苦い顔をせざるを得なかった――が、一方のデュナスモンも内心で驚いていた。
オメガモンを倒したことから、強いことは予想していた。だが、片腕というハンデがあって、連戦での疲労というハンデがあって、それでもなお、自分と戦えているという事実。その事実に、デュナスモンは驚いたのである。
「ぐぅううう!」
「……これで進化したてか。末恐ろしいな!」
とはいえ。ドルゴラモンが不利なのは、誰が見ても明らかだったのだが。
確かに、ドルゴラモンはよく戦っている。だが、時を追うごとにその体に傷は増えていって。対照的に、デュナスモンのその鎧には、傷はほとんどなかった。
それだけで、どちらが負けていて、どちらが勝っているのか、馬鹿でもわかるだろう。
「ふっ……ここで終わりとさせてもらおうか」
「っぐ!」
これ以上長引かせることもない。
ドルゴラモンの強さを把握したデュナスモンは、そう思った。窮鼠、猫を噛むという言葉もあるくらいだ。追い詰められた者が何をするかわからない以上、長引かせる理由はない。
だからこそ、デュナスモンは最大火力の一撃で勝負をつけるべく、必殺技の準備をして――それに気づいたドルゴラモンも、同じく必殺技の準備をする。
「“ブレス・オブ・ワイバーン”!」
「“ブレイブメタル”!」
全身のエネルギーが巨大な飛竜の姿を形どり、桁外れのエネルギーを持って敵を滅ぼさんとつき進むデュナスモン。その攻撃は、まさに強大な力を誇る竜という概念そのものが形を持ったかのようで。
そんなデュナスモンに向かって、ドルゴラモンも凄まじい力で突撃する。
竜と竜。二つの強大な力を持った者同士がぶつかり合い――。
「くそっ!」
「これは……!」
――お互いがお互いの威力を受け止め合って相殺。必殺技のぶつかり合いは、引き分けの結果となった。
もし、ドルゴラモンが両腕を使えたのならば。もし、ドルゴラモンがオメガモンと戦っていなかったのならば。あるいは結果は違ったかもしれない。
だが、結果は引き分けで。そして――この結果が勝負を分ける直接の原因となった。
「まさかハンデを持ちながらも相打つとは……!だが、やはり若いな!」
「なっ!」
引き分けという結果を前に、ドルゴラモンは一瞬だけ止まってしまった。それは、まさか引き分けるとは思っていなかったからこその、隙。
そう。一瞬。たった一瞬。その一瞬の差で勝負は決まったのだ。止まってしまったドルゴラモンと、攻撃が当たらなかった時を考えて、次の行動へと移っていたデュナスモンの――その差で。
「“ドラゴンズロア”!」
次の攻撃へと移っていたデュナスモンは、ドルゴラモンが復帰する前に攻撃する。両手のひらから放たれるエネルギー弾。それは、デュナスモンのもう一つの必殺技で。
モロにそれを受けてしまったドルゴラモンに、それを耐え切ることはできなかった。
先ほどとは逆に、地に伏したドルゴラモン。その手から、トコモンがポロリと落ち――。
「アウ……ウゥ?」
――そこで、ようやくトコモンは気がついたようだった。
トコモン主観で、周りに怖いデジモンがいる中で――見知った仲だと直感したドルゴラモンが倒れているというのは、トコモンにとって恐ろしいことでしかなくて。
「アウ!アウ!アゥウウ!」
「……なんだコイツは?コイツがいたから……片腕が使えなかったのか?」
背後にいるデュナスモンたちを無視してでも、トコモンは一生懸命にドルゴラモンに語りかける。
それはまるで、死なないで、と言っているようで。
それはまるで、起きて、と言っているようで。
だが、トコモンのその声は意味のないことだ。なぜなら――ドルゴラモンは、もう死んでいるのだから。
「……まぁいい。コイツも削除対象である以上、消しておくか」
「アウッ!?」
背後から近づいてきているデュナスモンに恐怖を感じながらも、トコモンはドルゴラモンに語りかける。
それは、ある種の現実逃避なのだ。友達が死んでしまったということを、幼いトコモンは認められないがゆえの。
ドルゴラモンは既に死んでいる。それは間違いない。だから、トコモンの声も願いも、意味のないことでしなかない――そう、普通ならば。
「……何?」
「ア……ウ?」
「……馬鹿な」
死んだ者は生き返らない。だから、立ち上がったドルゴラモンは異常でしかなくて。
死んだ者が生き返る。そんな異常事態を前に呆然と呟いたその場の全員は、その後、ありえないモノを目撃する。
それは、死が訪れてもなおも生きようとする、禁忌の――死の、進化。
というわけで、第十話。
前半主人公無双……からの苦戦。というある意味王道パターンですね。
おや、ドルゴラモンの様子が……?という最後でした。
で、後半から出張ってきたデュナスモン。
デジモン全体的に見れば不遇な印象ですね。初登場のフロンティアでは適役。クロニクルではX抗体を獲得してはいるものの、出番不明。漫画版クロスウォーズではド派手な必殺技を見せるも、ラスボスに取り込まれ……。
この小説では今回の回が一番の見せ場ではない……と思いたいですね
ちなみにこの小説のロイヤルナイツ内でのスペックは高い方です。
エグザモンに次ぐほどに。まあ、エグザモンほどスペック馬鹿ではないですが。
さて、次回も今回の話の続きです。
というわけで、次回もよろしくお願いします。