【完結】デジタルモンスターゼヴォリューション~Another story~   作:行方不明

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第五話~乱入してきたのは~

 時は少し遡って。

 

「てめぇがおれの弟分を殺ったのは分かってんだ!仇として……てめぇのX抗体をよこせ!」

「……!っく、またか!」

 

 エグザモンとの邂逅から数日経っていたが、依然ドルグレモンの行く末は彼自身もわかってはいなかった。だからこそ、彼はとりあえず生きてみることにしたのだが――現在、ドルグレモンは灰色のクワガーモンに襲われていた。

 灰色のクワガーモン。たかが色違いと侮るなかれ。そのクワガーモンは、オオクワモンと呼ばれる完全体デジモンだ。成長段階はクワガーモンとひとつ違う。

 とはいえ、格下だろうと格上だろうと気を抜くことなどありえない。ドルグレモンは油断なくオオクワモンと向かい合っていた。

 

「なんでオレを襲うんだ!お前はもう十分なX抗体を持ってるじゃないのか!」

「……うるせぇ!てめぇを殺して、X抗体を奪い!それを弟分の手向けにするんだよ!」

「……はぁ!?」

 

 ドルグレモンは、オオクワモンの言っていることの意味がわからなかった。弟分というのは、先日のクワガーモンのことだろう。そこはまだいい。

 だが――自分を殺して奪ったX抗体をもうこの世に存在しない者に対する手向けとする。

 弟分とはいえ、他人。どうして他人にそこまでするのか、と。その部分だけが、ドルグレモンには理解できなかった。

 

「そんなの……!襲われたのはオレの方だったんだぞ!」

「だから、なんだぁ!」

 

 言葉が通じない。ドルグレモンは、単純にそう思った。

 きっと、オオクワモンには今の自分では持っていないものを持っていて、そして、今の自分ではわからないことをわかっているのだ、と。だからこそ、今の自分では彼の言葉を理解することができないのだ、と。

 そのことを、ドルグレモンは悟った。だったら、この生死がかかっている場でわかりようもないことを考えるだけ無駄なこと。ドルグレモンは、この場で考えるのを諦め、ただ目の前にいる壁を乗り越えんとするのだった。

 だが――。

 

「てめぇが……――っ!」

「なんだ!?」

 

 ――だが、この戦闘は突如として終わりを告げることとなった。

 突如、地平線の彼方から猛スピードで吹っ飛んできた何かが、オオクワモンに激突したのだ。

 その何かは、新手の攻撃かと考えてしまうほどかなりの威力を誇っていた。それこそ、激突したオオクワモンを吹き飛ばし、気絶させてしまったくらいに。

 突然の事態に、目を白黒させて驚くドルグレモン。事態の把握をしようとする彼は、とりあえず先ほど飛んできた何かを見る。そこにあった――いや、いたのは、先ほどオメガモンのよって吹き飛ばされたウォーグレイモンとトコモンだった。

 トコモンはともかく、明らかに傷だらけのウォーグレイモンを見たドルグレモンは、襲われるかもしれない可能性を失念して彼のもとへと向かっていく。

 

「……あ、大丈夫か!?」

「う……ああ、大丈夫だ」

「やっぱり、X抗体絡みなのか……?」

「……そうか。君もX抗体を……ここじゃ辛かっただろう」

「……それは」

 

 ウォーグレイモンの言葉。どこか同情を含んだその言葉を、ドルグレモンは否定しなかった。

 ドルグレモンも、ウォーグレイモンも、X抗体を持つが故の辛さを身をもって知っているから。

 

「……あまり時間がなさそうだな」

「……え?」

「君を仲間だと思って頼みがある」

 

 ウォーグレイモンの言葉は、随分と唐突だ。それだけ、彼の焦りが伝わってくる。

 仲間。ウォーグレイモンの言ったその言葉の意味をドルグレモンは測りかねていた。別に、仲間という概念を知らなかった訳ではない。だが、生まれてずっと一人で生きてきたドルグレモンには、その“仲間”というものに馴染みがなかった。

 だからこそ、ドルグレモンには、ウォーグレイモンの言っている意味がわからなかったのだ。

 だが、自分の言葉に固まるドルグレモンを無視してでも、急ぐウォーグレイモンは話を先に進めていく。

 

「……俺は絶対に戻る。だから、その時まで……この子を預かっていて欲しい」

「アゥ!アゥウ!」

 

 そうして、固まるドルグレモンの前に出てきたのは、トコモンだった。

 まるで遊ぶように、ドルグレモンに噛み付いたトコモン。だが、幼年期であるトコモンの噛み付きなど、完全体のドルグレモンには痛いとも感じない。

 そんな、この世界の辛い現実も知らず、まるで子供のようにはしゃぐトコモンのその姿に、ドルグレモンも自然と頬が緩んでいた。

 

「大丈夫。……っ!」

「……どうしたんだ?」

「もう来たのか!悪い、頼む!」

 

 何かを察知したウォーグレイモンは、ドルグレモンが頼みごとに対しての返事をまだしていないというのに、空へと飛び上がって翔けていった。

 一瞬のことに呆然とするドルグレモンだったが、その直後に気づく。ウォーグレイモンを追うように飛ぶ、一体のデジモンを。

 それは、あの――。

 

 

 

 

 

 そして、ドルグレモンと別れたウォーグレイモンは、後ろを追いかけてくるデジモンを撒くためにも、全速力で空を翔んでいた。だが、ウォーグレイモンを追って来るそのデジモンとの距離は、まるで変わらない。いや、それどころか徐々に詰まってきている。

 まあ、それも当然だろう。ウォーグレイモンを追ってきているのは、先ほどウォーグレイモンたちを一蹴したオメガモンなのだから。根本的な地力でウォーグレイモンは負けているのだから。

 

「っく!」

「……諦めろ」

 

 そして、湖の上まで来た時には、オメガモンはもうウォーグレイモンに肉薄していた。

 これでは、逃げ切ることなどできない。そのことを理解したウォーグレイモンは、決意する。生き残るための、逃げ切るための戦いをすることを。

 三度、オメガモンの右腕より放たれた破壊の閃光。それを何とか躱したウォーグレイモンは、そのまま湖の水を巻き上げ、集め――。

 

「“ポセイドンフォース”!」

 

 ――そうして、湖の水をすべて使い切らんばかりの水量がオメガモンに向かって、放たれる。

 それは、並のデジモンなら押しつぶされ、流されてしまうほどの水量。だが、オメガモンとて、それをただでくらうような阿呆な真似はしない。四度、放たれた破壊の閃光が迫り来る大量の水を消し飛ばす。

 辺りに吹き飛ばされた水が舞い、水しぶきとなって落ちる中で、オメガモンは見た。湖の水に紛れて逃げようとするウォーグレイモンの姿を。

 

「っふ……小賢しい」

 

 もし仮に、オメガモンは気づかなければ、見逃してしまったかもしれない。

 もし仮に、ウォーグレイモンは気づかれなければ、逃げ切れたかもしれない。

 だが、現実問題としてオメガモンは気づいた。ウォーグレイモンは気づかれた。それは、この戦闘はまだ終わらないということを示していて。

 水に紛れて逃亡しようとしていたウォーグレイモンは、一瞬先に感じた悪寒を前に、水に入ることよりも上空に逃げることを優先した。

 そして、その一瞬後。その選択が正しかったことを証明するかのように、ウォーグレイモンが一瞬前までいたところを、グレイソードを構えたオメガモンが高速で通り過ぎていったのだ。

 

「流石に気づくか」

「っく!気づかれた……!」

「見逃すつもりはない。ここで終わりだ」

 

 もし、先ほど水に入って逃げることを優先していたら、ウォーグレイモンは今この世にいなかっただろう。水に入ることよりも、上空に移動することを選択したからこそ、ウォーグレイモンは生きている――と言えるのだが、やはり逃げようとしていたところを邪魔されただけあって、ウォーグレイモンは苦い顔をするのを抑えられなかった。

 そもそも、ウォーグレイモン単体ではオメガモンに勝てない。“絶対に”勝てないとはウォーグレイモン自身も思わないが、それでもかなり確率の低い戦いになるだろう。

 今はまだ、低い確率に賭けて戦うような時ではない。だからこそ、ウォーグレイモンは逃げたかったのだが――。

 

「っく!やはり戦うしかないか」

 

 ――それでも、命には変えられない。こうなってしまって、その上で生き残るためには、戦うという選択肢しかない。

 だからこそ、ウォーグレイモンは覚悟を決めて戦うことを選択する。

 オメガモンも、そんなウォーグレイモンが戦う気になったことがわかったのだろう。自然と、その左手の剣を構え直していた。

 一瞬後、ウォーグレイモンとオメガモンは激突する。だが、どちらが優位に立っているかは、一目瞭然だった。

 オメガモンの苛烈な剣さばきに、ウォーグレイモンは防戦一方だった。このままいけば押し切られるだろう。かと言って、戦闘方法を変えようとも、その隙をオメガモンは与えない。

 つまり、防戦一方の接近戦のみでウォーグレイモンは戦い続けなければならないということで。

 

「っく!」

「なかなかやるな。だが……無駄だ!」

 

 一瞬後、オメガモンの剣はウォーグレイモンを吹き飛ばす。勢い余って両断されなかったのは幸いだが、ウォーグレイモンが空中で体勢を立て直そうとしたその瞬間に――オメガモンは駆ける。

 こうなってしまっては、体勢を整えられていないウォーグレイモンでは、オメガモンの剣を避けることも、防ぐこともできはしない。つまり、これで終わりということで。

 その剣が、ウォーグレイモンに届――。

 

「なにっ!?」

「なっ!」

 

 ――届く直前で、オメガモンの剣は高速で投擲された帯刃によって弾かれた。

 その出来事に、オメガモンは目を見開いて驚いた。だが、オメガモンが驚いたのは自分の剣が弾かれたことにではない。

 そんなことでは、オメガモンは驚かない。オメガモンが驚いたのは――。

 

「ラララ~……どうやらぁ~美しくない~ことをぉ~しているようですね~!ララ……ラ~!」

 

 ――その帯刃の使い手が、()()()()()()()であったことにだ。

 オメガモンの剣を止めたのはロイヤルナイツの一人。ロードナイトモン。彼は桃色の鎧に身を包んだ、すべてのナイトモンたちの王であるデジモンだった。

 




という訳で、第五話です。
ちょこっとだけ現れた主人公……残念ながら、出番はまだ先です。

さて、オメガモンとウォーグレイモンの戦いに乱入したロードナイトモン。
彼が何を思って乱入したのか……それはまた次回に。

それでは次回もよろしくお願いします。

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