【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
アルフォースブイドラモンとドゥフトモンが激戦を繰り広げる中。蚊帳の外となっていたメタルガルルモンたちはというと――。
「すごい。これがロイヤルナイツ同士の戦いですか……!」
「言っている場合じゃねぇ!急いで俺たちも逃げねぇと巻き込まれるぞ!」
「急いで逃げるんだ!」
――隠れ家の中のデジモンたちの避難誘導をしていた。
まあ、約数名はロイヤルナイツという格上の戦いに魅入られて動きを止めていたりもするのだが、そこはメタルガルルモンたちがうまく正気に戻して逃がしている。
戦いが始まって数分もする頃には、入口付近にデジモンは誰も残っていなかった。全員が、隠れ家の奥の別の抜け道へと向かったのである。
そうして、逃げ遅れた者はいないかを最後尾を行きながらチェックするメタルガルルモンたち。だが、アルフォースブイドラモンが早い段階でドゥフトモンを押さえてくれたおかげか、逃げ遅れた者はいないようだ。
そんな中で――。
「……やっぱり、俺は戻る」
「はぁっ!?何言ってやがんだ!戻る?あの化け物どもの戦いの中にか!?」
――そんな中で、メタルガルルモンがポツリと呟いた言葉に、マミーモンが反応した。いや、マミーモンだけではない。声こそ出さなかったが、シルフィーモンも似たようなことを思っている。
だが、そんな二人の目にさらされながらも、メタルガルルモンは来た道を戻ろうとしていた。
「アルフォースブイドラモンが心配だ」
「だから、アイツはロイヤルナイツだぞ!そりゃ、俺たちを助けてくれたのは認めるが……助けに行く理由がないだろ!」
「我々が行っても足でまといになる可能性もあります」
「ちょっと待てよ!俺たちも行くのか!?」
我々、と。ちゃっかり助けに行くメンバーに自分とマミーモンを加えているシルフィーモン。そのことにマミーモンは気づいて、冗談ではないとばかりに声を上げた。
「冗談じゃねぇ!アイツらの戦いに割って入れるか!無謀だぞ!」
「しかし、割って入らなくてもできることはあるはず。私はそうするべきだと思う。そもそも、万が一アルフォースブイドラモンが負けることを考えれば、今行くのが良い!」
「ぬぐっ……それは」
シルフィーモンの言葉に、マミーモンは押し黙る。
ここにいる面々は襲ってきたデジモンの姿を正確に見てないが、おそらくはロイヤルナイツの誰かだろうことには気づいていた。つまり、外で起こっているのはロイヤルナイツ同士の戦いで、どちらが勝っても負けてもおかしくはないということ。
アルフォースブイドラモンが勝つ確率も負ける確率も、半々で存在するということだ。
まあ、実際にはドゥフトモンの策略によって負ける確率の方が若干高くなっているのだが――それはともかくとして。
アルフォースブイドラモンが負ければ、次は自分たちの番だ。そうなってしまえば、おそらく勝ち目はゼロに近く、そして全滅の可能性すらありうる。
であるならば、一応こちらの最大戦力として考えられるアルフォースブイドラモンを援護する形で動くべきだ。幸いにしてここにいる面々は、この隠れ家の中でも指折りの実力者なのだから。
「だが……アイツはロイヤルナイツで……」
シルフィーモンの言うことにも一理あることは、マミーモンもわかっている。
それでも彼が迷うのは、アルフォースブイドラモンが自分たちの仲間を大勢殺したロイヤルナイツのメンバーだからだ。
「ロイヤルナイツとか、そんなのは関係ない!助けてもらったんだ。仲間なんだ。それだけで理由は十分だ」
「待ってください!私も行きます!」
マミーモンが迷っている間にも、メタルガルルモンはその言葉だけを言って来た道を戻リ始める。時間が惜しいとばかりに。
そんなメタルガルルモンに続くように、その後をシルフィーモンが追っていった。
「っち……」
そうして、一人残ったマミーモンは数分間悩んだ後に舌打ちして――急いでメタルガルルモンたちの後を追うのだった。
ともあれ、そんな風にマミーモンが走り出した頃には、メタルガルルモンとシルフィーモンの二人は入口にたどり着いていた――が、そこで二人が見たのは驚愕の光景だった。
地形が変わっている。まるで地殻変動やら天変地異やらがあったかのように。
それが、先ほどのドゥフトモンの“ヴォルケンクラッツァー”が原因であることまでは二人も知らない。が、その光景を作り出したのが、アルフォースブイドラモンか、襲撃者のどちらかだということは理解していた。
そして、そんな光景こそがロイヤルナイツとのレベルの違いを見せつけられるようで、二人は知らずに気合を入れ直した。ここから先は、少しでも対応を誤れば死んでしまう場だからこそ。
その光景に目を奪われがちだった二人だが、ふとアルフォースブイドラモンや襲撃者の姿を探して上を見上げて――サッと血の気が引いた。
上空にいたアルフォースブイドラモンは、エネルギー状の機雷に取り囲まれているところだったから。
「っ!アルフォースブイドラモンが……!」
「わかってる!」
これはマズイ、と。シルフィーモンが声を上げた時には、メタルガルルモンは既に自分の攻撃する態勢に入っていた。
その瞬間に、メタルガルルモンの全身に装備されたミサイルが、ガトリング砲が、レーザーが、放たれる。一直線に向かったそれらは、アルフォースブイドラモンを取り囲むモノをすべてを取り除くことこそはできなかったが――それでも、アルフォースブイドラモンが逃げる隙間を作るには十分だったようだ。
「っく……!」
その直後、そのエネルギー状の機雷が爆発し、凄まじい爆風が辺りを吹き飛ばす。
「大丈夫か!?」
「ありがとう!助かった!」
だが、その爆発した瞬間には、アルフォースブイドラモンはすでに爆発をくぐり抜けてメタルガルルモンたちの下へとやって来ていた。
「援軍か。随分と馴れ合っているようだな。アルフォースブイドラモン」
「ボクも助けに来てくれるとは思わなかったけどね」
「だが、いくら来ても雑魚は雑魚。その程度ではものの役には立たん」
逃げろ、と言ったのに。それでも、こうして援護に来てくれたメタルガルルモンたちを前にして、アルフォースブイドラモンはそんな彼らのことを無謀だと思うのと同時に、その気持ちを嬉しくも思っていた。
だが、無謀は無謀。助けられた身であるが、もう一度撤退しろと言った方がいいか、と。そう思ったアルフォースブイドラモンではあったが――メタルガルルモンの決意を秘めた目を見て、その考えを改めた。ここでそういうことを言うのは、命を賭けようとしている彼らに対する侮辱だと思ったのだ。
「敵はドゥフトモンだ。頭が回る。気をつけろ!」
「わかった!」
「はい!」
そうして、再び戦闘が始まった。
アルフォースブイドラモンは空を飛び、その両腕に装備されたVブレスレットから発生された二振りの剣をもって、果敢にドゥフトモンを攻める。そんな彼を援護するように、メタルガルルモンの武器が火を噴いた。
もちろん、シルフィーモンも見ているだけではない。“トップガン”と呼ばれる必殺技をもってして、アルフォースブイドラモンの援護を行っていた。
「……鬱陶しいな」
メタルガルルモンの援護が加わったアルフォースブイドラモンを前にして、ドゥフトモンは呟く。ドゥフトモンにとってメタルガルルモンたちなど、相手ではない。だが、そこにアルフォースブイドラモンが加わっているせいで、面倒なことになっている。
そんな現状に、ドゥフトモンは最悪の可能性を思い浮かべ、されどそうならないように策を練る。
「雑魚から片付けるか」
「っ!させない!」
結果として、ドゥフトモンは、弱いくせに、この状況をより面倒なものにさせているメタルガルルモンたちを先に片付けることにした。弱いところから攻めるというのは、基本中の基本だ。
そうさせまいと一層の気合を入れるアルフォースブイドラモンと戦いながらも、ドゥフトモンは見当違いな方向を攻撃した。
「何を……っ!」
その疑問を口に出してから、アルフォースブイドラモンは気づいた。先ほどの攻撃でドゥフトモンが狙っていたのは自分ではなく、この場所そのものだったことに。
ドゥフトモンは、自分に向かってきているメタルガルルモンたちの攻撃さえも利用して、自分の技によって作り出された超高層の岩盤を
そうして、崩れた岩盤のいくつもの欠片は、メタルガルルモンたちへと降り注ぐ。
「っ!シルフィーモン!」
「なっ!」
こうなってしまえば、生き埋めになりたくはないメタルガルルモンたちはそちらの対処に追われるしかない。が、メタルガルルモンはともかくとして、シルフィーモンの方は頭上から降り注ぐ大量の瓦礫に対処しきることはできなかった。
対処し損ねた瓦礫が、シルフィーモンの頭上を覆う。もうメタルガルルモンの援護も間に合わない。シルフィーモンは、一寸先の自分の死を幻視して――。
「“スネークバンデージ”!」
――直後、後方から飛び出してきた蛇のように動く包帯が、シルフィーモンを救い出した。
生きている事実に呆然としていたが、ハッとなったシルフィーモンはその包帯の主を見る。そこにいたのは、不機嫌そうなマミーモンだった。
「す、すまん!助かっ……」
「何やってやがんだ!」
先ほどはああまで言っていたのに、来てくれたマミーモン。そんな彼に感動しながらも、シルフィーモンは礼を言おうとして――そんなシルフィーモンの言葉は、他ならぬマミーモンによって遮られた。
「てめぇな!てめぇみたいに強くねぇ俺たちゃ命懸けなんだよ!」
「……!」
「そんな俺たちが死ぬ気で仲間でもねぇてめぇのためにやってんだよ!だから……!」
マミーモンのその言葉は、シルフィーモンに向けられたものではなかった。アルフォースブイドラモンに向けられたものだった。
とはいえ、アルフォースブイドラモンとて、命懸けなのだ。マミーモンの言い分は、アルフォースブイドラモンの事情を知らない自分勝手なものでしかない。
だが、それはアルフォースブイドラモンも同じこと。アルフォースブイドラモンは、マミーモンたちの事情を知らない。
「だから、てめぇも死ぬ気でやりやがれよ!」
それでも、そこにあった言葉には、マミーモンの思いがあったような気がした。だから、アルフォースブイドラモンは――。
「何を笑っている?まさか、あのような戯言に感ずることがあったのか?」
「いや、何。命懸け……ね。簡単に言ってくれるよ」
「本当に貴様という奴は……!やはり貴様はロイヤルナイツにはふさわしくない!」
「ははっ今更だね」
――命を賭ける。
この世界にあるデジモンを削除するXプログラム。ロイヤルナイツはイグドラシルによって、その影響を受けないよう調整されている。
が、アルフォースブイドラモンは自らそのプログラムを取り込む。いかに調整されているとはいえ、それは無謀の一言。ヘタをすれば、影響を受けないのに影響を受けようとしているという矛盾した状態ゆえに、自己崩壊の危険性さえある。
だが――。
「あぁああああ!」
――だが、アルフォースブイドラモンは、その危険性を意志の力で無理矢理に抑え込んだ。
そうして、一瞬後。
「ば、かな……!ロイヤルナイツがX抗体を得るだと!?」
そこにいたのは、X抗体を獲得したアルフォースブイドラモンだった。全体的に筋肉が増え、その鎧にもX抗体特有の石や機械の感じが随所にはめ込まれている。
なるほど、と。アルフォースブイドラモンは進化した自分の体を確かめるように動き、そうしてX抗体の凄まじさに感嘆していた。
アルフォースブイドラモンは、ドゥフトモンの仕掛けの影響が消えているだけではなく、デジモンの中でも最高峰の位置する自分のスペックがさらに上がっていることを実感したのだ。
「異分子にまで落ちたか……!」
「異分子だとか、どうでもいいよ。でも、これで……」
「っ!」
「……終わりだ」
そうして、一瞬後。ドゥフトモンを襲ったのは、彼でさえ見えなかったほどの凄まじい速さ。それほどの疾さによって踏み込んできたアルフォースブイドラモンの――。
「ば、かな……!」
――その腕の剣だった。
というわけで、第十八話。
アルフォースブイドラモンのX進化回でした。
さて、次回は……はい。
いつぞやの感想で、登場することはないと言ってしまったあの人が登場します。
なぜこうなったんでしょうね……。
ともあれ、それでは次回もよろしくお願いします!