【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
時は少しだけ遡る。
その時、グレイドモンたちにデクスドルゴラモンを差し向け終わったドゥフトモンは、最後の仕上げをするために、もう一度イグドラシルの空間へと戻ってきていた。
そこで彼を出迎えたのは――。
「貴様は……やはり我らを裏切っていたのだな」
「……まぁ、そうなるな」
――最後の裏切り者であるガンクゥモンその人だ。
だが、予定外の出迎えであるというのに、ドゥフトモンに動揺した様子はない。きっと、予想していたのだろう。
あの後、それぞれがそれぞれの戦いに赴く中で、ガンクゥモンだけがどこかへと消えていったことを知った時から、こうなることをドゥフトモンは予想していたのだ。
「我の邪魔をしに来たのか?」
「もちろん。それ以外に何がある?」
「……貴様の教えを受けたジエスモンが裏切った時。我は貴様を疑ってかかった。証拠もないと捨て置いたが……今思えば、貴様も始末しておくべきだった」
初めから疑っていた、と。そう言うドゥフトモンに対して、ガンクゥモンは運が良かったと素直に思う。
ドゥフトモンの並外れた洞察力、知略を前にして、最後の最後までジエスモンやシスタモンたちを庇えたのは、ただ単に運が良かった結果でしかなかった。
そのことを、ガンクゥモンは改めて思い知ったのだ。
「ふっ。運も実力のうち。惜しかったな」
「……だが、まだ間に合う。貴様をここで始末すればな」
「アルフォースブイドラモンの奴にやられたその体でやるつもりか?どっちが有利かは一目瞭然だろう?」
そう。いくらX抗体を得ているからといって、ドゥフトモンはダメージを負っていて、ガンクゥモンは未だ無傷。この対照的な両者を見比べて、どちらが有利で、どちらが不利であるかなど、火を見るより明らかだ。
それでも、ドゥフトモンに引く気はなかった。いや、引く必要はなかったと言うべきか。
「我が何も策を弄してないとでも?」
「そんなことを思ってはいない。その策ごとここで潰すだけさ。お前が考えていること、悪いが実行させるわけには行かない」
「ふん。もう遅い!」
ガンクゥモンと睨み合うドゥフトモンが、手を広げる。すると、突然そこにナニカが現れた。
ナニカとしか言いようがない、何か。デクスドルゴラモンに似てはいる。だが、かろうじて単体のデジモンとして扱えたデクスドルゴラモンとは違い、そのナニカはデジモンにすら見えない。
そのナニカはデータで出来た鎖のようなモノにつながれている。ともすれば、そのナニカは解き放たれる時を今か今かと待っているようにも見えた。
「死の化身……か。オリジナルのバケモノの抜け殻を元に作り出した……」
「そうだ!この我がここに来た時点で、すでにこのバケモノが解き放たれる準備は出来ている!あとはこの鎖を砕くだけだ」
そう。ドゥフトモンのその言葉は、嘘などではなかった。本当に解き放たれる準備は出来ていたのだ。あとほんの少しの手順で、本当にドゥフトモンの狙い通りになってしまうのだろう。
「なら、それをさせる前にどうにかすればいいだけだ」
「それができるとでも?」
やれるものならやってみろ、と。ドゥフトモンは言外にそう言っているように感じて、ガンクゥモンは拳を構えた。どのみち、このバケモノを解き放ってはならない以上、やらなければいけないのだ。
そのためにも、ガンクゥモンは目の前にいる
「はぁっ!」
「ふっ!」
直後。ドゥフトモンの持つ細剣とガンクゥモンの拳が唸りを上げてぶつかり合う。
始まったばかりではあるが、互いの実力はほぼ互角。ドゥフトモンはX抗体を得てパワーアップしているが、ダメージを負っているために、全開時の強さを発揮できていない。一方で、ガンクゥモンは無傷でこそあるが、X抗体を得ていない。
その両者の違いが、この互角の戦いを引き起こしていた。
「ふぅうう!“鉄拳制裁”!」
「なんの!“ブラオンネーベル”!」
ただ殴り続けるというシンプルな攻撃を続けるガンクゥモンに対し、ドゥフトモンは自慢の体術で対応する。
一発一発が重いガンクゥモンの拳を、ドゥフトモンは体術でもって受け流しているが、それでも受け流しきれない分がダメージとなって蓄積されていく。
それだけならガンクゥモンが優位に立っているようにも見えるが、ドゥフトモンも負けてはいない。時折繰り出したカウンターを繰り出しており、ガンクゥモンにも着実にダメージが溜まっていっていた。
「はっ……はっ……!お前のことだから……わかってるんだろう。イグドラシルが最終的にどうするかなんてな」
「……ぜっ……当然だ……はっ……」
「はーはー……ならな、容赦しねぇぞ。石頭」
その瞬間、一瞬だけだが、ガンクゥモンが声を荒げた。
ドゥフトモンは、それを知っている。それが、何の前兆であるか。ガンクゥモンが何をしようとしているのか。
そして、今の状況、状態ではそれを躱すことができないとわかっているからこそ、ドゥフトモンはその瞬間を見逃さないように集中する。その瞬間に、完璧な形で防御をするために。
一方で、ガンクゥモンの方も気合は十分だった。瞬間、どこかジエスモンの使役する三体に似たようなオレンジ色のエネルギー状の竜が、ガンクゥモンの背後に現れた。
「行くぞ……ヒヌカムイ!“地神!神鳴!神馳!親父”ィ!」
「っぐっうぅううう!」
ガンクゥモンの怒声と共に、ヒヌカムイがその拳を天誅とばかりにドゥフトモンめがけて振り下ろす。
通常、成熟期程度の力しか持たぬヒヌカムイだが、今この瞬間だけは、ガンクゥモンのバックアップにより強大な力を有していた。
そんなヒヌカムイの一撃である。
ドゥフトモンも耐えるが、ここに来てアルフォースブイドラモンから受けたダメージが響いた。
確かに、総合的な実力は同じとなっていた。だが、ダメージが有るのと無いのとでは、精神的な余裕が違う。動ける幅が違う。
「ぐぬぅうううう!“アイネ――」
とはいえ、ドゥフトモンの予想通りではあった。ガンクゥモンのこれに耐えられないということは。
だからこそ、ドゥフトモンは策を弄してあった。自分の体を囮とした、策を。
「――ビリオン”!」
「ぬぅっ!?」
瞬間、防御を捨てた。ヒヌカムイの一撃を防ぐこともせず、ドゥフトモンは技を繰り出す。繰り出された技は、一秒間に一兆回という速度で繰り出される強烈な突き。
ヒヌカムイに殴り飛ばされ、体勢が崩れながらとはいえ、くらった者は消滅さえしてしまう恐ろしい技が放たれたのだ。自分めがけて放たれたその技を前に、ガンクゥモンは咄嗟に体を捻るということしかできなかった。
「っく。やはり流石だな。攻撃を受けきれぬと見るや、すぐさま置き土産を残すとは……!」
遠くで倒れているドゥフトモンを眺めながらも、ガンクゥモンは自分の右腕を見る。そこには、あるはずだったものがなかった。
そう。体勢を崩しながらドゥフトモンが放った先ほどの技は、ガンクゥモンの右腕にしっかりと当たってしまっていたのだ。
だが、世界を救う代償が右腕の一本ならば安いものである。そう考えたガンクゥモンは、終わった戦いに安堵の息を吐いて――。
「だが、これで……っ!?」
「グルァア……」
その瞬間。先ほどまで聞こえなかったはずの声が聞こえ、ドゥフトモンの脳内では最大級の警鐘が鳴った。
「くはは……はっはっはっ!だから、貴様たちは愚かなのだ……!」
「ドゥフトモン!?」
それと同時に聞こえた聞き慣れた声。
ハッとしたガンクゥモンがその方向を見ると、ドゥフトモンはふらつきながらも立ち上がり、あのナニカを縛っていた鎖を砕こうともがいていた。
そう。ドゥフトモンは自分が負けたように見せかけ、最後の気力を振り絞って、そのナニカを解き放つという策を実行していたのである。一歩間違えれば、即死の危険性もあったというのに、それでも確信を持ってドゥフトモンはこの危険な策を成功させた。ある意味で恐るべきまでの執念である。
「かつてかの終末の千年魔獣を縛っていたモノを強化し、作り出されたこの鎖。だが、我をもってすれば、砕くことなど容易い……!」
「ドゥフトモンお前……!」
「もはや、劣化コピーを作り出す段階は終わった。次は新たな段階へと……このバケモノが世界をゼロに戻す番なのだ……!」
「っ!やめろ……!」
まるで憑かれているかのように、凶行に及び続けるドゥフトモンを止めるべく、ガンクゥモンは駆け出す。
だが、ガンクゥモンがドゥフトモンの下にたどり着くよりも早く、そのナニカを縛っていた鎖はすべて砕けた。その後のことは言うまでもない。その瞬間にナニカが、死が、解放される。
「ァアアアァァァ!」
「っく!」
まるで世界の不条理を嘆くかのような、世界の理を恨むかのような、凄惨な嘆きともとれるような咆哮を上げ、そのナニカは動き出した。
そのナニカが向かう先。そこにはベルサンディターミナルへと続くゲートが開かれていた。
その光景を見た瞬間、ガンクゥモンは青ざめる。このナニカがNEWデジタルワールドへと出て行った時に出るだろう恐るべき被害が頭を過ぎったのだ。
「ハハハハ!名など意味のない存在であるコイツにあえて名をつけるならば……そうだな。DEATH-Xのデジモン……デクスモンといったところか」
「ァァァァァアアアアアアア!」
「さぁ、デクスモンよ!イグドラシルの御心のままに、世界を喰らって来い!」
「っく!……待てっ!」
そして、次の瞬間にデクスモンと名付けられたそのナニカは世界を滅ぼすため、ベルサンディターミナルへと飛び出して――ガンクゥモンは、慌ててその後を追うのだった。
というわけで、第三十二話。
次回から始まる最終決戦の前座回……の前座回でした。
最終決戦自体は次回から始まりますが、本格的に始まるのは次々回からになります。
今回は時間がないのでこの辺で。
それでは次回もよろしくお願いします。