【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第三十七話~始まりと終わりの邂逅~

 デクスモンの消滅。それは、このベルサンディターミナルにいるデジモンたち全員が感じ取っていた。

 さらに、あれだけ執拗に現れていたイグドラシル側のロイヤルナイツたちも何故か現れない。現れた理由も、現れない理由も定かではないが、この状況の意味するところはつまり、この一連の戦いに一応の終わりが訪れたということを示していた。

 だからこそ――。

 

「やったぁああああ!」

「助かったんだー!」

「生きてる!生きてるぞー!ははは!」

「アウ!アウ!」

「やったぜー!ははは!」

 

 ――だからこそ、助かったことを実感したデジモンたちの喜びの声が、この世界のあちこちで上がっていた。歓喜に次ぐ歓喜の声。

 だが、そうやって喜んでいるのは、何も知らずに巻き込まれていたデジモンたちだけだった。そんな歓喜ムードに相応しくなく、ただ浮かない顔でいる者たちがいたのだ。

 

「終わったと思うか?」

「……いや。まだ終わってないさ」

「……だろうな」

 

 そう。それは、オメガモンやアルファモン、デュークモンたちと言った事態をそれなりに把握していた面々。彼らは、この状況の先を見ていたが故に、喜ぼうにも喜べなかったのである。

 

「本当の意味でこの戦いを終わらせるなら、まだ最後の仕事がある」

 

 そう言ったアルファモンは、ここではないどこか遠くを見据えていた。

 いや、アルファモンだけではない。その時、この場にいたオメガモンや元ロイヤルナイツの面々は、一連の元凶たるイグドラシルに思いを馳せていた。

 アルファモンの言う通り、本当の意味でこの戦いを終わらせるならば、元凶をどうにかしなければならないだろう。そして、元凶のことを考えた時、それは“元”であろうとロイヤルナイツの役目だ。

 

「行くか」

「そうだな」

「ああ」

「よし。行こう!」

「行くとしようか」

「ラララ~最後ですしね~」

「そうするべきだな」

 

 喜びが辺りを包む中で、アルファモンとデュークモンたちは、人知れずイグドラシルへと続くゲートを開く。それは、この喜びに包まれた世界を不安にさせないための配慮だった。

 そして、彼らはそのままそのゲートへと突入しようとして――。

 

「オレも行くぜ。ロイヤルナイツじゃないけど、こうなった以上、最後までやり通す」

「俺も行こう。最後くらいは自分のやるべきことをやる」

 

 ――その直後、ロイヤルナイツではないオメガモンや急ぎこの場へとやって来たガンクゥモンが、同行の名乗りを上げた。

 ガンクゥモンはともかくとして、オメガモンはロイヤルナイツに名を連ねている個体ではない。だからこそ、同行する理由もない。

 いいのか、と。目線で問うアルファモンたちだったが、オメガモンの意思は固いようだった。

 

「……ああ。さぁ、行こうか!すべてを終わらせに!」

 

 アルファモンのその言葉と共に、彼らは迷いもなくゲートに飛び込んでいく。

 喜び溢れるデジモンたちは、そんなアルファモンたちにの行動に気づかない。唯一、死地へと向かうアルファモンたちに気づいたのは、そんな彼らを探して草葉の陰から様子を伺っていたトコモンだけだった。

 光で出来たゲートを抜け、イグドラシルへとやって来たアルファモンたち。だが――。

 

「まさか、貴様が神話の中の騎士だったとはな……!」

「ドゥフトモンか。随分と手荒い歓迎だな。ここはイグドラシルがいる神聖な場所じゃなかったのか?」

「黙れ。始まりの騎士だからといって図に乗るな」

 

 ――だが、そんなアルファモンたちを迎えたのは、ドゥフトモンたちイグドラシル側のロイヤルナイツたちと何体ものデクスドルゴラモンたちだった。

 このデクスドルゴラモンたちは、おそらく先ほどの襲撃の時のデクスドルグレモンの何体かが進化したものだろう。本来ならば、万が一デクスモンが敗れた時の保険として用意されていた駒だったはずだ。

 だが、その万が一でデクスモンが敗れてしまった。その上、アルファモンたちが乗り込んできたために、急ぎ配備したのだろう。

 だが、ドゥフトモンたちは、それはそれは焦ったはずだ。高みの見物から、一転してしまったのだから。

 

「まさか、あのバケモノをどうにかできるとはな。しかも、オメガモンの進化する者まで現れる始末だ」

「マグナモンか。オレたちはイグドラシルに会いにいく。どいてくれないか?」

「アルファモン。どのみち、そのつもりだろうよ。であろう?」

「デュークモン?」

「……まったく。やはりお見通しか。イグドラシルから、空白の席の主だけは通せとの命を受けている」

 

 アルファモンだけは通せ、とマグナモンはそう言った。

 であるのならば、他の者たちはどうなるのか。そのことに思い至った瞬間、知らずアルファモンの脳内では警報が鳴り響いていた。

 

「それ以外の者は削除しても構わないとのことだ」

「……!ふざけるな!見捨てろと言うのか!?お前たちも。この後に及んでまだイグドラシルの言うことを聞くつもりか!?」

「選択もできないのか?空白の席の主と言われる者の言葉とは思えないな。それに、それが我らロイヤルナイツの役目だ」

 

 マグナモンの言葉を前にして、アルファモンは憤りを顕にする。アルファモンにとっては、デュークモンたちは仲間なのだ。見捨てて行くようなことをできるはずもない。

 だが、返ってきたのは、マグナモンの嘲笑。そんなマグナモンの様子が、アルファモンを余計にイラつかさせる。

 

「マグナモン……!」

 

 知らず、熱くなっていくアルファモン。

 だが、そんなアルファモンを宥めるように前に出たのは、意外なことに今まで黙っていたオメガモンだった。

 

「オメガモン……?」

「大丈夫だ。任せておけ。ロイヤルナイツには、散々苦しめられてきた借りがある。ここでその借りを返すのも悪くはないさ」

「がはは!それに、飛竜の小僧との決着もついていないからのう!」

 

 さらに、オメガモンに続くように、エグザモンも前に出る。いや、二人だけではないか。

 

「ラララ~!あのような醜いデジモンを~残しておくわけにも~行きませんしね~ララ~!」

「アルファモン!ボクたちなら大丈夫さ!」

「ま、イグドラシルのお前に対する執着から言って、こうなることは必然だったからな」

「行け。アルファモン!答えを探しに!」

「やれやれ。クソ師匠。右腕ないけど、大丈夫か?」

「ふっ……まだまだ若い者には負けんさ」

 

 気がつけば、アルファモン以外の全員が、この場で戦うつもりのようだった。

 しかも、雰囲気に当てられたのか、デクスドルゴラモンたちも殺る気を出し始めている。

 こうなってしまえば、アルファモン一人がどうこう言えるはずもない。本音を言えば、まだいろいろと言いたいことがあった。正直に言えば、共に戦いたかった。

 アルファモンはアルファモンであると同時に、数日前までドルモンだった者でもある。

 ドルモンだった時の記憶が叫ぶのだ。共に戦いたい、と。今まで背中を見ることも叶わなかった者たちに、そして助けてもらい続けた者たちに、ようやく追いついた。その事実が、アルファモンをここに留まらせる。

 それでも、ロイヤルナイツとしてのアルファモンは、何が最善かをわかっていて。

 

「……すまない!」

 

 ドルモンだった時の記憶と想いとロイヤルナイツとしての思い。その二つが天秤にかけられた末に、傾いたのはロイヤルナイツとしての方だった。

 彼らの覚悟を尊重し、そして信じて、アルファモンは駆け出す。この先にいるイグドラシルの下へと。背後から聞こえ始めた戦闘音を耳にして。

 目の前に開くゲート。それを通って、一瞬でアルファモンはイグドラシル本体がいる間にたどり着く。そこは、どこまでも白く、そして透き通った水晶で出来た空間だった。

 

「……イグドラシル!いるんだろう?オレの記憶を封印し、退化させ、あの世界に放った……貴方は一体、何を考えている……!」

「「貴様の存在が目障りだったからだ。始まりの聖騎士」」

「っ!?今の声は……!?」

 

 イグドラシルは姿を見せない。だが、それでも、どこからか声だけは聞こえてくる。それは、アルファモンも聞いたことのある声だった。が、かつてに聞いたイグドラシルの声ではなかった。

 それでも、その声はつい最近、それも記憶を取り戻す前に聞いた声だった。憎い敵として、自分の前に現れた者の声。

 

「「貴様はいつも私の予想と予定を超えてくる。貴様らの種族は例外なくデクスへとたどり着くはず。であるのに、かつての貴様はデクスにならず、その姿にたどり着いた」」

「デクスは元々、より良い世界を創ろうとした貴方の実験の産物。実験だけ不確定なものに、オレの未来は左右されない」

「「だったな。かつても貴様はそう言っていた」」

 

 昔を懐かしむかのような、そんなイグドラシルの声。だが、そんなイグドラシルの声は、次の瞬間には一転して苦々しい口調へと変わっていた。

 

「「だが、記憶を奪い、退化させ、この世界に放ってみれば……かつてにはなかった想像の化身となり、デクスへと至った」」

「……貴方が仕組んだことではないのか?」

「「デクスモンのことか。あれはXプログラムに変わるものとして、使えそうだからこそ利用しただけのこと。今思えば失敗だったがな。まさか、極限状態で封印が解け、その姿に戻るとは……!」」

「神たる貴方らしくもない言葉だな。今の状況くらいわかっていたのではないのか?」

「「いくら未来が見えようと、いくら未来を定めようと、未来を創るのはそこに生きる者だ。だからこそ、未来は変わる。呆気ないほど容易に。生きようとする意思によって!」」

 

 生きようとする意思。それは、X抗体というモノの本質であるし、X抗体というモノがなくとも、生物ならば誰でも持っているものだ。

 それこそが自分の望む未来を歪める原因である、と。イグドラシルはそう言っていた。

 

「「だからこそ、排除する。そのような不確定なモノに未来を任せる訳にはいかん」」

「イグドラシル。貴方はわかっているのか?それは侮辱だ。オレたちの始祖たる聖剣の聖騎士に対する。かの聖騎士はそんな世界の在り方を愛していた」

「「……だからなんだというのだ」」

「貴方もそんなかの聖騎士に感化されたからこそ、ロイヤルナイツを作り、世界を見守ろうとしたのではないのか?」

「「ああ、かつてはそうだった。だが、古いのだ。世界は複雑かつ煩雑になりすぎた。古の時代に通用していた理想は……今はもう通用しない」」

 

 そんなイグドラシルの言葉の最後の部分だけは、アルファモンにはどこか寂しそうな声色だったように聞こえた。が、それも一瞬のこと。すぐにイグドラシルの調子は元に戻ってしまった。

 

「「だからこそ、世界を無に帰す。そして、新たな世界を創造する。混乱を起こす生きる意思など必要ない、秩序ある世界を!」」

「……これ以上の問答は無駄か?イグドラシル。貴方も言っただろう。未来を創るのは、そこに生きる者たちだ。外側からどうこうするべきではない!」

 

 そう言ったアルファモンの脳裏には、ウォーグレイモンたちやトコモンやプロットモン、シスタモンたちにロイヤルナイツの面々など、記憶を失ってから出会った者たちの顔が思い浮かんでいた。

 彼らは、生きていた。どのような時代であるかなど関係なく、自分を貫いて。

 そんな彼らこそが未来を創るに相応しい、とアルファモンは思うのだ。そう思うからこそ、外からの干渉は余計なことでしかないとも思っていた。

 

「「ならば、やってみろ。空白の席の主。抑止の騎士。その名の通りに、私を止めてみせろ」」

 

 イグドラシルはアルファモンの前に一瞬で姿を現す。

 どこからともなく、現れたその姿は――オメガモンだった。ウォーグレイモンたちが進化した個体ではない。正真正銘、ロイヤルナイツに名を連ねていたオメガモンだ。

 「……やはりか」と。アルファモンは呟いた。この声が聞こえてきた段階から、アルファモンはこの事態を予測していた。

 

「どういうことだ?」

「「私はオメガモンであって、イグドラシルでもある。オメガモン()(イグドラシル)の意思を聞き、その理想に賛同した」」

「オメガモンが……」

「「私たちは一つとなった。私はオメガモンでイグドラシルだ」」

「なるほどな。その道を選ぶのか」

「「当然だ。生きようとする意思は不要。世界と秩序のため、現存するデジモンは全て排除する」」

「……ならば、オレのやることも決まった。抑止の騎士として、貴方のその思いを解き放つ」

 

 問答の時間は終わりを告げた。

 オメガモンとアルファモン。正真正銘の最後の戦いが始まったのだ。

 




というわけで、ラストバトル手前の第三十七話。
ネタバレ回とラストバトルに続く繋ぎ回。そして、ラスボスのお目見えでした!
ラスボスは、オメガモン+イグドラシル=チートさんです。
クロニクルを知っている方はラスボスがオメガモンというのは予想ついていたかもしれません。
ただオメガモンにするだけでは芸がないと、こうしたのですが……やりすぎた感が否めません。
ちょっと(かなり)強すぎでした。


あ、ちょっと忘れかけていたロイヤルナイツ紹介をします。
今回は最後の一人のアルファモンです。主人公だけあってちょっと多いです。
これまでメディアにはあまり出ていなかったのに、デコード、サイスル、デジアドトライと……最近急激にオファーが殺到している彼(彼女)。

オウリュウモンの力を借りることで王竜剣形態を持ち、さらにアルファインフォースを持つ彼は、設定上公式チートの一体ですね。

まあ、最近は王竜剣に必要なオウリュウモンさんが行方不明なのか、それとも忘れられているのか、王竜剣が素の装備になっていることも多いですが。
背中の黄金の羽共々忘れないであげてください公式さん。

この小説内では、某始祖聖剣の皇帝竜騎士死亡後に発足されたロイヤルナイツという組織、そこに一番初めに名を連ねたデジモンです。
ついでに言えば、一番初めにいなくなったのも彼だったり。
Xプログラムが発動し、イグドラシルにドルモンへと退化されるまで、ずっと田舎に隠れてのんびり農業でもしながら静かに暮らしてました。
まあ、農業云々はもちろん嘘ですが。田舎で抑止の騎士としてロイヤルナイツを見張ってました。

ちなみに、今作のドルモンがやたらと進化スピードが速かったのは、元々究極体だったから。
ドルゴラモンとか変な方向に行ったのは、イグドラシルの封印に抗って無理矢理進化したから。――という裏設定があります。


さて……なにはともあれ、次回は最終決戦とエピローグの二話同時投稿になります!
つまり……次回をもってこの物語は完結するというわけですね。

それでは、最後までよろしくお願いします!
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