【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第三話~聖騎士と幻想の戦士~

 多くのデジモンたちの命が散っていく。それも、たった一体のデジモンによって、散らされていっている。

 いくらこの世界が弱肉強食の世界として変貌していたとは言え、()()にこれだけの数のデジモンたちが死んでいくのは、異常と言うしかなかった。

 

「X抗体デジモンよ!その意思!その力を示せ!さもなくば……排除する!」

 

 この事態をたった一体のデジモンが引き起こしているというのは理解不能でしかないが――だが、このデジモンを見れば、誰もが納得するだろう。

 なにせこの事態を引き起こしているのは、この世界の最高位のうちの一体で、そしてかのロイヤルナイツに名を連ねるデジモンの一体。デュークモンその人だったのだから。

 

「うおぉおおおおお!」

「甘いっ!」

「がはっ」

 

 一体、また一体とデュークモンの持つ聖槍に貫かれて死んでいく。

 十分もすると、この場で生きているのはデュークモンだけとなっていた。

 

「……」

 

 そんな現状の中で、デュークモンは複雑な表情をしていた。

 ロイヤルナイツに新たに下されたイグドラシルの命。それを受け、今まで以上に釈然としない面持ちとなったデュークモンは、この過去世界(ウルドターミナル)へとやってきた。

 表向きは、イグドラシルの命の実行。だが、その裏で――デュークモンはX抗体を得たデジモンたちを試していたのだ。

 数時間前。イグドラシルは、X抗体を持つデジモンを異分子と決定し、さらにはX抗体を獲得する可能性のあるデジモン――つまり、全デジモンの抹殺をロイヤルナイツたちに命じた。

 その時、ロイヤルナイツ内でもさまざまな反応があったのだが、それはともかくとして。

 デュークモンは、その決定と命令に納得できなかった。だが、デュークモン一人が抗ったところで、結果は目に見えている。

 だから、デュークモンはこの凶行ともとれる試練をX抗体デジモンたちに課すことにしたのだ。

 自分を乗り越え、そして未来を掴んだのなら、あるいはイグドラシルさえも越えて未来を掴むことができるかもしれない、と。

 

「……これが結果か?地獄を生き残ったお前たちの力は……この程度なのか?」

 

 誰も彼も、デュークモンを満足させる結果には至らない。

 所詮、デジモンはここで終わる定めなのか。一度は死す定めを進化することによって乗り越えたというのに、何もできずにもう終わるのか。

 そんな、殺される側から見れば至極理不尽とも言えるようなことを考えながら、デュークモンは次の相手を探していた。

 もしかしたら、デュークモンの求める相手は、現代世界(ベルサンディターミナル)未来世界(スクルドターミナル)にはいるのかもしれない。

 だが、表向きはイグドラシルの命令で来ている以上、デュークモンは担当であるこの過去世界(ウルドターミナル)から出る訳にはいかなかった。

 

「こうなるとこの新世界の構造は面倒だな」

 

 今のデュークモンは、この新世界の構造にどうにもならないという理不尽な感情を覚えていた。

 この新世界NEWデジタルワールドは、かつてのデジタルワールドとは決定的にその在り方が異なる。

 かつてのデジタルワールドは、一個の世界だった。一個の星だった。

 だが、このNEWデジタルワールドは、一個の世界ながら、三つの世界で構成されているのだ。過去の世界ウルドターミナル。未来の世界スクルドターミナル。そして、現在の世界ベルサンディターミナル。それぞれ世界は独立しているが、行き来が可能だ。

 まあ、それぞれの環境が違いすぎるために、移動する者はあまりいないのだが。

 それぞれの世界の特徴を簡単に言えば、過去世界は過酷で現在世界は穏やか、そして未来世界は異常なまでに人工的。そんなところだ。

 だが、独立しているが故に面倒なのだ。デュークモンにとっては。なにせ移動すると他のロイヤルナイツの面々にバレる。

 今のデュークモンの目的は、イグドラシルの命令とは関係のないところにある。他のロイヤルナイツに知られたら、どうなるかわかったものではない。ゆえに、今の段階で感づかれることは、デュークモンは極力避けたかった。

 とはいえ。最初の殲滅戦から、かれこれ数時間も立っているのに、デジモンの一体も見つけられていない今の現状を考えれば、デュークモンの目的が果たせるわけもないのだが。

 

「ふむ。見事にいない。逃げたのか、隠れたのか。はたまた……」

 

 かれこれ数時間もデュークモンは移動しながらデジモンを探している。それなのに、ここまでデジモンが見つからないというのも、奇妙なものであった。

 だが、この後。デュークモンは知ることになる。何故、こうもデジモンが見当たらないのか。その理由を。

 

「……む?……これはっ!?」

 

 その時、デュークモンが見たのはありえない数のデジモンたちの死体。まるで何か鋭いもので無理矢理に切られたような、そんな傷跡の目立つ死体だった。さらにデジモンたちの傷跡からして、おそらく一方的にやられたのだろう。

 そう。デジモンたちは、逃げたのでも、隠れたのでもなかった。何者かに、一方的に殺されたのだ。

 こんな傷跡を付けるデジモンは、ロイヤルナイツ内にはいない。デュークモンはそれを知っている。

 だからこそ、解せなかったし、多少の動揺もした。デジモン抹殺の命を受けた自分たち以外に、デジモンたちを一方的に惨殺できるような者がいるという事実が。

 もちろん、そのような者など早々いるわけがない。

 それこそ、かの七大魔王くらいだろう。彼らが住むダークエリアは、NEWデジタルワールドとは管轄が違う。そのためにXプログラムの影響がない。七大魔王たちは無傷で存在している。

 だが、それだけで彼らが現れたと考えるのは早計だ。

 そもそも、彼らの出現は察知できるようになっている。いかに七大魔王とはいえ、イグドラシル製のその網をすり抜けてこの世界にやってこれるはずもない。

 

「……いったい誰が……?」

 

 であれば、七大魔王でもない、ロイヤルナイツでもない、されどそれに匹敵する力を持つだろう未知の誰かがここにいる。

 デュークモンは、無意識のうちに緊張していた。今こうしている瞬間でさえ、自分と同等クラスの未知のデジモンに襲われるのかもしれないのだから、当然とも言える。

 そして、デュークモンが緊張し始めたその時だった。

 ガシャン、と。まるで鎧が擦りあったような、そんな金属音が聞こえてきたのは。

 音が鳴ったのは、自分の背後。即座にデュークモンは振り返った。

 そこにいたのは――。

 

「……なっ!お前は……!」

 

 ――そこにいたのは、騎士だった。まるで中世の騎士のような、煌びやかな装飾を施した甲冑に、紋章を付した荘厳な姿。赤いマントに、斧のような黄金の槍。

 デュークモンはどこか自分に通ずるような、それこそ自分と似たものをこの騎士に感じていた。

 だが、知らない。

 目の前のデジモンは、間違いなく自分に匹敵する存在で、その姿かたちもあまりに似過ぎている。目の前にいる騎士は、そんな存在だというのに、デュークモンはその騎士のことを知らなかった。

 

「何者だ……!」

「その槍は飾りか?知りたいことがあるのなら槍で語れ。ロイヤルナイツ。この時代に名を馳せる者よ」

「……よかろう!」

 

 あからさまな挑発。だが、その挑発にデュークモンは敢えて乗った。

 歴戦の強者である自分の勘が、彼と戦えと言っている。その勘に、デュークモンは従うことにしたのだ。まあ、この自分に似た騎士と、槍を交えてみたくなったという部分もないわけではないのだが。

 

「行くぞ」

「来るがいい」

 

 直後、凄まじい衝撃が辺りを吹き飛ばす。

 一回。ただ一回だけ槍と槍を交わらせただけだというのに、辺りに生えていた木々も、デジモンたちの死体も、すべて吹き飛んでいた。

 だが、それだけでは終わらない。何十、何百と両者の間で槍は交わされる。

 

「っく!」

「これだけか?」

 

 実力は、互角。

 だが、デュークモンよりもこの騎士の方が、どこか余裕そうだった。別に、この騎士が実力を隠しているとか、そういうわけではない。この騎士もデュークモンも、掛け値なしの全力だった。

 だが、この騎士はずっと余裕そうに戦っている。

 

「これほどの力……お前は一体……!?」

「……こんなものか」

「何……!?」

 

 だからこそ、解せない。

 この騎士も全力だ。余力などあろうはずもない。デュークモンにはそれがわかっている。だというのに、この騎士の余裕は、一体何なのか。

 デュークモンとしても気になるが、少しの隙も見せればやられる以上、あまり関係のない思考に気を飛ばしていることなどできなかった。

 だが――。

 

「……こんなものか。貴様の実力は。世界の守護者ロイヤルナイツ。どうやら、買いかぶりすぎだったようだ」

 

 ――だが、突如として騎士は槍を収めてしまった。まるで、失望したとばかりに。

 そして、呆然とするデュークモンに背を向けて、その騎士はさっさとこの場を去ろうとしている。

 

「な……待てっ!」

「待たぬ。名を馳せ、地位に付いたせいか……その誇りすら汚してしまった貴様などに用はない」

「……なんだと?」

「それに自分で気づけない辺り、言い訳不可能だと思うが?」

 

 待たぬ、などと言った割にその騎士は振り返ってデュークモンと会話する。その辺にデュークモンは違和感を覚えたが――それよりも、会話の内容の方が重要だった。

 自分が薄汚れている。まあ、言わんとしていることはわかる。世界の守護者たるロイヤルナイツが、デジモンの抹殺などというイグドラシルの命令に加担しているようでは、確かにそう取られても仕方ないだろう。

 だが。その言葉には、それ以外の意味もあるように思えて。デュークモンは、その騎士の真意を探ろうとする。

 

「……どういう意味だ?」

「さてな。それくらい自分で考えよ」

 

 流石に、そこまで答えるつもりはないのだろう。もう騎士は答えない。

 そして、次の瞬間に、まるで初めからいなかったかのように、その騎士の姿は消えてしまった。

 結局、終始あの騎士が何者だったのかはデュークモンにはわからなかったが――その時、デュークモンにはある伝承の一文を思い出していた。

 

――時空さえ超越し存在する、幻想の戦士。それは、別次元のデジタルワールドの伝説の英雄――

 

 本当のところはわからない。だが、先ほどの違和感も合わせれば、あの騎士はデュークモンに何かを伝えようとしていたようにも思える。

 結局、しばらくその場であの騎士のことを考えていたデュークモンだった。

 

 




というわけで、主人公をさしおいて、二人目のロイヤルナイツのお話。
ああ、最後まで騎士と言われていた彼は、今回だけの特別出演です。直接的には。

ついでに、デュークモン。彼はこの小説内のロイヤルナイツの中では中堅でバランスタイプです。
突出した物がないんですね。よく言えば、万能型。悪く言えんば器用貧乏みたいな。
とはいえ、某グラニであったり、某クリムゾンであったり、とオプションがあれば、凄いことになる方です。

という訳で、次回の第四話。
次は原作シーンですが、その関係上……主人公の出番はまだありません。

GW中にもう一回くらい上げたいですね。では、次回もよろしくお願いします。
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