【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
デクスモンと戦い始めたオメガモンたち。
そんな彼らの一方で、グレイドモンはデクスモンから少し離れたところにて、
「オウリュウモン……!」
「はは……そんな顔をするな」
「すまねぇ。オレたちがもう少しでも早けりゃ……!」
なぜオウリュウモンがここにいるのか。
それは、ジエスモンのおかげである。先ほどデクスモンの光線に飲み込まれる直前、オウリュウモンはジエスモンに助け出されていたのだ。
いや、助け出されていたと言うと語弊があるか。
先ほど、デクスモンの光線発射前にジエスモンはギリギリでオウリュウモンの下へと到着することができた。そして、助けようとした。助けようとした、のだが、オウリュウモンの巨体をデクスモンの光線の攻撃圏外まで持っていくことは、ジエスモンにも不可能だった。
「気に病むな。消え行く某がこの時間を得られただけでも儲けもの」
「……本当にすまねぇ」
結果、直撃でこそなかったが、オウリュウモンは光線をくらってしまった。
あのデクスモンの光線は、当たっただけで対象の消滅を決定づけるほどの性質を持っている。当たったものは例外なく消滅する。それは、掠っただけのオウリュウモンとて同じこと。
結局、完全消滅までの猶予ができただけで、ジエスモンはオウリュウモンを助けられなかったのだ。
「……ふはは」
「死ぬんだぞ!なんでそんなに笑えるんだ!」
「いやなに。この世の真理が見えただけのこと」
「何を言っているんだ?」
死ぬというのに、笑い出して、さらに真理が見えただのと言うオウリュウモン。ともすれば、一見狂ったようにも見える。
だが、ジエスモンにも、グレイドモンにも、彼が狂ったようには見えなかった。彼は死の淵に立って何かを悟った。そのことに二人は気がついたのだ。
「死にたくない、と。生きていたい、と。そう思ってここまで来た。諦めかけそうになったこともあったが……」
「だったら……」
「それでも……思うことがあるのだ。いや、ともすれば、これが某の役割だったのやもしれぬ」
「……?」
「お前に某の命を託す」
託す、と。何の脈絡もなく、いきなりそんなことを言われたグレイドモンは、混乱するしかなかった。さまざまな疑問や思いが彼の中で生まれては消えていって、彼の頭の中はパンクしそうになっていた。
だが、混乱する頭でも、グレイドモンはオウリュウモンの行為を否定するつもりはなかった。ここでオウリュウモンの行為を邪魔することは、オウリュウモンの命を否定することだと思ったのだ。
「大丈夫だ。某は死ぬ訳ではない。某は自らの命を活かすのだ」
「活かす?何を、言って……」
「はは。某の命が次代への架け橋となるなら……死に行く某にも意味があったのだ、と。また救われよう!命とは!“受け継がれていく”ものだと見つけたり!」
オウリュウモンの最期の言葉は、本心であったのだろうが、その中に少しだけ強がりも混じっていたように感じられる。
それでも、グレイドモンもジエスモンも、彼が死の間際で悟ったことに感じるものがあった。たくさんの命に支えられた二人だからこそ、感じられたものが。
だからこそ、二人はオウリュウモンの最期を目に焼き付けようとして――。
「うむ。それでは、あとは任せるぞ」
――その直後のことだった。グレイドモンたち二人には、そこにオウリュウモンとは違う黄金の神竜の姿が一瞬だけ見えたような気がした。
驚き目を見張る二人。そして、そんな二人の目の前で、オウリュウモンは光と共に一本の巨大な剣となった。
「こ、れは……!」
まるで何かに導かれるかのような光と共に地面に突き刺さったその巨大な剣は、ロイヤルナイツにまで至ったジエスモンをして見たことがないほどの名剣だった。
圧倒的なまでの力の波動。おそらく、新旧のデジタルワールドを合わせても、ここまでの剣は早々ないだろう。まさしく、オウリュウモンというデジモンの存在が凝縮されているような剣だった。
オウリュウモンは自分の命を元にして、最後に残してくれたのだ。未来を。
「オウリュウモン……!」
「……行くか。ふんっ……あれ?」
だからこそ、そんな彼に感謝をして、ジエスモンはその剣を引き抜こうとした――が、引き抜けなかった。いや、少しは浮いたのだが、完全に抜くことができなかった。
そして、それは――。
「ふぅううううう!……ダメだ……」
――そして、それはグレイドモンも同じだった。ここにいる二人では、このオウリュウモンの形見である剣を引き抜くことさえできなかった。
「……」
「……」
その時、二人の間には、今の事態も忘れて気まずい沈黙が漂っていた。
オウリュウモンがせっかく遺してくれたモノだというのに、扱うことさえできない。オウリュウモンに申し訳ないどころの話ではなかった。というか、事態が事態でなければ、笑い話だ。
「……どうする?」
そう問いかけるジエスモン。それは、時間がないからこその、自分たちも戦列に加わらないといけないからこその言葉だった。
だが、そう言ったジエスモンはもちろん、グレイドモンも、この剣を諦めるという選択肢はない。
「まだだ!ぬぅううううう!」
「……やっぱな」
これは、オウリュウモンから託されたものであるから。これは、彼の命にして、未来への願いであるから。
これを自分たちが捨てるということは、オウリュウモンに対する最大の侮辱だ。だからこそ、グレイドモンは諦めずに剣に手をかけ、引き抜ぬこうと力を込め続ける。
「やれやれ……みんな。もうちょっと待っててくれよな。オレも力を貸すぜ。うぉおおおおお!」
師匠がいる身として、その師匠に頼まれた身として、ジエスモンには今のグレイドモンの気持ちがよくわかった。だからこそ、ジエスモンもグレイドモンと共にその剣に手をかけて、二人で剣を抜こうと力を入れ始めた。
だが、二人がかりでも、剣はビクともしていない。
「ぅおおおおお!抜けろォオオおお!」
もはや、二人の頭の中からは、デクスモンのことなど吹き飛んでいた。
オウリュウモンの剣を抜く。ただそれだけが二人の頭の中にあって――そして、そんな時だった。
『やれやれ……そんなものか?』
いつか、どこかで聞いたような声がグレイドモンの耳に聞こえたのは。
その声は、グレイドモンたちの奮闘など知ったことではないとばかりに、話しかけてきた。
『オウリュウモンは自分の存在のすべてを遺したぞ』
「ぬぅうううううけぇええええええろぉおおおおおお!」
『お前は……いや、
どこか試すような、どこか導くかのような、その声。
その声の言葉に耳を傾けながらも、グレイドモンは剣を引き抜こうとしているままだった。
『違うだろう。オレは誰のためにここに残った?何を賭けてこの終末に立ち向かっている?』
「オレは……いや、
『ならば、向き合え。そして、証明しろ。オレの賭ける存在のすべてをもって!』
「オレは……お前は……!」
聞こえてくる声に、グレイドモンはただ思ったように返答していく。その先に、彼は霞の向こうにいた誰かと重なった気がした。
「……?グレイドモン?」
ジエスモンには聞こえていないらしいその声。
その声が聞こえるグレイドモンは、その声に導かれるようにして様子が変わっていっていた。が、反対にその声が聞こえないジエスモンにとっては、そんな彼の様子の変化に戸惑うしかない。
調子が悪いのか、と。そう思ったジエスモンは、心配そうにグレイドモンに話しかけて、その直後のことだった。
「いや!オレは!うぁぁあああ!」
「なぁっ!?」
その直後、ジエスモンは凄まじい衝撃に吹き飛ばされる。
その衝撃と共に巻き起こったのは、虹色の強烈な光。
目を開けていられないほどの強烈で、世界すべてを照らすかの如く鮮烈なその光を前に、ジエスモンは吹き飛ばされながらも顔を覆ってしまう。
が、その直前に、ジエスモンは見た。凄まじい衝撃と光の中で、オウリュウモンの剣を確かに引き抜いたグレイドモンの姿を。
一瞬後。光が去る中で、グレイドモンに代わるようにそこにいたのは――。
「お前は……グレイドモンだった奴だよな」
「……ああ」
「その姿は……誰だ?見たことも聞いたこともねぇぞ」
「全部思い出した。イグドラシルに封じられたことも、全部。今この瞬間に、オレはオレとなった」
「……?」
――オウリュウモンの剣をその手に持った漆黒の騎士で。
彼こそが、神話の中にのみ存在する空白の席の主。最後にして最初の聖騎士。
「オレは……アルファモンだ」
十三番目のロイヤルナイツ、アルファモンだった。
というわけで、第三十五話。
はい、すみません!
前回デクスモン戦後半と言いました、が、実際は後半その1となってしまいました!
改めて読み返したら意外と長かったのと、ここでキリがよかったので……切っちゃいました。
気味悪かったので!
後半その2は同時投稿です。ので、そちらもよろしくお願いします。