【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第三十四話~生きるために死地へと臨む~

 オメガモンやデュークモンたちが決起した時から、時は少しだけ遡る。

 その時、グレイドモンたちはデクスモンからデジモンたちを守るべく、デジモンたちの救助活動にあたっていた。

 

「急いで逃げろ!」

「アウ!アウ!」

「急ぐデスよ!」

 

 そんなグレイドモンの両肩にはトコモンとプロットモンの二人が乗っている。もう離れないとばかりに。先ほど、デクスモン登場のゴタゴタの最中に合流してから、ずっとこの状態だった。

 まあ、そんな二人ことをグレイドモンも気にしてはいない。というか、気にする余裕などなかった。

 

「あれ、シスタモンたちやジエスモンは!?」

「どっかにすっ飛んで行ったデス!」

「はぁっ!?」

「たぶん、ヒーローさんたちは別のところの救助に行ったデスよ!」

 

 どこへ逃げればいいのか。いや、そもそも逃げ場というものがあるのか。

 心に浮かぶさまざまな疑問や不安を押し留めて、この場に存在するデジモンたち全員が事にあたっていた。だが、やはり混乱は避けられない。

 まあ、それも当然のことだろう。デクスドルグレモンやロイヤルナイツの襲来、強制分散、そしてトドメのデクスモン。この目まぐるしく移り変わっていく事態を前にして、混乱しないほうがおかしい。

 だが、混乱していようが、していまいが、事態が待ってくれるはずがない。

 

「っち!こっち来やがったぞ!」

「速く!逃げるんです!」

 

 その時、グレイドモンたちと同じく避難活動にあたっていたマミーモンとシルフィーモンが焦ったような大声を発した。

 それなりに離れているグレイドモンたちにも聞こえるほどの声量だったのだ。何事かとグレイドモンたちはそちらを向いて――。

 

「アウ~!?」

「最悪デス……」

 

 ――その光景を見てしまったことをすぐに後悔した。そこには、遥か遠くからだったが、こちらをロックオンしたデクスモンの姿があったのだ。

 そう。避難を進めているということは、ここには避難しているデジモンたちが大勢いるということ。そんな絶好の場所を、デクスモンが見逃すはずもない。皮肉にも、グレイドモンたちが避難活動を一生懸命に行っていたために、デクスモンに狙われる事態となってしまったのである。

 

「“トップガン”!」

「うぉおおおおおおおおお!」

「“サンダークラウド”!」

 

 すべてを消滅させるデクスモンに近づくことは危険。

 そのことがわかっているからこそ、マミーモンは愛銃を乱射し、ウィザーモンとシルフィーモンは必殺技を放つ。だが、そのどれもが遠くにいるデクスモンに当たることはあれど、効果を発揮することはなかった。

 時折、発見したデジモンたちを消しながら、近づいてくるデクスモン。あと数分もあれば、ここにいる全員がデクスモンの攻撃範囲に含まれてしまうだろう。

 だからこそ――。

 

「プロットモン……トコモンを頼む」

「えっ……何言ってるんデスかーやデスよー!恩人さん!僕らを下して、どうするんデスか……恩人さん?」

「頼む」

 

 ――だからこそ、グレイドモンは覚悟を決めた。

 これ以上は無駄に命を失わせない、と。守るのだ、と。そう、覚悟を決めたのだ。

 だが、一方でプロットモンには、グレイドモンが何をしようとしているのか、わからなかった。いや、わかりたくなかったと言うべきか。

 

「恩人さん!?何言ってるんデスか!?本気デスか!?」

「ああ。トコモン……」

「アウ!アウー!ガウ!」

「頼む。離れてくれ、トコモン」

 

 信じられない、と呟くプロットモン。対照的に、トコモンはグレイドモンを行かせないとばかりに、彼の背中の青いマントに噛みついて離さない。

 だが、こうしている間にもデクスモンは近づいてきている。

 この二つの事実を前に、グレイドモンも困ったような顔をするしかなかった。

 

「大丈夫。オレは帰ってくるから。前のようなことにならないから」

「アゥガゥ……!」

「恩人さん!ぼくも反対デス!」

 

 二人の幼いデジモンたちに引き止められていたのだ。はっきり言って、グレイドモンも心が揺らぎそうになる。だが、それでもグレイドモンは直感で悟っていた。

 アレ(デクスモン)からは逃げられない、と。生き残るためには戦うしかない、と。

 なぜかはわからないが、グレイドモンはそう思ったのだ。

 

「大丈夫、約束だ。……マミーモン!シルフィーモン!ウィザーモン!オレが食い止める!」

「はぁっ!?てめぇ、本気か!?」

「大丈夫なのですか!?」

 

 その言葉に驚く三人の下へとたどり着いたグレイドモンは、未だ噛みつき続けるトコモンを強引に引き離してウィザーモンに託した。

 

「……納得できない。君だけが行く必要がどこにある?」

「別に死に行く訳じゃない。生きるために行く。……オレが行かなきゃいけないって、そんな予感がするんだ」

「……わかった。この子たちのことは任せろ」

 

 誰か一人を犠牲にして事なきを得るようなグレイドモンの行動。しかも、その誰かが自分という、そんなグレイドモンの自己犠牲の提案には、ウィザーモンも反対だった。特に、彼を引き止めようとしているトコモンたちの姿を見てしまったから、なおのこと。

 それでも、グレイドモンの覚悟の込められたその言葉には、ウィザーモンだけではなく、この場の誰もが感じることがあった。

 だからこそ――。

 

「すまないっ!」

「死ぬんじゃねぇぞ!」

「グレイドモンが食い止めます!速く!」

「アウゥ……」

「おん……人さん……!」

 

 ――だからこそ、彼らは彼らのするべきことをする。

 この場を離れるために、先ほど以上の速度で逃げていくデジモンたちとそれをまとめるマミーモンたち三人。そして、涙を堪えているかのような沈んだ顔のトコモンとプロットモン。

 そんな彼らに見送られて、彼らとは逆の方向へとグレイドモンは駆け出した。

 

「結局、あんな顔させちゃったな……」

 

 今度こそ守る、と。そう誓ったのに、と。

 すでに近くまでやって来ていたデクスモンを睨みつけながら、グレイドモンはそう嘆息した。

 最後、トコモンはグレイドモンのことを心配し、されど彼のその意思を尊重して我慢していた。特にその時の泣きそうな顔。あんなトコモンの顔は、グレイドモンもしばらくは忘れることはできないだろう。

 

「ならば、生き残らねばな」

「ああ、そうだ……って誰だ!?」

 

 デクスモンと接触するまで、あと数秒というところ。そんな時に、グレイドモンに話しかけてきたのは、オウリュウモンだった。

 彼もデクスモンを倒すべくここにいるのだが、自分一人で戦うことを予想していたグレイドモンとしては、その存在には驚くしかない。

 

「何。某も奴を倒す一助となるだけのこと。心配はいらぬ。ロイヤルナイツたちほどには役に立つぞ」

「……逃げてもいいんだぞ?」

「それは某に対する侮辱であるぞ」

「……ははっ……そうか」

 

 グレイドモンは、オウリュウモンとは初対面だ。

 それでも、たとえ初対面だろうが、こんな事態になっても共に行く味方がいるというのは心強く感じられて、グレイドモンは状況も忘れて笑ってしまった。

 オウリュウモンの言葉に、グレイドモンは嘘を感じなかった。であれば、オウリュウモンがロイヤルナイツ並みの実力を持つというのも本当なのだろう。

 それならば、デクスモン相手でも共に戦うことはできる。心強い味方だった。

 

「それじゃ、行くか!」

「おう!」

「ァアァァァァァアアア!」

 

 直後、グレイドモンとオウリュウモンはやって来たデクスモンと戦闘を開始する。

 デクスモンは攻撃したデジモンをことごとく消滅させていくほどの相手。それゆえに、オウリュウモンも、グレイドモンも、回避に重きを置いた戦い方をする。

 

「ァァァァアアァァァ!」

「はぁっ!」

「ふっ!」

 

 デクスモンの長く冷たい腕を、すり抜けるようにして躱し、一瞬の隙に攻撃する。

 その際、隙ができたり、技後硬直するような大技は使わない。デクスモンが一撃必殺の技を持つ以上、グレイドモンたちは、ただコンパクトな隙の小さな技で、地道にダメージを稼いでいくという戦い方しかできなかった。

 

「っく!効いていないのか!?」

「むぅ……!」

 

 だが、オウリュウモンの攻撃も、グレイドモンの攻撃も、デクスモンを傷つけることは叶わなかった。傷ついてさえいないのだ。

 先ほどのマミーモンたちの攻撃は、距離が離れすぎているがゆえに効いていないように見えてもいた。だが、実際は距離など関係なしにデクスモンには攻撃が通じないようである。

 超威力の大技ならば通じるかもしれないが、それをする隙をデクスモンは与えてくれない。

 

「ァァァァアアアアァアア!」

「はぁぁああ!」

「ぉおおおお!」

 

 技が効かないことがわかっても、二人の頭の中には撤退の二文字はなかった。

 デクスモンという存在は、目の前にいるデジモンを狙う性質がある。それは逆に言えば、目の前にデジモンがいる限り、他のデジモンは安全になるということである。

 つまり、ここで二人が撤退するということは、このデクスモンが他のデジモンたちの下へと向かうということだ。それだけは、二人はなんとしても阻止したかった。

 

「やはり……効いておらぬ!」

「無理はするな!足止めに重点を置くんだ!」

 

 迫り来るデクスモンの腕を幾度となく躱し、切り込み続ける二人。かれこれ十回以上はデクスモンに攻撃を当てているだろう。

 だが、未だにデクスモンのダメージはゼロで、疲れた様子も見えない。

 一方、グレイドモンたちは攻撃こそくらっていないが、精神的にも肉体的にも疲労がたまっていた。デクスモンの攻撃を幾度となく躱したこと、そして、一撃をくらうことが死に直結するというこの極限状態が続いたこと。その二つのせいで、いつも以上に疲労がたまってきていたのである。

 

「はっ……はっ……」

「っグレイドモン……!」

「……?って!危な……!」

 

 デクスモンと戦闘を開始して、はや数分。

 すでに疲労が戦いの様子に如実に現れてきていた。オウリュウモンの方はまだ余裕がありそうだったが、問題はグレイドモンだ。

 これまでの戦いの分の疲労も一緒に出てきたのだろう。グレイドモンの戦い方に危ない場面が多くなってきていた。今も、オウリュウモンの声がなければ危なかっただろう。それに、何も回避だけの話ではなく、全体的な攻撃回数も減っている。すべて、極度の疲労が戦いに現れてきたせいだ。

 

「無理はするな!某が主となって行く!」

「だけど……!」

「生きて帰るのでござろう!?」

「……!ああ!」

 

 グレイドモンの反論を半ば強引に押しとどめて、再度、オウリュウモンはデクスモンへと向かっていく。

 デクスモンの長大な腕の動きは、これまでの戦闘でおおよそ掴んでいた。あとは躱すだけの力があればいいのだから、オウリュウモンにとっては容易ではないが、難しいことでもない。

 オウリュウモンがデクスモンの腕を躱し、その手の二本の刀とその背の翼刀を組み合わせて、すれ違うようにしてデクスモンに切りかか――るその直前のこと。

 

「っ!オウリュウモン……!」

 

 グレイドモンの鬼気迫る声が聞こえて、ハッとしたオウリュウモンは、すぐさまグレイドモンの言わんとしていることに気がついた。

 デクスモンの腕が、今までにはなかったようなしなやかな動きで、オウリュウモンに迫り来ていたのだ。

 今まで、デクスモンの腕の動きはどこか固かった。直線的だったと言ってもいい。ようするに、ボクシングで言うテレフォンパンチのようなものだったのだ。

 だからこそ、グレイドモンも、オウリュウモンも、楽に躱すことができた。

 

「ァァァァアアアアァァァ!」

「……なっ!」

 

 だが、ここに来ての攻撃軌道の変化。デクスモンはまるで誘っていたと言わんばかりで、オウリュウモンはその誘いに乗ってしまった。

 

「っく!なんの!」

 

 とはいえ、オウリュウモンとて黙ってくらうつもりはない。今までと違う軌道で動くその凶腕を、オウリュウモンは間一髪で躱した。

 

「……なっ!?」

「アァァァアアアアア!」

 

 だが、躱した先でオウリュウモンが見たもの。それは、口にエネルギーを貯めているデクスモンの姿だった。

 デクスモンは、デジモンを消去し、己の中に取り込み、分解。二度と再構成できないように処理をするという、“プロセスO”から“プロセスF”までを永劫に繰り返す存在。そして、今、デクスモンが放とうとしているのは、そのすべてのプロセスを凝縮させた破壊光線。それは、受けたいかなるデジモンも終わりとする終の光線。

 先ほどの腕を無茶な躱し方をしたオウリュウモンには、これを躱しきる術はなかった。

 

「っく!せめて一矢報いる!“永世竜王刃”!」

 

 躱せない。そのことを悟ったからこそ、オウリュウモンは捨て身の覚悟で必殺技を放つ。

 オウリュウモンの両腕の刀から放たれた斬撃が、デクスモンを深々と切り裂く。が、まるで霞を攻撃したかのように、その傷は一瞬も経たずに治った。

 オウリュウモンのその攻撃には意味がなかったとばかりに。

 

「ァァアアアァッァァアア!」

「っ!オウリュウモン!」

 

 捨て身の技でさえ効果を見せなかった事実に苦い思いをオウリュウモンは抱く。

 背後から聞こえるグレイドモンの悲鳴。それを聞きながら、オウリュウモンはデクスモンの光線に飲み込まれて――。

 

「“ペンドラゴンズグローリー”!」

「“シャイニングVフォース”!」

「“ガルルキャノン”!」

「“オーディンブレス”!」

「“ファイナル・エリシオン”!」

「ラララ~“アージェントフィアー”!」

 

 ――それに一瞬遅れて、あらゆる方向から放たれた技が、デクスモンを飲み込んだ。

 

「やったか!?」

「いや、ダメだったようだ……」

 

 その技を放ったのは言うまでもなく、オメガモンやデュークモンたちだ。

 それは、それぞれが息を合わせての必殺技の同時攻撃だった。

 だが――。

 

「ァァァアアアァアァア!」

 

 ――だが、それでもデクスモンを倒しきることはできなかった。

 それぞれが放った必殺技をかき分けて現れたデクスモンはまるで陽炎のように揺らめいていた。が、それもすぐさま収まっていく。

 それは、自分たちの最大火力を同時に放っても倒せなかったということ。その事実に、オメガモンたちは苦い顔をするしかなかった。

 

「来るぞ!奴の攻撃を受けるなっ!」

 

 だが、苦い顔をしていようとしていまいと、デクスモンは待ってはくれない。

 オメガモンたちをロックオンしたデクスモン。オメガモンたちはそんなデクスモンと戦い始めるのだった。

 




というわけで、第三十四話。
デクスモン戦前編の話でした。
いやー……公式かどうかに限らず、チートキャラはラスボスにもってこいですし、話も盛り上がるんですが、安易に出すと倒す方法に苦労しますよね。
ちなみに、公式チートの一角たるデクスモンの倒し方は、原作とは違います。

さて、次回は後編。ついに主人公がはっちゃけます。
デクスモン(公式チート)相手に、主人公たちはどう立ち回るのか……!

それでは次回もよろしくお願いします。
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