【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第二十二話~再会~

 デュークモンが用があると言い残して隠れ家を去ってから一日後のこと。

 

「本当にごめん」

 

 ラプタードラモンは、適当な場所で見繕ってきた大きめの石を地面に突き刺していた。

 そこは、滝と森にほど近い場所で、景色もいい。地面に突き刺さっている石のおかげもあってか、隔離された聖域のようにも思えるような場所だった。

 

「……トコモン」

 

 そう。ここは、墓なのだ。トコモンの。

 出発前のデュークモンから、墓という文化を聞いて、ラプタードラモンがトコモンの墓を作ることを決意したのが昨日のこと。もちろん、ここにトコモンの死体があるわけではないし、そんなことをしても何にもならない。それでも、ラプタードラモンは死人を祀るというその墓というものを作りたかった。

 トコモンを守れなかった自分を慰めるためか、トコモンのことを忘れないためか。それとも、別の理由があるのか。

 ラプタードラモン自身もわかっていなかったが、とにかくケジメとして作りたかったのである。

 とはいえ――。

 

「ラプタードラモン!」

「ウォーグレイモン?」

「そんなことをしている場合じゃない!」

「そんなことっ!?」

 

 ――とはいえ、まあ、ラプタードラモンのその創作行為は、焦りに焦ったウォーグレイモンが飛び込んできたことによって中断されることになったのだが。

 そんなこと扱いや邪魔されたことには腹が立ったラプタードラモンだったが、ウォーグレイモンのその尋常ならざる雰囲気に、ただならぬ事態となっていることを悟ったのだろう。不満げな顔をしながらも、真面目に話を聞こうとしていた。

 だが、そんなラプタードラモンのことなどお構いなしとばかりに、ウォーグレイモンはラプタードラモンに詰め寄って――。

 

「急ぐぞ!」

「わかってる!」

 

 ――その数分後。ウォーグレイモンとラプタードラモンの二人は、出せる全速力でもって走っていた。

 その理由はただ一つ。先日出て行ったアルフォースブイドラモンたちと合流するためである。

 デュークモンの帰還も待たずに行動を開始したことは悪いと思ってはいたが、二人は後悔していない。一応、書き置きだけはしてきている。

 それに、今はそんなことを言っている場合ではないのだ。一刻も早く、彼らの下へと行きたい。二人の中には、そんな思いがあった。

 

「はっはっ……ぐ……はぁっはぁっ!」

「大丈夫か?」

「大丈夫!速度を上げる!」

 

 ウォーグレイモンはともかくとして、無謀とも言える速度で走り続けるラプタードラモンは、随分と辛そうだ。だが、それでも彼らは速度を落とすことはしない。いや、それどころかどんどん速度が上がってすらいた。

 彼らがこんな強行突破をしている事の始まりは、今朝にまで遡る。

 今朝、ウォーグレイモンの下にメタルガルルモンからの連絡が届いたのだ。

 最近はロイヤルナイツに見つかる可能性が高いために、なかなかする者がいない連絡という手段がとられたことに、ウォーグレイモンも怪訝な顔をしたのだが――メタルガルルモンが告げてきた内容は、それ以上の破壊力があった。

 

「この森を抜けたら、ゴールだ!」

「はっ……はっ……トコモン!」

 

 そう。トコモンが見つかった、と。メタルガルルモンはウォーグレイモンにそう告げたのだ。

 死んでいる可能性が高かった者が見つかった。その情報に受けた衝撃は、ウォーグレイモンにとって正気を保てなくなるくらいに大きなものだった。

 嬉しさのあまり居ても立ってもいられなくなったウォーグレイモンは、墓を作っていたラプタードラモンの下へと駆け込んで――そうして、二人はデュークモン宛の書き置きだけ残して隠れ家を飛び出したのである。

 

「見えた!」

 

 そうして、数分後。ウォーグレイモンたちは森を抜けた先に山を見て、その麓にある巨大な穴を見る。そこが、トコモンがいるという噂の隠れ家の裏の入口。

 見えたゴールに、二人の足は自然と速くなって――。

 

「トコモン!」

 

 ――巨大な穴を飛び降り、半ば強引に見張りを押しのけて、滑り込むように隠れ家の中へと突入した。

 突然の事態に見張りはおろか、近くにいた面々は大勢驚いている。もちろん、敵襲ではないのかという意味で。

 そんな睨みつけてくるような視線を受けても、二人は止まらない。期待と希望で暴走している二人の前に、どんな常識も通用しない。警戒するデジモンたちを押しのけて、トコモンだけを探す。

 そうして、時々飛んでくる技を鬱陶しく思いながらも、二人は見つけた。シスタモンブランに抱えられながら、周囲の警戒状態に不思議そうな顔をしているトコモンの姿を。

 

「トコモン……!」

 

 そして、そんなトコモンの姿を見たラプタードラモンのそれからの行動は早かった。

 

「ちょ、アンタ!妹に近づいて見なさい!撃ち抜くわ――」

「邪魔!」

「――きゃ!」

 

 妹に何かをされると危機感を抱き、立ち塞がったシスタモンノワールを片手で押しのけ、ラプタードラモンはトコモンの下へと急ぐ。今のラプタードラモンには、二人のシスタモンの姿は見えていないらしかった。

 そんなラプタードラモンの姿を前にして、シスタモンブランはトコモンを抱えたまま震えている。

 まあ、傍から見ていて今のラプタードラモンは、目が血走っている。それは怖かったことだろう。

 

「逃げてブラン!」

「やめ……助け……!」

 

 そして、外野とラプタードラモンは何かがすれ違ったままで――。

 

「トコモン!」

「アウッ!アウ!」

「あれ……?」

 

 ――ついに、トコモンとラプタードラモンは再会した。

 両者とも、涙ぐんでいて、実に微笑ましく、感動の再会だ。ラプタードラモンはトコモンのことを死んだと思っていたし、トコモンもラプタードラモンのあの危機的状況やあの死の進化を直に見ている。

 だからこそ、二人とも余計に嬉しかったのだ。

 さらに、頃合いを見計らってトコモンに近づいていくウォーグレイモン。彼ら三人の交わしたあの約束が、ようやく果たされた瞬間だった。

 

「お姉さま……ど、どういうことなんでしょう……」

「私が知るわけないでしょう」

 

 そうして、そんな感動の再会を果たす三人の背後では、いろいろと勘違いしていたことに気づいた二人のシスタモンが羞恥で顔を赤くしていたりして。

 そのさらに背後では、アルフォースブイドラモンとメタルガルルモンの二人が、ウォーグレイモンとラプタードラモンは敵ではないことを必死になって説明していたりもした。

 結局、いろいろと落ち着いたのは、この数十分後。事情を考えれば仕方ないことであるが、()()()()を考えれば、この時間の無駄はだいぶ痛いことだった。

 

「ウォーグレイモンも落ち着くべきじゃなかったのか?今がどういう状況か。よく口に出していたのは君だろう」

「でも……!」

「君の気持ちはわかってる。でも、限度はあるんじゃないかって話だ」

 

 そんなこんなで、現在。ウォーグレイモンは正座をした状態でメタルガルルモンから説教を食らっていた。

 そう。つい昨日にロイヤルナイツの襲撃があったこの隠れ家にいる面々は、今や別の隠れ家に移る大移動の準備中であるのだ。

 いつロイヤルナイツが再び攻めてくるかわからないからこそ、ここにいる者たちは一丸となって、急ピッチで準備していた。そんな重要な時に限って、ウォーグレイモンたちはやらかしてくれたわけだ。

 これには誰だって怒るだろう。

 

「まぁまぁウォーグレイモンたちも悪気があったわけじゃないんだから。それに、連絡で済ませたボク達にも責はあるしね」

 

 そんなメタルガルルモンを、アルフォースブイドラモンが落ち着けようとしている。何と言うか、ロイヤルナイツが気を使っているという、非常に珍しい光景だった。

 ちなみに。メタルガルルモンやアルフォースブイドラモンがトコモンをウォーグレイモンたちの元へと連れて行けば、今回の混乱は未然に防ぐことができただろう。

 だが、なぜそれができなかったのかというと、今の二人はここにいるデジモンたちの護衛役だからだ。

 

「それは、そうだが……」

「今回の件については、誰にも責任がある。一人だけ言うのは筋違いさ」

 

 二人が、ここにいるデジモンたちの護衛役となること。

 一応信用してくれたマミーモンやシルフィーモンの二人も頑張ってくれたのだが、それでもここにいる全員にアルフォースブイドラモンのことが信用されるのは一日では無理だった。

 昨日の話し合いで、護衛役となることが、アルフォースブイドラモンがここにいる者たちに信用されるための条件となってしまったのである。だからこそ、メタルガルルモン共々ここを離れられなかったのだ。

 

「アルフォースブイドラモン……!」

「もちろん、反省はしないといけないけどね」

「うぐ。はい」

 

 ともあれ、擁護してくれたことによって感極まった様子でアルフォースブイドラモンを見つめたウォーグレイモン。だが、その直後に他ならぬアルフォースブイドラモン自身に上げて落とされるという感覚を味わされてしまった。

 まあ、自業自得ではあるが。

 ちなみに、そんな時、ウォーグレイモンたちの後ろでは、トコモンとラプタードラモンが話していた。

 

「トコモン……守れなくてごめん」

「アウ?アウ!アウ!」

 

 まるで、気にするな、とばかりにトコモンは跳ね回る。

 本当に変わらないな、と。出会った時から変わらないそんなトコモンを前にして、ラプタードラモンは救われた気がして。

 たった一日二日だったが、別れていた間の時間を取り戻すように、二人は話し遊ぶ。

 そして――。

 

「ちょっとアンタ!」

「お、お姉さま……お話中に悪いですよぅ……」

 

 ――そして、そんな時だった。

 二人のシスタモンが、仲良く過ごしていたラプタードラモンとトコモンの間に入ってきたのは。

 トコモンにとって彼女たちは自分を助けてくれた相手で、二人のことは見覚えのあるどころではない相手だ。が、反対にラプタードラモンの方は、()()()()()()()()()()()

 

「君たちは……?」

「は?アンタ、さっきのこと覚えてないの?突き飛ばして、妹のことを怖がらせておいて……!」

「突き飛ばした?オレが?君たちを?」

 

 どうやら、ラプタードラモンは、トコモンと再会する直前のことが記憶から抜け落ちているらしい。その顔には、本気で疑問に思っている様子が見て取れた。

 だからこそ、そんなラプタードラモンが嘘をついていないことは、シスタモンノワールにもわかった。

 何もわかっていない者にああだこうだと言っても仕方ない。それに、ラプタードラモンたちの事情はシスタモンたちも聞き及んでいる。

 その二つが相まって、シスタモンノワールの中には行き場のない怒りだけが残って――。

 

「っく!気をつけなさいよね!」

「……?ああ、わかった」

 

 ――かろうじて、そう言うのがやっとだった。

 まあ、ラプタードラモンの方は訳がわからないといった体で呆然としていたのだが。

 

「へぇ。じゃ、君たちがトコモンを助けてくれたのか」

「ええ。そうよ。感謝しなさい!」

「ああ、ありがとう。君たちがいなくちゃ、オレはトコモンにもう一度会うことができなかった」

「調子狂うわね!」

 

 そうして、その後は特に何の確執もなく、シスタモンたち二人とラプタードラモンとトコモンは談笑する。

 ちょっとテンションを上げようとして、ラプタードラモンの素直なお礼の前に、盛大に失敗したシスタモンノワールや、二人仲良くリラックスするトコモンとシスタモンブランなど。

 今が一応緊急事態とも思えないほど、穏やかな時が流れていっていて。

 

「やれやれ……仕方ないデスね」

「……?君は?」

 

 そんなラプタードラモンたちの前に、白い犬のようなデジモンがやって来た。

 プロットモンと呼ばれるその成長期デジモンは、ラプタードラモンたちをどこか呆れたような、見下したような目で見ていた。

 自分よりも小さなデジモンにそういった視線を向けられたことのないラプタードラモンとしては、戸惑うしかない。

 

「ぼくはプロットモンと言うデス。皆さんが遊んでいる間に、準備は終わったデスよ。皆さんが遊んでいた間に!」

 

 準備というのは、間違いなくこの隠れ家から出ていく準備のことだろう。

 どこか皮肉を込められて言われたプロットモンの言葉を前に、トコモン以外のラプタードラモンたちは先ほどまで自分のしていたことを思い出し、今がどういう状況かを思い出して――。

 

「気を使われていたのか……?」

「アウ……?」

 

 ――そうして、ここにいるデジモンたちに、申し訳ない気持ちを抱くのだった。

 




というわけで、第二十二話。
ようやくトコモンとの再会回でした。

さて、次回はまた主人公の影が薄くなります。二話ほど。
次回はNEWデジタルワールドへと向かったオメガモンの話ですね。
ついにあの龍が登場します。

それでは次回もよろしくお願いします。
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