ここは、とある町。そこに住む人々は、まるで死人の様な顔をしていた。そして、その様子を、一人の男が眺めていた。
「家畜、家畜、家畜・・・。どいつもこいつもいい顔をしておる」
男の名前はゲバゼ。この町の財政官であり、この町の住民がこうなっている元凶だ。彼は町の税金を倍にしているのだ。そして、その税金で自身はのうのうと暮らす。その行いのせいで、体はブクブクに膨れ上がっており、正にブタだ。ゲバゼが右手に持つ、血の様に赤いワインを口に含む。
「フハァ~。やはり住民から奪い取った金で飲む酒は上手いのう!!」
正に、[ナイトレイドが標的に選ぶ]人間だった。キィ、とドアが開く。そこからメイドが入ってきた。
「領主様、マッサージのお時間です」
「おうおう。今日は全身モミモミふくよかコースじゃ」
これもゲバゼの楽しみ。ゲバゼは町に住む若い女性をメイドとして雇っていた。それも言うまでもないが、無理矢理だ。断れば追放。少ない賃金で山道を渡り歩くことになる。
メイドが近づいてくる。ゲバゼは、このあとに訪れる快感に、胸を踊らせていた。メイドが細い、針の様なモノを取り出す。そして、ゲバゼの脊髄に刺した。脊髄は人間の急所の一つ。そこを一瞬で貫かれ、ゲバゼはこの世を去った。メイドの髪が金髪から赤髪に変わる。チェルシーだ。
「お仕事完了。しっかしどんなコースなんだか・・・」
これがチェルシーの[本来の殺り方]。帝具[ガイアファンデーション]で標的の隙を突き、殺す。ある意味、一番残酷な帝具だ。バタバタと外の方で音がする。
「・・・・!!」
チェルシーは、ガイアファンデーションを展開した。ドアがバンッと開かれる。
「イエーガーズだ!緊急案件につき、中に入らせていただく!!」
イエーガーズのウェイブ、クロメだ。クロメがゲバゼに近付く。
「ウェイブ、これ・・・」
そこには、ついさっきまでこの屋敷であった、主だったものが居た・・・。
「っていうのがあったのよ。つまり罠だった訳」
チェルシーの報告が終わる。マインが、
「そんな状況で生ききるなんて、あんたしぶといわね・・・」
「ま、あいつが飼っていたネコがすぐそばに居たからね。それに紛れ込んだのよ」
まったく、運が良かったわ。とチェルシーが言う。良すぎだ。
「私じゃ切り抜けるのは難しそう。悔しいけど、便利ね、その帝具」
ガイアファンデーションを見る。確かにマインは一撃必殺タイプ。バレたらヤバい。
「まあ顔が割れてるマインじゃ難しいでしょうね。此れからも私に回してくれて構わないわ・・」
「チェルシー・・・・」
マインは、なんだかんだでいい奴だ、とチェルシーの認識を変えようとする。チェルシーがニヤリと笑った。
「あ、チェルシー、それ駄目・・・・」
カタナが止めようとするが、時、既に遅し。チェルシーが
「だから、あんたは大人しく待っていなさい。ホ・ケ・ツ♪」
爆弾発言をかます。マインの頭の堪忍袋がプチンと切れた。
「仲間に対して何て侮辱!人として許せないわ!!」
「お前も俺に対してさんざん、似たような事言っていたけどな・・・」
マインがチェルシーを追い掛け回すのを横目に、タツミが呟く。
そして、それとほぼ同時刻。セリューは、三人の盗賊を捕らえていた。
「お、俺達はナイトレイドなんかじゃねえよ!!」
「ただ生活のために盗みをやっただけだ!人一人殺しちゃあいねえよ」
男二人の言い分を冷酷な目で見つめるセリュー。
「盗みはしたと認めたな。盗みは罪だ。断罪しなくちゃいけない。コロ、補食」
コロに命じる。コロの口がグパッと開き、男二人の上半身を食いちぎった。盗賊の一人である女性が小さく悲鳴を上げる。セリューの目が最後の一人に向く。
「わ、私はこいつらに命じられただけです!盗みもしていません!どうか正統な裁きを、受けさせて下さい!!」
その盗賊の命乞いを、セリューは残酷な一言で返した。
「・・・・こんな件、隊長やショウヤさんの手を煩わせるまでもない。コロ、三番」
コロの口から剣が出てくる。セリューの右腕が剣と合体した。
「ふっ!!」
女性が命の終わりを感じ、目を閉じる。しかし、いつまで経っても終わりは訪れなかった。目を開くと、一人の青年がセリューの剣を受け止めていた。
「ショウヤさん、退いて下さい!!」
「お前・・・自分がやったことが、分かっているのか!!?」
ショウヤと呼ばれた青年が、セリューに怒鳴り散らす。
「お前の父親は、罪人がいたらこうしろ、とお前に言ったのか!!」
「退かないと言うなら!!」
セリューが力を込める。ショウヤはそれを軽く笑いながら、
「セリュー、お前ちょっと頭に血が昇りすぎだ」
刀から漆黒の影が具現化し、セリューを襲う。セリューは吹き飛ばされ、向かいの木にぶつかり、意識を失った。ショウヤが気絶したセリューを担ぐ。そして、
「・・・・まあでも、こんな時世じゃ、こんなこともするわな・・・」
と呟く。女性の方を向くと、
「おい。もうこんな事、するなよ」
と言う。
「は、はい!!」
と答える。すると、
「まあでも、またやりそうになったら、革命軍に行くといい。あそこはここよりは、いくらかマシだからな」
帝国軍人として、言ってはいけないことを平然と言い放った。
「まあでも、そうなれば俺は敵だ。本気で決めてから入れ」
セリューを背負ったまま、ショウヤは帝都へと戻っていった。
ーへんな人だな。
そう思いながら、女性は家族が待つ家へと戻っていった。
次回、物語はついに、vsイエーガーズ編へ!!