【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第二十八話~災厄再び~

 エグザモンとデュナスモンが激しく戦っていたその頃。別の場所では――。

 

「やれやれ……もう少し周囲の被害を考えないのかの」

「今更だと~ララ……ラ~!思いますがね~」

 

 クレニアムモンとロードナイトモンの二人が戦っていた。

 先ほどのエグザモンたちの必殺技のぶつかり合いによる衝撃波は、ベルサンディターミナルの大気を裂き、森の木々をなぎ倒し、この二人のところにも届いていた。

 周囲のことを考えずに戦う脳筋二人に対する反応が、今のこのセリフである。

 とはいえ、まあ、周囲のことを考えずに戦う脳筋というその字面だけ見れば、それはロードナイトモンたちにも当てはまるのだが。

 

「それにしても、流石だのう。ロードナイトモンや。ふざけ半分でここまでやるとはの」

「ラララ~ふざけてなど~ララ、いませんよ~」

「じゃろうな」

 

 そう。ロイヤルナイツ同士の戦いのせいで、辺り一帯は地形すら変わり果てていたのである。それこそ、デクスドルグレモンたちが暴れた損害以上のものがある。

 地形崩壊の責任を割合にすれば、デクスドルグレモンたちが二で、ロイヤルナイツの戦いが八だろう。

 実を言えば、グレイドモンたちロイヤルナイツに敵わない組のデジモンたちは、大量のデクスドルグレモンたちよりも、ロイヤルナイツ同士の戦いに巻き込まれる方が恐ろしかったりしていた。

 

「そういえば~」

「なんじゃ?」

「オメガモンは~どうしたのですか~ラララ~この場に来ない~タマでも~ないでしょう~」

「ああ、彼か。いや、もはや彼をオメガモンと言っていいものかの」

「……?」

 

 会話ができているという事実だけ見れば、二人の間の雰囲気は和やかなものにも見えるし、本気で戦っていないようにも見える。

 だが、実際にこの会話の最中でも繰り広げられている戦いは、ロイヤルナイツの名に恥じない戦いだった。

 ロードナイトモンは、その技でもってクレニアムモンの堅実な戦い方を崩そうとしていて、一方のクレニアムモンは、その堅実な戦い方でもってロードナイトモンの技を超えようとしている。

 

「流石に~ラララ~地味な戦い方を~しますね~」

「何。派手に()()()戦い方をするお主よりマシじゃ」

「ララ~ラ~戦いは~技術です~」

 

 どちらも、互いの戦い方にやり難さを感じていた。

 ロードナイトモンは、堅実な戦い方をするクレニアムモンを崩せない。一方でクレニアムモンも、トップクラスの技巧派であるロードナイトモンを崩せない。

 お互いの実力が拮抗しているからこその事態。()()()()()()、時間と体力だけが無意味になくなっていくだけだろう。

 だからこそ。二人は、ほぼ同時に決意した。様子見の段階を終え、本気で仕留めるために動くことを。

 

「さて、美しさばかりに目を奪われる愚か者に灸を据えてやるとするかの」

「こちらのセリフですよ。老獪。その醜さを引きずったまま果てなさい」

 

 そうして、互いに本気となった二人は再度ぶつかり合う。

 先ほどの戦いが児戯に見えるほどの、強烈な攻撃の応酬。きっとロイヤルナイツに匹敵するほどの実力者でなければ、何がどうなっているのかを理解することすらできぬだろう。これは、それほどの戦いだった。

 高度な技同士を織り交ぜて、デタラメなようで、それでいて調和のとれている戦い方をするロードナイトモン。堅実な戦い方であるはずのに、苛烈に攻め続けるクレニアムモン。

 今の二人の戦い方は、先ほどの延長線上にあるものであるはずなのに、先ほどとは全く違うようにも見えるほどだった。

 

「やれやれ!あの青二才や若造もそうじゃが……大概厄介じゃな!」

「つい最近までロイヤルナイツに名を連ねていたのです。当然でしょう!」

 

 ロードナイトモンの放った四本の帯刃を、クレニアムモンはその楯で受け止める。

 絶対防御である“ゴッドブレス”は使わない。クレニアムモンはわかっていたのだ。

 下手に“ゴッドブレス”を使えば、効果終了と同時にロードナイトモンは切り刻んでくる来るだろうことを。目の前にいる敵はそれくらいのことはやってのけるだろうことを。

 だからこそ、小さな傷を負うことは必要事項として、クレニアムモンは戦う。だが、それはロードナイトモンの方も同じことだった。

 

「それっ!これはどう受けるかの!」

「ふっ!この程度のものではやられませんよ!」

 

 クレニアムモンがロードナイトモンめがけて投擲したのは、無数の武器。すべて彼の鎧から生み出されたものだ。クレニアムモンには、自身の鎧のデータにアクセスすることで武器や楯を鎧から生み出す能力があるのである。

 とはいえ、ロードナイトモンにその程度の攻撃が通じるはずもない。ロードナイトモンは四本の帯刃をうまく使って、自分に迫り来る武器を打ち払った。

 

「……やれやれ。このままでは千日手ですね」

「そうじゃのう……」

 

 結局、本気の戦いとなっても、先ほどの様子見までと何も変わっていない。

 どちらも実力が拮抗しているがゆえに、膠着状態に陥っている。

 これが他の者たちならば、多少のリスクを覚悟の上でも賭けに出て、強引に勝ちを勝ち取るだろう。きっとロイヤルナイツに名を連ねた者たちはそれができる。

 だが、堅実な戦い方を旨とするクレニアムモンも、美しさにこだわるロードナイトモンも、そんな焦ったようなことはしたくはなくて――結局として、二人の根比べの戦いはまだ続く。

 

 

 

 

 

 一方その頃。ベルサンディターミナルのいたるところで激戦が繰り広げられる中で、グレイドモンたちは生存のための戦いに身を投じていた。

 どこへ行けばいいのかは誰にもわからない。が、安全地帯であるどこかへと向かわなければならない。そのために、誰もが必死に足を動かしていた。

 

「っ!また来た!」

「任せろ」

「スレイプモン!」

 

 絶え間なく襲って来るデクスドルグレモン軍団。彼らに何人ものデジモンたちが食われていっている。

 どこで戦っているのかわからないくせに、その余波が凄まじいロイヤルナイツたち。彼らの戦いの余波によって、もう何人ものデジモンたちが巻き込まれている。

 まあ、前者はともかくとして、後者はほとんど人工的な天変地異である辺り、グレイドモンたちはいろいろな意味で心臓に悪い思いをしていた。

 そんな二つの脅威を前にして、グレイドモンたちは生き延びるのに必死になっていたのだ。

 

「前からも……ジエスモン!さっさと道を空けなさい!」

「わかってらぁよ!」

 

 だが、そんな中でもスレイプモンとジエスモンという頼れる二人がグレイドモンたちと行動を共にしてくれているというのは、この場の面々にとってありがたいことだった。

 ジエスモンとスレイプモンの二人の地力は、やはりこの場の誰よりも上。彼らがいるだけで、だいぶ戦いが楽になっている。

 

「従者に顎で使われるとは……もっと威厳を持った方がいいのではないか?」

「っぐ!うるせぇな!スレイプモン!」

 

 さらに、ジエスモンとスレイプモンが共に高速戦闘の可能であるデジモンという点が大きい。この場において、迫り来るデクスドルグレモンたちをいち早く片付けることができるからだ。

 上空のウォーグレイモンとメタルガルルモンの二人が広範囲攻撃によって敵を殲滅し、討ち漏らした敵は、ジエスモンとスレイプモンの二人が速攻で倒す。

 この布陣は、現状できる限りで最良の布陣だった。

 

「行くわよ!ブラン!グレイドモン!」

「はい!お姉さま!」

「わかった!」

 

 もちろん、グレイドモンやシスタモンたちといったそれなりに戦えるデジモンたちも負けてはいない。それぞれの技を駆使して、ジエスモンたちの邪魔にならない程度には戦っている。

 

「“ミッキーバレット”!」

「“プロテクトウェーブ”!……今です!」

「おぉおおおお!“クロスブレード”!」

 

 シスタモンノワールの持つ二丁の銃の乱れ撃ちと地面を突いたシスタモンブランの槍によって発生した波動が、一瞬だけデクスドルグレモンの動きを止める。

 たった一瞬。だが、その一瞬だけで十分だった。その一瞬で、飛び出したグレイドモンの剣が、デクスドルグレモンを十字に切り裂いていたのだから。

 

「二刀流の使い手でありながら、一刀流もいけるか。剣技だけならロイヤルナイツのメンバーにも届くな」

「だな。けど、お前ら役割を忘れんなよ!」

「わかってる!」

 

 グレイドモンの技を見たジエスモンとスレイプモンの賛辞。

 一瞬見ただけで、相手の力量がわかるという二人も大概だが、まあ、最強クラスからの賛辞だ。グレイドモンも悪い気はしない。

 とはいえ、その後に自分たちの役目を忘れるなと釘を刺されたのだが。

 そう。グレイドモンたちそれなりに戦える組の主な役割は敵の討伐というより、戦えないデジモンたちの守護なのである。

 

「っ!止まれ!」

「えっ……スレイプモン!?」

 

 その時だった。スレイプモンとジエスモンが立ち止ったのは。

 そんなスレイプモンに続いて、数十人のデジモンたちが一斉に立ち止まる。全員が全員、なぜスレイプモンたちが立ち止ってのかわからず、怪訝な顔をした。

 上空のウォーグレイモンたちがデクスドルグレモンたちを討ち漏らさなかった今の瞬間だからよかったが、もしウォーグレイモンたちが討ち漏らした瞬間に立ち止った可能性を思えば――恐ろしい話である。

 

「どうしたんだ?急がないと……」

「事態が変わった」

 

 とはいえ、スレイプモンたちにも理由があったのだ。

 硬い声でグレイモンの質問に返したスレイプモンたちのその表情は、声と同じく硬いもので。

 そんなスレイプモンたちにつられるように、グレイドモンたちの表情も自然と硬くなって――。

 

「ジエスモンがここにいるか。やはりガンクゥモンは裏切っていたのだな」

「なっ!なんで……!」

 

 ――そんなグレイドモンたちの前に姿を現したのは、鎧の胸部に大きな傷を負ったドゥフトモンだった。

 ドゥフトモンの登場に、スレイプモン以外の誰もが驚きを隠せない。ドゥフトモンの敗北を知っているがゆえに、ドゥフトモンが生きていることが信じられなかったのだ。

 まあ、唯一スレイプモンだけは、ドゥフトモンがあれだけで死ぬはずがない、と長い付き合いから予想していたために驚いていなかったのだが。

 

「なんで生きている!」

「ふん。己の失策さえわかれば、挽回の方法などその瞬間に思いつく」

 

 ようするに、ドゥフトモンは先ほどのアルフォースブイドラモンに対する失策を悟った時点で、生き残るための案を思いついたと言うのだ。

 さすがに無傷で済んではいないようだが、あの一瞬でその案を思いつき、実行し、成功させ、ミスを挽回したのはさすがロイヤルナイツ一の戦略家と言うべきか。

 

「貴様らはここで削除する。裏切り者も、異分子も、選ばれた者も……すべてだ」

「いくらドゥフトモンでも、オレたち二人を相手にできるか?」

 

 そう。いくらX抗体を得たからと言っても、消耗しているドゥフトモンでは、ここにいる全員の相手などできないだろう。

 だからこそ、ジエスモンも強気でいったのだが――。

 

「そうだな。では、こうしようか!」

「グギャアァアアアアア!」

「なっ!」

 

 ――その瞬間この場に現れたのは、三匹のデクスドルグレモン。 

 ドゥフトモンたちイグドラシルに残った組のロイヤルナイツが、デクスドルグレモンを従えているようなこの光景には、ジエスモンやスレイプモンもさすがに驚いた。

 が、この次の瞬間に、さらに驚くべきことが起こる。

 

「さて、幾多の異分子を喰らいし屍よ。その本能のままに進化し、死に続け、生き続けるがいい!」

「グギャァアアアアアアアア!」

「グオォオオオオオオオオオ!」

「ゴァアアアアアアアアアア!」

「馬鹿な……!」

 

 次の瞬間。その三匹のデクスドルグレモンたちは進化する。

 現れたのは、どこかドルゴラモンに似た屍の竜。

 それは、以前ロイヤルナイツたちを追い詰めたデジモンで。

 それは、デクスドルゴラモンというデジモンで――それは、災厄の再来だった。

 




というわけで、第二十八話。
クレニアムモンとロードナイトモンの戦い、そしてデクスドルゴラモン再登場の回でした。
このデクスドルゴラモンたちは、オリジナルよりかは弱いですが、代わりに三体です。
ちなみに、デクス系が次々に登場していますが……デクスドルガモンの出番はありません。

さて、次回は襲来した進化したデクスドルゴラモンその1との戦いです。
久しぶりに主人公が主人公らしく戦います。

それでは次回もよろしくお願いします。
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