【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第三十話~舞い降りた奇跡~

 ジエスモンとグレイドモンの二人がデクスドルゴラモンを撃破したその頃。

 その二人がいた場所から遠く離れた場所では、デクスドルゴラモンの一体とスレイプモンが戦っていた。

 

「ギャグウアアアアア!」

「ふっ!」

 

 このスレイプモンがなぜジエスモンたちから遠く離れたこの場所で戦うことになっているのかというと、そこにはスレイプモンの苦渋の決断があった。

 すべては数分前の、デクスドルゴラモンによって分断された時のことだ。

 その時のスレイプモンの下には、ジエスモンたちと同じように戦えぬデジモンたちがいた。一応、シスタモンたちがいたとはいえ、デクスドルゴラモンと戦える者はスレイプモンしかいなかった。

 それはつまり、ジエスモンたちと違って一人でそのデジモンたちを庇わねばならなかったということ。だからこそ、スレイプモンはデクスドルゴラモンをそのデジモンたちから引き離すことによって、そのデジモンたちを守ろうとしたのである。

 その結果として、このような遠く離れた場所でスレイプモンは戦うことになったのだ。

 

「そら、こっちだ!」

「グギャアアアアア!」

 

 残してきた戦えぬデジモンたちのことはスレイプモンにとっても心配ではあった。

 だが、これは同時に庇う対象がいないというでもあり、スレイプモンにとっても悪いことばかりではなかった。はっきり言うと、余計な気を回さなくていい分だけ、戦いやすいのである。

 

「グギャッ!?」

「どこを見ている?……こちらだ!」

「グガギャアアア!」

 

 デクスドルゴラモンのパワーは確かに脅威。

 だが、庇う対象のいないスレイプモンは、その驚異を前にしても、自分の戦い方を崩す必要がない。アルフォースブイドラモンに匹敵するほどの高速移動術を駆使して、スレイプモンはデクスドルゴラモンを翻弄していた。

 先日出現した者よりは劣っているとはいえ、それでも並外れたスペックを持つデクスドルゴラモンをスレイプモンは完全に手玉にとっている。

 その辺りはさすがと言うべきだろう――。

 

「……やはりそう簡単にはいかない、か」

「グギャァアアアア!」

「甘いっ!その程度の技を食らうか!」

 

 ――が、やはり同格クラスの強さを持つデクスドルゴラモンを前にしては、スレイプモンも手こずる。

 勝てないと思えるほどではないが、面倒な相手で、油断するとまずい相手。スレイプモンのデクスドルゴラモンに対する評価はこんなところだろうか。

 スレイプモンはデクスドルゴラモンを翻弄できているとはいえ、完全に倒すまでには時間がかかりそうだった。

 

「……。まずいな」

 

 そんな風に戦う中で、スレイプモンは自分の中に抱き始めた嫌な予感を認めた。

 スレイプモンは、デクスドルゴラモンをけしかけるだけけしかけて、姿を消したドゥフトモンのことが気になったのだ。

 なるべく早く片付けるべきか、と。そう思ったスレイプモンは、少し戦い方を変える。

 

「ふっ!」

「グァア?」

「はっ!」

「ガウアァア!?」

「ほっ!」

 

 連続の高速移動。先ほどまでのような様子見や翻弄目的ではない、本気の高速移動。

 残像を作りながらデクスドルゴラモンを取り囲んだスレイプモンは、その左手の聖弩“ムスペルヘイム”を構えて――。

 

「“ビフロスト”!」

 

 ――直後、スレイプモンの聖弩から灼熱の光矢が放たれる。

 寸分違わずデクスドルゴラモンに直撃したその光矢は、デクスドルゴラモンの体を大きく穿った。が、残念ながら、デクスドルゴラモンを倒すには至らなかったようで。

 

「やはり時間がかかりそうだな」

「グギャァアアアアアアアア!」

 

 スレイプモンの前には、無傷とはいはないものの、十分戦闘続行可能状態で立つデクスドルゴラモンの姿があった。

 その健在な姿を前にして、スレイプモンは内心で()()()()()向けて舌打ちする。スレイプモンは、この異常事態を前にして、知らず焦っていた自分に気づいたのだ。

 

「やはり、アルフォースブイドラモンのことを言えないな」

「グギャァアアア!」

「仕方ない、か。もう少し付き合ってやろう!」

 

 焦りはミスを生み、ミスは敗北へと繋がる。

 そんな当然のことをよく知るスレイプモンは自分自身を冷静になるように落ち着けて、デクスドルゴラモンに再度向き合った。

 この調子では、スレイプモンがデクスドルゴラモンを倒すことができるのは、当分先になりそうである。

 とはいえ、それは――。

 

「この死の脅威……なるほど。スレイプモン!某が助太刀いたしまする!」

 

 ――それは、この場で戦うのがスレイプモンだけだったら、の話であるのだが。

 その声に怪訝な表情をしたスレイプモンが見たのは、まるで神話のワンシーンのように、上空から飛来する黄金の武者龍。オウリュウモンの姿だった。

 

「お前は……?」

「某はオウリュウモン。この地にて異変を感じ取り、この地での解決の一助となることこそが某の役割にして、かのものの遺志だと思ったが故、無粋とは思いまするが助太刀させていただく」

「……いや、助かる。頼むぞ」

「承知!」

 

 正直言って、スレイプモンから見て、正体不明で意味不明な戯言を述べるオウリュウモンのことは信用ならなかった。

 だが、今が異常事態であるということも事実。一瞬の思考の後、スレイプモンはオウリュウモンの申し出をありがたく受けることにしたのだった。

 

「グァアアアアアア!」

「行きますぞ!」

 

 そのかけ声と共に、気合の入ったオウリュウモンがデクスドルゴラモンめがけて突撃する。

 それは、歴戦の戦士たるスレイプモンから見ても無謀としか思えないような、愚直な攻撃だった。

 

「なっ!」

 

 だが、次の瞬間に、スレイプモンは驚愕する。

 驚きに目を見開くスレイプモンの眼前には、デクスドルゴラモンと戦うオウリュウモンの姿があったのだ。愚直なまでの無謀な攻撃で、だが、確かにあのバケモノと渡り合うオウリュウモン。

 そんなオウリュウモンにスレイプモンは驚いたのである。

 

「おぉおおお!」

「グァアアア!」

 

 両手の刀が、両腕の拳が、交差し続ける。

 そんな圧倒的な光景に、そんな見知らぬ強者の存在に、呆然としかけていたスレイプモンだったが、一瞬の後に気を取り直した。

 

「オウリュウモン!」

「応!」

「“オーディンズブレス”!」

 

 オウリュウモンが誰であれ、助太刀されている以上、スレイプモンだけがボーっと突っ立っている訳にもいかないだろう。

 だからこそ、即座にオウリュウモンに声をかけたスレイプモンは、彼ならば躱せることを確信して、必殺技を放つ。

 右手の聖盾“ニフルヘイム”を使って気候を操ったスレイプモンは、この場に極低温のブリザードを発生させる。それは、デュークモンたちを逃がすためにいつかも放った技。

 発生した極低温のブリザードは、デクスドルゴラモンの動きを止める。硬直具合から言って、しばらくすればまた普通に動き始めるだろう。

 だが、スレイプモンにも、オウリュウモンにも、デクスドルゴラモンにその時間を与えるつもりはなかった。

 

「今!“黄鎧”!」

 

 直後、大河の土砂流のごとく荒れ狂い、全てを切り裂きながらオウリュウモンは突撃する。

 奇しくも、スレイプモンはそんなオウリュウモンの姿に旧世界の伝説の龍神の姿を想起した。

 そして、その直後。そんなスレイプモンの前で、デクスドルゴラモンはオウリュウモンによってバラバラに切り裂かれたのだった。

 

 

 

 

 

 スレイプモンとオウリュウモンの二人が二体目のデクスドルゴラモンを撃破したその頃。

 ウォーグレイモンとメタルガルルモンの二人は、最後のデクスドルゴラモンと戦っていた。

 

「グギャガァアアア!」

「“ガイアフォース”!」

「“コキュートブレス”!」

 

 後ろで震えているデジモンたちを守るためにも、今のウォーグレイモンとメタルガルルモンの二人は出し惜しみなしの全力。

 短い間で大地の力を秘めた巨大な炎弾が空を駆け、とてつもない破壊力を秘めた兵器の数々が世界を行く。さらに、二人のコンビネーションも抜群。お互いがお互いの欠点を補うように、長所を活かすように動いている。

 

「グァアアアアアアア!」

「っく!」

「うわっ!」

 

 だが、そんな二人をもってしても、デクスドルゴラモンを倒しきることはできなかった。

 ウォーグレイモンたちが以前見た個体とこの個体は違う。それでも、二人を相手取るくらいの力をこの個体は持っていた。

 倒せるかどうか。確率的には五分五分。だが、ウォーグレイモンたちには庇わなければならない者たちがいる。その者たちの存在が、二人を思うように動かさなかった。

 

「メタルガルルモン!」

「わかった!“コキュートブレス”!」

 

 何度目になるかもわからないメタルガルルモンの必殺技。当たればどんな者でもたちどころに氷漬けにするその吐息も、当たらなければ意味がない。

 デクスドルゴラモンは地面に拳を打ち付け、破壊し、持ち上げた地面という名の巨大な岩でもって、メタルガルルモンの必殺技を防いだ。

 とはいえ、それはウォーグレイモンたちにとって予想通り。彼らとて黙って何度も攻撃を防がれていた訳ではないのだ。

 

「今だっ!」

 

 直後、ウォーグレイモンは背部のバーニアを噴かせ、一気に加速する。彼が目指すのは、デクスドルゴラモンの懐。

 一見、無謀な突撃にも見えるその攻撃だが、今のデクスドルゴラモンはメタルガルルモンの攻撃を防いだ直後で、ウォーグレイモンに対応する余裕がない。これが以前現れた個体と同じ力を持っていたのならば、また別だったのだろうが、それは仮定の話でしかない。

 

「グギャっ!?」

「“ガイアフォース……」

 

 一瞬でデクスドルゴラモンの懐へと飛び込んだウォーグレイモン。

 驚き、自分を排除しようとするデクスドルゴラモンを感じながらも、ウォーグレイモンはそれより早く、技を放つ。

 

「……ZERO”!」

 

 ウォーグレイモンが放ったのは、“ガイアフォースZERO”。彼の必殺技であるガイアフォースの発展技であり、遠距離攻撃能力を排した代わりに、圧縮してゼロ距離から放つことによって威力を高めた技だ。

 そんな技を受けたとあっては、デクスドルゴラモンもただでは済まない。腹に圧縮されたエネルギーをくらったデクスドルゴラモンは、無様に吹っ飛んでいく。

 

「やった……のか?」

「アウ~?」

 

 豪音と共に吹っ飛んでいったデクスドルゴラモンだ。その様は、まさに戦いの終わりのようだった。

 そして、そんなデクスドルゴラモンの様を前にして、ウォーグレイモンたちに庇われ、震えていたデジモンたちの中にも、喜びの雰囲気が広がっていく。その中には、トコモンの姿もあった。

 とりわけて、ウォーグレイモンと仲の良いトコモンは、喜びのままに彼の下へと走りだしたほど。それだけで、命の危機が去った彼らがどれほど喜んでいるのか、わかるだろう。

 

「……いや、ダメだったみたいだ」

「え……?」

「急いで一ヶ所に固まれ!」

 

 だが、勝利のムードが漂う中で、他ならぬ技を当てたウォーグレイモンだけは気づいていた。

 あのバケモノは生きているということに。例え多少力が弱くとも、バケモノはバケモノなのだ、ということに。

 だからこそ、ウォーグレイモンは戦闘態勢を崩さなかった。メタルガルルモンも、そんな彼を信用して、油断なく戦闘態勢を取ったままだ。

 だが、ウォーグレイモンはここでミスを犯した。犯してしまった。

 油断などしていなかったからこそ、下手に追撃すればどのような目に合うかもわからないからこそ、ウォーグレイモンはこの選択をした。それはベターな選択であるし、仕方ないことではある。

 すべては結果論でしかないのだが、結果として、ウォーグレイモンのこの選択はとんでもないミスだった。

 

「グァアアアアアアアアアア!“ドルディーン”!」

 

 直後、すべてを吹き飛ばす破壊の衝撃波が放たれる。

 

「っ!まずっ……!」

 

 ウォーグレイモンとメタルガルルモンにその超威力を防ぐ手立ては、ない。自分たちの失策を悟った彼らは、その衝撃波の発動を即座に読み取り、完全に発動しきる前に行動に移す。

 そう。彼らは捨て身でデジモンたちを庇う行動に移ったのだ。

 破壊の衝撃波が世界をなぎ払い、進む。ウォーグレイモンとメタルガルルモンは、その背でもってデジモンたちを庇った。

 

「ぐああああ!」

「がぁあああ!」

 

 そして、一瞬後。破壊の衝撃波は過ぎ去り、世界に静寂が訪れて。

 そこには、消し飛ばなかったのが奇跡に思えるほどに見るも無残な体になって倒れこんだウォーグレイモンたち二人と、そんな彼らに庇われて助かった少しのデジモンたちだけが残っていた。

 そう。ウォーグレイモンたち二人をもってしても、全員を助けることはできなかったのだ。

 

「……」

「アウ!アウ~!」

 

 死なないで、と。助かった一人であるトコモンが一生懸命に声をかけるが、ウォーグレイモンは目を覚まさない。生きてはいる。だが、それだけだったのだ。

 

「メタルガルルモン!」

「メタルガルルモンさん!」

「……」

 

 そして、それはメタルガルルモンの方も同じだった。彼に助けられたデジモンたちが必死に声をかけているが、メタルガルルモンも起きる気配がない。

 

「グギャァアアオアアア!」

「ひっ!」

 

 そんな彼らを嘲笑うかのように、咆哮と共にデクスドルゴラモンは現れる。

 ウォーグレイモンにやられた腹の傷は酷く、抉れかけている。だからだろう。そんなデクスドルゴラモンは、どこか怒りにも似た雰囲気を纏っている。

 この場の誰もが、そんなデクスドルゴラモンの登場に悲鳴を上げ、震え上がり、自分の終わりを幻視するしかなかった。

 

「グギャァアアアアア!」

「アウ!アウ~!」

 

 だが、そんな中で一人だけ、トコモンだけが、デクスドルゴラモンの前に出た。

 まるで、自分がウォーグレイモンたちを守るというかのように。まるで、ここからは自分も一緒に戦うというかのように。

 それは、いつかを髣髴とさせる光景。

 この絶望的状況で、絶望に浸る間もなく、その選択肢を迷いなくとることができる者は、この過酷な世界を生き抜いたデジモンたちの中でも多くはない。しかも、トコモンはまだ幼いというのに。

 きっと、これこそがトコモンの強さなのだろう。

 

「……!……ぅぅ……どうせ死ぬのなら……とっトコモンに続けー!」

「おっ……おー!」

「行くぞぉおおおー!」

「ウォーグレイモンたちを守るんだー!」

 

 そんなトコモンに感化されて、次々とデジモンたちが立ち上がる。

 若干ヤケクソになっている者もいたが、とはいえ、その誰の眼にも一筋だけの光があった。希望があった。

 

「グギャァアアアアアア!」

 

 現状だけ見れば、それはあまりに儚すぎるモノだ。デクスドルゴラモンの息のひと吹きで消えてしまうほどのものでしかない。

 だが、それでもこの場の誰もが、ウォーグレイモンたちによって守られ、そしてトコモンによって燃え上がらされたその炎を、自分から消したくはなかった。

 この場の誰もが一度は閉ざされそうになった未来に打ち勝って、ここにいる。生き汚いのは、この世界のデジモンたち特有のモノなのかもしれない。

 誰もが、せめて一矢を報い、可能ならば未来を生きる、と。それだけを思い、生きるという善を心に願って、デクスドルゴラモンに向かい合っていて――直後、この場に光が降りる。

 この場の者たちの想いが呼んだのか。それは進化の光だった。ウォーグレイモンとメタルガルルモンを卵のように包み、輝く光。それは、正しく希望の光で。

 

「うそ……!」

 

 その言葉は誰のものだったのか。

 その言葉と驚愕の雰囲気を切り裂いて、次の瞬間にこの場に立っていたのは、白き聖騎士だった。

 




というわけで、どうしてこうなった第三十話。
オウリュウモン合流とウォーグレイモンとメタルガルルモンがオメガモンへと進化した回でした。
あ、次回でも触れますが、このオメガモン……X抗体持ちのウォーグレイモンたちのジョグレスというだけあって、のっけからX抗体持ちです。

残り二回のロイヤルナイツ紹介。
スレイプモンですね。たしか、歴代では初の人型ではないロイヤルナイツです。
アルフォースブイドラモンに並ぶほどの、高速起動タイプ。そのせいで攻撃性能が(ロイヤルナイツ内では)お察しレベル。
この小説では、普段は遺跡を守っているため、エグザモンに並ぶほどロイヤルナイツの任務に参加してません。

さて、次回前半はオメガモンが暴れます。今までの不遇を吹き飛ばすくらいに暴れます。
まあ、所詮は別個体ですが。
後半はデュークモンVSマグナモンですね。

それでは次回もよろしくお願いします。
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