【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
その光景を言い表すのならば、十人が十人、寸分違わず同じ言い回しをするだろう。
すなわち――死が訪れた、と。
「ァアアアアアァァァァ!」
デクスドルゴラモンに似た外見ながら、それでいて絶対に一線を画するモノ。デジモンですらないナニカ。死という概念が形を持ったモノ。それが、そのデクスモンという存在だった。
「ァァアアア!」
デクスモンは、この世界にいるデジモンたちすべてを狙って行動しているようだ。
その桁外れに長く、無慈悲なまでに冷たい腕が、デジモンたちを襲っていく。その腕の先にある鋭い爪に切り裂かれたデジモンたちは、抗うことすらできずに一瞬で消滅していった。
その光景は、まさに死の訪れ。ともすれば、デクスモンはすべてのデジモンに対する死神といったところであろう。
「あいつは一体……!」
そんな風にデクスモンの凶行が続く中、ここにいる面々の中でも最も疾いアルフォースブイドラモンやその次に速いスレイプモンやジエスモンたちは、デジモンたちの避難活動にあたっていた。
だが、そんな彼らをもってしても、ここにいるデジモンたちすべてを助けることなどできるはずもない。デクスモンの狙うデジモンたちは、ベルサンディターミナルにいるすべてのデジモンなのだから。
「いいからさっさと動け!油断すれば我々でも食われるぞ!」
「っち。次から次へと……!」
いや、その三人だけではない。動ける者は全員で事に当たっていた。避難誘導をする者、動けぬ者を担ぎ行く者、それぞれがそれぞれに出来ることをしていたのだ。
ちなみに、デクスモンの登場と共に、デクスドルグレモンたちやイグドラシルに残った側のロイヤルナイツの面々は姿を消していた。そのおかげもあって、各々が自由に行動できるようになったのだ。皮肉なことだが、彼らが姿を消したことは、デジモンたちにとって幸いだったと言えた。
「ァァァァァアァアアアア!」
奇妙な雄叫びを上げながら、滅ぼすべきデジモンを探し、見つけ次第消去していくデクスモン。時折、果敢なデジモンたちがデクスモンへと特攻していたが、その誰もがなすすべなく消されていった。
まさに、阿鼻叫喚の地獄。すべての命が抗うことさえできず、その未来を奪われていく。地獄ですら生温い光景だった。
「あれが、死の進化の行き着く先か……」
一方で、そんなデクスモンの作り出した光景を前にして、デュークモンは考え事をしながらポツリと呟いていた。今、デュークモンの脳裏には、グランドラクモンから聞いたことが思い起こされていたのだ。
死の進化の行き着く先。それは、死そのもの。死という行動を実行するだけのただの
デュークモンは今まで得た情報を元に、概ねの事態を把握していた。
数日前に現れたオリジナルの進化体。イグドラシルによって回収されたそれには、最も重要な
だからこそ、ああやって他のデジモンを襲うだけの、デジモンではないナニカになってしまったのだ。
そんな風に、客観的にあのデクスモンの考察を続けるデュークモン。だが、そんな時だった。
「……どうするべきか」
「あれはもうデジモンではない。倒すことが不可能な域のバケモノだ」
「……!ガンクゥモンか。無事……ではないようだな」
この場に、ガンクゥモンがやって来たのは。
イグドラシル側のロイヤルナイツであるはずのガンクゥモンが現れたというのに、デジモンたちは誰ひとりとして騒がなかった。
まあ、それだけ逃げることに必死なのだ。
「クソ師匠!っ……右腕が……!」
「ガンクゥモン様!?」
「が、ガンクゥ、モン様……」
そして、ガンクゥモンが傷だらけであることに気づいたのだろう。
遠くで避難活動に当たっていたジエスモンやシスタモンたちは、その傷だらけの姿を見た瞬間に、血相を変えてやって来た。
「済まないな。お前たち。止めようとしたが……このザマだ」
自分の下へといち早くやって来たジエスモンたちに、ガンクゥモンは苦笑している。その表情からは、普段の師匠然とした様子は見受けられない。デクスモン解放を止められなかった自分の不始末を嘆き、そして、自分自身に情けなさを感じているのだろう。
そんなガンクゥモンの様子に、シスタモンたち姉妹は気づかず、右腕の喪失という大きな傷をただ心配していた。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ。俺は心配ない」
一方で、誰よりもガンクゥモンのことを尊敬しているジエスモンだ。当然、そんなガンクゥモンの気持ちに気づいていたし、彼がしようとしていたことも、何となく察しがついていた。
そして――。
「ふっざけんなよ……クソ師匠……!」
――そして、だからこそ、ジエスモンはそんなガンクゥモンに純粋な怒りを抱いたのである。
彼はそのまま、湧き上がる激情に駆られて、ジエスモンは拳をガンクゥモンに叩きつけた。
「アンタにとってオレたちはそんなに頼りないか!?」
瞬間、ホワイトアウトした視界。一瞬、ガンクゥモンは何があったのかわからなかった。
まさかこの状況で殴られるなど、ガンクゥモンとて予想していない。だからこそ、そのジエスモンの拳は、吸い込まれるようにガンクゥモンの顎へと入っていったのだ。
「ジエスモン!?アンタ……!」
「……お前」
先ほどのジエスモンの殴打は、本気の一撃だった。
それがわかったからこそ、シスタモンノワールは咎めるような、責めるような視線をジエスモンに送る。直後、二人の間に生まれたのは、まさに一触即発の雰囲気だ。
一方で、そんな姉と弟の姿にシスタモンブランはオロオロとしていて、殴られた当のガンクゥモンは黙ったままだった。
「アンタにとっちゃ、オレたちなんて頼るにも値しねぇ若造でしかないんだな」
「……!ジエスモン……?」
そうして、ポツリと呟かれたジエスモンの言葉には、どこか失望が込もっていた。
目指すべき背中に頼られるほど力がなかったという、自分に対する失望。
目指すべき背中が、誰かを頼ることもない
「アンタは自分の力を過信し、慢心するような奴だったんだな……!」
「……」
「ジエスモン!そんな言い方……」
「黙ってろ!生意気を言うならそれを貫く強さを持て……か。アンタは……一人でやるって生意気を言ったくせに、それができる強さがあったのかよ」
言いたいことだけを言って、ジエスモンはガンクゥモンたちに背を向けた。その視線の先には、あのデクスモンがいる。その視線だけで、ジエスモンが何をしようとしているのか、察することは誰にでも容易なことだった。
「……ジエスモン」
「なんだよ。まだあんのか?」
「そう怒るな。俺もまだまだだと……実感した」
「……で?」
「まさかお前に諭されるとは思わなかった。知らぬまに成長していたようだな……いや、上から言うのはもう違うか」
「……!」
「この傷では俺は役に立てん。他のデジモンたちの救助に当たっている。情けない話だが……他の物たちと共に、頼めるか?」
「……ああ。わかってるよ。クソ師匠」
背後から聞こえたガンクゥモンの言葉に、ジエスモンはぶっきらぼうに返事をする。だが、そこに先ほどまであった失望の色はなかった。
このやりとりの中にでも、ジエスモンとガンクゥモンの二人には、特別な意味があったのだ。
それがわからないデュークモンは首を傾げていたが、それがわかるシスタモンたちは目を見開いて驚いていた。
「さて、もういいかい?」
そして、そんなジエスモンや聞き役に徹していたデュークモンの背後から投げかけられた声。それは、神速の聖騎士のもので、ジエスモンたちはハッとして振り返った。
そこには――。
「ラララ~さっさとしないと全くもって~美しくない~ラララ~ことになりそう~ですしね~」
「がはは!若造の成長とは、かくも目を見張るものだな!」
「全く。確かに同意するが、言っている場合ではないだろう」
「……進化したはずなのに、場違い感を感じるな」
――そこには、“元”ロイヤルナイツの面々と、先ほど新たに進化したオメガモンの姿があった。
彼らは、イグドラシル側のロイヤルナイツたちの撤退の後に、デクスモンをどうにかするため、こうして集まったのだ。
「……オメガモン?いや、そうか。ウォーグレイモンとメタルガルルモンの二人か。よもやオメガモンに進化するものがいようとは……この状況も相まって、かつての大戦を思い起こさせるな」
「ああ。オレたちが一番驚いているよ」
デュークモンの驚いたような声に、オメガモンは肩をすくめながらも返答する。
その、ロイヤルナイツのオメガモンは絶対しないような砕けた口調。何と言うか、慣れない。その口調を前にして、デュークモンたちは少なくない違和感を抱いてしまう。
「オレたちのことはいい。どうする?奴はおそらく、ここにいる全ての全員が一丸となっても、倒せるかどうかわからないぞ」
「ラララ~思ってもない~ことを~」
「ああ。どんな相手でも引く気はないって顔しているよ。それはボクたちも同じさ」
「がはは!それでは、行くとするか!先にデクスモンを食い止めている
「クソ師匠……他のデジモンたちのことは任せたぞ」
「ああ、任せろ」
こうして、先に戦っている馬鹿者たちに合流するべく、彼らもデクスモンの下へと向かっていくのだった。
というわけで、第三十三話。
デクスモンの進撃とジエスモンの回でした。
さて、次回からは本格的にデクスモン戦が開始します。
馬鹿二人とは一体誰でしょうね(棒)
それでは次回もよろしくお願いします。