【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第二十九話~必死に無茶して道は開く~

 所々で激戦が続くベルサンディターミナル。戦況は、新たなステージへと移っていた。

 現れたのは、三体のバケモノ(デクスドルゴラモン)。現れたこの三体によって、グレイドモンたちの当初の予定は狂わされていた。

 そう、分散されてしまったのだ。お互いにお互いの力で助け合いながら、グレイドモンたちはここまで来た。だというのに、この場に現れたデクスドルゴラモンたちの猛威を逃れるために、それぞれが散り散りになってしまったのである。

 

「グガァアアアア!」

「っく!どけっ!邪魔だ!」

「グレイドモン!無理すんじゃねぇ!」

 

 いつの間にか、ドゥフトモンはいなくなっている。自分が直接手を下すまでもない、と判断したのか。それとも別に理由があるのか。

 どちらにせよ、敵が増えないというのは、今のグレイドモンたちにはありがたいことだった。

 とはいえ、このデクスドルゴラモンは以前現れたモノよりはずっと弱いとはいえ、それでもロイヤルナイツ一人に匹敵するほどの力を持っているのだが。一歩間違えば、致命的である相手ということに変わりはない。

 

「ジエスモン!状況はどうなっている!?」

「わかんねぇ!ここにいる中で戦えるのはオレとお前だけだ!」

 

 そう。グレイドモンとジエスモンは、その背に怪我を負ったデジモンたちや弱いデジモンを庇いながらデクスドルゴラモンと戦っていた。

 この場にいるのは、彼らと一匹のデクスドルゴラモン。スレイプモンやウォーグレイモンたち、トコモンを含む何人かの他のデジモンたちはここにはいない。おそらくは他の場所で別のデクスドルゴラモンを相手にしているのだろう。

 あともう一人でも戦える者がいれば、と。そう思うグレイドモンとジエスモンだったが、不幸中の幸いと言うべきか、デクスドルゴラモンの登場は悪いことばかりではなかった。

 いつの間にか、デクスドルグレモンたちの姿が見えなくなっているのだ。

 嵐の前の静けさと思えるものの、今の状況に大量のデクスドルグレモンの相手まで追加されれば、いかにジエスモンとグレイドモンでも、デジモンたちを庇いきれない。

 

「グァアアアアアアア!“ドル――」

「っ!まずい!」

「馬鹿!やめろ!」

 

 デクスドルゴラモンが放とうとしているのは、“ドルディーン”と呼ばれる破壊の衝撃波。

 一度進化していたからか、それにいちはやく気づいたのはグレイドモンだった。その発動を止めるべく、前へと躍り出て、デクスドルゴラモンを攻撃する。が、やはりと言うか、当然と言うか。グレイドモンの攻撃は効いていなかった。

 そして、一瞬後。

 

「――ディーン”!」

 

 破壊の衝撃波が放たれる。放射状に、存在するものすべてを破壊しながら突き進むその衝撃波。

 近距離まで接近していたグレイドモンにそれを躱す手段は、ない。

 目の前に迫るその衝撃波を前に、グレイドモンは固まる。このままでは一瞬後にその衝撃波の餌食となってしまうだろう。

 だが――。

 

「……あれ?」

 

 ――だが、グレイドモンは無事だった。

 その事実に、一瞬後の自分の未来が見えていたがゆえに、助かったグレイドモンは茫然とするしかない。

 まあ、それも当然だろう。一瞬前まで目の前にいたのはデクスドルゴラモンであるはずなのに、今目の前にいるのはジエスモンだったのだから。

 

「ったく。お前は無茶するな!」

「え?ジエスモン……?」

「感謝してくだサイ!」

「プロットモン?」

 

 まるで自分の手柄のように偉そうに言うのは、ジエスモンとグレイドモンに庇われていたデジモンの中の一人であるプロットモンだ。一度死にかけたというのに、その偉そうな性格が直っていない辺り、プロットモンの性格は筋金入りである。

 とはいえ、さすがにデクスドルゴラモンの前に飛び出す勇気はないようだが。

 

「ヒーローさんが命の恩人さんを助けてくれたのデス!」

「ジエスモンが?」

「ああ。こいつらでな」

 

 そう言ったジエスモンの周りには、いつの間にか三体のオレンジ色のエネルギーで出来た何かがいる。ふわふわと浮いている癖に、デジモンではないようだが、それぞれ意思のようなものが感じられる不思議な何か。

 それによって助けたのだ、と。そう言われて、グレイドモンは思わず疑ってしまった。まあ、仕方ないだろう。グレイドモンには、それほどそのオレンジ色の何かがすごいとは思えなかったのだ。

 

「疑ってんな。こいつらはそれぞれ“アト”と“ルネ”と“ポル”って言う。オレの代わりにいろいろとしてくれる奴らさ」

「どうやって……?」

「説明するのは簡単だが……ま、後でだな」

「グァアアアアア!」

 

 ジエスモンたちが生きていることに気づき、デクスドルゴラモンが向かってくる。

 さすがに庇っているデジモンたちの下に近づけるわけにもいかない。説明は後回しにして、ジエスモンとグレイドモンはデクスドルゴラモンたちの前に出た。

 ちなみに、先ほどの一連のことを説明するのならば、“アト”がグレイドモンを回収し、ジエスモンが奥の手を使って、全員を破壊の衝撃波から庇ったというだけである。

 

「っく!仕方ないか……!」

 

 ジエスモンの足でまといになっている、と。デクスドルゴラモンと戦うグレイドモンは、自分がジエスモンの足を引っ張っていることを感じていた。

 一応、ジエスモン自身はそんなことを思っていないのだが、客観的に見てグレイドモンは力不足は明らかであり、グレイドモンがそう思ってしまったのも無理はないだろう。

 この時、焦りがなかったと言えば、嘘になる。グレイドモンは、再び別れてしまったトコモンを早く探したかったのだ。だからこそ、焦りのままに、彼は()()()の剣を抜くことを決意した。

 

「ぁああああああ!」

「グレイドモン!?何して……!」

「アァアハアァアアア!」

「グギャッ!?」

 

 そして、その直後。驚くジエスモンを尻目に、グレイドモンは一瞬でデクスドルゴラモンに近づき、その腕を切り裂いた。

 さすがに切り落とすことはできなかったようだが、デクスドルゴラモンは自分が浅くない傷を負わされたことに驚いているようである。いや、デクスドルゴラモンだけではない。ジエスモンすら、このグレイドモンの豹変には驚いていた。

 この突然のグレイドモンの変化。それには、グレイドモンの持つ二本の剣が関係していた。

 “双剣グレイダルファー”。とある聖剣のコピーとも噂されるこの剣は、二本同時に扱う時、持ち主の剣技に神速がもたらされる剣なのである。

 当然、このうまい話には裏がある。デメリットは、二本同時使用は制御不能であること。すなわち、理性を保ったまま戦えなくなること。

 

「おい!正気に戻れ!」

「ァアアハハァアアアアア!」

「グギャガアアア!」

 

 理性のなくなったグレイドモンは、ジエスモンの制止も聞かずに、デクスドルゴラモンと戦い続ける。元々あった剣技に神速が加わったことによって、今のグレイドモンは格上であるデクスドルゴラモンとも戦えていた。

 特に、グレイドモンの初撃によってデクスドルゴラモンの腕に傷がついているのは大きい。その傷によって腕がうまく動かせず、グレイドモンが戦えるほどにまでデクスドルゴラモンは衰えていたのだから。

 まあ、とはいえ――。

 

「グァアアアアアア!」

「……!アァアアア!」

 

 ――グレイドモン自身の勝率が低いことには変わりないのだが。

 今のグレイドモンは理性を失っているせいで、安全という言葉が頭から失われていたのだ。それは、あまりに危険すぎる戦い方である。

 元々の自力が劣っている上に、安全という言葉まで抜け落ちているのだ。このままでは、やがてグレイドモンはデクスドルゴラモンに負けるだろう。

 

「命の恩人さん!何やってるんデスか!危ないデスよ!……うぅ聞いてくれないデス」

「プロットモン?危ないから下がってろって……」

「お願いデス!ヒーローさん!恩人さんを助けてくだサイ!」

 

 だからこそ、そんな戦い方をしているグレイドモンをジエスモンたちはなんとかしようとしたかった。中でも、一度命を救われた、プロットモンは特に。

 

「ったく。ここまで言わせて……アイツは何やってるんだ!オレが何とかするから、プロットモンは下がってろ」

「……!ありがとうございマス!」

 

 元々、プロットモンに言われなくても何とかするつもりだった。が、プロットモンのお願いは確かにジエスモンにも届いて、ジエスモンも余計にやる気になる。

 “アト”と“ルネ”と“ポル”の三体をデクスドルゴラモンの下に向かわせ、足止めさせているうちに、ジエスモンはグレイドモンに向かい合う。

 狙うは、グレイドモンの持つ二刀。そのどちらかを手から叩き落とせばいい。はっきり言って、ジエスモンにとってはチョロい仕事だった。

 

「アァアアハハアァアアア!」

「危ない戦い方してるんじゃねぇ!“轍剣成敗”!」

 

 高速移動を繰り返しながら、ジエスモンは腕の剣でグレイドモンと打ち合う。

 その速さは、神速の剣技をもたらされている今のグレイドモンにも引けをとらないほど。そして、永劫とも思える一瞬の打ち合いの後、グレイドモンの左手の剣は、あらぬ方向へと吹き飛んでいた。

 

「ァアアハハア……あれ?」

「ったく。おい、意識ははっきりしてるか?」

「オレは……双剣グレイダルファーを使ったはずじゃ?」

「はぁ。心配かけさせるんじゃねぇよ。オレにも。アイツらにもな」

 

 使用代償を承知の上で、“双剣グレイダルファー”を使ったグレイドモンは、戦いが終わったわけでもないのに正気に戻った事実に驚いているようだ。が、すぐに目の前にいるジエスモンがどうにかしたのだということに思い至る。

 というか、グレイドモンにはそれ以外のことが考えつかなかった。

 

「どうしてだ!あのまま行けば……!」

「お前は負けていただろうな。無茶なことしてんじゃねぇよ」

「っぐ!」

「なんであんなことした?時間がねぇからさっさと教えろ」

 

 いかにアトたち三体で足止めしているからといって、限界がある。時間はあまりないと見ていいだろう。

 だが、今のグレイドモンをこのまま放っておくことは、危険だとジエスモンは感じていた。だからこそ、時間がないことを承知でジエスモンは問いただしたのだ。

 

「トコモンを助けに行かなきゃ……!急いで何とかしないといけないんだ!」

「だからってな。無茶しちゃなんにもならねぇだろ」

「今は無茶する時だろ!手遅れになる前にどうにかしなくちゃならないんだ!」

「……!はぁ。なるほどね」

 

 グレイドモンのその会話。それを聞いて、ジエスモンは既視感を抱いた。

 そう。ジエスモンには、グレイドモンが自分に似ているように思えたのだ。

 別にグレイドモンは無茶しているわけではない。ただ、必死なだけなのだ。必死だからこそ、無茶してしまうだけなのだ。いつかの、いつもの、ジエスモンと同じように。

 

「仕方ねぇな。無茶はやめろ。心臓に悪い」

「けど……!」

「無茶ならオレがしてやる。少しは他人を頼ることを覚えろ。トリは任せたぞ」

 

 それでも、ジエスモンは誰かと一緒に戦い続けている。時には無茶のし過ぎで怒られることもあれば、泣かれることもあって、その上でジエスモンは他人と共に無茶をする。

 一人で危険な無茶に身を投じることもない。安全な無茶をするべきである。そう思ったからこそ、ジエスモンは無茶をグレイドモンに押し付ける気はなく、自分が無茶をすることにした。

 

「“アウスジェネリクス”!あとは……“アト”!“ルネ”!“ポル”!」

 

 主の命令に従って、アトたち三体がジエスモンの下に帰還する。

 それと同時に、デクスドルゴラモンの敵意の矛先が、ジエスモンに向いた。

 

「さぁ、準備は万端だ。来いよ」

「グァアアアアア!“メタルインパルス”!」

「ジエスモン!?」

 

 直後、デクスドルゴラモンはジエスモンめがけて必殺技を放つ。敵の心臓部以外の一切を消滅させる恐るべき技が、ジエスモンめがけて襲い来る。

 思わず、グレイドモンが心配の悲鳴を上げて――だが、一瞬後のジエスモンは無傷だった。

 それこそが、ジエスモンの奥の手。“アウスジェネリクス”の力。身体の情報を一時的に書き換えることで、あらゆる物理法則から解放される技。あらゆる法則から解放されるために、あらゆる限界を超えられる。無傷で敵の攻撃を凌ぐことだって、できる。

 

「グァアア!?」

 

 無傷のジエスモンを前にして、驚くかのようなデクスドルゴラモンの声。

 だが、致命的に遅い。デクスドルゴラモンが驚くよりも早く、ジエスモンは行動を開始していたのだから。

 

「さて、行くぞ。“シュベルトガイスト”!」

 

 直後、アトたち三体の持つ計六本の剣とジエスモンの尾を合わせた三本の剣の――計九本の剣が、デクスドルゴラモンを襲う。それが、全方位カウンター技の“シュベルトガイスト”だ。

 

「グァァァァ……!」

 

 強烈なダメージに苦しむデクスドルゴラモン。だが、まだ生きている。このままでは、ジエスモンは“アウスジェネリクス”が解けた瞬間に、デクスドルゴラモンの攻撃をくらってしまうだろう。

 だからこそ――。

 

「これで終わりだ!“クロスブレード”!」

 

 ――だからこそ、グレイドモンが必要だった。

 一瞬で間を詰めたグレイドモンは、トドメとばかりに一刀を振り上げる。

 そして、その直後に、デクスドルゴラモンは十字に切り裂かれたのだった。

 




というわけで、第二十九話。八月一日ということで、せっかくなんで投稿しました。
デクスドルゴラモンその1との戦いでしたね。
何気に初めて主人公がトドメを持っていった気がする。気のせいですね。たぶん。

さて、次回(と言っても明日ですが)は、デクスドルゴラモンその2とその3との戦いです。
個人的には、どうしてこうなった回ですね。特に最後。

それでは次回もよろしくお願いします。
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