【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第四話~会合に待ち受ける罠~

 荒野の崖下。陽を遮るそんな場所で、とある二つの陣営が邂逅していた。だが、仲が良いから集まった、などという訳でもないらしい。それは、両陣営の間に漂う、この緊迫した雰囲気が証明している。

 片方の陣営は、ロボット型のデジモンであるアンドロモンと黄色い猿人のようなデジモンであるハヌモン、あと触手の生えた美しい花のようなデジモンであるブロッサモン。そして、この場にそぐわないほどの無邪気さを放つトコモント呼ばれるデジモンの、計四人。

 もう片方の陣営は、コンセントのような昆虫デジモンであるコクワモンと地球で言うインディアンのような格好をした鳥人デジモンであるガルダモンの二人。

 

「みんな、集まってくれてありがとう。実は……」

 

 これらの面々は、両陣営の中心に立つ竜戦士デジモンであるウォーグレイモンによってこの場に集められた。

 ちなみに言うと、ガルダモンとコクワモン、そしてウォーグレイモンはX抗体デジモンである。

 その他のメンバーは通常デジモンだ。つまり、これはX抗体デジモンと通常デジモンの会合というわけである。

 

「ふん。白々しい。こちらは端から貴様たちのことなど信用していない」

「……!頼む、聞いてくれ。もう争っている場合じゃないんだ。このままではオレ達デジモンは全滅してしまう」

「今更勝手なこと言わないでよ!この危機を招いたのは貴方たちじゃないの!」

 

 今回、ウォーグレイモンは自分たちデジモンの危機を知り、その対策をデジモンたち全員で講じるために、この場に集まるように動いていた。

 ウォーグレイモンのは、この危機を前にして、デジモンたち全員でことに当たらなければならないと思っていた。それこそ、X抗体デジモンも通常デジモンも関係なく。

 だが、X抗体デジモンと通常デジモンの溝は深い。必死に話を続けようとするウォーグレイモンだが、アンドロモンとブロッサモンの声によってその言葉は中断されることとなった。

 まあ、彼ら通常デジモンにしてみれば、何を今更都合のいいことを、という感じなのだ。

 

「ソレチガウ!Xプログラム二感染シタ多クノ仲間タチ死ンダ!全デジモンノ九十八パーセント死ンダ!オレタチ……生キルタメニ、コノ新世界二逃ゲテクルシカナカッタ!」

「そしてこの世界も汚染してくれたわけだ」

 

 ブロッサモンの辛辣な言葉を前にして耐え切れなくなったガルダモンXが必死に弁明する。

 だが、そんなガルダモンの“生きたかった”という返答を前にしても、アンドロモンは心動かされることなく、「お前たちさえ来なければ」と言う。

 そんなアンドロモンの冷たい態度に、それまで黙っていたコクワモンは思わず声を上げた。

 

「自分達さえ良ければそれでいいって言うのかい?他のデジモンは……どうなろうが知ったことじゃないって?」

「じゃあ貴方たちはどうなのよ!貴方たちがここに来たせいで……この子だって危険に晒されているのよ?」

「ソレハ……」

 

 ブロッサモンが指摘した純然たる事実にガルダモンXは言う言葉を失った。

 確かに、X抗体デジモンがこの世界に来なければ、この世界は死の危険もない平和な世界のままだっただろう。それこそ、この場の雰囲気などお構いなしに無邪気にはしゃぐトコモンのような幼いデジモンが、死に怯えることもなかったはずだ。

 それは、X抗体デジモンたちにとって言い返すことなどできようはずもない事実だった。

 

「何とか言ってみなさ――」

「……ふっ!」

「――い……えっ!?」

 

 そんな時だった。ウォーグレイモンがその手を地面に叩きつけたのは。

 その彼の凄まじい力によって、両陣営を区切るように地面が裂けてしまう。

 ウォーグレイモンとて、実力に訴えることなどしたくはなかった。だが、このままでは話が進まないと思ったからこそ、その力に訴えたのだ。

 事実、自分たちの力以上の強さを一瞬で見せつけられた全員は、さまざまな思いを飲み込んで言葉を無くすしかなかった。

 

「すまない。本当に争っている場合じゃないんだ。君たちだってそれが分かっているからここに来てくれたんじゃないのか?」

 

 そして、全員が静かになったのを見計らってウォーグレイモンXは話を続ける。今日、この集まりの本来の目的を果たすために。

 

「事の始まりはイグドラシルがXプログラムを発動したことにある。ついでに言えばこの世界が汚染されたのも、イグドラシルがX抗体を持つデジモンを狩り始めたからだ」

「嘘だ!」

 

 それまで黙っていたハヌモンが、この世界の神がそんなことをしていると言われて堪らず声を上げた。ハヌモンにとって、それは信じがたい事実だったのだ。

 とはいえ、いちいち構っていたら先に進まない。ハヌモンのその抗議の声も黙殺して、ウォーグレイモンXは話を続けたのだった。

 

「連中はX抗体デジモンを駆逐する際、その内部にあったXプログラムをこの世界に解き放ってしまった。そして、この世界は汚染された。……であれば。イグドラシルこそが我々の共通の敵ということじゃないのか?」

「ふっハッハッハ!」

 

 そんな時。ウォーグレイモンの言葉を聞いていたアンドロモンが、突如として笑い出す。まるで、可笑しいことがあったかのように。

 そんなアンドロモンを前にして、ウォーグレイモンを含めたX抗体デジモンたちは理解できず、首を傾げるしかなかったのだが――アンドロモンのその笑い声の後に続いた言葉によって、彼らは凍りつくことになる。

 

「面白い話だがこれまでだな。私がここに来る前にイグドラシルに通報しておいた。お前たちは……ここで終わりだ」

 

 イグドラシルに通報された。それはつまり、X抗体デジモンを殲滅する者、すなわちあのロイヤルナイツが来るということで。その事実を理解したX抗体デジモンたちは愕然とした。

 

「なんてことを……集まりは解散だ!皆すぐにここを離れろ!」

「……っは!」

 

 このままでは、全滅もありうる。焦ったウォーグレイモンは急ぎ解散の指示を飛ばすが、すべては遅かった。

 その時、その場にいた全員が何者かの気配を感じたのだ。全員がその気配の先、頭上を見上げて――そこにいたのは白銀の騎士。ロイヤルナイツのオメガモンだった。

 全員から見つめられているオメガモン。だが、その目には機械的なまでの冷たさしか宿っていなかった。次いで、彼らの目に入るのは緩やかに右手を持ち上げられた彼の右手。

 その光景を見た時、ウォーグレイモンは叫ぶ。

 

「逃げろ!」

 

 そのウォーグレイモンの叫びを聞いて、一目散にガルダモンとコクワモンは空を飛んで逃げ出した。が、遅い。こんな速度程度では、オメガモンから逃げ切ることなどできない。

 オメガモンの右手から、砲身が飛び出す。それは、“ガルルキャノン”と呼ばれる砲で――この一瞬後、その砲と同じ名を冠するオメガモンの必殺技が、放たれた。

 それは、水色の閃光。一瞬にして世界を駆け抜ける、破壊の光。

 その閃光は、オメガモンの相手をしようと突撃していたウォーグレイモンを吹き飛ばし、逃げていたコクワモンとガルダモンを消滅させ――。

 

「馬鹿め!この場にさえ来なければ死なずに済んだものを!」

 

 ――X抗体デジモンたちは、文字通り一瞬で蹴散らされた。

 その呆気ない死に際にブロッサモンは嘲笑する。いや、ブロッサモンだけではない。言葉を出さずとも、トコモン以外の通常デジモンたちは皆同じ思いだった。

 だが、そんな彼らは知らない。この後、自分たちにも同じことが起きるということを。

 

「まさか……我々まで……?」

「ひぃ!?」

 

 そのことに気づいたのは、この場に残ったデジモンたちの前にオメガモンが降り立った時だ。

 ムシケラを見るような目でゆっくりと近づいてくるオメガモンを前に、ブロッサモンたちは死を垣間見た。

 オメガモンに命を狙われているなど、信じたくない。だが、現実として、オメガモンは迫ってきている。その左手に“グレイソード”と呼ばれる剣を構えて。

 ゆっくりと振り上げる剣。もはや、疑うまでもない。この先に彼らにあるのは、死だけだ。

 死にたくない。それだけの思いを胸に、通常デジモンたちは我先にと逃げ出す。

 それには、先ほど事情もわかっていなかったようなトコモンも含まれている。流石のトコモンも、自分の命の危機くらいは察知できるようだ。とはいえ、幼く小さいトコモンの足では、ろくな距離を進めない。チョコチョコと一生懸命に走るその姿はこの場にそぐわないほど可愛らしくはあるが――それでも、一人だけ大幅に遅れている。

 

「あぁあ……」

「っひ!に、逃げろ!」

「はっはっはッアゥ!」

 

 まあ、遅れていようといまいと、意味はないのだが。そう。彼ら程度の実力では、オメガモンから逃げることなどできようはずもないからだ。

 一瞬後、横一閃に振り抜かれんとするオメガモンの剣。

 その直前、剣と通常デジモンたちの間に、割り込む影。それは、先ほど吹き飛ばされたウォーグレイモンだった。何とか威力を逸らしたのか、あまりダメージを受けてはいないようだ。

 そんなウォーグレイモンが彼らの下に辿り着き、トコモンを抱え、ブロッサモンとハヌモンを地面に伏せさせ、アンドロモンを蹴り飛ばすのと、オメガモンが剣を横薙ぎに一閃するのはほぼ同時だった。

 

「うわぁ!」

「はぁあ!」

 

 あまり威力は無かったのか。

 ウォーグレイモンも彼自身が庇ったトコモンも命だけは助かった。だが、助けようとしたウォーグレイモンの奮闘も虚しく、それ以外のデジモンは全滅だ。

 唯一、アンドロモンだけはほかのデジモンと違って、一瞬で消滅せずにしばらく生きていたのだが――それは幸だったのか、不幸だったのか。

 やがて、アンドロモンは自分が愚かだったことを悟ったような、そんな自嘲気味な笑みを浮かべて消滅したのだった。

 

「……!」

 

 そして、そんな中で。先ほどの一撃になんとか耐えたウォーグレイモンが見たものは、ガルルキャノンでこちらを撃とうとしているオメガモンの姿だった。

 再びの閃光。再び放たれたその閃光は、ウォーグレイモンたちを崖ごと貫いて遥か先の地まで駆けていった――。

 




というわけで、依然として主人公が登場しない第四話です。
まあ、ちょっと盛りましたが、この部分はほとんど原作通りですね。

今回の話は、三人目のロイヤルナイツであるオメガモン無双回でもありました。
はい、この小説でオメガモンが唯一無双できる回ですね。
オメガモンはこの小説内では、ロイヤルナイツ随一の知名度を誇り、単純な戦闘能力もロイヤルナイツ内トップクラスです。
そのスペックも、バランスタイプの万能型。同じタイプの(通常の)デュークモンと比べても、優っている部分が多いです。とはいえ、あくまでスペック上の話ですが。
そして、ある意味、この小説の裏の主人公――になるかもしれないデジモンですね。

さて、次回。ようやく主人公の出番が(ちょこっと)きます。

それでは次回もよろしくお願いします。

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