人は歴史を作り出し、人は歴史を語り継ぐ……誰が言った言葉かは定かではないが、妙に心に残るこの言葉がこれを書くきっかけになったのだろう。
人の世において皆様のおかげで私もジャーナリストとしてしっかりとした地位を築けた。私の記した本が人々の世になんらかの問題提起となり、それを解決する切っ掛けとなりえたならそれは私にとって望外の喜び以上の何者でもないことは間違いない。
しかしその裏で私は虚しい心情を持ち合わせていたことも間違いなかった。
私が本当に書きたかったこと、伝えたかったことを書けずにいたことを……。
あの戦争から10年の歳月が流れた。戦争の爪痕も痛みも悲しみも少しづつではあるが癒えてきた。かつての仲間たちも人の世界に溶け込み幸せに暮らしているであろう。だが世界は未だにあの戦争についての情報をほとんど公開していない。
彼や私たちが生まれ必要とされた戦争。
彼と共に戦い抜いた戦争。
それらが時の流れにさらされ、無情に風化していく様を見ることに私は耐えられなかった。私たちが生きてきた時代が……彼が消えていく様を黙って見ていることが出来なかった。
あの戦争で直接戦っていた私達を持ってしても謎が多い。
だれもが正義となり、だれもが悪となる
そしてだれが被害者でだれが加害者なのか
平和とは一体何なのか……
人は歴史を作り出し、人は歴史を語り継ぐ……しかしその権利は私たちにもあるのではないだろうか?
あの大海戦を戦い抜いた私たちにも歴史を語り継ぐ資格があるはずだ。
この本を書くにあたり私の意見に賛同してくれたあの戦争を共に潜り抜けた戦友の方々の惜しみない協力にまずは感謝を記したい。
そして私は改めてここに宣言する。
ここに書くことはすべて現実に起こったことだ。嘘偽りのない、彼と……私たち全ての艦娘の、命を燃やし戦い抜いた未だ語られなかった歴史をここに書き残す。
かつて世界を巻き込んだ一つの戦争があった。
悲しいが別に戦争自体そう珍しいものではない。人の歴史が始まって以来、民族・宗教・主義・領土・エネルギーなど、様々な理由で戦争や紛争といった争いごとは世界のいたるところで頻発している。そも私たちとてそこから生まれた存在なのだから。
ただこの戦争は『人間 対 人間』の争いではなく、『人間 対 怪物』というところが決定的な違いであろう。
『深海大戦』
この戦いはいつの頃からかそう呼ばれるようなる。深海より出現したそれらは瞬く間に世界の主要なシーレーンを掌握した。
無論人類側も黙っていたわけではない。各国の精鋭で構成された国連軍は乾坤一擲の大規模反攻作戦が行われた。
……その結果は惨憺たるものだった。
深海棲艦を覆う特殊な装甲と電波が現代の兵器をガラクタ同然にしてしまったうえ、各国のメンツが指揮系統の奪い合いが一層に戦場を混乱させた結果、戦力の実に5割以上を失うことになってしまった。
人類側が進退窮まったといっても過言じゃない状況に置かれたこの時、ある生物の出現が確認された。
それが『妖精』である。
おとぎ話にしか出て来なかった小さな存在は二つの命を生み出した。第二次世界大戦で活躍した船舶の魂を有する存在である『艦娘』、そして艦娘だけが扱え、深海棲艦に唯一対抗できる武器。当時の艦船を人間サイズまでダウンサイズした『艤装』である。
此処までは歴史の教科書でも書かれていることだ。
私が本当に知らせたいこと、それは「彼」の存在である。
押し寄せる敵のことごとくを打ち倒したこの戦争の中心的な存在。
艦娘しか扱うことが出来なかった艤装を唯一操った男。
『
そんな彼の戦いの歴史を追っていこうと思う。