【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第二十一話~焚き付けられた若造~

 デュークモンがグランドラクモンと出会っていたその頃。

 イグドラシルの空間にて、オメガモンは一人佇んでいた。一応、先の戦いで負った傷はすべて癒えている。折られたグレイソードも、復元されている。ほぼ完治状態だった。

 ゆえに、もう安静にしている意味はないというのに。それでも、オメガモンはどこに行くでもなく、浮かない顔でその場に立ち尽くしていた。

 

「浮かない顔だな」

「悩んでいる、と顔に書いてあるぞ」

「……マグナモンにガンクゥモンか」

 

 そんなオメガモンに話しかけて来たのは、マグナモンとガンクゥモンの二人だ。

 二人とも言葉は違えど、言っていることは同じだった。二人とも、オメガモンのオメガモンらしからぬ状況に首をかしげ、話しかけてきたのである。

 

「ガンクゥモン。お前はこんなところにいていいのか?聞いたぞ。ジエスモンに逃げられたようだな」

「若造に遅れをとるとはな。まさか手心を加えたのではないだろうな?」

 

 自分のことは一度差し置いてでも、オメガモンはガンクゥモンにだけは一言言いたかった。

 そして、そのオメガモンの言葉に同調するように、マグナモンもガンクゥモンに疑いの目を向ける。

 自信満々で責任を取るなどと言った割に、ガンクゥモンはジエスモンを取り逃がしている。しかも、それから探しに行く気配もない。

 ロイヤルナイツ内では、ジエスモンというデジモンは若いがゆえに侮られているという現状もあって、オメガモンたちの疑惑の目がガンクゥモンに向けられている。

 まあ、それも仕方ないことだろう。その疑惑は真実であったりするのだから。

 

「お前たちもわかるだろう?アイツはもはや実力だけならオレたちにも届いている。オレたちに届いていないのは経験だけだ」

「だから?」

「弟子を舐めて、取り逃がしちまった。それだけの話だ」

「ならば、なぜ探しにいかない?」

「アイツを探すよりも、アイツが出てきた時に向かった方が楽だからだ」

 

 そう、ジエスモンの性格はオメガモンたちも知っていた。ガンクゥモンと同じように、平時からデジモンたちと関わることの多いデジモン。それがジエスモンだ。

 彼は現状に不満を持って出て行った。であるならば、そのうちに現状に我慢がならず、姿を現すだろう。探すことにわざわざ労力を割くよりは、それを待った方がいい。ガンクゥモンはそう言ったのだ。

 

「……なるほどな」

 

 マグナモンもオメガモンも、そんなガンクゥモンの言葉と雰囲気にどこか違和感を覚えたものの、筋は通っているし、違和感の理由もわからない。ゆえに、そう納得することにしたのだった。

 

「で、オメガモン。お前の方の悩みはなんなのだ?」

 

 そうして、話に一段落着いた時に発せられたマグナモンの言葉によって、話題は再び初めのものに戻った。

 オメガモンの悩み。それは、彼自身も言葉にはし難いことだった。というか、彼自身もまだうまく掴めてはいないのだ。自分が何かに悩み、迷っていることはわかるが、その何かがわからない。

 オメガモンとしても、聞いてくれるのはありがたいことだったが、言いようがなかった。

 だからこそ――。

 

「……お前たちは自分の戦いに迷いを持ったことはないか」

 

 ――だからこそ、オメガモンはとりあえず、思ったことを率直に言う。

 あの先の戦い以降、自分には迷いがある。ならば、他の面々の前例を聞く。その上で、自分のことについて考える。

 オメガモンはそう思ったのである。

 

「ない。我らロイヤルナイツは、イグドラシルの命令を実行するだけだ」

「俺も迷ったことはあっても、戦いに迷ったことはないな」

「……」

 

 だが、そんなオメガモンの悩み解決のヒントになりそうな答えは返って来なかった。

 というか、二人とも同じ答えで、迷いがあると自身が思っているオメガモンにとっては耳が痛いことだった。そして、その二人の答えは考えるまでもなく当然のことでもある。

 

「ふっ。そうだな。愚かなことを聞いた。忘れてくれ」

「オメガモン!迷いがあるなら、戦わない方がいい!」

 

 だからこそ、自嘲するかのようにフッと笑ったオメガモンは、ガンクゥモンの言葉を背に聞きながら、NEWデジタルワールドへと行ったのだった。

 

 

 

 

 

 一方、オメガモンがNEWデジタルワールドへと向かっていったその頃。未来の世界(スクルドターミナル)でのこと。

 

「らんら~ララ~ラララァ~!」

 

 ビルの中に隠れたデジモンたちから怯えた様子で見られていることにも気に止めず、ご機嫌な様子で鼻歌を歌いながら歩く不審者が一人。

 そう。その不審者こそ、ロードナイトモンその人だった。

 

「んんん~ララ~この辺ですか~ね~!」

 

 ロードナイトモンは、数日前の緊急招集でロイヤルナイツから脱退した後、スクルドターミナルへとやって来たのである。それ以降、彼は時折デジモンたちに襲われることにも気に止めず、自由気ままに過ごしている。

 さて、そんなロードナイトモンだが、今日だけは目的があってこうしてビルの立ち並ぶ街を歩いていた。その目的はただ一つ。とあるデジモンに会うため。

 

「いや~いや~ここ?~いやぁ~ここです~ねぇ~!んん~!さぁ~行きま~す、よぉ~!」

 

 鼻歌のリズムに合わせて、ステップを踏みながら、ロードナイトモンは何かを確かめるように呟いた。

 やがて何かの確信を持ったロードナイトモンはその右腕を、正確に言えばその右腕のパイルバンカーを地面につけて――そして一言。

 

「“アージェントフィアー”!」

 

 放たれるのは、ロードナイトモンの必殺技。

 威力は抑えられているとはいえ、ロイヤルナイツの必殺技だ。とてつもない衝撃と共に周りに被害を与えながら、地面を抉った。次の瞬間、()()()()()()()この地面は、崩落する。

 “アージェントフィアー”の衝撃に地面が耐え切れなかったのである。

 

「やれやれ~いません~ねぇ~」

 

 そうして、瓦礫と共に数十メートルも地下に落ちたロードナイトモンは周りを見渡して、そう歌った。

 ロードナイトモンの予想では、ここにはとあるデジモンがいるはずなのである。確信を持ってこの地面を崩したはずであるのに、もぬけの殻。

 ロードナイトモンは首をかしげて――。

 

「殺す気か!音楽バカ!」

「おお~やっぱり、いました~ねぇ~!」

 

 ――次の瞬間、()()()()()()斬りかかってきたジエスモンを、その鎧から伸びる四本の帯刃にて迎え撃った。

 そう。ロードナイトモンはジエスモンに用があってここまで来たのである。

 まあ、その会い方がアレだったために、こうして戦う羽目になっているのだが。

 

「いやいや~仮にも~ロイヤルナイツに~入ったあなたなら~死なないでしょ~!」

「寝てたら上から瓦礫が降ってきたんだぞ!死にはしなくてもびっくりするわっ!」

「はぁ~……だからあなたは~青いのですよ~!」

「その話し方相変わらず鬱陶しいな!」

 

 そうやって、話しながらも、ジエスモンとロードナイトモンは戦い続ける。ジエスモンの両腕の二本の剣とロードナイトモンの四本の帯刃が火花を散らし、そのたびにこの地下とそして地上に凄まじい衝撃が走った。もう辺り一帯はボロボロだ。

 ちなみに、この二人は知らぬことだが、今この時でさえ、上にいるデジモンたちは慌ただしく避難を始めていた。

 

「そろそろ~やめま~せんかぁ~?」

「何を今更!」

「だって~そういう~つもりで来たわけじゃ~ありませんし~!」

「はぁっ!?だったら、何で来たと言うんだ」

 

 裏切り者である自分を始末しに来た訳ではない。そう言ったロードナイトモンに驚いて、ジエスモンは剣を収める。実にあっさりとロードナイトモンのことを信用したようだが、ジエスモンはある意味で彼のことを信用しているのである。

 これが他の者だったのならば、油断を誘うために嘘をついている可能性を疑うだろう。

 だが、ジエスモンは知っている。

 ことロードナイトモンに限ってそれはありえない、と。そんなみっともない真似をするような者ではない、と。

 だからこそ、ジエスモンは剣を収めたのである。

 

「私は~あなたを~焚きつけに~来たのですよ~!」

「何言ってるんだ?」

「そのままですよぉ~!」

 

 ジエスモンは、脱退してからロイヤルナイツであったいざこざを知らない。だからこそ、ロードナイトモンはロイヤルナイツにいるままだと思っている。

 そんな、ロイヤルナイツに所属しているままであるはずのロードナイトモンがどうして自分を焚きつけに来たのか、と。

 ジエスモンはそう疑問に思っているのである。

 

「別に~ここ最近の~あなたは~美しくない~というだけの~理由ですよ~」

「またソレか……」

 

 美しくない。そう言ったロードナイトモンを前に、ジエスモンは疲れたように肩を落とす。

 ジエスモンは、自身の美的感覚に行動のすべてが起因するロードナイトモンのことが苦手なのである。

 

「ラララ~どうしたと~言うのです~」

「何がだ?」

「あなたは~座して~待つ~ような~タイプでは~ないで~しょう!」

 

 そのロードナイトモンの言葉は、ここ最近のジエスモンの悩みを見事に言い当てたものだった。

 ロイヤルナイツの現状に反発して脱退したというのに、やっていることは引きこもり。ジエスモンはそんなタイプではない。とはいえ、だからといって、今の状況では、おいそれと外に出るわけにも行かない。

 そんなジエスモンのジレンマを見抜いているのか、いないのか。ロードナイトモンは言葉を続ける。

 

「ベルサンディにて~近々あるでしょうね~あなたも~わかっているでしょう~?」

「っち。言わなくてもわかってるよ!んなことは!」

 

 それは、ジエスモンも散々悩んでいることだ。

 何も考えずにそのことに踏み込んでくるロードナイトモンを前にして、思わず言葉を荒げてしまったジエスモンの気持ちはわからなくもないだろう。

 ベルサンディターミナルにて、未曾有の大危機が起こる。それは、ロードナイトモンの予感だった。

 先日の一件を目撃してこそなかったが、そのおぞましき波動はロードナイトモンも掴んでいた。

 一方で、ジエスモンには異変や混沌の兆しを感知する能力があるのだ。そんな能力のないロードナイトモンでさえ気づいていることに、ジエスモンが気づいていないはずがない。

 だが、気づいているのに、ジエスモンは動いていない。

 だからこそ、ロードナイトモンはジエスモンを焚きつけに来たのである。

 

「あなたの信念は~凡庸ながらも~本物ですよ~!ロイヤルナイツに~認められるに~至ったのですか~ら~ぁ~!あの頃のあなたは~美しかった~ですよォ~!」

「何を……」

「でも~、今の~あなたは~……」

「くそ。余計なお世話だ!」

 

 そうして、口調を荒げたままに、ジエスモンはロードナイトモンに背を向けて歩き出す。

 現状に仕方ないと諦観し、燻っていたことは否定しない。今、ロードナイトモンに炊きつけられたことも。それでも、師匠であるガンクゥモンならともかく、ロードナイトモンに動かされた事実に、ジエスモンは半ばやるせない気持ちを抱くことしかできなかった。

 

「くそっ!」

 

 そして、そんなジエスモンは他のロイヤルナイツにバレるリスクを冒してでも、向かう。

 自分の能力が異変の兆候を感じ取った地へ。いずれすべての異変が結ばれる地、ベルサンディターミナルへと。

 




というわけで、第二十一話。
オメガモンとジエスモンの回でした。
あと、久しぶりにロードナイトモンも出ましたね。

最近すっかり忘れていたロイヤルナイツ紹介。今回はジエスモンです。
言わずと知れた、最近登場した最後のロイヤルナイツ。サイスルでは熱いストーリー付きなのに、進化ルートが半分くらいカットされてしまっていました。
優遇されているのか、されていないのか、わからないデジモンですね。
この小説の中でも、最近(とはいっても、Xプログラムが発動するよりずっと前ですが)ロイヤルナイツに加入した設定です。
素の実力的には他のロイヤルナイツにも引けをとりませんが、経験不足が足を引っ張っている感じですね。

さて、次回は久しぶりに主人公と感動の再会です!

それでは次回もよろしくお願いします!
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