【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第二十五話~集まる運命~

 森を駆け抜ける大勢のデジモンたち。

 その総数は実に数十を超えていて、その中にはラプタードラモンたちの姿もあった。

 本来ならばこれだけの大人数での大移動は愚行でしかない。別れた方がいいに決まっている。が、今回に限って言えば、話は別だった。

 そう。いつロイヤルナイツがあの隠れ家に来るかわからないのだ。時間がない。それ故に、初めから分散するのではなく、移動しながら分散することになったのである。

 

「む。これは……?」

 

 だが、結論から言えばそれは必要なかった。

 すでに事態は、どうしようもないところまで進んでいたのだから。

 

「気をつけろ!上空から何かが来る!」

 

 そのことに初めに気付いたのは、索敵の魔術を使っていたウィザーモンと呼ばれる魔術師風の成熟期デジモンだった。

 ウィザーモンは、自身の扱える魔術の効果範囲ではせいぜい気休め程度にしかならないことを理解していたが、それでもないよりはマシだと、ロイヤルナイツ対策に索敵の魔術を使っていたのである。

 だが、結果としてそれが功を奏することとなった。ウィザーモンの索敵の魔術は、こちらに向かってくる()()()()()()()()()()()大量のデジモンたちを発見したのだから。

 

「なんだって!?……なっ!」

 

 そのウィザーモンの言葉を聞いて、アルフォースブイドラモンは空へと飛び上がった。

 そんなアルフォースブイドラモンが見たのは、赤と黒。そう。空を埋め尽くさんばかりの、殺気立った大量の赤黒の獣竜デジモンたち。

 その数は千をゆうに超えている。流石にこの数は異常でしかない。

 

「戦闘態勢をとれ!敵の数は不明。見えるだけでも千を超える!」

「は?千……?」

「千だって!?」

「嘘だろ……!」

 

 アルフォースブイドラモンの言葉に、その場の全員が唖然としたような声を出す。流石に千以上ともなれば、それがどのような成長段階であれ、脅威だ。

 特に、ここにいる者たちはそのほとんどが成長期から成熟期。数で負けているとなれば、そんな力の弱い者たちが呆然とするのも無理はなかった。

 だが、敵は待ってくれない。先陣を切って到着した一匹を、アルフォースブイドラモンが切り裂いて――。

 

「来たぞ!」

「っ!あれは……!」

「まさか……?」

 

 ――その瞬間に、千を超える同じデジモンが襲い来る。

 だが、その状況になりながらも、一瞬だけウォーグレイモンとラプタードラモンは呆然としてしまった。

 いや、彼らが呆然としてしまったのも無理はないか。特にウォーグレイモンは、襲い来るデジモンに似たデジモンを見たことがあったのだ。

 そう。襲い来るデジモンたちは、いつかのラプタードラモンの姿だったドルグレモンというデジモンに似ていたのだ。まあ、とはいっても、似ているだけだが。

 それ以外にも、彼らは意思疎通の適わぬ狂った様子だけでなく、あの死の進化の雰囲気まで纏っていると来たものだ。

 ラプタードラモンも、ウォーグレイモンも、そんな既視感のある大量のデジモンたちを前にして、混乱してしまったのである。

 

「ウォーグレイモン!」

「はっ……!?済まない!」

 

 とはいえ、一時は呆然としてしまったウォーグレイモンも、メタルガルルモンの言葉にハッとなって戦闘に加わる。

 敵はなかなかに強い。が、それでも実力は成熟期以上完全体未満といったところ。ウォーグレイモンたちの敵ではない。

 そう。その言葉の通り、ウォーグレイモンたちにとっては、敵ではなかった。

 問題は、ラプタードラモンやシスタモンたちを含むウォーグレイモンたち以外のデジモンたちだ。

 

「グギャァアアアアア!」

「っく!戦える者は前に出ろ!自衛を最優先にウォーグレイモンたちの援護をするんだ!」

 

 ここにいる大勢のデジモンたちの中の誰かが震えた声でそう言って。

 その言葉に続くように、成長期デジモンも、成熟期デジモンも、X抗体持ちも、通常デジモンも、誰もが生き残るために戦い始めた。

 もちろん、その中にはラプタードラモンやシスタモンたちもいる。

 戦っていないのは、本当に戦う力のないトコモンたち幼年期のデジモンたちくらいだった。

 

「おぉおおお!“クラッシュチャージ”!」

「ギャァっ!」

 

 その装甲の堅さを生かして、襲い来るデジモンの一匹に突撃したラプタードラモン。

 予定外のダメージを受けたそのデジモンは、直後――。

 

「行くわよブラン!“グランドシスタークルス”!」

「はい、お姉さま!“グランドシスタークルス”!」

 

 ――二人のシスタモンの連携技によって、地に沈んだ。

 それだけで、あっさりと勝つことができた。が、それでも一匹倒した程度では喜ぶことも、気を抜くこともできるはずはない。今の間にウォーグレイモンたちは一人当たり十体は倒しているし、それでもまだ数百匹はいる。

 実に気が滅入りそうになる数。というか、一匹一匹がラプタードラモンたちにとって弱くも強くもないというのが、また面倒だった。

 

「っく!まだまだいる……!」

「アンタも気を抜かないでよね!」

 

 戦い続けるラプタードラモンは、終わりの見えない戦いに苦言を漏らす。

 まあ、その気持ちはわからなくもないだろう。

 そして、そんなラプタードラモンをからかうように、シスタモンノワールは自身の余裕を見せつけたのだが――。

 

「お姉さま危ない!」

「グギャアアアアア!」

「きゃっ!?」

 

 ――その直後、襲われて悲鳴を上げている辺り、何と言うか締まらない。

 ちなみに、そんなシスタモンノワールを襲った者は、上空から飛んできたメタルガルルモンのミサイルの一つが直撃して、一瞬で地に沈んでいた。

 

「気を抜くなよ」

「うっ……わかってるわよ!」

 

 ともあれ、そうやって、力の足りないラプタードラモンたちは力を合わせながら、少しも気を抜いてはならない状況の中で戦い続けていたのである。

 そんなラプタードラモンたちの一方で、ウォーグレイモンたちは、上空の敵を倒し続けていた。少しでも森の中に敵が入らないように、ラプタードラモンたちの下に敵がいかないようにするための配慮である。

 とはいえ、数が数であるゆえに、やはり何十匹かは通り抜けていってしまうのだが。

 

「“ガイアフォース”!」

「“コキュートスブレス”!」

 

 メタルガルルモンとウォーグレイモンのそれぞれの必殺技が、絶対零度の吐息と巨大な火炎弾が、幾匹もの敵を氷漬けにして燃やし尽くす。

 それでも倒しきれず、生き残った敵は、二人が近接戦闘で一瞬で倒した。

 

「“シャイニングVフォース”!」

 

 別のところでは、アルフォースブイドラモンの胸のV字アーマーから放たれた光線が、何十匹もの敵を消し飛ばす。

 近づいてきた者たちには、神速のスピードと両腕のVブレスレットから発生した剣によって、一瞬のうちに葬られる。

 この三人は、今この場での最高戦力。だが、この三人をもってしても、この数の敵を相手に、この数の味方を守りながら戦うのは厳しかった。

 すでに、何人かのデジモンたちは敵の凶行に倒れている。だが、それを嘆く暇すらも、今の三人にはない。それほど、次から次へと敵デジモンは迫って来ていたのだ。

 

「っく!このままじゃ……!」

 

 その時、珍しくアルフォースブイドラモンが弱音を吐いた。

 別に自分は全然大丈夫なのだが、この場の敵をすべて葬るには()()()()はかかる。その間に、どれだけの者たちが犠牲になるか。わかったものではない。

 だからこその弱音。だが――。

 

「ふん。だから威厳を持てと言っているだろう。それに自分一人ならいくらでもやりようがあっただろうに……」

「がはは!どれ、儂らがちょいと動くか!」

「やれやれ。あの暴食の悪魔とやりあって疲れているというのに……帰って来て早々か」

「ラララ~どうやら~イグドラシルは~美しくない者で~美しくない手を~使ってきたようですね~!」

 

 ――だが、運はまだ彼らを見捨ててはいなかったようだった。

 敵の獣竜デジモンたちが、驚きと共に上を見上げれば。そこにいたのはデュークモンに、ロードナイトモンに、エグザモンに、スレイプモン――ロイヤルナイツから脱退状況にある者たち。

 これ以上なく、心強い増援だった。

 

「デュークモン!?X抗体を得たのか……!?」

「ウォーグレイモン!あれだけの書き置きだけで出て行きおって……探したぞ」

「っぐ!悪い!」

 

 いろいろと驚きはあるものの、これで形勢は逆転したもの同然だった。

 そうして、一瞬の後。残る数百匹の敵は、すべて消滅することとなる。

 自分たちが一生懸命に敵を倒していたのに、増援メンバーは一瞬の片手間で自分たちが倒した以上の敵を消滅させて――ウォーグレイモンたちは、感謝の気持ちを抱くと共に少しだけ複雑な気分となるのだった。

 

「はっ!?まだ何体かの敵は下に……!」

「落ち着け。アルフォースブイドラモン。そちらなら彼が行った」

「彼……?」

 

 そう。消滅したのは上空にいた分だけ。元々下にいた敵は消滅していない。というか、守るべき者たちが下にいる時点で、下の敵も殲滅出来るはずなかった。

 ゆえに、アルフォースブイドラモンは焦って――その直後のスレイプモンの呆れたような声に止められ、ハッとなって下の森を見た。

 その時、彼の目に入ったのは、森の中を自在に行く銀光。それは、自分もよく知っている者の鎧に、太陽の光が反射したものだった。

 そして――。

 

「っく!どうなってるんだ!?」

「わからないわよ!」

「グギャアアアアア!」

「キシャアアアアア!」

 

 ――その時。森の中では、上空の敵が殲滅されたことに驚きながらも、未だ戦いは続いていた。

 残る敵は二匹だけ。あともう少し。一気に終わりの見えたことによって、ラプタードラモンたちの気分は多少マシになっていた。

 

「アウ!?」

「ここまでくれば、ぼくだって……ぼくにだってできマス!」

 

 だが、その時、その瞬間は、最も気が緩む時でもあった。

 後ろから聞こえてきたトコモンの驚愕するかのような声。それにラプタードラモンたちが反応するよりも早く、前に飛び出してくるプロットモン。

 はっきり言って、その時のラプタードラモンたちは驚きに固まっていた。今までおとなしく守られていたプロットモンが、いきなり出てきたのだ。無謀では言い足りない相手の目の前に。

 これには驚かない方がおかしいだろう。

 

「グギャアアアア!」

「キシャアアアア!」

「ウワっ!」

 

 直後、二匹の獣竜が咆吼。

 それに驚き、恐れを抱いたプロットモンは動けなかった。

 行けると思ったから、プロットモンは出た。誰かに守られているばかりは嫌だったから。強くなりたかったから。いろいろな理由はあったが、実際はすべて勘違い。

 そんな自分の犯した蛮勇にプロットモンは、早くも後悔していた。

 このままでは、プロットモンは次の瞬間に死を纏う獣竜に食べられてしまうだろう。

 そんな、恐ろしさに震えるプロットモンを見て、ラプタードラモンは――。

 

「やめろぉおおおおお!」

 

 ――ただ、プロットモンを死なせたくないと思った。

 例えそれが自業自得でも、目の前で弱き者が無意味に死んでいくのをラプタードラモンは容認したくなかったのだ。だからこそ、この一瞬後の理不尽な悲劇を覆せる力を、ラプタードラモンは欲したのである。

 そうして、その直後。そんなラプタードラモンの思いに応えるかのように、彼は進化する。グレイドモンという名の完全体デジモンに。“金色の流星”とさえ呼ばれる黄金の騎士に。

 

「はぁっ!」

「はれ?」

「無茶するな……ったく!心配させるな!」

 

 そして、襲いかかられる直前に、グレイドモンはプロットモンを救い出す。

 死を覚悟したプロットモンは、助かった事実に、目を白黒させて驚いている。どうやら、まだ助かったという認識が正確にできていないらしい。

 

「クシャアアアア!」

「キシャアアアア!」

 

 獲物を横取りされたが故か。

 怒りに狂った二匹の獣竜が、プロットモンを抱えるグレイドモンめがけて殺到する。

 それでもグレイドモンは慌てない。

 

「はっ!」

 

 そんな二匹の獣竜を前に、プロットモンを抱えたままに剣を構えたグレイドモンは、そのうちの一体を切り捨てる。

 そして、即座にもう一体の方に向かい合って――。

 

「まったく。遅いのよ。ジエスモンのくせに」

 

 ――その直後、シスタモンノワールの呟きが聞いたような気がした。

 そして。

 

「無茶言うなって!“轍剣成敗”!」

 

 そして、グレイドモンですらギリギリ目で追うことができるほどの高速で移動してきたジエスモンが、残った獣竜を瞬時に切り捨てていた。

 




というわけで、第二十五話。
少し駆け足気味でしたが、デクスドルグレモン襲来からの味方大集合……からのグレイドモン進化回でした。

さて、次回は……大集合回その2です。

それでは次回もよろしくお願いします。
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