【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
時は少し遡る。
ドルモンと別れたメタルガルルモンとアルフォースブイドラモンの二人は、自分たちのいた場所とは別の隠れ家へと向かって、高速で空を翔んでいた。
ちなみに。当然のことだが、アルフォースブイドラモンがメタルガルルモンのスピードに合わせている。
メタルガルルモンとしてはこの現状に申し訳ない思いでいっぱいだったが、こればかりは仕方がない。メタルガルルモンのスピードではアルフォースブイドラモンのスピードには敵わないのだ。
まあ、とはいえ、二人とも並のデジモンでは目で追うことすらできないほどの相当なスピードが出てはいるのだが。
「見えてきた!」
「あの山岳地帯かい?」
「そう!あそこがこのベルサンディターミナルで最も多くのデジモンたちがいる場所だ!」
そうして、飛び続けてはや数時間。
森を抜けたアルフォースブイドラモンたちの目の前に見えてきたのは、一つの山だった。陥没した大穴に湖があったり、崖があったり、とさまざまな景色を見せるその山。なるほど、地形の面からいっても、隠れ家にするのはもってこいの場所だろう。
「最も多く……X抗体デジモンも通常デジモンも、両方かい?」
「ああ、そうだ。ロイヤルナイツがレジスタンスって呼んでいる者たちだな」
「うぐ……っ」
その隠れ家にいる者たちは、ロイヤルナイツという共通の敵の出現によって、X抗体デジモンと通常デジモンが関係なく集まっている。
いがみ合っていた者たちが、ロイヤルナイツという敵の出現によってまとまりかけているのだ。“元”ロイヤルナイツのアルフォースブイドラモンとしては、複雑な気持ちだろう。
まあ、先日のウォーグレイモンが説得に失敗した者たちのように、この現状でもなお、好き勝手している者たちもいるのだが。
ちなみに、レジスタンスという言葉はここ数日でロイヤルナイツたちが使い始めた言葉であって、当人たちがそう名乗っているわけではない。
「問題はボクがいきなり姿を見せて大丈夫かってことだね」
「俺もいるだろうし、大丈夫だと思うぞ」
「……そうだな。頑張ろうか」
そうして、数分後。
メタルガルルモンの先導の下で、アルフォースブイドラモンはその隠れ家へとたどり着く、が。その隠れ家の入口にてアルフォースブイドラモンは温かく迎えられる――わけもなく。
アルフォースブイドラモンを迎えたのは、閃光のような銃撃だった。
とはいえ、たかがこの程度の銃撃を避けられないようでは、話にならない。最小限の動きでアルフォースブイドラモンはそれを躱し、地面に着地する。
「っちぃ!」
「なっ!ロイヤルナイツの襲撃だ!全員を急いで逃がしてください!」
「違う!ボクは敵じゃない!」
「んなわかりやすい嘘に引っかかるかよっ!」
銃を撃ってきたデジモンは、包帯男のような完全体デジモンのマミーモンだ。ロイヤルナイツの一員が現れたから、撃ってきたのだろう。
その隣にいるのは、シルフィーモンと呼ばれる所々に獣と鳥の混ざったような部分がある人間のような完全体デジモンだ。彼は焦ったように周りにいるデジモンに避難命令を出している。
そんな彼らの行動は、アルフォースブイドラモンとしても理解はできるが――理解できるからといって、勘違いされているこの現状を納得できるかといえば別だろう。
「アルフォースブイドラモン!大丈夫か!」
「メタルガルルモン!」
そうして、そんなアルフォースブイドラモンに遅れてメタルガルルモンは到着した。何と言うか、微妙に来るのが遅かった。一緒に来れば、もう少し穏便な対応になっただろうに。
まあ、その辺りは、この隠れ家にたどり着く時、気持ちをはやらせて最後の最後にスピードを上げてしまったアルフォースブイドラモンにも非があると言えばあるのだが。
「メタルガルルモン!?どういうことだ?てめぇ、まさかオレたちを売りやがったのか!」
「違う!アルフォースブイドラモンは俺たちの味方なんだ!」
「信じられるかよ!そいつらには……仲間が大勢殺されてるんだぞ!」
「でも!俺たちは助けられた!」
メタルガルルモンの中のそんな言葉に、マミーモンが反論する。
まあ、当然だろう。彼らにとってはロイヤルナイツというのは現状の敵でしかない。いきなりそんな面々の一人が味方だと言われて、納得できようはずもない。
ちなみに、そんな風に言い争いをするマミーモンとメタルガルルモンの間で、シルフィーモンとアルフォースブイドラモンは気まずそうにしている。
アルフォースブイドラモンの方はマミーモンの言っていることがわかるがゆえで、シルフィーモンの方はメタルガルルモンの言っていることを信じたいがゆえにだ。
「てめぇは甘いんだよ!現実を見ろ!」
「現実は見ている!ロイヤルナイツの中にも俺たちの味方をしてくれるやつもいる!デュークモンだって俺たちの味方をしてくれている!」
「騙されてるに決まってんだろうが!」
そうして、言い争いがヒートアップしていく中で――この現状に気まずい思いをしているアルフォースブイドラモンは、あることに気づいて。
その瞬間に、サッと自分の血の気が引くのを感じながらも、アルフォースブイドラモンは行動を開始した。
「危ないっ!」
「何!?」
「えっ!?」
アルフォースブイドラモンはメタルガルルモンたち三人を体当たりして、弾き飛ばす。
突然の事態になすすべなく、呆然としたままに吹き飛ばされたメタルガルルモンたちだが――その直後、彼らは見た。まるで蜘蛛の巣のような形の攻撃が、アルフォースブイドラモンに直撃したその光景を。
そうして、一瞬おいて庇われたことに思い至ったメタルガルルモンたちに飛んできたのは、アルフォースブイドラモンの焦ったかのような声だった。
「逃げろ!」
「アルフォースブイドラモン!?」
「いいから逃げろっ!」
襲撃されたという事実以外のことが何一つわからないメタルガルルモンたちは、アルフォースブイドラモンの方を見る――が、その視線を向けられている彼は、もはやメタルガルルモンたちの方を見てなかった。
アルフォースブイドラモンが見ていたのは、ただ一つ。この場で自分を襲ってきた敵だけだった。
「ふん。やはり庇うか。ロイヤルナイツにおいてそれほどの甘さを持つのはジエスモンと貴様くらいだろう」
「……やっぱり君が来たか。ドゥフトモン!」
アルフォースブイドラモンの言葉に答えるように、その者が姿を現す。
現れたのは、ロイヤルナイツ一の知恵者で、屈指の戦略家。状況に応じて二つの形態を使い分けるデジモン。ドゥフトモンその人だった。
「貴様のスピードに対抗できるのは、今のロイヤルナイツで我だけだろうからな」
「だろうね」
そうやって会話をしながらも、アルフォースブイドラモンは内心で焦っていた。
ドゥフトモンは戦略家だ。スペックで光るものがない分、その知略は凄まじい。そのドゥフトモンがこうして仕掛けてきた以上、自分に対しての対策はされているだろう、と。
そのことを、アルフォースブイドラモンは理解していた。
だが、だからといって逃げることは論外であるし、みすみすやられることも論外だ。ゆえに、アルフォースブイドラモンは覚悟を決めて、ドゥフトモンに挑む。
「行くぞ!」
「ふん!我が知略の冴え。見せてやろう!」
その瞬間に、ドゥフトモンの姿が変わる。聖騎士としての姿から、獣のような姿へと。それが、ドゥフトモンレオパルドモード。ドゥフトモンが戦場を駆け抜ける時の姿。
対するアルフォースブイドラモンもその両手にあるVブレスレットから剣を作り出す。
そうして、その直後。お互いは戦い始めて――。
「むっ!?」
――その瞬間に、アルフォースブイドラモンは自分の身に起こった違和感に気づいた。重いのだ。まるで鉛になってしまったかのように、自分の体が重く感じられ、思うようなスピードが出ない。
そのことに気づいて、その瞬間にアルフォースブイドラモンは悟った。最初の奇襲の時に、自分のスピードを封じる何かをされたのだろう、と。
つまり、アルフォースブイドラモンは一番の強みを失ってしまったのだ。
「っふ。その程度か。自慢のスピードはどうした?」
「よく言うよ!君が何かしたくせに!」
縦横無尽に地を走り、空を飛ぶドゥフトモンは、まるで舞うかのようにアルフォースブイドラモンを翻弄する。そんなドゥフトモンに対して、アルフォースブイドラモンはVブレスレットから発生させる剣をシールドに切り替えたりして、対応していた。
だが、どうにもアルフォースブイドラモンの旗色が悪い。どうしても、いつも通りに戦えないというその事実が響いているようだった。
「っく!」
「どうした?調子が悪そうだな」
「心配ないな!」
「なら、思い切り行かせてもらおう。今の貴様にはこれは躱せまい!“ヴォルケンクラッツァー”!」
そうして、ドゥフトモンのレオパルドモード時の必殺技の一つが放たれる。
その瞬間に、大地より超高層の岩盤が出現してアルフォースブイドラモンを突き上げる。
“ヴォルケンクラッツァー”と呼ばれるその技は、ドゥフトモンの言う通り、今のアルフォースブイドラモンに躱すことはできなかった。
まず間違いなく、アルフォースブイドラモンはドゥフトモンの必殺技を受けてしまった。その瞬間の光景をドゥフトモン自身も見ていた。
だが――。
「……ふむ」
「“シャイニングVフォース”!」
「そう来ることも読んでいた!」
――だが、地殻変動の如きドゥフトモンの必殺技が終了した直後。
ドゥフトモンを光線が襲う。それは、アルフォースブイドラモンの胸部のV字アーマーから放たれる必殺技だった。
だが、ドゥフトモンはその光線が来ることさえも予想していたようだ。その光線を躱したドゥフトモンが視線を向けた先には、傷だらけながらも健在のアルフォースブイドラモンの姿があった。
「やはり一筋縄では行かぬ、か」
「これでも“元”ロイヤルナイツだからね!」
「だが、この勝負……我の勝ちだ」
「なん……っ!」
そうして、ドゥフトモンの言葉に疑問を抱いたアルフォースブイドラモンは、その直後に自分の敗北を知る。自分の周りに球状のエネルギー機雷がいくつも発生していることに気付いたのだ。
それは、ドゥフトモン:レオパルドモードの必殺技の一つ。“エアオーベルング”。
アルフォースブイドラモンには、それがいつ仕掛けられたものなのか、わからなかった。
だが――。
「戦いとは、始まる前に決しているものなのだ」
「っく!」
――だが、ドゥフトモンのことだ。おそらくかなり早くの段階から準備されていたのだろう。
いつもならいざ知らず、スピードがうまく出せない今の状態ではこの包囲網を突破することはできない。そのことに一瞬で思い至ったアルフォースブイドラモンは、知らず苦い顔をした。
「むっ!」
「えっ?」
だが、覚悟を決めて耐えるしかない、と。アルフォースブイドラモンがそう覚悟したその瞬間に、かなりの数の弾丸やミサイルが、その機雷のいくつかを吹き飛ばした。
というわけで、第十七話。
何がどうなっているのか、あまりの長さに前後編に分かれました。
アルフォースブイドラモン対ドゥフトモン戦です。
次回は後編。
決着編です。
それでは次回もよろしくお願いします。