【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
ジエスモンたちロイヤルナイツの登場によって窮地を脱したラプタードラモンたち。
だが、全員に漂う緊迫感は少しもなくなってはいなかった。
まあ、それもそうだろう。あの謎の獣竜軍団から助かったのはいい。が、助けてくれたのは、その全員が悪名高きロイヤルナイツだ。そう簡単に信用できるはずもない。
「ジエスモン……ロイヤルナイツか!」
「ちょ、ちょっと待て!オレは味方だ!」
グレイドモンがジエスモンを睨み、プロットモンを抱えたままに、その腰の剣に手をかける。
一方のジエスモンだが、当然の如くせっかく助けたというのに、敵扱いされるなどたまったものではなかった。一生懸命に身の潔白をグレイドモンに訴えている。
とはいえ、グレイドモンはもとよりこの場にいるデジモンたちのほとんど全員が、そんなジエスモンを胡散臭く見ていて――はっきり言って、ジエスモンはショックだった。
「何やっているんデスか!恩人さん!」
「ロップモン、こいつはロイヤルナイツだ」
「だから、オレは味方だって……!」
せっかく颯爽と現れて助けたというのに、哀れな目に遭っているジエスモン。そんな哀れなジエスモンを助けたのは、何を隠そう先ほど無謀な蛮勇によって死にかけたプロットモンだった。
神経が図太いというのか、何と言うのか。先ほど自分の蛮勇によって死にかけたというのに、プロットモンはもう復帰したらしい。その調子には呆れるしかない。
「その人はヒーローさんなんデスよ!大丈夫デス!」
「……ヒーロー?」
ヒーロー。つまりは英雄。確かにロイヤルナイツと呼ばれるデジモンたちはそう呼ばれるだけのことがあるだろう。だが、それは今の時代の話ではない。それは、きっといつかの過去か、それかいつかの未来の話だ。
だからこそ、プロットモンの言葉を聞いても、その場の全員がジエスモンを胡散臭そうな顔で見ているのは変わりなくて――。
「一応……ジエスモンは味方です。私たちが……証明します」
「まったく。ヒーローですって。ジエスモンのくせに生意気なのよ!」
――仕方なく、そんな信用がない事実に若干落ち込み始めている弟分のためにも、シスタモンたちもジエスモンの身の潔白を訴える。
「シスタモン!?」
「大丈夫よ。こいつ、私たちに頭上がらないから」
「……どういう関係なんだ?」
「育ての親の一人って関係ね」
「逆じゃなくてか?」
「なんですって!?」
若干失礼なことを言ったグレイドモンがいたりもしたが、シスタモンたちの言葉を聞いて、その場の全員がジエスモンを胡散臭く見るのは止めたようだった。凄まじきはシスタモンたちに対する信用である。
「どうして僕の言うことは信じてくれなかったのデスかー!」
「いやいや、ありがとうな。嬉しかったぜ?」
「うぇっ!?えへへ……ヒーローさんにお礼を言われちゃったデスー!」
「オレのことを知ってるのか?」
「ジエスモンさんは僕らデジモンのヒーローデス!お会い出来て嬉しいデスよ!」
一方で、プロットモンがキラキラとした尊敬の眼差しを、ジエスモンに向けていたりもして。もう先ほどまであった緊迫した雰囲気は霧散していた。
そして、グレイドモンたちがそのような雰囲気になったのを見計らって、空からウォーグレイモンとデュークモンが降りてくる。
言うまでもなく、上空のロイヤルナイツの無害を伝えるためだ。
「ウォーグレイモン!」
「全員に連絡だ。上空のロイヤルナイツたち……エグザモンとスレイプモン、ロードナイトモンはとりあえず味方だ。心配しなくていい!」
「本当に大丈夫なのか?」
「ああ、オレたちが保証する」
「すまぬな。信用はできないと思うが……しばしの間だけでいい。信じてくれ」
まあ、信じがたいことではあったが、デュークモンの言葉は信じられるだろう。
なにせ、X抗体を得ているのだから。X抗体デジモンを嫌っているはずのロイヤルナイツが、X抗体を得ている。それだけで、デュークモンのことを知らないデジモンたちも、デュークモンが普通のロイヤルナイツとは違うと思えたはずだ。
そんなデュークモンとウォーグレイモンたちの保証があるのだ。上空にいるロイヤルナイツや目の前にいるジエスモンは、そうしてとりあえず信用を得ることができたのだった。
「デュークモン!知りたかったことは知ることができたのか?」
「グレイドモンだったか?また進化したのだな。ああ。多少当初の予定とは違ったが、知ることができた」
「本当か!?」
デュークモンが知りたかったこと。それは、あの死の進化。それについて知ることができた。そう言うデュークモンに対して、一番に食いついたのはウォーグレイモンだった。
あの死の進化については、グレイドモン本人は記憶を失っているために実感が湧かないのだが、あの脅威を直接見ているウォーグレイモンにとっては、何よりも知りたいことの一つだったのだ。
だからこそ、そんなウォーグレイモンを前にしてデュークモンも頷いて、「移動中だったのだろう。走りながら話す」とそう言って。
だが――。
「残念だが、貴様たちは全員がここで終わりだ」
「っ!」
――だが、結局そのことについて、デュークモンが話すことも、ウォーグレイモンが聞くことも、両方共叶わなかった。
声が聞こえたのだ。殺気を孕んだ、声が。それと同時に、上空からプラズマの光弾がグレイドモン降って来て。
「伏せろっ!」
その瞬間にこの場に響く、デュークモンの焦ったような声。全員がその声に従うと同時に、デュークモンはその光弾をその手に持つ聖盾で受け止めた。
予想よりも遥かに高威力。記憶にあるものとは違うが、デュークモンはこの技に覚えがある。
そう。この技は――。
「この攻撃……マグナモンか!」
「デュークモン……いや、裏切り者。貴様たち共々、デジモンはここで排除する!」
――マグナモンの技だ。
空を睨むデュークモンのその視線の先には、黄金の鎧のマグナモンがいて。いや、マグナモンだけではない。ドゥフトモンも、ガンクゥモンも、クレニアムモンも、デュナスモンもいる。
脱退者を含めれば、オメガモンと現存しない十三番目のデジモン以外のロイヤルナイツ全員が、ここに集合していた。
オメガモンがいない事実に首を傾げつつも、だが、デュークモンは驚いていた。別にイグドラシル側のロイヤルナイツがほとんど出張ってきたからではない。
デュークモンが驚いていたのは――。
「マグナモン……その姿は……!」
「貴様たち異分子と同種になるのは心の底から激情が湧き上がるが……これも我が主の命!貴様たちを排除するためだ」
――クレニアムモンとガンクゥモン以外の三人のロイヤルナイツが、X抗体を獲得していたことに、だ。
マグナモンの言っていることが本当ならば、イグドラシルが彼らにX抗体を得ることを許可したのだろう。自分の騎士たるロイヤルナイツを、異分子とまで言って排除対象にしたX抗体デジモンにさせる。
そんな事態に、イグドラシルが何を考えているのか。この場の全員が理解できなかった。
ちなみに、クレニアムモンとガンクゥモンがX抗体を得ていないのは、二人だけが最後まで今の自分の持つ実力に自信を持つと決めたからである。二人以外の者たちは、自分の矜持よりもイグドラシルの命令を優先させたのだ。
「我が君イグドラシル……一体何を考えて……!」
「デュークモン貴様……裏切っておきながらまだそう言うか!貴様たち裏切り者や異分子に我が主の御考がわかるものか!」
ロイヤルナイツの行動方針の変化。その異様な事態を前にして、この場の誰もがわかっていた。いや、わからざるを得なかったと言うべきか。
イグドラシルが何かを始めたということを。そして、おそらくその始まった何かは、終わりだということを。
「ふん。我はアルフォースブイドラモンの相手をする。借りがあるのでな」
「だったら、オレはエグザモンだ。飛竜の力を持つ者として、竜帝とは決着をつけたい」
「エグザモンとは儂が決着をつけたかったのですがのう……仕方ない。ロードナイトモンで我慢するとしますかの。マグナモンお主はどうするのじゃ?」
「デュークモンだな」
「俺は馬鹿弟子とだな」
現れたロイヤルナイツたちは、好き勝手相手を指名していく。それぞれここ数日で因縁が出来た相手を、興味があった相手を、選んで行った。
まあ、同格相手を放っておくことはできないから、それは当然の選択である。
では、一人余ったスレイプモンや自分たち他のデジモンはどうなるのか。そう疑問を抱いたデジモンたちは、もしかしたら隙を見て逃げることができるかもしれない、と。そう思って。
だが、それは甘すぎる予想だった。ロイヤルナイツたちに、彼らを逃がすつもりなどないのだから。
「スレイプモンの奴が残っているが……雑魚と共にこのデクスドルグレモンたちに相手をさせればいい話か」
「なっ!?」
「えっ!?」
「馬鹿な……!」
その次の瞬間、驚くべきことが起こった。
ドゥフトモンが呟いた瞬間に、先ほどの遥かに多くの獣竜たちが、どこからともなくこの場に現れたのだ。
まるで、その獣竜たちはイグドラシル側のロイヤルナイツたちの味方であるとばかりに、彼らを避けて、グレイドモンたちだけを狙って襲い来る。
「さて、これで準備は整ったか。では……削除する!」
そうして、終わりが――終わりに続く戦いが、始まったのだった。
というわけで、第二十六話。
全面戦闘突入の前の回でした。
さて、次回からは全面戦争。
ロイヤルナイツ同士の戦い、デクス系デジモンとの戦いなど。
クライマックスに向けて突き抜けていきます!
それでは次回もよろしくお願いします。