【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
戦力的に見れば頼りになるロイヤルナイツたちは、一人を除いて全員が手を離せない状況になりそうで。
その上、さらに数千という数のデクスドルグレモンたちが襲い来る。これは、力の弱い者たちにとって、まさに最悪の状況だった。
「っく。戦える者たちは纏まれ!分散すれば各個撃破されるぞ!全員、生き残れ!」
そんな誰もが固まる中で、一番に再起動を果たしたのはウォーグレイモンだった。
彼は他のデジモンたちに指示を飛ばして、少しでも多くの者が生き残れるようにして、その上でメタルガルルモンとスレイプモンの二人と協力して、敵の排除に務めるつもりなのだ。
「グギャアアアア!」
「キシャアアアア!」
「クカァアアアア!」
「コォオオオオオ!」
そうして、襲い来るデクスドルグレモンたちを、ウォーグレイモンたちは迎え撃つ。いつ終わりが来るのかもわからない中で、ただ生き残るために。
そんなウォーグレイモンたちの一方で、ロイヤルナイツ組は互いに選んだ相手と戦っていた。
「さて、この前の借りを返させてもらうぞ。アルフォースブイドラモン!」
「っく!こんなことをしている場合じゃないのに……!」
少し前の因縁からか、ドゥフトモンに相手として指名されたアルフォースブイドラモンは苦い顔をして戦っていた。
正直言って、アルフォースブイドラモンはドゥフトモンと戦っている場合ではないと思っているのだ。つまりは、この多くのデジモンたちの命が減っていく異常事態の中で、自分も力弱き者たちの加勢に行きたいと思っているのである。
だが、当然のことながらドゥフトモンはアルフォースブイドラモンに執着している。その思いは叶いそうになかった。
「邪魔だっ!」
「X抗体を得た今の貴様は、ロイヤルナイツでも随一の疾さを持つだろう。だが、我とてX抗体を得て己の強さを引き出したのだ!今の貴様には負けん!」
「っぐ!」
自慢の神速のスピードを持って戦うアルフォースブイドラモンだったが、ドゥフトモンはそんな彼の疾さに体術で対応していた。
X抗体を得たドゥフトモンは、元々あったレオパルドモードの力が通常形態に加わっているのである。つまり、通常形態でありながら、レオパルドモードの特性も併せ持っているのだ。
ゆえに、レオパルドモードにあったしなやかな体の動きが、体術や剣術を得意とする通常形態に加わって、その結果として体術や剣術のレベルが跳ね上がったのである。
だからこそ、アルフォースブイドラモンの神速のスピードにも、ドゥフトモンは対応できている。今のドゥフトモンの戦闘技量は、ロイヤルナイツの中でもトップクラスになるだろう。
「ボクのスピードが……!」
「ふっ……貴様にはゴリ押しできるほどの力があるわけではないっ!」
ドゥフトモンの言う通りだった。
アルフォースブイドラモンには、エグザモンのような圧倒的な筋力や多彩な技があるわけではない。悪く言えば、一撃が軽いのだ。
だからこそ、アルフォースブイドラモンの攻撃はドゥフトモンの体術によって、受け流されてしまっている。スピードを主とする戦い方にとって、致命的な一撃を入れることができないというのは、まさに致命的だった。
が、とはいえ、まあ――。
「……はっ!?
「躱したか。本当に疾いな」
――まあ、致命的な一撃を入れられないというのは、ドゥフトモンの方も同じだったわけだが。
そう。アルフォースブイドラモンの予想以上の疾さに、ドゥフトモンの方も対応できていないのだ。カウンターを仕掛けようにも、凄まじい反射速度とスピードによってアルフォースブイドラモンは躱してしまうのである。
実は、ドゥフトモンはここに来るまでにアルフォースブイドラモンの今までの戦闘データを解析し、それに対応するプログラムを作ってきていた。
そのプログラムによって、ドゥフトモンにはアルフォースブイドラモンの攻撃が手に取るようにわかっているのだ――が、だからこそ、手に取るようにわかっているのに一撃も入れられないという今の状況は、ドゥフトモンにとってプライドを傷つけられる結果としかならなかった。
「ドゥフトモン!君はおかしいと思わないのか!全デジモンの抹殺なんて……!」
「我が主イグドラシルには何か考えが……いや、滅びこそがイグドラシルのお考えだ!」
「そんな訳あるか……!」
「ふん。貴様はアレを見ていないからそう言えるのだ」
「……?」
ドゥフトモンの言ったアレ。それが何かアルフォースブイドラモンにはわからない。ドゥフトモンの様子からして、あの死の進化とはまた別の何かであるようだが――所詮、考えても栓のないことだった。
「っく!」
「貴様の動きはわかっている!無駄な抵抗はやめるのだな!」
そんな中で、アルフォースブイドラモンの体には、少しづつ小さな傷が増え始めていた。
とはいえ、アルフォースブイドラモンの方もただではやられていない。アルフォースブイドラモンにもわかり始めていた。ドゥフトモンが、ここまで自分の攻撃に対応できている理由を。
正確にはわからないが、おそらくは過去の自分の戦闘データを基にしているのだろう、と。アルフォースブイドラモンはそこに思い至っていたのである。
「……仕方ないか」
だからこそ、アルフォースブイドラモンは覚悟を決めた。
このままでは、時間を置けば置くほど自分の疾さに対応されるようになって、不利になる。ならば、今のうちに勝負をかけるしかない、と。
アルフォースブイドラモンはそう思って――その直後、アルフォースブイドラモンは勝負をかける。ドゥフトモンめがけて突っ込んだのだ。
「行くぞ……!」
「何?……功を焦ったか。愚かだな!」
そう口では馬鹿にしながらも、ドゥフトモンは内心で疑惑の念を抱いていた。彼にはアルフォースブイドラモンが何も考えなしに突っ込んでくるとは思えなかったのだ。
何かを見落としている。ドゥフトモンはそう思って――その直後、己の失策を悟った。
ドゥフトモンは忘れていたのだ。自分の対アルフォースブイドラモン用のプログラムは、あくまで過去のデータを基にしていたということを。今のデータは、自分の想像でしか補われていなかったことを。
それを忘れてしまったのは、ドゥフトモンがX抗体を得たことによって力が増して、知略をそれほど必要としなくなったがゆえだった。調子に乗ったツケとも言う。
「っく!“ブラオン……」
ドゥフトモンが咄嗟に繰り出した攻撃は、アルフォースブイドラモンに当たった。が、その傷は瞬時に修復された。
その現象は、アルフォースブイドラモンだけが持っていたものによって引き起こされたもの。それはアルフォースと呼ばれる究極の力。古代種デジモンだけが持つその力は、X抗体によってより引き出されていた。どんなダメージも、瞬時に修復されるほどに。
「っく!我がやられるのは必然だった、か!だが……!」
「ボクの勝ちだっ!“アルフォースセイバー”!」
そうして、X抗体を獲得したことによって自分の持ち味を忘れたドゥフトモンは、皮肉にもX抗体の獲得によって自分の持ち味を増したアルフォースブイドラモンの攻撃を受け――。
「だが!まだ負けん!」
「なっ!?」
――アルフォースブイドラモンに切り裂かれながらも、ドゥフトモンは意地で一撃を返す。
まさかあの状態からカウンターを受けるとは思わなかったアルフォースブイドラモンは、攻撃直後ということも相まって、その一撃を完全に躱すことはできなかった。
ドフゥトモンの一撃を食らいながらも、体勢を立て直したアルフォースブイドラモン。だが、そんな彼の前にドゥフトモンの姿はどこにもなかった。
「え……?」
「遺憾だが、我は貴様に負けた。だが!イグドラシルが負けたわけではない!」
ただ、ドゥフトモンの声だけが、響いていた。
一方で、ドゥフトモンがやられたその瞬間は、エグザモンとデュナスモンの二人も見ていた。
「やれやれ……自分の力に呑まれおって。普段の奴ならああはならなかっただろうに……奴自身、無意識的にでもイグドラシルの命令に心が乱されておったのかな?」
「さあな。負けた奴のことなど知らん」
「それもそうか」
口ではドゥフトモンを批判するようなことを言っておきながらも、二人とも意識はドゥフトモンの方を向いてなかった。二人とも、相手が相手であるために、意識まで完全に他所に向ける余裕はなかったのだ。
「はぁっ!」
「ふっ!」
X抗体を得たデュナスモンの姿は、元の面影のほとんどを失って、まるで竜と悪魔が混ざったような外見となっている。
X抗体を得た時、元の外見からあまり姿が変わらないのは、元のデジモンが通常状態でもそれだけ自身の能力を引き出せていたということで、X抗体を得てもそれほど能力は上がらない。
だが、デュナスモンはその逆である。つまり、X抗体を得たことによるスペックの上昇率はロイヤルナイツ内の誰よりも上だったのだ。
まあ、たいした差ではないと言えば、ないのかもしれないが――問題は、今のデュナスモンはそれこそ、スペック馬鹿のエグザモンにスペックで張り合えるほどにまで上がっていることである。
「やはり竜帝と呼ばれるだけはあるか……!」
「くはは!飛竜の小僧が!なかなかどうして楽しませてくれる!」
愉しくてたまらないといった風にエグザモンは自身の持つランスを突き出した。
“アンブロジウス”と呼ばれるその特殊なランスは、巨大なエグザモンが振るう武器とだけあって、かなり巨大だ。それこそ、デュナスモンの背丈を遥かに超える大きさを誇っている。
だが、デュナスモンは、そんな自身の背丈よりも遥かに大きい武器を、その拳の一撃で弾いた。それだけデュナスモンのパワーが上がっているのであるが、衝撃的な光景である。
「相変わらずの馬鹿力め……!“ドラゴンズロア”!」
デュナスモンの両手から放たれたエネルギー弾。
以前、ドルゴラモンに放ったものよりも見た目の大きさもエネルギー量も違うその弾丸がエグザモンへと向かって行って――。
「はっはっは!飛竜の小僧も似たような儂のことを言えんではないか!これほどの力を得るとはな!」
――エグザモンの背中の巨大な翼が、そのエネルギー弾を防いだ。
「っち。“カレドヴールフ”か!」
“カレドヴールフ”と呼ばれるエグザモンのその巨大な翼は、独自の意思があり、エグザモンの飛翔のための翼となる他にも、いくつかの用途がある。先ほどの場合はさしずめ自動防御と言う感じだろう。
それなりに本気で撃った攻撃だったというのに、あっさりと防がれた。その事実にデュナスモンは苦い顔をするしかなかった。
「ほれほれ。そんなものではないだろう?」
「いつまでも格上気取りか……!」
「くはは!なら、認めさせてみよ!」
「……言っていろ!“ドラゴンズ――」
「はは!やるか!カレドヴールフ!“ドラゴニック――」
エグザモンの安い挑発。だが、デュナスモンはそれに乗った。
互いに出すは、掛け値なしの最大火力での必殺技。片やデュナスモンは一瞬で高高度まで飛翔し、片やエグザモンは一瞬で大気圏外まで上昇して。
互いにいるのは空の彼方。本来ならば、互いの技は両方とも地上の敵に向かって攻撃する技であるのだが――。
「――ガスト”!」
「――インパクト”!」
――今回ばかりはそういうわけにもいかない。
一瞬後、互いの姿が互いに見えぬほどに遠く離れた二人の距離は、一瞬でゼロになる。
デュナスモンはその頭の巨大な角を立て、エグザモンは衝撃波と摩擦熱を伴って。互いに急降下した勢いを保ったままに――直後、遥か上空にて激突した。
突進系の技のぶつかり合い。その凄まじい衝撃は、遥か彼方にある地上にも届いていたほどだった。
「おぉおおおお!」
「あぁああああ!」
その余波だけで天が裂けんばかりのぶつかり合い。大気が震え、世界が揺れる。
天災が如きぶつかり合いの結果は――。
「くはは!互角となるか!本当に面白い!長生きはするものだな!まさかロイヤルナイツで儂と同格の者が現れるとは!」
「……これが竜帝か。流石にやすやすと勝たせてはくれないか」
――結果は引き分けだった。同威力のぶつかり合いの果てに、互いの攻撃が相殺されたのだ。
そうして、竜の力を持った者同士、決着をつけなければならないとばかりに、二人は遥か上空にて再びぶつかり合うのだった。
というわけで、第二十七話。
ロイヤルナイツ戦その1。
今後のドゥフトモンの扱いが決まってしまった直接の原因となる回でした。
ちなみに、そのドゥフトモンの紹介。
この小説内では、(一応)参謀キャラです。頭脳派ですね。
シリーズを通してみれば、結構不遇な存在。
レオパルドモードという戦闘用形態があるにも関わらず、知略系キャラにも関わらず、なぜか通常形態で真っ向勝負させられることが多い人です。
まあ、初登場作品が彼の扱いを決定づけたのかもしれませんね。
ともあれ、だからこそサイスルでの扱いとあの声にはいろいろな意味で驚かされました。
さて、次回はロードナイトモンVSクレニアムモン……と、次々回へと繋がる主人公たちサイドの話です。
それでは次回もよろしくお願いします。