【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第十二話~分岐点~

 それは、まさに驚くべき光景だった。

 一体のバケモノが四人のロイヤルナイツを圧倒したことも、イグドラシル自らそのバケモノの対処に当たったことも。

 それらすべてを上空から見ていたウォーグレイモンたち三人は、呆然としてその光景を見ているしかなかった。

 

「あれは……」

「……今のは……一体……?」

「イグドラシルが……まさか……」

 

 だが、そんな風に驚き、固まっている時間にも終わりの時が来る。

 彼らは気付いたのだ。あのバケモノが消えた後に残ったドルモンに、彼らロイヤルナイツがトドメを刺そうとしているということに。

 はっきり言って、未だ状況が理解できないウォーグレイモンたちだったが、それでもただ殺されようとしているドルモンを見捨てることなどしたくはない。

 ゆえに、頷きあって――。

 

「っち!アルフォースブイドラモンは先に!オレも行く!メタルガルルモンは……」

「わかってる!任せろ!」

「わかった!」

 

 ――その瞬間に、それぞれが行動する。

 一つの命が失われようとしているこの事態を前にして、もはや信用できるできないという問題ではない。ウォーグレイモンも、メタルガルルモンも、アルフォースブイドラモンも、それぞれがそれぞれにできる行動を開始した。

 この中で最も速いアルフォースブイドラモンが、先行してドルモンの下へと向かう。ウォーグレイモンたちのスピードに合わせなくてよくなった分、本気を出した彼の速さは、ウォーグレイモンたちをして目で追うのがやっとだった。

 

「させない!」

「なっ!」

「貴様……アルフォースブイドラモン!?」

 

 デュナスモンがドルモンをその手にかけようとしたその瞬間に、アルフォースブイドラモンは、間一髪で間に合った。

 そして、アルフォースブイドラモンに続くように、ウォーグレイモンとメタルガルルモンがその場に降り立つ。

 彼らの存在に、ロイヤルナイツの面々は驚いているようだ。特に、アルフォースブイドラモンがレジスタンスと呼ばれるようなデジモンたちと行動を共にしている事実に。そして、ドルモンのことを庇ったその事実に。

 

「我らロイヤルナイツを離反しただけに留まらず、そんな異分子たちと馴れ合い……果てはそんなバケモノを庇うか!」

「……異分子だと!X抗体デジモンも、通常デジモンも……同じデジモンじゃないか!」

「異分子は黙っていろ!我々はアルフォースブイドラモンと話をしているのだ!」

 

 マグナモンの言葉に、思わずと言った体で反論したウォーグレイモンだったが、その言葉はデュナスモンに封殺された。

 あまりの話の通じなさに、ウォーグレイモンも思わず舌打ちをしてしまいたくなる。

 だが、そんなウォーグレイモンを放っても、話は進んでいく。

 

「答えろ!」

「弱い者を守るのが、ボクらロイヤルナイツの役目。それを忘れたわけじゃないだろう?ボクは今のロイヤルナイツに納得できない!」

「納得できるできないの問題ではないと思うがのう?のう、アルフォースブイドラモンや。本当に青いのう……いい加減に大人にならんか!」

 

 アルフォースブイドラモンが責められている。

 やはり、彼がロイヤルナイツを離反している現状は本当らしい。この光景を見て、ウォーグレイモンはようやく先ほどアルフォースブイドラモンが言っていたことが事実であったことを悟った。

 

「……今一度問おう。アルフォースブイドラモン!」

「デュナスモン?」

「そこに立つということは我々の邪魔をするということだな?」

「当然だ。だからボクはここに立っている!」

「……そうか。いくら神速の貴様とはいえ、この面々に太刀打ちできると?」

「……っく!」

 

 デュナスモンの言う通りだった。

 いかにロイヤルナイツの面々は連戦で疲れているとはいえ、それでも四人。アルフォースブイドラモン一人でどうにかできる数ではない。

 

「忘れてもらっちゃ困る!オレたちもいる!」

「動けない弱いデジモンにトドメを刺す……それがロイヤルナイツのやることか!」

 

 そして、それはウォーグレイモンたちが加わっても同じことだった。明らかに数でも質でも負けている。これで、ドルモンを庇いながら戦うのは無謀の一言でしかない。

 

「異分子が……!そのバケモノは危険分子。倒すべき者を倒して何が悪い!」

 

 とはいえ、ロイヤルナイツの言い分もある意味で納得できるものだ。

 先ほどのバケモノの脅威は、ウォーグレイモンたちにも伝わってきた。そんなバケモノを守ろうというのだから、ウォーグレイモンたちは頭がおかしい扱いされてもおかしくない。

 とはいえ、先ほどのバケモノとドルモンは違う、とウォーグレイモンたちは本能で悟っていた。だから、先ほどのバケモノとは関係なしに、ドルモンはドルモンとして守ろうとしているのだ。

 

「そうか……アルフォースブイドラモン!貴様を反逆者として……その後ろの脅威とレジンスタンスごと削除する!」

 

 その言葉が最後通告だった。デュナスモンたち四人はそれぞれの武器を構える。アルフォースブイドラモンとドルモンたちを倒すために。

 これはマズイ、と。一方のアルフォースブイドラモンたちは、その戦力差を前にして、戦闘態勢に移りながらも冷や汗をかき始めていて――お互いの陣営が動こうとしたその瞬間に。

 

「くはは!ならば、この儂がそちらに付くとするか!」

「なっ!?」

「なんだと!?」

 

 その瞬間に、天を覆い隠すかのようにこの場に現れたのは、この場の誰にとっても予想外の者で。それは、竜帝と呼ばれるロイヤルナイツで。

 そう――この場に新たに現れたのはロイヤルナイツのエグザモン。超ド級のデジモンであるそんな彼が、ウォーグレイモンたちにつく、と。そう言っていて。

 その事態に、オメガモンたちは驚くしかなかった。

 

「エグザモン……!?正気か!?」

「なんだ?儂が小僧を庇ってはおかしいか?いや、何。儂はこの小僧を気に入ってな。ここで死なすのは惜しいと思ったところよ」

「おかしいに決まっているのう……お前さんも反逆者となるぞ!」

「くはは……クレニアモン。時にお前とした遊戯は実に愉しいものではあったが……もうできなくなるか。残念だな」

 

 元々、エグザモンは自由なデジモンだ。ロイヤルナイツの任務に関わらないことすら多々ある者で、普段は俗世にも興味を持たないような者だ。だが、それでも、ロイヤルナイツであるという自覚をしている者でもある。

 そんなエグザモンが、ロイヤルナイツの、ひいてはイグドラシルの意思に逆らうと知りながらも、ウォーグレイモンたちの側につくと言っている。これほど驚くことはない。

 

「それにこの小僧はおそらく……いや、今はまだわからぬか」

「……?」

 

 最後に何かを呟いたエグザモンだったが、その部分は誰にも聞かれることはなかった。

 ともあれ、これで戦力的には五分。ウォーグレイモンたちには気絶して戦えないドルモンがいるが、それはデュナスモンたちも同じこと。剣を折られ、ダメージを受け、戦力が大幅に下がったオメガモンがいる。

 オメガモンとて並のデジモン相手なら、今の状態でも大丈夫だろう。だが、同格デジモンと戦うには、今の状況は厳しいを通り越すレベルだ。

 

「……」

「……」

 

 誰もが、睨み合って動かない。

 まあ、それもそうだろう。エグザモンの登場によって、戦力は拮抗してしまっている。そんな状態で、軽々しく動けるはずもない。

 だからこそ、この場の全員は睨み合っていたのである。

 とはいえ、睨み合いをしたままでいるわけにも行かない。特にウォーグレイモンたちは。なにせ、時間をかければかけるほど、他のロイヤルナイツが集まってくる可能性もあるのだから。

 

「……できれば、ボクとしては見逃して欲しいんだけどな」

「今更それを言うか?アルフォースブイドラモン……!」

 

 とはいえ、エグザモンとは違って、アルフォースブイドラモンもそれなりにロイヤルナイツというものにも、そのメンバーにも、愛着がある。だから、戦わずに終わって欲しいと思わなかったわけではないのだが――やはり、そんな都合の良いことはなかった。

 返ってきたのは、何を馬鹿なことをといった感じのマグナモンの厳しい言葉である。

 だが、そんな時だった。

 

「ならば、これでならどうだ?見逃すに足ると思うが……?」

「何っ!」

 

 新たにこの場に響き渡った声。

 それは、ロイヤルナイツの面々にとっては聞きなれた声で――。

 

「っ!デュークモン!?まさか、貴様もか……!?」

「そのまさか、だ」

 

 ――そう、赤いマントを翻しながら現れたのは、デュークモンだ。エグザモンの登場にも声を上げなかったオメガモンの驚くような声が辺りに響き渡る。

 だが、声に出したのがオメガモンだけだったという話だけで、敵味方問わずこの場の誰もが同じように驚いていたことには変わりなかった。

 

「なぜだ……!」

「なぜ……か。さぁな……だが、傍観者でいるのはやめにした。それだけのこと」

「……なんだと?」

 

 デュークモンの言葉に、この場の全員の顔に疑問が浮かぶ。だが、その疑問の答えが出ることはなかった。というか、出るはずもない。

 デュークモンのその答えは、かの騎士と出会って出したものであるのだから。かの騎士と出会ったあの後、デュークモンは、気づいた。あの時、試していたのは自分ではなく、自分は試されていたのだ、と。

 そうして、その答えにたどり着いたデュークモンは悟る。ロイヤルナイツに入った自分は、いつの間にか他者を見下すようになっていたのだ、と。見下していたからこそ、偉そうに他人を試し、他人を測ろうとしていたのだ、と。

 

「裏切るのか……!」

「残念だなぁ。我が盟友たちよ。このデュークモンとしても残念極まりない……が、やはり自分の気持ちを裏切ることはできない。我が君イグドラシルを裏切ることになろうとも、な」

 

 それでも、かの騎士に試されて、デュークモンは自分のするべきことが見えた。

 試すべきは、自分。他人を動かすのでも、他人に動かさせられるのでもない。自分の意思で動き、確かめるべきなのだ。

 少なくとも、ロイヤルナイツに入る前、デュークモンはずっとそうしてきた。だが、ロイヤルナイツに入って、いつの間にかそうすることはなくなってきていて。

 そのことに思い当たったからこそ、デュークモンは決意したのだ。昔のように、自らが思いのままに動くことを。

 

「さて、これで戦力は逆転したな」

「っく……!」

「これでもまだやる気だというなら……是非もないが?」

 

 そうして、デュークモンの参戦によって戦力差は覆った。

 エグザモンの言う通り、これでデュナスモンたちの圧倒的不利になる。とはいえ、これでもデュナスモンたちの引く理由にはならない。デュナスモンたちは、あのバケモノの脅威を間近で見たのだから。

 否応なしに、辺りの緊張の雰囲気が増していく。それは、戦いの始まりを告げるようで。

 

「仕方がない。では、ここはこちらが引かせてもらうとしよう」

「我々から逃げ切れると思っているのか?デュークモン!」

「無論だ。ここにいるのが我々だけだと誰が言った?」

「何?」

 

 だが、戦いは始まらなかった。

 デュークモンが引くと言って。その言葉にマグナモンがそう反応したその瞬間に――。

 

「“オーディンブレス”!」

「何……!?」

「まさか!?」

 

 ――その瞬間に、極低温のブリザードがこの場に発生する。

 その技は、オメガモンにとってもよく知る相手の技で。

 辺りが何度目になるかもわからない驚愕に包まれる中、アルフォースブイドラモンと赤い影がドルモンとウォーグレイモンたちを攫って。

 デュークモンたちはこの場を脱することができたのだった。

 




というわけで、第十二話。
ようやく物語の前半が終わりました。
ロイヤルナイツという組織がほぼ半壊してますね。当人たちの都合で。
そして、地味に生き残っているメタルガルルモンとどっかへ吹っ飛んでいったトコモンの二人。どうなっているんでしょうかね。

さて、次回は影の薄かった他のロイヤルナイツが数体出る予定です。

それでは次回もよろしくお願いします。
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