【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
陽が昇る。長い夜が明けて、新たな一日の始まりを告げるその時刻に、ウォーグレイモンたちは、滝下の隠れ家にいた。
普段はメタルガルルモンとウォーグレイモンの二人きりのその隠れ家も、ロイヤルナイツの二人と気絶したドルモンが加わっていて、かなり賑やかだ。
「ドルモンはまだ起きないか」
「あれだけの戦闘をした後にイグドラシルによって直接弄られたのだ。起きるまで時間がかかるやもしれぬ」
「……そうか。くそっ!」
そんなデュークモンの言葉に、メタルガルルモンが珍しく言葉を荒げる。
自分の不甲斐なさを悔いているのだ。今回、メタルガルルモンとウォーグレイモンは何もできなかった。二人はただ現場に行っただけで、その後は見ていることしかできなかった。
「メタルガルルモン……」
「悪い。けど、情けなくて……」
ロイヤルナイツの面々を前にして、彼ら二人は最後まで蚊帳の外だった。複数のロイヤルナイツという圧倒的な力を前にして、二人の存在では、力では、事態に介入することを許されなかった。
もちろん、二人が弱いというわけではない。だが、そんな二人が弱く見えてしまうほど、ロイヤルナイツの面々は強すぎるのだ。
とはいえ、相手が強かったから、仕方がない。そんな情けない理由では、メタルガルルモンも自分を納得させることができるはずもなかった。
無論、それはウォーグレイモンも同じなのだが。
「……」
「……ふぅ」
そんな自分たちの力の無さに直面しているメタルガルルモンたちを前にして、デュークモンとアルフォースブイドラモンの二人は黙っていることしかなかった。
今のウォーグレイモンたちの感じている思いに自分たちが関わっている以上、自分たちがあれこれ言ったとしても、慰めにしかならないと思ったのだ。だから、あえて口を出さない。
今のウォーグレイモンたちが必要としているのは、慰めではないのだから。
「ウォーグレイモン?何処へ行くつもりだい?」
「気分転換に出てくる。トコモンのことも気になるからな」
そうアルフォースブイドラモンの質問に答えたウォーグレイモンは外へと飛び出していく。ウォーグレイモンはドルモンを助けた時から、ずっと気になっていたことがあったのだ。
トコモンがどこへ行ったのか。それだけが、ウォーグレイモンは気がかりだった。
自分がトコモンを託した相手がドルモンであるということは、ウォーグレイモンも気づいていた。なら、そのトコモンはどこへ行ったのか。
無論、あの場にロイヤルナイツの面々がいた以上、最悪の事態になっていた可能性もある――が、ウォーグレイモンは信じたくなかった。だからこそ、ウォーグレイモンは信じて、空を翔る。
そんなウォーグレイモンのことを見送って、デュークモンたちはドルモンが起きるのをただ待ったのだった。
ウォーグレイモンが滝下の隠れ家を飛び出したのと同時刻。
昨夜の事件があった
まるで修道女のような姿をした二人のそのデジモンたちは、片やシスタモンブランと呼ばれる白うさぎをかぶったような女の子の成長期デジモンで、片やシスタモンノワールと呼ばれる黒猫の形をしたクロブークを被ったような女の子の成熟期デジモンだ。
そんな彼女たちは、まるで何かを調べているかのように、その場を歩いている。
「やはり……昨夜ここで何かがあったことは間違いありませんわね。それも、異様で圧倒的な何かが」
「……お、お姉さま……こんな場所にいて大丈夫ですか?」
彼女たちが調べているのは、昨夜のこと。遠くにいた彼女たちでもわかるほどの、異様で圧倒的なナニカの波動。
「ふっ……大丈夫ですわよブラン。一応、私たちはジエスモンの従者となっているのです。仮にロイヤルナイツに出会っても……ジエスモンとガンクゥモン様の名前を出せば」
同じロイヤルナイツのジエスモンは呼び捨てであるのに、ガンクゥモンは様付け。
成長期と成熟期の分際でジエスモンの扱いが悪すぎるが――まあ、それも彼女たちの事情を知れば納得だろう。実は、この二人はガンクゥモンと共にジエスモンを育てた者たちなのだ。つまり、ジエスモンが成長期だった頃からの付き合いというわけである。
そう。彼女たちは、言うなればジエスモンの姉的存在。姉はいつまで経っても姉、とそういうことだ。弟がどれほど偉くなっても、姉に敵うはずもないのである。
だからこそ、ジエスモンに実力で抜かれた今でも、ジエスモンの従者となっている今でも、公の場以外では彼女たちはこんな調子だった。
「で、でもぅ……ガンクゥモン様はともかく、ジエスモンは今反逆者扱いとなっているって……ガンクゥモン様が……」
「……」
「……」
「そ、そんなことはわかってるわよ!次行くわよ!次!」
そう言って、シスタモンノワールは弱気なことを言う
そんな
ちなみに、妹に指摘されたことをわかりきったことだ、と言ったそんなシスタモンノワールは、どこか焦ったような様子で、この場をそそくさと立ち去ろうとしていたりするのだが――それはほんの余談である。
「まったく。ジエスモンは勝手よね!自分が動けないからってアタシたちを動かすなんて!一回シメといた方がいいかしらね!」
「で、でも、やられちゃいますよぉ」
「わかってないわね。私たちにはあの手のかかるバカを殴る権利くらいあるわ。ブランあなたにもあるのだから、もっと堂々としていなさい」
「でもぅ……」
シスタモンブランは、こうサバサバとした姉の精神構造が羨ましかった。
いくら自分たちが昔面倒を見ていた弟分だとはいえ、今のジエスモンはかのロイヤルナイツに名前を連ねる者。まあ、今も名を連ねているかは微妙であるが、その領域に至った者であるという点では変わりない。
そんな偉業を成し遂げた弟分をシスタモンブランも誇らしく思う反面、昔のように接せられればとも思っていた。ようするに、弟がちょっと遠くに行ってしまった気がして、寂しい気分がする姉の図である。
そして、そんなシスタモンブランだからこそ、以前と変わらぬ様子でジエスモンに接することができるシスタモンノワールのことが羨ましかったのだ。
「ふぅん?……まぁいいわ。アタシがあなたの分も殴っておいてあげるから!」
「えぇっ!?い、いいですお姉さま!」
「遠慮することないわ!任せておきなさい!」
シスタモンブランは止まらない姉の暴走を何とかしようとしていたが、もうその姉の中では、ジエスモンを殴ることは決定事項になってしまったようだった。
自分の手の及ばない姉の強行に、シスタモンブランは自分の無力さを感じながら顔を伏せる。
その時のシスタモンブランの脳裏には、はっきりとそのいつかの光景が思い浮かんでいた。シスタモンノワールが、ジエスモンを殴り、その鎧の硬さに手を痛めて涙目になる――そんな、いつも通りの光景が。
「……はぁ」
「なによ。溜め息吐くと幸せが逃げるわよー?」
「誰のせいだと思っているのですか!」
「お、珍しく意外に怒ってる?やっぱりブランも殴りたいわよねー」
「うぅ……そういうことじゃないですぅ」
まあ、今はシスタモンブランの方が涙目になっているのだが。
ともあれ、幸せそうな日常を送っている二人だった。この過酷な時代において、そう在れるのは、彼女たちが幼い頃にどん底を生きたが故か。
「ほら、行くわよ。まだ生き残っているデジモンたちを探さなきゃ」
「あっ!待ってくださいお姉さま!」
ともあれ、この二人は世界がどのような状況にあろうと変わらないだろうし、本人たちも変わりたくないと思っている。姉が妹を引っ張って、妹はそんな姉について回って。そんな彼女たちの周りに
そんな、変わって欲しくはない日常を、彼女たちは望み続けている。だからこそ、彼女たちはここにいる。
「まったく。好き好んで私たちが世界のために動くもんですか」
「……お姉さま?」
「なんでもないわ。ふふっ……本当に手のかかる弟分ね」
そうして、彼女たちは行く。今は動けない弟分の願いを叶えるために。自分たちが望む日常を守るために。この時代を変える何かを探すために。
そんな彼女たちが出会ったのは――。
「っ!お姉さま!」
「なに?ブラン……っその子!」
「大丈夫!?」
「ァ……ゥ……」
――そんな彼女たちが出会ったのは、ボロボロの体で、それでもなおどこかを目指そうとしている
そして、シスタモン姉妹がトコモンを発見したのと同時刻。
ウォーグレイモンたちの隠れ家にて――。
「あれ、ここは……?」
――昨夜の激戦を乗り越えた者が目を覚ます。
それが、この世界のターニングポイントだった。
さて、今更ながらに王竜剣の扱いに迷っている作者です。
クロニクルファンとしては、ゼヴォや最近の作品みたいに王竜剣をアルファモンのオマケ扱いにはしたくはない。けど、リュウダモンは出てないし……。
こうなるなら、ドルモンのライバル役で初めの方から出せばよか……はっ!?
今更だけど、(オウリュウモンだけを)出すべき?でも、そうすると扱いが軽くなりそうだなぁ……ならいっそリストラするべき?と悩んでいます。難しいですね。
ともあれ、そいうわけで、第十四話。
ジエスモンを出すのなら、ということで参加が決定した二人とトコモンが出会った話でした。
さて、これからトコモンがどうなるのか。
徐々に両方の原作から離れ始めているので、読者さんの反応が怖くなり始めている作者です。
さて、次回は起きたドルモンの欝と立ち直り回ですね。
それでは次回もよろしくお願いします。