【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~ 作:行方不明
前話を読んでいらっしゃらない方はそちらからよろしくお願いします。
「……!お前が……“あの”神話の中のロイヤルナイツ!?」
アルファモン。それは、神話の中にのみ存在するロイヤルナイツ。一番初めにロイヤルナイツに名を連ねた存在で、他のロイヤルナイツたちの抑止の騎士。だが、決して存在しないという、存在そのものが半ば伝説扱いだったために、空白の席の主とまで言われたデジモンだ。
名前だけしか聞いたことのなかった存在が、御伽噺の中だけの存在が、目の前にいる。
そんな事態を前にジエスモンは口を開けて呆然するしかない。
まあ、当のアルファモンは、体やオウリュウモンの剣の調子を確かめるかのようにその体を動かしている。そんな彼の様子は、神話の騎士が現実にいるという何よりの証明だった。
「なんか納得いかねぇが……まぁいいか。行くんだろ?」
ここに来てのいきなりのご登場に、ジエスモンは釈然としないものを感じていた。が、それでもこれは頼もしい援軍でもあった。
「ああ。あの死の化身を倒すのは、オレだけじゃ無理だ。お前の力も借りたい」
「わかってるさ。アンタが誰であろうと、アンタだけに任せねぇ」
「ふっ。口だけは達者だな。若造」
進化したが故か。それとも、イグドラシルに封じられた云々のせいか。アルファモンはグレイドモンの時と比べて性格と口調にだいぶ変化がある。
「……進化したてに若造って……納得いかねぇ……!」
「残念。オレは神話に語られるアルファモンと同一個体だ」
「……はぁっ!?」
軽口を叩きながらも、ジエスモンとアルファモンは空を駆け、未だ戦い続けている他の者たちの下へと向かっていく。
そんな彼らの視線の先には、オメガインフォースでもってデクスモンの攻撃を躱し続けるオメガモンの姿があった。さらに、オメガモンは必殺技の“オールデリート”を発動して斬りかかっていく。
だが、オメガモンの奥義と呼べるようなそれらの技すらもデクスモンには効いていないようだった。
「待たせたな!」
「遅っ……い……?何者だ?」
手っ取り早く、一番近くにいたデュークモンに話しかけたジエスモン。
だが、デュークモンはジエスモンよりもその後ろのアルファモンの方が気になった。まあ、いきなり見知らぬデジモンを連れてくれば当然だろう。
「こいつはアルファモンらしいぜ」
「アルファモン!?神話の中の……!?……そうか。スレイプモンやエグザモンが言っていたのはこういうことだったのか」
アルファモンの名前を聞いて、デュークモンは、以前スレイプモンやエグザモンがドルモンに対して含みのある言い方をしていたことを思い出した。
なるほど、彼らがドルモンに感じていたのはこういうことだったのだ、と。
「ああ。オレの存在に言いたいことはいろいろとあると思う。だけど、すべては終わってからだ」
「策はあるのだろうな。先ほど、オメガモンの奥義と技でもってしても、奴は倒しきれなかったぞ」
「大丈夫だ。オウリュウモンが道を示してくれた。悪夢はここで終わりだ」
そう言って、アルファモンはデュークモンとジエスモンに作戦を話す。
アルファモンの考えた作戦は、至極シンプルなものだった。難しいこと抜きで簡単に言えば、強い攻撃を一瞬のズレもなく
まあ、シンプルゆえに難しいのであるが。
「オメガモンの攻撃も、その前の攻撃も、効いていなかったわけじゃない。ただ、デクスモンを倒すまでの威力じゃなかったって話だ」
「……?瞬間回復とか、そういう感じか?」
「その認識でもいいが、正確に言えば違う。あれはオレのデクスリューションした時の抜け殻が本能に従って動いているだけ。まあ、それが厄介なんだが……」
「……よくわかんねぇよ!もっと簡単に言ってくれ!」
話が難しすぎる、と。なかなか本題を端的に話さないアルファモンにジエスモンが根を上げた。
だが、話が分かっていないのはジエスモンだけだったようで、デュークモンは頷いていた。
「なるほどな」
「えっ!?デュークモンはわかったのか!?」
「つまるところ、アレは死の概念そのものが形をとったものということだ。アレには傷という概念はない。アレにあるのは、無か有か。そういうことであろう?」
「ああ。ダメージという概念がないんだ。だから、倒すなら、あの超存在を一瞬で消し飛ばす必要がある」
デクスモンという存在は、死の進化によって生まれたデクスドルゴラモンから、ドルモンという生命データのみが失われたもの。
生命を持たないが故に、デクスモンはただの“現象”である。つまりは生き物ではない。ゆえに、ダメージや傷を負うという概念がない。例えるのならば、物理的影響を持つ霧のようなものだ。
それが、攻撃が効かない理由であり、傍目には瞬時回復しているようにも見える理由でもある。
これだけ聞くと倒すことなど不可能であるようにも思えるが、実のところ理論上は不可能ではない。
霧という現象は、強い風が吹けばなくなる。それと同じように、デクスモンという現象は、デクスモンを消し飛ばせるほどの超火力を叩き込めば、消滅する。
「……難しいな」
「だな」
「だが、これしかないだろう?」
まあ、何度も言うが、それが難しいのだが。
世界一つを滅ぼせるデクスモンを“一瞬で”消し飛ばすだけの超火力が必要であるということはつまり、世界を一つや二つ軽く滅ぼせるくらいの火力がなくてはならない。
そんな火力を持っている存在など、東方の破壊神、超魔王や黙示録に記されている竜、そして旧世界の神龍など、デジモンかどうかも怪しい存在たちくらいだ。早々いるものではない。
一応、ここにいる面々全員が力を合わせれば、それくらいの火力は出る“かもしれない”。だが、問題となるのは“一瞬”という部分である。
息を合わせるなどでは生温い。コンマ一秒以下の精密さで同時に着弾しなければならない。このいろいろな意味で強い面々が、そこまでの結束を見せられるか。答えはどう考えても否だ。
「それでもやらなければならないだろう?」
「……そうだな。世界がかかってんだしな」
「それに、今のオメガモンがいればそれもできる」
「……!なるほどな。では……」
「オレが先陣を切る。オレの能力はそのタイミングでしか使えないからな。ジエスモンとデュークモンは他の面々にこのことを伝えてくれ」
「わかった。このデュークモン。確かにやり遂げよう」
「ああ!勢い余って死ぬんじゃねぇぞ!」
話はまとまった。これから、生存を賭けた最後の足掻きが始まるのだ。
アルファモンはデクスモンの下へと向かい、その際にオメガモンに作戦の概要を伝える。アルファモンという存在に一瞬驚いた様子を見せたものの、何故か呆れたような、悟ったような表情をしたオメガモンは、二つ返事でその作戦に了承した。
一方で、ジエスモンはアルフォースブイドラモンやスレイプモンの二人に作戦を伝え、デュークモンもエグザモンとロードナイトモンに作戦を伝え――その結果、数秒後には、作戦実行の下地は整った。
「がはは!コンマ一秒以下の共闘か!偶には面白いこともあるものだ!」
大気圏外にその巨大なランスを構えたエグザモンが、愉快そうな表情を浮かべて待機していた。
「やれやれ」
デクスモンから遠く離れたところにいるスレイプモンが、半ば疲れた様子で、その左手の聖弩を構えていた。
「よっし。これで最後だな!頑張るぞ!」
デクスモンの背後の上空にいるアルフォースブイドラモンは、気合も十分に滞空していた。
「これで終わりにする。いや、しなければならない!」
デクスモンを睨みつけるデュークモンは、その左腕の盾を準備していた。
そして――。
「あのドルモンが、まさかアルファモンだったなんてな。何があったかわからないけど、すごい出世だな」
――そして、この作戦の重要な役割を背負うオメガモンが、アルファモンの後ろ姿をすぐ傍で眺めていた。
「ラララ~美しき~共闘~燃えてきました~!」
「オレたちはいざという時の救助係だけどな……一応発動しとくか。よっと“アウスジェネリクス”!」
ちなみに、いつも通りのロードナイトモンとやる気満々だったジエスモンの二人は、この一斉同時攻撃に参加しない。出鼻を挫かれる形となってしまったが、まあ、それも仕方のないことだった。同時攻撃ができるような火力系遠距離技を二人は持っていないのだから。
ゆえに、二人は作戦失敗の時の救助役に回っていて、そんな二人の前でついにその時が来る。
作戦の始まりは、アルファモンからだった。
「ぅおおおおお!行くぞ……オウリュウモン!オレの中で……オレと共に生きろ……!」
デクスモンへと向かっていくアルファモン。
そんな彼を視界に収めたオメガモンは、順番に合図を出す。
一瞬もの間に、微妙なズレも許さず合図を出すという、繊細かつ精密さが求められる仕事。
それは、“オメガインフォース”の力で一瞬後のタイミングを先読みしていたからこそできたもので、この面々の中では彼しかできないことだった。
「今だっ!撃て!」
オメガモンからの合図がそれぞれ届いた瞬間に、それぞれがそれぞれの技を放つ。オメガモンの合図を信じて、技の着弾とその先の結果を信じて。
そして、そんな彼らの一方で、アルファモンが見る世界はその直後に停まった。
これが、今回の作戦の肝。倒せる“かもしれない”を、倒せるに変えるための一撃。
「未来を掴む!“究極戦刃――」
世界が停止する中を、アルファモンだけが動く。
これこそが、アルファモンの持つ能力。アルファインフォースと呼ばれる究極の力。戦いにおいて、過ぎ去った時間を瞬間的に取り戻す力。簡単に言えば、永劫にある一点に戻るため起こる擬似的な時間停止能力。
その能力を活かし、動かないように見えるデクスモンに向かって、アルファモンはその手の剣を振るう。
「――王竜剣”!」
“究極戦刃王竜剣”と名付けられたその剣は、オウリュウモンから託された剣。オウリュウモンの全能力が攻撃に集中しているその最強の剣を、アルファモンは休むことなく振り続ける。
幾重にも切り裂かれていくデクスモン。だが、これでもデクスモン消滅にはまだ届かない。
世界を切り裂かんばかりのその斬撃を、幾度振るっただろうか。その時には、アルファモンもわからなくなっていた。
「はぁっ……!はぁっ……!」
デクスモンを倒しきれるほど攻撃できてはいない。しかし、アルファインフォースの発動にかなりの集中と体力がいる以上、これ以上はもうアルファモンとしても厳しかった。
もし、これで戦っているのがアルファモン一人だったら、彼は無理してでもまだ動いただろう。
だが、そんなアルファモンは自分一人で戦っているわけではないことを知っている。すでに、勝利のための道筋が整っていることも。
だからこそ、最後のひと振りと共に、アルファモンはアルファインフォースを解除して――。
「“ペンドラゴンズグローリー”!」
「“シャイニングVフォース”!」
「“ガルルキャノン”!」
「“ビフロスト”!」
「“ファイナル・エリシオン”!」
――その瞬間に、アルファモンが攻撃を始める前に放たれていたそれぞれの必殺技が、アルファモンの最後のひと振りと共にデクスモンに着弾した。
“オメガインフォース”と“アルファインフォース”。これは、その二つの究極の力によって生まれた結果だった。それら二つの究極の力によって、いくつもの究極が結ばれたが故の。
もし、このどちらかしかなかったのならば、この結果にはならなかっただろう。その可能性を考えれば、この結果は奇跡に近いものと言えた。
轟音と閃光、衝撃。世界が今も形を残しているのが奇跡であるとすら思えるほどの、それら。それらが収まったその時には。
「終わった……のか?」
「ラララ~そのよう~ですね~!美しき結末です~ララ~!」
それは悪い夢だったと言わんばかりで、そして、まるで一夜の夢の如く。
デクスモンの姿は消えていたのだった。
というわけで、第三十五話と同時投稿でお送りした第三十六話。
決着回です。長かったですね。
何気に二番目に難産だった話でした。
が!……その割にちょっと結末が無理矢理だったかもしれません。ええ……。
さて、次回。エピローグ……ではありません!まだ続きます。もう少しだけ。
まあ、ラスボスばりの活躍をしたデクスモンでしたし、原作でもデクスモンがラスボスだったのですが……。
この物語のラスボスは彼ではありません!ええ、ラスボスは彼です。すべての黒幕さんです。
次回からはラスボス戦、始まります。
それでは次回もよろしくお願いします。