【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
朝日が世界を照らす。それは、地球でも、この世界でも変わりない。
そんな中で、ドルガモンは一人で草原を歩いていた。あの後、森から抜け出て、この草原に出てきたのである。
この草原はそれなりに大きめな川もあって、かなり豊かな表情を見せている。ここだけ見れば、この世界がこうも残酷な世界とは全く思えない。
だが、それでも。いくら自然豊かだろうと、この世界に住むデジモンたちにとって、世界は残酷であるという真実は変わらない。変わりようもない。
「……ん?」
草原を歩くドルガモンは、その後ろから来る者の存在に気づいた。その数、三。誰かと気になり、ドルガモンが振り返ると、そこにいたのは険しい顔をしたマッシュモンたちだった。
マッシュモンは、キノコに手足が生えたような成長期デジモンだ。そして、
「出て行けよ!お前は……“選ばれた”デジモンじゃないんだろ!」
「お前ら“選ばれてない”デジモンのせいで、この世界がおかしくなったって……アンドロモンは言ってたぞ!」
「出て行け!お前らなんか出て行け!」
彼らの言い分は実にわかりやすい。
ドルガモン――ひいては“X抗体”を持つデジモンは、このNEWデジタルワールドから出て行けと言っているのだ。
まあ、客観的に見れば、彼らの言い分もわからないでもないだろう。“X抗体”を持つデジモンがこの世界に来てしまったことによって、この新世界は旧世界と同じ運命を辿りそうになっているのだから。
とはいえ、この世界はもう旧世界と同じように
「おい!何か言ってみろよ!」
「……ッ!」
「な、なんだよ!やる気か!?」
「……」
「あっ……待て!」
ともあれ、マッシュモンの言い分が何であろうと、彼らが命を狙うような凶行に及ばないだけ可愛いものである。
ここには自分の居場所がないという事実を突きつけられて、ドルガモン自身、どこか胸に来るものがあった。だが、命を狙われているわけでもなし、相手するだけ無駄だと自分に言い聞かせて、ドルガモンは空を飛んでその場を離れたのだった。
「……はぁ」
そんなこんなで、マッシュモンをやり過ごしたドルガモンは、空を飛びながらため息を吐く。
旧世界もこの新世界も変わりない。彼には旧世界の記憶が無かったが、それでもその惨状を知識としては知っていた。
旧世界――すなわちかつてのデジタルワールド。数年前まで、そこはデジモンたちの楽園だった。だが、楽園であったが故に、デジモンたちは増えすぎ、世界を圧迫した。もはや、世界の許容量よりもデジモンたちは多くなってしまったのだ。
このままでは、デジモンたちは共倒れし、世界規模の消滅が起こる。それを危惧したこの世界の神・イグドラシルは、選ばれたデジモンたちのみをこの新世界・NEWデジタルワールドへと送り込み、残ったデジモンたちはXプログラムというウィルスによって全て消去するという凶行に至った。
だが、デジモンたちも生き物。ただで死ぬわけなどない。少数のデジモンたちは、Xプログラムをその身に取り込み、その耐性――すなわち、X抗体を獲得することで、生き延びたのだ。
強き生命は自らを進化させ、生き残った。それが、X抗体。
言葉にすればこれだけのことであるが、この後が問題だったのである。いくらX抗体を得ようと、内部からXプログラムの脅威に晒されていることには変わりがない。
故に、X抗体を獲得したデジモンたちは、他のデジモンたちからX抗体を奪い合った。Xプログラムに恐怖しないために。
そうして強き抗体を手に入れた者たちは、Xプログラムの脅威のないこの世界に逃げ込んできたのだが――だが、何故かその新世界も今はXプログラムの汚染の危機に陥っている。
この新世界も、状況だけでは旧世界と変わらなくなってしまっているのだ。その事実はつまり、この世界でもX抗体の奪い合いが起き始めているということでもある。
手持ちの知識で現状を確認したドルガモンは再度溜め息を吐き、辺りを見渡して――もう大丈夫だろう、と地面に降り立った。
やっと一息つくことができた。いくらドルガモンが飛べるからといっても、ずっと飛んだままは疲れるのだ。
「ふぅ……降り立つところを間違えた」
背後から忍び寄ってくる気配を前にして、ドルガモンは溜め息を吐きたい気分になった。
後ろを振り返れば、赤色のクワガタのようなデジモンが今にも自分に襲いかかろうとしているところだ。見間違えであればいいな、とそう思うドルガモンだったが――見間違う訳もなく、そのデジモンはドルガモンに襲いかかってきた。
「“X抗体”をよこせェえええ!」
襲ってきたのは、クワガーモンと呼ばれる成熟期デジモンだった。狙いはドルガモンの持つX抗体。
このクワガーモンは、おそらくこの世界のXプログラムの汚染に対抗できるほど強靭なX抗体を持っていないのだろう。だからこそ、ドルガモンからX抗体を奪い、自分の持つX抗体をより強靭なものとしようとしているのだ。
今の世界はこんな感じだった。満足なX抗体を持ってないものも、ドルガモンのようにXプログラムを脅威としないX抗体を持つ者も。等しく狙われる。
「っく……!」
「よこせよこせよこせぇ!」
ちなみに、元からこの新しき世界にいた選ばれたデジモンたちは、複雑な立場に置かれている。
戦いに明け暮れる選ばれていない彼らを嫌悪しているのは皆同じ。だが、この世界がXプログラムに汚染された後も、今更X抗体獲得に動くのはみっともないと動かない者もいれば、自分たちも生き残ろうとX抗体獲得に動くものもいる。
とはいえ、後者は辛い現実を見ることになっているのだが。
実は、X抗体デジモンは、従来の同じデジモンよりも強い。それは、X抗体によって潜在能力が引き出される結果となっているからだ。だからこそ、X抗体持ちを襲おうとしている選ばれたデジモンたちは、かなり厳しい戦いを強いられている。
とはいえ。この新世界のXプログラム汚染度は、旧世界ほどではない。今の汚染度ならば、普通にX抗体なしで生きていても、二体に一体は生き残ることができるレベルだ。
これを多いと見るか、少ないと見るかは人によるだろうが――まあ、これはあくまでも今の段階での汚染度でしかない。汚染度はこれから上がる可能性もあれば、下がる可能性もあるのだから。
「“パワーメタル”!」
「ぐう……よこせぇ!」
「効いてないのか!?っく!“パワーメタル”!」
そんな中で戦況は、五分だった。
ドルガモンは浅い経験ながらも、上手く戦闘を組み立てようと頑張っている。一方のクワガーモンは死ぬかもしれないという焦りと余裕のなさで本来の実力が出せていない。
二人のその差が、この五分の戦況を作り出していた。
とはいえ。生きたい、生き残りたい、という意思でいるのは両者とも同じ。その思いが、両者の戦闘能力を底上げし、さらにはそのスペック以上のタフネスさを両者に発揮させていた。
「“パワーメタル”!“パワーメタル”!“パワーメタル”ゥ!」
「あぁあああああ!よこせよこせぇ!おれは生きるんだぁあああ!」
それが――そのタフネスが、両者ともに厄介だった。
誰もが誰も、生きようと必死になっている。誰もが誰も、死にたくないと願っている。だから、生き残るために、死なないために、両者はいくら攻撃を受けようとくたばらない。決着がつかない。
なかなか倒れない。その事実が、両者ともに辛かった。倒す気で放った攻撃が当たらず、当たってもなお、立ち上がる。その不屈の如き行いは、体力だけではなく、お互いの精神を削っていた。
もはや、この戦いは互いの戦闘能力云々ではなくなっている。そう。精神のぶつけ合いにシフトしてきていたのだ。
だが、戦いが始まったというのなら、当たり前のように勝敗は決まる。
結果として、負けたのは――。
「っく!“パワーメタル”!」
「あぁぁあぁああ!“クランチアーム”!」
――負けたのは、クワガーモンだった。敗因は、勝ち気が強すぎたこと。それだけだ。
勝負を別けた先ほどの攻防。
あの時、クワガーモンは勝つために、全霊を賭けて必殺技を放った。“クランチアーム”。それは、鋭い足で敵を切りつけ、その傷口を狙う技。まず間違いなく、クワガーモンの人生の中で最高と言える精度だった。だが――この技は、完成するまでに二段階のステップがいる。
二段階目の攻撃が放たれる前のその僅かな隙。そこに、ドルガモンの必殺の鉄球が当たってしまったのだ。
勝とうと、生きたいと、そう必死になった。だが、皮肉なものだ。その思いが敗因になってしまった。
「ちきしょう」
本当に悔しそうに、クワガーモンは倒れる。
ドルガモンにとって、初めて自分で倒した敵。死にたくなかったから、生き残りたかったから、倒した。
だが、そんな現実が酷く辛かったドルガモンだった。
というわけで、はい。現状説明の第一話です。
なんだかんだ言って、こっちを進めることにしました。
こちらを先に進めて、その間にサイスルの方の構成を練ることにします。
まあ、A&Aの方もあるので、更新は不定期です。
あと、ゼヴォリューションという話自体そう長いものでもないので、あんまり長期にはならない予定です。
ということで、はじめます。
また次回以降も、そしてA&A共々よろしくお願いします。
追伸、誰もが知っている現状説明だけの一話だけではつまらないだろうと三十分後に二話が投稿されますので、そちらもよろしくお願いします、