【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
かくして、デュークモンはベルゼブモンと戦い始めた――のだが、デュークモンはベルゼブモンに押されっぱなしだった。
それほどまでに、X抗体を得たベルゼブモンの力は凄まじく、デュークモンでも敵わないほどだったのだ。
「くははっ!てめェ弱くなったかァ?」
「ぐぅ……!」
ベルゼブモンのその左腕と一体化している二つの銃口がある銃。その銃から放たれる弾丸は、デュークモンをもってしても危険と判断するほどのもの。さらにベルゼブモン当人の実力も相まって、デュークモンの付け入る隙はまるでなかった。
「アァ、俺様が強くなっちまったか!ははは!ざまァねェな!」
「舐めるな!“ロイヤルセイバー”!」
「おっとくらうかよ!」
“ロイヤルセイバー”。デュークモンの右手の聖槍から繰り出される技であり、その強烈な一撃は遥か彼方まで届くほど。
そんな一撃が、ベルゼブモンに向かって放たれる。が、当のベルゼブモンはその一撃をなんでもないことのように避けてしまった。しかも、ついでとばかりにデュークモンに向かって銃を放つ余裕さえある。
そうして、自分に向かってくる弾丸を、デュークモンはその左腕の聖盾で防ぎ――その一瞬で、デュークモンの視界からベルゼブモンは消えていた。
「何っ!?……どこだ?」
上下左右前後。ありとあらゆる方向を見渡すが、ベルゼブモンの姿はない。
逃げたという可能性はないだろう。ベルゼブモンはそんな性格ではないことはデュークモンもよく知っている。だったらどこにいる、と。デュークモンは首を傾げて――直後、デュークモンは悪寒に従うままに、奇妙な体勢のままで飛びずさる。
「ちィ!外したか!やっぱこうでなくちゃなァ!」
その瞬間に、舌打ちと共に聞こえた愉快そうな声。
さらに、デュークモンの赤いマントは破れていて、先ほどまでデュークモンがいた場所のすぐそばには、その右手の鋭い爪を振り抜いたベルゼブモンの姿があった。
「やっぱお前いいなァ!手応えがないとガッカリしてみれば、存外に楽しませてくれるじゃねェか!」
「ふん。戯言を言うほどには余裕があるか」
「はっ!その減らず口も言えなくさせてやるよ!」
そう言うベルゼブモンの仮面には、一筋の傷がついていた。
先ほどデュークモンがつけた傷である。先ほど、ベルゼブモンの攻撃を躱しながらも、デュークモンはその槍を振り抜いていたのだ。
見方を変えれば、デュークモンの苦し紛れとも見える。だが、ベルゼブモンはそう思っていなかった。
ベルゼブモンは知っているのだ。かつて最強の状態だった自分を、引き分けとはいえ打ち破ったデュークモンの強さを。あの時とはいろいろなモノが違っていても、決して侮っていい相手ではないことを。
そして、だからこそ、ベルゼブモンは燃える。わざわざ雑魚を狩ってまでX抗体を得た甲斐があったというものだ、と。
「さァ!続けようぜ!」
「……舐めるなッ!」
そうして、再び放たれたベルゼブモンの銃弾を、デュークモンはその左腕の盾で弾くように受け流す。ベルゼブモンの高威力の銃弾を前にして、受けに回っていれば、そのうち盾ごと貫かれると思ったのだ。
もちろん、デュークモンの盾はそんな安い盾ではない。だが、それでも、相手はかの七大魔王の一人。最悪の事態を考えておくに越したことはない。
「ふっ!」
「はっ!くらうか!」
デュークモンから繰り出された槍を、ベルゼブモンはその右手で弾く。
弾くのと同時に、先ほどと同じように左腕の銃をデュークモンの顔に向かって放つベルゼブモン。
だが、デュークモンはそんなベルゼブモンの行動を読んでいた。最小限の動きで顔をずらし、それだけで弾丸を躱す。読みを外せば、死が待つのみという状況で、デュークモンはそれを実行したのだ。
そうして、そんなデュークモンを前にして、ベルゼブモンは内心でイラついていた。デュークモンが、だんだんとX抗体を得た自分の戦い方に対応でき初めていることに気がついたからだ。
「んじャ!これでどうだァ!“ダブル――!」
「っ!まずい……!“ファイナル――!」
「――インパクト”!」
「――エリシオン”!」
直後、ベルゼブモンの左腕の銃から二つ弾丸が放たれる。
今までの弾丸よりもずっと高威力のソレを前にして、デュークモンは回避が不可能だと悟った。ゆえに、デュークモンの取った選択肢は、迎撃。二つの弾丸を迎え撃つべく、デュークモンの左腕の盾から放たれるは“ファイナル・エリシオン”と呼ばれる必殺技。すべてを浄化するビームだ。
そして、デュークモンのその技が、二つの弾丸を吹き飛ばして――。
「っ!がはっ!」
「俺様の勝ちだなァ」
――その直後、デュークモンに悟られぬように接近してきたベルゼブモンが、デュークモンの腹を貫いていた。
そう。ベルゼブモンの先ほどの技は囮。すべては、この一撃のためのものだったのだ。
勝った、と。ベルゼブモンはニヤリと笑いながら、デュークモンを見た。腕を引き抜いたことで支えを失ったデュークモンは、ベルゼブモンの足元に倒れている。明らかに致命傷。これで勝敗が決まっていないと思う方がおかしい。
「くははは!遂に!勝ったぞ!」
かつての因縁から、多少のライバル心があるデュークモンと倒したことで、ベルゼブモンはこれ以上ない喜びに包まれていた。
最後のトドメとばかりに、銃口を倒れ伏したデュークモンに向けたベルゼブモン。だが、その直後。ガシリ、とベルゼブモンは自分の足を掴まれて――。
「なっ!ぐっ!」
――勢いのままに吹き飛ばされた。
吹き飛ばされながらも何とか体勢を立て直したベルゼブモンは、その瞬間に見る。
先ほどまでとは違う姿ながらも、健在であるデュークモンを。X抗体デジモン特有の石を体中に持つ、
「馬鹿な……!なんでてめェがX抗体を得てやがる……!ダークエリアにXプログラムはねぇはずだ!」
そう。X抗体を得るためには、あのXプログラムの存在が必要不可欠。だが、このダークエリアにXプログラムはない。ベルゼブモンがX抗体を得られたのは、このダークエリアに逃げてきたX抗体デジモンを狩って、奪ったからだ。
そうして、驚くベルゼブモンを前にして、デュークモンはただ静かに答える。すべてはお前のおかげだ、と。
「俺様の……!?」
「そうだ。お前は自分で言ったであろう?X抗体デジモンを狩って、奪ったと」
「だから……っ!そういうことかよ!」
デュークモンの言葉に、納得するベルゼブモン。そんな風に納得するベルゼブモンは、つい先ほどのデュークモンの姿を見ているようだった。
そう。元々NEWデジタルワールドには、Xプログラムは存在していなかった。NEWデジタルワールドにXプログラムが蔓延したのは、X抗体デジモンをロイヤルナイツたちが狩ったから。
つまり、そういうことだ。ベルゼブモンがX抗体デジモンを狩ったことで、少量ながらもダークエリアにもXプログラムがあった。デュークモンはそれを使ってX抗体を得たのである。
「今なら、本当の意味でデジモンたちがX抗体を得ようとしていたのもわかる。生きたい。このデュークモン、その思いを久しく忘れていた」
「……っち。死にかけた身だからこそ得られたのか……!っは!だがこいつァ良い展開だ!これで互いに条件は五分。さァ!今度は本当に殺し合おうぜ!」
だが、ベルゼブモンはデュークモンがX抗体を得ようとどうでもよかった。いや、むしろ喜んでさえいた。より強くなった、と。
ベルゼブモンにとって、デュークモンとは倒すべき敵。だが、簡単に倒れられても、それはそれでつまらない。だからこそ、より強くなったデュークモンを前にして、ベルゼブモンは奮い立っていた。
そんなベルゼブモンを前に、デュークモンも新しくなった槍と盾を構える。
そうして、互いが構えたことで、否応なしにあたりの空気が緊張したものへと変わっていく。きっかけさえあれば、再び戦いが始まるだろう。
だが、そんな状態の中で――。
『すみませんが、そこまでにしてくれませんか?彼は私の客人ですので』
「っ!」
「何っ!?」
――急に辺りに響いた声が、そんな状態を終わらせた。
突然の事態にベルゼブモンとデュークモンの二人は戸惑い、辺りを見渡す。だが、声の主の姿はどこにも見当たらなかった。
『ああ、失礼。私はグランドラクモンと申します。城から離れる訳にもいかないですし、こちらへと来るもの時間がかかります。ですので、失礼とは思いますが声だけとさせて頂きます』
「っ!グランドラクモンだと!?」
思わぬビッグネームの登場に、ベルゼブモンの驚いたような声が辺りに響き渡る。
一方で、声は出さずともデュークモンも同じように驚いていた。確かに、グランドラクモンに話を聞くためにデュークモンはここまで来たが、ダークエリアの奥深くに城を構える相手とこうもあっさりと会話できるとは思わなかったのだ。
「っち。てめェが相手じゃ分がわりィか。おい!デュークモン!」
「……なんだ?」
「今度会う時がてめェの最後だ。首洗って待っときやがれ!」
流石に、グランドラクモン相手に事を構える気はないのだろう。随分とあっさりとした様子で、ベルゼブモンはこの場を去っていった。
後に残ったのは、デュークモンだけだ。
はたして、まだグランドラクモンはこの場にいるのだろうか、と。なにせ姿が見えないのだ。そうデュークモンが疑問に思うのも無理はないが――。
『神の騎士団ロイヤルナイツの一員よ』
「今はただの反逆者だ」
『いえ。貴方は紛れもなくロイヤルナイツですよ。誰がどう言おうとね』
「……貴君は本当にグランドラクモンなのか?」
デュークモンは、その場でグランドラクモンに向けて疑問の声を発する。
グランドラクモンの様子は、デュークモンの中のイメージと合わなかったのだ。創世時代より生きる怪物ゆえに、もっと傲慢な性格を思い浮かべていたのである。だが、声を聞く限りはその様子は紳士的でさえある。
はっきり言って、デュークモンは肩透かしを受けていた。
『よく言われますよ。でも、この私の姿を見ればおわかりいただけると思いますけどね。姿を見せられないのが残念です』
「グランドラクモン。何故このデュークモンが貴君を目指していることがわかった?」
『あの進化が起きた時から予想していたので。誰かしらが来るだろうと。私としては城まで招待しても良かったのですが、それでは戻った時にすべてが終わってしまいますしね』
そう言ったグランドラクモンの言葉に、デュークモンは納得すると同時に、彼の好意がありがたく思えていた。
何も考えずにデュークモンはこのダークエリアへと飛び込んでしまったが、グランドラクモンの城までバカ正直に移動していたのならば、デュークモンがNEWデジタルワールドに戻る頃には何年も経ってしまっているだろう。
いくらあの死の進化を見て焦っていたとはいえ、らしからぬ短慮を発揮した自分に、デュークモンは内心で溜め息を吐くのだった。
『さて、貴方たちに時間もないことですし、本題に入りましょうか。貴方が知りたいことにお答えしましょう』
「……!」
『まさか私もあの進化が再び起きるとは思いませんでした。イグドラシルはとんでもないことをしでかそうとしているようですね』
そうして、グランドラクモンはデュークモンに告げる。
あの死の進化についての真実を。そして、おそらくこの後に来るだろう激動の予感を。
中間報告。
なんとか期末テスト前に完結まで書ききることができました。
後は投稿前の調整だけです。
そういえば、これと同時投稿したサイスルの一発ネタの続き。
八月くらいを目処に書き直しして、連載しようかどうか迷っているんですけど……。
読みたい人っているんですかね?
……そんな近況はともかく、というわけで第二十話。
ゲストであるベルゼブモンとの決着は付きませんでした。
そして、同じくゲストであるグランドラクモン。こちらも声だけの限定出演ですね。
まあ、あんまり軽々しく姿を見せても、威厳もなにもないですしね。
ちなみに、裏設定としてですし、知っていても意味はないですが、グランドラクモンがデュークモンに真実を教えたのは単なる親切心だけからではありません。
さて、次回は久しぶりにあの人たちが出ます。
それでは次回もよろしくお願いします。