【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第十一話~死の進化!デクスリューション!~

 ゆらり、と。意識があるのか、ないのか。

 まるで幽鬼のように立ち上がったドルゴラモンのその目は濁っていて、ここではないどこかを見ているようで、明らかに正気ではない。

 そんなドルゴラモンを前にして、オメガモンとデュナスモンは、まるで死を覗いているような怖気を感じ、それと共にあること直感をしていた。

 これはマズい、と。このままではマズい、と。目の前にいるドルゴラモンを前にして、二人の頭の中では本能レベルで警鐘が鳴っていた。

 

「ア……アァ……!ァアアアアアアアアア!」

「これ……は……!」

 

 直後、ドルゴラモンを闇が包む。まるで、死そのもののような暗闇が。

 そして一瞬後。その暗闇が晴れた時、オメガモンたちの前にいたのは――全身が拘束具で覆われたどこかドルゴラモンに似たデジモンで。

 その全身から発せられる腐ったかのような強烈な刺激臭に、オメガモンたちは顔を顰めた。

 

「グルァアアア……」

 

 死の化身のようなこのデジモンこそが、デクスドルゴラモンと呼ばれる究極体デジモン。

 DEATH-Xのドルゴラモン。生存本能の極致たるX抗体によって実現した死の進化によって生まれ出てたる、最も禁忌されるべきデジモンだった。

 

「アウゥウ……」

 

 そんなデクスドルゴラモンを前に、トコモンは怯えたような声を出す。

 トコモンには、先ほどのドルゴラモンは進化しても、彼は彼であると理解できていた。

 だけど、と。違う、と。トコモンには今日出会った彼とこの目の前のバケモノ(デクスドルゴラモン)が同一の存在であるとはどうしても思えなかった。いや、思いたくはなかった。

 

「グァアアアアアアアア!」

「っぐ!」

「っくぅ!」

「アゥウウウウ!」

 

 そして、デクスドルゴラモンが咆哮する。ただの咆哮ながら、凄まじい突風を持って放たれたソレは、もはや声の域にない。

 そんなものに、体の軽いトコモンが耐えられるはずもなく。一瞬で体を持ち上げられたトコモンは遠くへと吹き飛ばされるしかなかった。まるで風船のように、遠くへとトコモンは吹き飛んでいく。が、そんなトコモンを気にかける者はいなかった。

 なぜなら――この場の誰も、そんな余裕はなかったから。

 

「グギャアアアアアアア!」

「っち!オメガモン!」

「わかっている!“ガルルキャノン”!」

 

 例え卑怯と言われようとも、どのような手を使ってでもデクスドルゴラモンを倒さなければならない。

 オメガモンたちはそう悟った。ゆえに、オメガモンとデュナスモンの二人は連携して、デクスドルゴラモンと戦うが――はっきり言って一方のオメガモンは先ほどのダメージのせいで足でまといにしかなっていない。

 まあ、それでも並のデジモンよりはよほど強いと言えるだろうが、何と言うか相手が悪かった。

 オメガモンが放った“ガルルキャノン”が、デクスドルゴラモンに直撃する。だが、デクスドルゴラモンにはほとんど効いていない――というか、無傷。

 

「っく!」

「下がっていろ!“ドラゴンズロア”!……なっ!?」

 

 次いで、デュナスモンが必殺技を放つ。だが、デュナスモンの必殺技を、デクスドルゴラモンは両腕でただ殴っただけで砕いてしまった。

 ロイヤルナイツというデジモンの中でも最高位の者たちの必殺技を、ただ殴るだけで無効化する。これが、何らかの能力であったのならどれだけ良かったか。ただ殴られるだけで、自分の信頼のおける技が無効化されるなど、彼らにとっては悪夢でしかなかった。

 どんどん大きくなっていく脳内の警鐘を前に、オメガモンたちが一層の気合を入れ直したそんな時――。

 

「これ以上はお前の好きにはさせない!」

「やれやれ、これは苦労しそうな相手。一騎打ちで……とも言えない状態ですのう」

 

 ――そんな時だった。この場に新たなロイヤルナイツが現れたのは。

 この場に現れたのは、マグナモンとクレニアムモン。彼らはオメガモンたちの援軍としてこの場に来たのである。

 

「……マグナモンとクレニアムモン!?」

「オメガモン。お前がそうもやられる相手か……イグドラシルの判断は間違っていないということか」

「どういうことだ?」

「イグドラシルは、奴を……デクスドルゴラモンを解析不能な脅威と認め、手の空いているロイヤルナイツすべてに奴を()()()をする命令を出した」

「それでこの儂らが来たということだの」

「なんだと……!我が主が直接手を下されるのか!?」

 

 この世界の神ですら解析不能な脅威。

 それは、もはやデジモンの領域にない。デクスドルゴラモンはそれほどの存在であると、神そのものが認めたというのだ。これを恐れずにいられようか、という話である。

 しかも、命令は倒すことではなく、足止め。それはつまり、この世界の神であるイグドラシル自ら働きかけるということで。そんな事態は、有史以来片手で数えるほどしかない、異例な事態だった。

 

「……だが、我らで倒しても問題はない!“シャイニングゴールドソーラーストーム”!」

 

 そんな中で、マグナモンが先陣を切ってデクスドルゴラモンへと向かい、必殺技を放つ。空間が急速圧縮、瞬間膨張され、世界を照らすほどの黄金のレーザー光がデクスドルゴラモンへと向かう。

 だが、デクスドルゴラモンは攻撃をくらいながらも歩を進める。そんなものは、関係ないとばかりに。そして、マグナモンを攻撃しようと拳を振り上げて――これが一騎打ちだったのならば、その拳はマグナモンに届いたのだろう。

 だが、これは乱戦。デクスドルゴラモンの敵は、マグナモンだけでは無い。

 

「年寄り使いが荒いの!“ゴッドブレス”!」

 

 マグナモンの前に出たクレニアムモンが、その手に装備した魔楯アヴァロンを使って鉄壁の全方位防御を使う。“ゴッドブレス”と呼ばれるそれは、三秒間だけだが、どのような攻撃も防ぐ絶対防御。人によっては、たった三秒と言うかもしれないが、侮るなかれ。戦いにおいてその三秒は、大きいのだ。

 そうして、クレニアムモンがデクスドルゴラモンの攻撃を防いだその隙に、オメガモンとデュナスモンが動き――。

 

「“ガルルキャノン”!」

「“ドラゴンズロア”!」

「“プラズマシュート”!」

 

 ――二人の必殺技が、同時にデクスドルゴラモンへと直撃する。そして、その後のマグナモンのダメ押しの必殺技。先ほどとは違って、同時攻撃だ。

 これなら殺れたはず。オメガモンたち全員がそう思っていて――だが、現実は容易く想像を超えてくる。

 

「グアァアアアアアアア!」

「……っ!馬鹿な……」

 

 デクスドルゴラモンは、無事だった。流石に無傷というわけではないようだったが、それでも健在であることには変わりない。

 なるほど、確かにこれは脅威だ。どうにかしなくてはならない、と。後から来たマグナモンとクレニアムモンも、ようやくデクスドルゴラモンの危険さを身をもって知ったようで。

 世界に名立たる自分たちが押されている事実に冷や汗をかきながらも、一層の気合を入れた彼らは構え直して――その瞬間、デクスドルゴラモンが動いた。

 

「ガァアアアアアアアアアアア!“ドルディーン”!」

「……っ!」

 

 それは、破壊の衝撃波。デクスドルゴラモンを中心として、放射状に広がる波。空も、大地も、世界ですらも――まるで、この世のすべてを消し飛ばさんとばかりに突き進むソレは、デクスドルゴラモンの脅威の具現のようで。

 そんな“破壊”を前にして、クレニアムモンを先頭にして、オメガモンたちは一列に並ぶ。

 

「“ゴッドブレス”!」

 

 直後、クレニアムモンの絶対防御が発動する。流石の破壊の衝撃波も、絶対防御であるソレを砕くことはできなかった。

 きっかり三秒。“ゴッドブレス”の効果が切れると共に、破壊の衝撃波が終わったのは、オメガモンたちにとって幸運でしかなかった。流石の彼らでも、あれを喰らえばただでは済まなかっただろう。

 まだ勝負はついたわけではない、と。この瞬間、彼らの心は一つに重なっていて。

 だが、そんな彼らを、死の化身(デクスドルゴラモン)は軽く上回ってくる。

 

「グァアアアアア!」

「ぐっ……!?」

 

 破壊の衝撃波が防がれることを読んでいたのか、それともオメガモンたちが健在なのを知って動き出したのか。

 デクスドルゴラモンは既に動き始めていた。駆け出したデクスドルゴラモンは、速攻でマグナモンの下へとたどり着き、その瞬間に殴り飛ばす。

 防御力という一点において、マグナモンはロイヤルナイツでもトップクラスを誇る――のだが、その自分がガードしても桁外れのダメージを受けたことに、マグナモンは驚きを隠せない。

 吹き飛び、地面に叩きつけられ、跳ねて行くマグナモンを前に、オメガモンたちは激昂し――。

 

「グギャグガアアアア!」

「マグナモン!貴様……ぐあっ!」

「グァアアアアアアア!」

「オメが――ぐふっ!」

「グギャアアアアアア!」

「いい加減にしろ……!“ドラゴンズろ――がっ!?」

 

 ――だが、その全員がなすすべなく一撃で打ち倒されていって。

 歴戦の勇者であるロイヤルナイツが数体がかりでたった一体の相手に圧倒される。それは、まさに冗談のようで、悪夢のようで、されど現実の光景だった。

 

「グッグッ……グギャアアアアアアアアアアア!」

 

 まるで倒れ伏すロイヤルナイツたちを嘲笑っているかのような。

 そんなデクスドルゴラモンの姿を前に、オメガモンたちの中に怒りが生まれる。情けない自分たちに対する怒り、そして、嘲笑うデクスドルゴラモンに対する怒りが。

 だが、彼らがいくら起き上がろうとしても、彼らが起き上がるよりもデクスドルゴラモンの方が彼らの下にたどり着く方がずっと早い。

 

「グアァアアアアアアアアアア!“メタル――!」

 

 トドメを刺す気なのか。デクスドルゴラモンが()()()()()()のは、“メタルインパルス”。デクスドルゴラモンのもう一つの必殺技。その素の威力もさることながら、当たったデジモンをその(デジコア)だけを残して消し飛ばす力もある恐るべき技。

 いかにロイヤルナイツとはいえ、この技をくらってタダで済むはずはない。

 まあ、とはいえ――。

 

「グギャッ!?」

「これは……!」

「来たか!?」

 

 ――とはいえ、その技が放たれて、その技に当たってしまったら、の話だが。

 そう。当たる当たらない以前に、その技が放たれることはなかった。その時が、来たのだから。

 驚きの声を上げたデクスドルゴラモン。だが、それも頷けるだろう。彼の体は今、足元から消滅し始めていたのだから。いや、消滅と言うと語弊があるか。正確に言えば、どこかへと()()されているのだ。

 デクスドルゴラモンほどの者をこうも一方的にどうこうできる者など、それこそイグドラシル以外にありえない。

 つまり、これこそがデクスドルゴラモンに対して出す、イグドラシルの対応ということで。

 

「グギャアガアアァアアア!」

 

 そうして、この一瞬後。雄叫びを上げながらも、デクスドルゴラモンは完全にどこかへと転送される。

 後に残ったのは、気絶し、倒れ伏した()()()()だけだった。

 




というわけで、第十一話。
ロイヤルナイツ(一人負傷中)VSデクスドルゴラモン回でした。
書き終わって気付きましたが……ちょっとロイヤルナイツの面々が噛ませ犬っぽくなっちゃいましたね。そこは主役からラスボスまでこなせるドル系デジモンに免じて許してください。
まあ、デクスドルゴラモンはどちらの原作でもオメガモン相手にはっちゃけてましたけど。

というわけで、今日のロイヤルナイツ。

マグナモンは唯一アーマー体というロイヤルナイツ内でも異色のデジモンですね。そのせいか、メディアに出る時は他のロイヤルナイツより背が低いことが多かったり。
最新作のサイスルでは、ゼヴォとの性格の違いに、作者がついていけなかった人ですね。
この小説内でのスペックは、防御力と運だけはトップクラスで、それ以外はお察しレベルです。

もう一人のクレニアモンは、ロイヤルナイツ内で比べるとスペックに光るところはないものの、持っている装備がすごい人です。
あと、完璧主義者なので、地味に堅実な戦い方をします。そのため、ロイヤルナイツ内でも(戦うなら)地味に面倒な相手です。
縁の下の力持ちタイプですね。

さて、次回はようやくこのシーンが終わります。
久々にウォーグレイモンたちも登場予定です。

それでは次回もよろしくお願いします。

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