【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
ラプタードラモンたちがトコモンと再会した頃。
「削除する」
「なっ!?ロイヤルナイツ!?ここ数日いなかったはずなのに……ぐはっ!」
オメガモンは、全デジモンの抹殺任務に従事していた。
本来、オメガモンの担当は
まあ、およそ半数のメンバーがロイヤルナイツから脱退状況にある今では、それも当然だろう。残る半数のメンバーで任務をしなければならないのだ。ようするに人手不足なのである。
「ぐぅ……貴様ら……ロイヤルナイツごとき……がっ!」
「黙れ」
デジモンたちを次々と殺しながらも、オメガモンは溜め息を吐きたい気持ちになっていた。
確かに、ロイヤルナイツは、ほとんどのメンバーが平時にはどこで何をしているのかもわからない者たちの集まりである。だが、だからといって、今のように任務があればあるでこうなっているのでは、何のためのロイヤルナイツなのか、と。
いつぞやの緊急招集の最後で、デュークモンが言っていた言葉をオメガモンは思い出していた。
「……」
デジモンの少なさに奇妙な予感を抱きながらも、オメガモンは一人悩みながらウルドターミナルを行く。
あの件以降、オメガモンは一人になると決まって悩んでいた。
昨日は自分らしくないことを感じながらも相談したが、その相手はガンクゥモンやマグナモンといった頼りにならなかった面々。そのあまりの頼りなさを前にして、相談した側であるにも関わらず、オメガモンは本気で相談したことを後悔していた。
「ふっ。らしくない行動のツケか」
オメガモンは悩み続ける。
それでも、時折見かけるデジモンだけは見逃さずしっかりと削除するあたり、流石と言うべきだろうか。まあ、とはいえ、そうやって削除するたびに、なぜかオメガモンは無性に複雑な気分になっているのだが。
「……?これは……」
だが、そんな時だった。オメガモンが凄まじい力の波動を感じたのは。
まるでロイヤルナイツに匹敵するかのような桁外れの力の波動。だが、その誰にも合致しない波動。これほどの力を持つ者は、ロイヤルナイツ以外ではそう多くはない。
旧世界にて多くのそんな者たちが死んだ今の時代。だからこそ、オメガモンは疑問を感じ、頭の中にあった悩みを一時的に頭の片隅に追いやってでも、その先にある力の波動の下へと急いで。
「あれは……デュークモンか?いや違う……誰だ?」
その先でオメガモンが見たものは、黄金の斧のような槍を持つどこかデュークモンに似た騎士が、両手に水晶のような球体を持った武者龍と戦っている光景だった。
いや、戦っているというと語弊があるか。騎士の方は試すかのような雰囲気を見せていて、明らかに手を抜いていた。一方、龍の方は必死な表情で、全力であるのが見て取れる。
これでは、どちらが有利であって、どちらが不利であるかなど、火を見るより明らかだ。
「やはり。先日の聖騎士にも思ったが……貴様もなかなか」
「何を言っておる?」
「いや、何。貴様は、この世界を変えられる一助になる存在だと思っただけの話」
「……?この某が……?」
「疑うか。まあ、それもまた良し。貴様に秘められた力と意思は世界を導くものとなろう。が、今のままではただ無駄に死ぬだけ」
戦いながらも繰り広げられる会話。
彼らの会話が何の話をしているのか、オメガモンにはわからなかった。だが、ハッとなったオメガモンは、今の隙にイグドラシルの命令を実行することを思い出す。
そう。すなわち、不意打ちで彼らを削除することを。
すぐさまオメガモンは右手のガルルキャノンを出し、力を貯める。そうして、彼ら二人に狙いを定めて――。
「まだ研ぐ必要があるな。……ふむ。ちょうど良いところで来てくれたものだ」
「……っ!?“ガルルキャノン”!」
――その瞬間に、騎士の方はオメガモンの方をチラリと見て。
気づかれていた事実に驚きながらも、オメガモンはその右手の砲の名を冠する必殺技を放つ。放たれた閃光は、真っ直ぐに飛んで行って――騎士と龍は即座にそれを躱した。
「……躱したか」
「ふむ。ヒシャリュウモンよ。次はあのロイヤルナイツが相手だ。何。今のアレなら、貴様でもなんとかなるだろう」
「なんと!?」
騎士の方は、ヒシャリュウモンと呼んだデジモンに軽く告げる。次はオメガモンの相手をしろ、と。
一方で、ヒシャリュウモンの方は溜まったものではない。武者修行していたら、突然現れたこの騎士に襲われて、次はかのロイヤルナイツと戦う流れになっている。今日のヒシャリュウモンは厄日だろう。
そもそも、ヒシャリュウモンは完全体で、その実力差はオメガモンと比べるまでもなく明白。先ほどの砲撃を避けられたのだって、騎士の方が前もって視線をオメガモンの方に向けていたからこその結果であるのだ。
「それでは頑張るのだ」
「……勝手な!」
好き勝手やらかして、どこかへと消えていった騎士。
そんな騎士を前に、ヒシャリュウモンは苦い顔をするのを抑えられなかった。
とはいえ、騎士が逃げようと、ヒシャリュウモンがどういうことを思おうと、オメガモンには関係ないのだが。せいぜい、逃げられた騎士に忌々しい思いを抱いた程度である。
「削除する」
「っく!こうなればやるしかない!」
こうなってしまえば、ヒシャリュウモンには戦うという選択肢しかない。ヒシャリュウモンも、ここで死ぬ気は毛頭ないのだから。
左腕からグレイソードを出し、ヒシャリュウモンに斬りかかってくるオメガモン。そんなオメガモンに対して、ヒシャリュウモンは自分の体をくねらせるようにしてそれを躱し、空へと飛び上がった。
ヒシャリュウモンのその回避行動は、上空を取れば有利を取れると考えたがゆえの行動。だが、結果として、ヒシャリュウモンの読みはハズレだ。
そう。オメガモンとて、空を飛ぶことができるのだから。空を飛んだ程度では、有利を取ることなどできるはずもない。
「どうにか……っ!」
だが、オメガモンは飛ばない。
オメガモンには空を飛びヒシャリュウモンの下へと向かうよりも、もっと効率のいい方法があるからだ。
そう――。
「“ガルル――」
――撃ち落とす。それだけのことで、それが最も効率の良い方法。
砲の右腕を構えたオメガモンを目にしたその瞬間に、ヒシャリュウモンの脳内では警鐘が鳴っていた。今までにないほどに。
そして――。
「――キャノン”!」
「ぬぐ……!」
――そして、再度の閃光が放たれる。
直撃すれば消滅は必至。受け流すことも防ぐことも出来はしない。であるのならば、することは一つ。躱す。それだけ。だからこそ、ヒシャリュウモンは縦横無尽に天空を翔け、閃光を躱し続ける。
だが、オメガモンもその対応は予測済みだ。閃光を放ち続けたまま、逃げ惑うヒシャリュウモンをしつこく追い回す。
「っく!これでは……!」
地平の彼方まで届く閃光が、縦横無尽に振り回される。もはや、辺り一帯は見るも無残な状態へと変化していた。
そんな中でも、なんとかヒシャリュウモンは逃げ回っていられたが――やがて、覚悟を決めた。このままではあの閃光からは逃げられないと踏んだのだ。だからこそ、一世一代の賭けに出ることにしたのである。
「はぁあああ!“成――!」
決心したヒシャリュウモンは、全速力をもってガルルキャノンをすれ違うように躱し、オメガモンの下にたどり着く。そうして放つは、自身の必殺技。
自分自身を巨大な鋼鉄の刀と化し、敵を一刀両断する“成龍刃”と呼ばれる技。
まさに一本の巨大な刀となったヒシャリュウモンは、オメガモンの下へとたどり着いて――。
「――龍刃”!」
「“グレイソード”!」
――直後、オメガモンの左腕から放たれた斬撃が、刀となったヒシャリュウモンを切り裂き、上空へと消えていった。
結果的に言えば、賭けは失敗。かろうじて生き残ってはいるが、ヒシャリュウモンはもはや動くことはできなかった。
ヒシャリュウモンという刃では、オメガモンの剣には叶わなかったのである。
「終わりだな」
「っく……無ね……」
グレイソードを構えて、ヒシャリュウモンにトドメを刺そうとするオメガモン。
そんなオメガモンを前にして、ヒシャリュウモンは目を閉じ、力及ばずの自分を恥じた。
これで終わりだ、と。所詮、あの騎士は自分を買いかぶっていたのだ、と。そうヒシャリュウモンは思って。
だが、死を目の前にして、消え行く自分の命を投げ出そうとしたヒシャリュウモンは、その直後に見た。大地に眠る黄金の神の如き龍の姿を。死にかけていたからこそ、死に触れていたからこそ、それを見ることができたのか。
「あ、れは……」
「……?」
オメガモンにはそれが見えてはいないらしい。
だが、ヒシャリュウモンには確かに見えていた。その黄金の龍が、世界を支えているその様を。支えるべき世界が失われて、在るべき場所がなくなったその黄金の龍の嘆きを。嘆きながらも、新たな世界のために残したその力の残滓を。
死ぬ間際の幻影だったのだろうが、それはまるで御伽噺や伝説のようで、確かにその時ヒシャリュウモンは神話に触れていて――。
「……まだ……まだじゃ!」
「……っ!」
――その直後、新たな世界のために力の残滓を残したそんな黄金の龍の姿を見たからこそ、ヒシャリュウモンは諦めようとしていた自分を恥じて目を開く。
そうして、ヒシャリュウモンは気づいた。潔く死を認めるなど、自分には無理だった、と。
そう。無理なのだ。泥汚くても、今日まで生き残ってきた矜持が、ただひたすらに生存欲で生き残ってきた自分の本能が、それを認めさせてくれなかったのだ。
だからこそ、ヒシャリュウモンはオメガモンを睨みつけて――。
「貴様は……っ!?」
「おぉおおおおおおおお!」
――その瞬間、ヒシャリュウモンを光が包む。オメガモンは似たような光景を見たことがある。
それは先日のあの件の時。あの、ただ生きたいとそう言った者が引き起こした光景。それに、この光景は酷似していて。
「なんなのだ……貴様は……貴様たちは……いつも!なんなのだ!」
次の瞬間、この場にいたのは、両腕に刀を持った黄金の武者龍。和風の鎧を纏ったその究極体デジモンこそが、オウリュウモンと呼ばれるデジモン。
それは旧世界の忘れられた神の力の一部を継いだ、大いなる者だった。
というわけで、第二十三話。
悩んだ結果、オウリュウモンを出すことにしました。
……序盤から出せばよかったと後悔しています。
さて、オウリュウモンというデジモンのことを知っている人は、次回のことが予想つくかもしれません。
それでは次回もよろしくお願いします。