【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
アルフォースブイドラモンとメタルガルルモンたちが死闘を繰り広げていたその頃。
ウォーグレイモンにラプタードラモンのことを任せたデュークモンは、一人でベルサンディターミナルの北方の遺跡に来ていた。
そこは、スレイプモンが普段守護している場所で――。
「ふむ。また何か用か?……予想はつくがな」
――デュークモンは、スレイプモンを訪ねてきたのだ。
理由はただ一つ。ラプタードラモンが覚えていないらしい、あの死の進化について聞くため。
デジタルワールド創世よりデータを保管し続けた遺跡を守護しているスレイプモンならば、何かを知っているとデュークモンは考えたのだ。
「話が早い。あの死の進化についてだ。あれは一体なんだ?」
「やはりそれを聞きに来たのか。残念だが、私も詳しくは知らん。ただ、古代種デジモンよりもさらに遡るプロトタイプデジモンの中には、あの進化をした者がいたらしいということだけだ」
「プロトタイプ……まさか、あやつが?」
「さあな。どちらにせよ、創世時代よりも前の話だ。そんな時代に究極体などいるはずもない。つまり……」
「どのみち究極体の死の進化には前例がない、か」
結局、全く情報を得られなかったわけではなかったが、求めていたほどには得られなかった。
ともあれ、元々たいした情報を得られるとは思ってなかったデュークモンだ。残念ではあるが、予想通りではあった。
「……ああ。だが、その真実について知っていると噂される奴ならいるか」
「何……?誰だ?スレイプモンでさえ知らぬことを知っている者だと……?」
内心で残念がりながらも、そんな素振りを見せないデュークモン。そんなデュークモンに、スレイプモンは告げる。自分は真実を知らないが、真実を知っている可能性が高い者はいるのだ、と。
だが、そんな話を聞いても、デュークモンは半信半疑だった。
まあ、当然だろう。ロイヤルナイツはその性質上、この世界のかなり深いところまで知っている。そんな自分たちでさえ知らないことを知っている者など、それこそ限られる。
別にいないわけではないが、その大半のデジモンは旧デジタルワールドにて、Xプログラムのせいで死滅している。
ゆえに、デュークモンは不審がったのだが――。
「グランドラクモンだ」
「……っ!」
――だが、次の瞬間にスレイプモンが言った言葉は、デュークモンの持っていた不審など軽く吹き飛ばすほどの破壊力を持っていた。
グランドラクモン。吸血鬼の王とされる魔獣デジモンで、デジタルワールド創世時代より生きている、生ける歴史にして、怪物。その実力は、世界を滅ぼすほどの力を持つ七大魔王さえ手出しできないほどで、ロイヤルナイツといえども一対一で勝てる相手ではない。まず間違いなく最強の一角で、
「確かにあやつならば……!」
なるほど、確かにグランドラクモンならば知っている可能性が高いだろう。だが、彼はダークエリアと呼ばれるこの世界とは違う管轄の、いわゆる廃棄データの集まるあの世的な世界の奥深くに城を構えている。
気軽に会いに行ける相手ではないし、会ったところで話を聞いてもらえるかもわからない。もし機嫌を損ねれば、デュークモン一人では一瞬で殺されて終わりだろう。
「……スレイプモン」
「正気か?」
「ああ。このデュークモンには、件のアレが終わったことだとは思えないのだ。情報は多い方がいい」
だが、それでもデュークモンはそこへと行くことを決意した。それほどまでに、デュークモンはあの死の進化について、知らねばならないと思ったのだ。
そして、そのデュークモンの決意を前に、スレイプモンも止める理由はない。
ゆえに――。
「わかった。ダークエリアへのゲートを開く」
――ゆえに、スレイプモンはダークエリアへと続く扉を開いた。
この遺跡にある情報を持ってすれば、ダークエリアへと続く扉を開くことなど簡単なのだ。
こうして見ると気軽に行けるようにも思えるが、普通は、場所、時、運、とさまざまな要因がなければダークエリアへは生きたままで行くことができない。
これは、先ほども言った通り、この遺跡の力なのだ。それほどのことが簡単にできる情報が眠っている遺跡だからこそ、こうしてスレイプモンは守っているのである。
「行ってくる」
「生きて帰って来い。未だ世界はデュークモンを必要としている」
「……そうだな。死ぬ気はないよ」
今生の別れになるかもしれない。それでも、行かなければならない。自分の勘がそう言っている。だからこそ、デュークモンは目の前にできた真っ黒な門へと歩を進める。
そんなデュークモンの後ろ姿をスレイプモンはただ見送ったのだった。
そして、一方のデュークモンは一瞬後に――。
「やれやれ。ダークエリアか。あまり来たいところではないのだがな」
――一瞬後に、ダークエリアへといた。
だが、そこはNEWデジタルワールドとは根本的に異なる世界。空は夜でもないのに雲で覆われ薄暗く、大地は枯れ果てており、終末の過ぎ去った世界という表現が適当だろう世界。
そんな世界ながら、見える先は闇という謎法則。前に進んでいるのか、後ろに下がっているのか、それとも曲がっているのか。それすらも不確かな世界。
この世界を好む者たちも大勢いるらしいが、デュークモンはここに長居したいとは思えなかった。
「行くか」
進んでいるのか、戻っているのか。それすらも、わからない中でデュークモンはただひたすらにまっすぐ進んでいると信じて進む。
このダークエリアを行動するのに必要なものは、地図ではない。
この世界で行動するのに必要なものは、確かに己の内に思い描く目的地。そこに至るという確固たる意志。そして、そこへ向かって進めていると信じる勇気。それだけだ。
それらの一つでも欠ける者は、この不確かな世界の中で迷子となってやがて消え入ってしまう。この世界は、そんな恐ろしい世界なのだ。
「……妙だな」
だが、そうしてダークエリアを突き進む中で、デュークモンは未だデジモンと一回も出会っていないことを奇妙に思っていた。
いくらここがダークエリアだとは言っても、ここに住むデジモンもいる。そんなデジモンたちと全く会わないということは、絶対にない。
だというのに、デュークモンはここに来てから今まで一度もデジモンを見かけていない。知らず、デュークモンは、あの幻想の戦士と出会った時と同じ感覚を抱いていた。あの時と同じ、強者と出会う感覚を。
「……むっ!」
そうして、デュークモンがその感覚に思い至った時だった。
弾丸がデュークモンを襲ってきたのは。その弾丸を前に、デュークモンはすぐさまその左腕の盾で防ぐ――が、その予想以上の衝撃に、踏ん張り切ることができない。
小さな弾丸の勢いに押されるまま、数十メートルを踏ん張ってようやく止まることができたデュークモンは、その弾丸の来た方向を睨む。
「何者だ!」
「へェ。受け止めやがったか……流石だな。しっかし、何者だ、か。ショックだなァ……俺様のことを忘れちまったてェのかァ!?」
そうして、その襲撃者は現れる。まるで旧知の間柄のように気軽に、されどその身体に確かな闘志を宿して、暗闇を押しのけ、デュークモンの前へと現れる。
現れたのは、悪魔の如き四枚の羽を持つ、赤い仮面の禍々しい魔王。七大魔王の一人に数えられる存在であり、多くの悪魔型デジモンを統べる能力を持ちながらもあえて孤高の存在であるデジモン。
そう――。
「っ!お前は……ベルゼブモン!?」
「久しぶりだなァ!聖騎士さんよォ!」
――現れたのは、ベルゼブモンと呼ばれるデジモンだった。
思いがけない者の登場に、デュークモンは驚愕の極致にあった。
だが、デュークモンが驚いていたのは、ベルゼブモンと出会ったことにではない。ここはダークエリア。ベルゼブモンたち七大魔王のホームである。出会える確率は低いとはいえ、全く無いという訳ではない。
では、デュークモンはベルゼブモンの何に驚いているのか。それは、ベルゼブモンが
「お前……どうやってソレを!?」
「アァ?ああ、これか。へっいいだろォ?ずりィよなー……外はおもしれェことになってんじゃねェか!」
「質問に答えろ!お前たち七大魔王がダークエリアを出たという話は聞かぬ!」
「はっ。ちょっと見ねェ間にボケたかァ?俺様がわざわざ外に出なくても、コイツを得る方法なんざあるっての!」
挑発してくるようなベルゼブモンの言葉だったが、その言葉を聞いた瞬間にデュークモンはハッとなって気づいた。
確かに、七大魔王がNEWデジタルワールドに侵入してくれば、その力の強大さゆえに感知できるようになっている。だが、それは言い換えれば、七大魔王ほどの力のないデジモンたちならば、行き来は感知されないということだ。
そして、ベルゼブモンの言った通り、ダークエリアから出る必要はない。ダークエリアから出ずとも、ダークエリアに来る者はいるのだから。
「まさかここら一帯にデジモンたちがいなかったのは……!」
「そうさ!他の魔王共が出張ってくる前に、俺様が狩らさせてもらったァ!」
つまり、ロイヤルナイツの危険を知ったX抗体デジモンの中にNEWデジタルワールドからこのダークエリアに逃げてきた者たちがいたのだ。
ベルゼブモンはそんな彼らを狩って、その彼らのX抗体を奪った。そうすることで、NEWデジタルワールドに出ることなく、X抗体を手に入れ、より強大な力を得たのだ。
最凶とも言えるデジモン集団である七大魔王の一人が、デジモンの力をより引き出すX抗体を得る。まさに悪夢だった。
「本当にすっげェよな!ブラストには及ばねェが……それでも十分だ!」
「っく!」
「ここで会ったのも何かの縁だ。試し撃ち。させてくれるだろ?」
そう言った、殺る気満々のベルゼブモンを前にして、デュークモンは表情には出さずとも内心で焦っていた。
デュークモンがベルゼブモンと戦ったのは、遥か昔のこと。その時、デュークモンは真紅の最強形態を使って、当時同じように最高形態に至っていたベルゼブモンと戦った。あの時はお互いの最高形態が失われるほどにまで戦った後の、痛み分け。
今のベルゼブモンはその最高形態には及ばないとはいえ、それに近い力を得ている。それはつまり、通常形態のデュークモンでは地力で大きな遅れを取っているということだ。
「さァ!始めようかァ!
「っく!負けるわけにはいかぬ!」
そうして、殺る気満々なベルゼブモンを前にして、圧倒的な力の差を感じながらも、デュークモンは槍を構えるのだった。
というわけで、第十九話。
やっちゃいました。
以前、感想でベルゼブモンは出さないと言っていたのに……出しちゃいました。
いや、こうなったのも、デクスリューションのせいですね。
ダークエリアから出ないグランドラクモンのせいです。
ともあれ、次回。
だいたい内容が予想つくかもしれませんが、デュークモン対ベルゼブモンX。
ついでにグランドラクモンとの邂逅です。
それでは次回もよろしくお願いします。