【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第三十八話~歴史の結末~

 イグドラシルの間にて、巻き起こる戦い。

 片や神話の騎士アルファモン。片やイグドラシルと同一化したオメガモン。究極の両者は、世界の行く末を賭けて戦い続けていた。

 

「ぅぉおおおお!」

「「ふっ!」」

 

 オメガモンが、右腕のガルルキャノンと左腕のグレイソードを振るう。それに対して、アルファモンは魔法陣を展開して行われる攻撃と防御をもって戦っていた。

 魔法陣から展開されるアルファモンの攻撃は、傍目には手のひら大のエネルギー弾にしか見えない。が、その実、オメガモンのガルルキャノンに匹敵するほどの威力を秘めている。並の者では、受け止めることすらできずに消滅する一撃だ。

 

「はぁぁぁ!」

「「流石だな。だが、効かん。“ガルルキャノン”!」」

 

 だが、オメガモンとて負けてはいない。彼は“ガルルキャノン”の一撃にて、アルファモンのエネルギー弾を相殺する。いや、相殺しただけではないなかったか。その後にも、威力を抑え、連続で“ガルルキャノン”を放つことによって、アルファモンを追い詰めようとしている。

 そんな彼に対して、アルファモンは防御用の魔法陣を展開。展開された魔法陣は、威力の抑えられたオメガモンの攻撃など、無傷で防ぎきるだけの力を持っていた。

 

「「はぁっ!“グレイソード”!」」

「……!っち」

 

 オメガモンが左腕を振るったことで放たれた斬撃。オメガモンの必殺技である“グレイソード”の一撃。

 真っ直ぐに飛んでくる斬撃を、アルファモンは魔法陣でもって防ぐ。が、さすがにキツかったらしい。魔法陣に斬撃が当たった瞬間のことだ。アルファモンの耳には、バキバキと魔法陣が軋む音が聞こえていた。

 展開された魔法陣が一瞬で砕けなかったのは一応幸いと言えるだろうが、アルファモンは対応を間違えてしまったことに舌打ちしていた。

 

「ぐぅうううううう!」

「「どうした?そんなものか?」」

 

 そう。アルファモンは対応を間違えたのだ。

 斬撃は未だ止まっていない。アルファモンを切り裂かんと、魔法陣にぶつかり続けている。このままでは、魔法陣は砕け、アルファモンは一刀両断されてしまうだろう。だからといって、この状況で躱そうとすれば、斬撃の余波によるダメージが発生してしまう。

 つまり、アルファモンは斬撃を()()()()()()()が故に、動けなくなっていたのである。

 

「「“ガルル――」」

「っく……っ!?」

 

 斬撃を防ぐことに必死になりながら、次取るべき行動を模索するアルファモン。

 だが、そんなアルファモンは見た。オメガモンが、右腕の砲にエネルギーを貯めている光景を。

 

「「――キャノン”!」」

「危なっ……!」

 

 だからこそ、アルファモンは多少のダメージを覚悟で、動いた。

 その瞬間、アルファモンは右に跳ぶ。横目に見えた斬撃と青き閃光。次いでアルファモンを襲った鈍い痛み。

 自分が防いでいた斬撃の余波をアルファモンはくらってしまった。まあ、“ガルルキャノン”が直撃するよりかはずっといいか。

 その黒い鎧に傷をつけながらも、アルファモンは五体満足で危機を脱したのだ。

 

「……はっ……はっ……」

「「しばらくの間に弱くなったか?アルファモン」」

「まさか。オレは変わってないさ」

「「ほう。よく言う」」

 

 言いながら、オメガモンは左腕の剣でもってアルファモンに切りかかる。

 そのオメガモンの攻撃を、再び展開した防御用の魔法陣にて防ぎ、捌くアルファモン。だが、彼はこの戦い方に若干の限界を感じていた。

 今のままでは、戦い方が限定され過ぎる。別に今のままでも戦えない訳ではないが、限定される戦い方では不利となるのは明白。

 そう考えたがゆえに、アルファモンは目の前のオメガモンと渡り合える武器を欲した。

 

「……武器……王竜剣を出すか……?いや……」

「「どうした?これで終わりか?」」

「まさか!久しぶりに抜こうと思っただけだ!来い!“聖剣グレイダルファー”!」

 

 直後、展開された魔法陣に、凄まじい光が収束する。まるで一本の線を形創るかのようなその光。アルファモンは、それを手にとって引き抜いた。

 魔法陣から現れたのは、光の剣。ともすれば、その魔法陣はさしずめその剣の鞘というところだろう。そう。その剣こそ、アルファモンの主要武装である聖剣グレイダルファーだった。

 

「「抜いたか。聖騎士に相応しい見事な剣だ」」

「さすがに始祖たる聖騎士のものには敵わないけどな!」

 

 引き抜いた剣を構えたアルファモンが空間を駆ける。

 一瞬後、オメガモンのグレイソードとアルファモンのグレイダルファーが、凄まじい衝撃を撒き散らしながら打ち合った。

 一瞬の間に交わされる剣戟は、もはや十や二十では効かない。しかも、ただ打ち合うのではない、高度な技のぶつかり合いだ。

 武器を手にし、近接戦闘の対応も可能となっただけあるのか。先ほどまでとは打って変わってアルファモンが優勢になっていった。

 

「……?いいように動かされている……か?」

 

 だが、その戦況に、アルファモンは奇妙な思いを抱き始めていた。アルファモンには、今の優勢が仕組まれたものであるように感じていたのだ。

 そして――。

 

「「はぁっ!」」

「……!?っぐ……!」

 

 ――そして、そんなアルファモンの勘は正しかった。

 それまで優勢であったというのに。なぜかアルファモンが予期せぬ方向、タイミングで、いきなりオメガモンからの蹴りをくらった。

 オメガモンの蹴りは、明らかに狙ったものだった。あれだけ優勢劣勢がはっきりとしていた状況で、苦し紛れではない、決定的な蹴りが決まるというのは有り得ない。

 それこそ、アルファモンの行動を読んでいなければ不可能だ。

 

「……待てよ。先を、読む……?」

「「気づいたようだな」」

 

 その瞬間、アルファモンはハッとして、そのありえない仮定を導き出した。が、その仮定がありえないものだからこそ、アルファモンは解せなかった。

 先を読む。アルファモンの仲間のオメガモンは、確かにその能力を持っていた。だが、それはアルファモンの仲間のオメガモンが、デジモンの力を引き出すX抗体を持っていたがゆえである。

 だからこそ、X抗体を持っていない目の前にいるオメガモンは、その能力を持っているはずがない。

 

「「……愚かだな。私はオメガモンであり、イグドラシルであるのだぞ」」

「……なるほど、そういうことか」

 

 神であるイグドラシルと同一化。それは、オメガモンの基礎能力その他諸々をX抗体を得る以上に引き上げる結果になっていたのだ。

 おそらく総合的な能力では、アルファモンの仲間のオメガモンよりも上だろう。

 オメガモンの見た目が全く変わっていなかったが故に、アルファモンは今の今まで気づけなかったのである。

 

「……そうか」

 

 オメガモンの先読みの能力(オメガインフォース)を破ることは難しい。オメガモンの先読みを打ち破るには、速度、力、技術、運、そのすべてにおいてオメガモンが対応できないほどのものがいる。

 そこにオメガモンのスペックも相まれば、一対一でそれができるものなどデジタルワールドに何人もいない。いや、皆無かもしれない。デジモンかどうかも怪しいほどの力を持つ者たちでさえ、それらすべてでオメガモンを凌駕することなど、そう簡単なことではない。

 

「……なら、こっちも本気を出さないといけないな」

 

 オメガモンに先読みの能力がある以上、このままの正当な戦い方ではアルファモンは勝つことができない。

 だからこそ、アルファモンも本気を出すことにした。オメガモンの先読みの対になる自分の能力を発動させることにしたのだ。

 アルファインフォース。体力的厳しいものがあるが、それを持ってすれば、オメガモンがいかに強くなったとはいえ、打ち破れるだろう。

 

「行くぞ……!」

 

 アルファモンは、次の瞬間にアルファインフォースを発動する。その瞬間に、アルファモンの目の前の光景は止まる――はずだった。

 アルファモンは忘れていたのだ。目の前にいるのが、誰であるのかを。

 

「……なにっ!?」

 

 アルファインフォースが発動しない。

 その事実にアルファモンは思わずといった感じで声を上げて、その瞬間に彼は見た。自分の下へと向かってくるオメガモンの姿を。

 だからこそ、湧き上がる疑問を一旦押さえ込んで、アルファモンはやって来たオメガモンと鍔迫り合いをする。

 

「……っく」

「「どうした?自慢のアルファインフォースは使わないのか……?」」

「そうか。貴方の仕業か!」

 

 鍔迫り合いをしながら、アルファモンはハッとなって気づいた。目の前にいる相手は、オメガモンではあるが、同時にイグドラシルであることに。

 イグドラシルならば自分の能力を封じることくらいやってのけるだろう、と。今更ながらに、アルファモンはそのことに気づいたのだ。

 

「だけど……!力が使えないから勝てる気でいるとは思うな!」

「「思わぬ。貴様たち命ある者を侮ることなどできるはずもない」」

 

 能力を封じられていることに気づいたアルファモンは、そのことでも何でもないことのように言った。が、その内心ではかなり焦っている。

 アルファインフォースが使えなければ、今のイグドラシルと同一化したオメガモン相手にかなり()()となる、と。アルファモンはそう分析した。

 そう。あくまで“不利”である。客観的に見れば、アルファモンの勝率はゼロに近い。

 だが、その内心の中でさえも、負けるかもしれない可能性を思い浮かべることはアルファモンはしなかった。どのような状況だろうと、諦めるつもりなどアルファモンには毛頭なかったのだ。

 

「……仕方ない。オウリュウモン。もう一度、力を貸してくれ……!」

「「出すか。想像の産物を……!」」

「ぉおおおお!究極戦刃王竜剣!」

 

 だからこそ、アルファモンは自分の力ではない、託された力を使う。オウリュウモンから託された、その剣を。

 魔法陣から現れた柄を手にとって、王竜剣をアルファモンは引き抜く。

 王竜剣を引き抜いたアルファモンは、左手にグレイダルファーを持ち、右手に王竜剣を持って、オメガモンに向かい合う。

 一方のオメガモンはその光景を忌々しいような、眩しいようなものを見るような目で見ていた。

 

「……行くぞ!」

「「ならば、こちらも容赦はしない。“オールデリート”!」

「……やっぱりそれも使えるのか」

 

 アルファモンに対抗するように、オメガモンはその左腕のグレイソードを光らせる。

 それは、“オールデリート”が発動した証で。技の特性上、こうなってしまえばグレイソードに触れただけでアウトとなる。

 この状況、この技だけ見れば、アルファモンが一方的に不利のように見える。というか、実際に圧倒的不利である。とはいえ、実はオメガモンにも危険はあった。

 そう。それは、王竜剣の存在。イグドラシルと同一化したオメガモンですら危険と判断するほどの力を、王竜剣は持っていた。

 

「「……」」

「……」

 

 両者ともに、ここからは一回選択肢を間違うだけで、今まで以上に命に関わる。

 だからこそ、両者は動けなかった。いや、動けないのはアルファモンだけか。

 オメガモンには先読み能力がある。一撃必殺を持ち、能力で確実にカウンターを決められるオメガモンは、自分から動く必要がないのだ。

 

「……はは。やれやれ。能力に驕って油断してくれれば良かったのに」

「「貴様相手に油断などできるわけがないだろう」」

「……本当にやりにくいな」

 

 結局、オメガモンの能力への対処方法は、アルファモンには思いつかなかった。だが、だからといって、いつまでも止まっているわけにはいかない。

 覚悟は、決まった。いや、決めた。

 次の瞬間、アルファモンは動く。

 

「行くぞ……!“究極戦刃王竜剣”!」

 

 アルファモンが、その場で王竜剣を振るう。その瞬間、凄まじい斬撃と衝撃波が発生した。

 発生した斬撃と衝撃波は、寸分違わずオメガモンの下へと向かって行く。が、やはりオメガモンの左腕の一振りで消滅した。

 とはいえ、アルファモンにはそれも予想済み。

 今のオメガモンを前に、正攻法も真向勝負も奇襲も奇策も効果はない。先読みの能力を発動しているオメガモンを倒すほどの隔絶した実力を、アルファモンは持っているわけではない。

 だからこそ、アルファモンにできることは一つだった。

 

「はぁぁぁっ!」

「「血迷ったか」」

 

 連続で斬撃と衝撃波を放ちながら、アルファモンは少しずつオメガモンとの距離を詰めていく。

 “オールデリート”発動中に接近戦を挑むのは愚行でしかない。だからこそ、そんなアルファモンの姿を、オメガモンは怪訝な表情で見ていた。

 そう。オメガモンはアルファモンの狙いがわからなかったのだ。いかに先読みの能力があれど、それで見えるのは、次の一瞬だけ。オメガモンが持っている能力は、先読みであって、未来予知ではない。

 

「「何を企んで……っ!?正気か!?」」

「さすがに気付かれたか!……でも!」

 

 だが、イグドラシルと同化しているオメガモンは、そのイグドラシルの持つ演算能力と自身の経験から、アルファモンのしようとしていることに気づいた。

 だからこそ、彼はアルファモンに問いかけたのだ。正気か、と。その狙いが、限りなく成功率の低い、己の身を犠牲にした一世一代の大博打だったがために。

 

「貴方は言った!未来を創るのは、その世界に生きる者たちだと!」

「「……」」

「オレは見た!この世界に生きていた者たちは、かつての時代に生きていた者たちと変わっていなかった!」

 

 近づきながらも、アルファモンはまるで言い聞かせるようにただ言い続ける。

 イグドラシルに、オメガモンに、そして自分に。

 

「世界がどんなに変わろうと、時代がどんなに移り変わろうと、変わらないものはある!オレはそれを信じている!」

「「だから見守れと!?言っただろう!その考え方は古いのだ!その考え方の先にあるのは、不確かなモノが作る不完全な秩序でしかない!」」

 

 ついに、オメガモンもアルファモンめがけて駆け出した。

 あと数瞬の後には、両者は激突するだろう。

 このタイミングで、アルファモンは王竜剣とグレイダルファーを明後日の方向へと投擲。無手となった状態で、両手から魔法陣を展開した。

 とはいえ、それが攻撃用のものであろうと、防御用のものであろうと、オメガモンの“オールデリート”の前には意味がない。そんなことはアルファモンにもわかっている。正直に言えば、気休め用である。

 

「「……!やはりそう来るか!」」

 

 そして、接触まであと一瞬というところ。そこで、オメガモンは自分の能力でアルファモンのしようとしていることすべてを感知した。感知したアルファモンの次の行動は、やはりオメガモンの予想していたことに近かった。

 こうなってしまえば、策が策でなくなったアルファモンなど、オメガモンはどうだってできる。

 

「秩序が不完全だろうと、混沌とした世界だろうと――」

「「……!」」

 

 そのことはアルファモンもわかっているはずだ。勝ち目がないことも。

 だからこそ、オメガモンには解せなかった。勝ち目がないことなどわかっているだろうに、それでもなお諦めないことを選択できるその意思が。

 それでも、オメガモンも、イグドラシルも、そんなアルファモンの姿に、その眼に宿る意思の力に感じるところはあった。

 いや、この場にいる彼ら全員は知っているのだ。それが、大切なものであることを。それが、奇跡を呼ぶものであることを。

 

「――それでもオレたちは生きる!」

「「……」」

 

 一瞬後の接触。

 アルファモンの出した魔法陣など意味はない。“オールデリート”の発動していたオメガモンのグレイソードは、アルファモンの腹に突き刺さっていた。

 

「「……終わりだな」」

「ああ。終わりだ」

 

 “オールデリート”の効果からは、アルファモンも逃れられない。

 アルファモンの身体は、剣の突き刺さった腹から徐々に消え始めていた。が、未だ消えていないその右手はオメガモンを捕えて離さなかった。

 

「……貴方は」

「「結局はいつもこうなる。どれほどの困難があろうと、命は自身の意思で前へと進む。どのような世界でも、どのような時代でも、命は生き、そして満ちる……やはりいつも変わらない。生きる者の本質は」」

 

 まるで悔いるような言葉を吐くオメガモン。

 このような行動しかとれない自分を悔いているのか、自分の今までの行動を悔いているのか、それとも別の何かを悔いているのか、そのすべてを悔いているのか。

 一体何を悔いているのか。アルファモンにはわからないことであったが――。

 

「「誰もが()()()()()()()にする。約束は遠いな。我が唯一の盟友。始祖たる聖騎士よ……」」

 

 ――その直後のことだった。先ほど投擲された王竜剣とグレイダルファーが、ブーメランのように回転して上空から戻って来た。

 グレイダルファーがオメガモンの左腕に突き刺さる。まっすぐに地面に突き刺さったその剣は、オメガモンの左腕を地面に縫い付けていて。

 

「「これが結末だ。今回のクロニクル(歴史)の、な」」

 

 そして、それに次いでやって来る王竜剣。その剣が、オメガモンとアルファモンの二人を一度に切り裂いたのだった。

 

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