謎の女の子--
よく分からないが其処に関しては触れない方が良いのだろうか……?
其処らへんの機転が利かない俺はどうやら未だ、気の利く大人になっているとは言えないのであろう。
「……。」
しかし何故だろうか、隣を歩いている鈴を見てみると何やらモジモジしているではないか。
やはり警官が頭を下げる程の何かをやってのけた事について聞いてほしい、否褒めてほしいと言ったところか?
見た目に反して何処か達観しているこの少女は、幾ら精神的に早熟していると言えど子供は子供だ。
此処は話を聞いて、良い話だったら褒めてあげようではないか。
「鈴さんは、何か偉大な事を成し遂げたのかい?」
「え?」
「いや先ほどの警官達が恭しく頭を下げていたものだから、偉大な事を……例えば新しい何かを発見した学者さんとか?」
鈴さんの顔が困惑に染まる。
おっとミステイクだったようだ
ならば……
「学者ではない……後はそうだな。あのマシーン、ISで何か活躍した何て事もありそうだね。」
今度は鈴さんの顔が驚愕に染まった。
どうやら当たりのようだが、具体的には分からないし此処で話は終わりにしよう。
何だか鈴さんの顔色が悪くなったような気がするし、何よりこの炎天下の中で歩き続けるのは非常に不味い。
「鈴さんが良ければ喫茶店にでも入って、話を聞かせてくれないかな?この辺りの地理には疎いんだ。」
ゆっくりと頷く鈴さんの顔を見て、やはり無理をさせていたのだろうと感じた。
先ほどから何も飲んでいないし、きつかったのだろう。
「此処でいいか…」
少し歩いた先にあった小さく古風な喫茶店へ入り、二人であることを告げ案内された席へと座る。
静かな店内にはジャズ系統の曲が流れていて暑さを忘れさせてくれ、辺りに香ばしく漂う
---やはり、どれだけ進化しても喫茶店は変わらなくて良い。
「鈴さん。先ほども言ったけれど、私はここら辺の地理に疎いんだ。良ければ色々教えてくれないか?」
「は、はい!分かりました!」
「そんなに肩を張らなくて大丈夫だよ。自然体で話してくれた方が嬉しいからね」
どうやら鈴さん、見知らぬ人と二人で喫茶店にいる事に緊張しているようだ。
無理もないがもう少し自然体で話をしたいところなので取り敢えず緊張を解すことから始めるとしよう。
とは言え、俺の話題なんて特にあるはずもなく自虐ネタでまずは攻めようと思うのだが、ミステイクだろうか?
「実はこの街に何故たどり着いたのか分からなくてね。もうボケが始まって夜中にフラフラしているうちに此処に辿り着いてしまったのかな?なんて考えてしまったよ。それに何故だか最近の出来事にも疎いんだ、これもボケの始まりなのかも知れない。」
「ッ!それって…」
鈴さんが物凄い悲しげな顔をして俯いてしまった。
まぁ、そりゃこんな歳でアルツハイマーやら何やらなのかも知れない人にあったら申し訳なくなるわな。
不味い……またミスしてしまったようだ。
次の話題は、ニュースやら新聞でよく見るISについて聞いてみよう。
それなら鈴さんがネガティブになる必要はないはずだ。
「おっと、ボケといってもそこまで深刻な物じゃないさ。ところで、先ほども言ったけど私は最近の話題に疎くてね。ニュースで頻繁に見かけるISについて詳しく教えてくれないかな?」
「ISについて、ですか?」
少し顔を綻ばせてくれたのでこの話題は正解のようだ。
それにISについて情報が欲しいのも確かだし、鈴さんを会話に乗せられて尚且つ情報も手に入るという一石二鳥。
鈴さんはISについて語り始めてくれた。
くれたのは良いのだが、鈴さんの後ろの窓の向こうで何か見たことがあるような後姿を見つけてしまった。
そう、突然ナンパをしてきたホ○少年らしき背中が喫茶店の前を丁度通り過ぎようとしているのだ。
俺を探しているのか、はたまた次のターゲットを探しているのかは分からないが頻りにキョロキョロと辺りを見渡しているのが恐ろしい。
「次にISが齎した世界に対する影響は…ごめんなさい私余り勉強はしていないからそこまで詳しくは説明できないですけど、簡単に言うと女尊男卑な風潮に--」
鈴さんが説明してくれているが全く頭に入ってこない。
何故なら少年が喫茶店の前から一向に動かなくなり、そこでキョロキョロと辺りを見渡しているのだから。
というか今店内をガラス越しに見始めた、まずいな…大丈夫だろうか?
自然と俺の顔が強張っていくが仕方がない…しかし鈴さんの方からしたら勝手に不機嫌になったやばい奴だ。早急に顔を戻して話を聞かなければ。
しかし此処は一旦避難しなければならないようだ、余りにも時間が無い。
「な、るほど……丁寧にありがとう。ちょっと失礼」
俺はトイレに逃げ込み少年が去るのをジッと待つ。
しかし無情にも少年は店内へと足を踏み入れた---
* * * * * * * * * * * *
「良かったら喫茶店にでも行って話を聞かせてくれないかい?」
嬉しいルルーシュ様からのお誘いだけど……何だかこのまま二人で話していたら何だか、嫌な予感がする。
とは言っても、断るのも勿体ないかな?折角のルルーシュ様と二人きりだし…うん!大丈夫何とかなる。
そして少し古ぼけているけれど、店内は小奇麗な昔ながらの喫茶店を見つけルルーシュ様はゆっくりと入っていった。
ルルーシュ様が店の扉を開けると、私が入るまで扉を押さえていてくれたりと英国紳士さながらの気づかいを見せてくれたのが嬉しかった。
案内された席に座ると、ルルーシュ様は置かれたメニューを一瞥すると直ぐに目を離し自然体でゆっくりと背もたれに体を預け、店内に流れるBGMを心地よさそうに聞いている。
もうルルーシュ様が決まってしまったのかと急いでメニューを確認すると、私が飲めそうなものがオレンジジュースぐらいしか無く、選択の余地はなかったのでそれに即決した。
そして、店員さんを呼ぼうと辺りを見渡し始めた所でルルーシュ様がウェイトレスの女の子を目で呼び止め、自らはアイスコーヒーをそして私に何を頼むのか聞きオレンジジュースも注文し朗らかに微笑んだ。
ウェイトレスの女の子はその笑顔を真正面から見てしまったので、赤面し早口で注文を復唱すると小走りで奥へと走っていってしまった。
「さて、話を聞いてもいいかな?」
ルルーシュ様が再び朗らかに微笑むと、私の目をじっくりと見つめてゆっくりと口を開く。
今思ったのだけど、ルルーシュ様程完璧な男性ってこの世に存在しているのかしら?
頭が良くて顔も良い、気配りも出来て家事も出来る、それに家族思いで妹の為に世界を変えた…。一般人ではまず無理ね。
体力が無いという欠点もあるけれど、機体に乗ってしまえば左程関係はないし。
そんなルルーシュ様が聞きたい事なんて、何故自分がこの世界にいるのか?
って事ぐらいだと思う。
ルルーシュ様は確実にこの世界で産まれた訳ではないと思うし、何よりルルーシュ様の妹のナナリー様も居なければ、スザク様もいない…。
つまりルルーシュ様は何らかの因果でこの世界に飛ばされた?でも元々は創作物だからそんな事は、でも博士なら或いは…?
あー!もうこんな細かい事は考える必要ないわ!!
なんせ今目の前には本物?のルルーシュ様がいるのだからっ!!
そんな感じで頭の中がいい感じに混乱してきた私を見て、ルルーシュ様は顔に僅かな疑問を浮べながらもこう話を切り出した。
「実はこの街に何故たどり着いたのか分からなくてね。もうボケが始まって夜中にフラフラしているうちに此処に辿り着いてしまったのかな?なんて考えてしまったよ。それに何故だか最近の出来事にも疎いんだ、これもボケの始まりなのかも知れない。」
ッ!?それって…。
微笑みながら誤魔化しを含めて言っているけれど、私には分かった。
ルルーシュ様の顔に僅かに浮かんだ、悲しみの色
きっとルルーシュ様は何も知らない状態でこの世界に飛ばされたんだ…あの日ゼロ・レクイエムの記憶もきっと持っているに違いないわ。
そんな事を考えているとルルーシュ様が再び口を開いた。
「おっと、ボケといってもそこまで深刻な物じゃないよ。ところで、先ほども言ったけど私は最近の話題に疎くてね。ニュースで頻繁に見かけるISについて詳しく教えてくれないかい?」
オチャラけた雰囲気で言って見せるが、どう考えてもおかしいのだ。
まずこの世界に生まれたからには、どんなに情報に疎い者でもISの事は絶対に知っている。
知らないという事は即ち、別世界から来たとしか考えられない。
ルルーシュ様がISについて知りたいのなら私には答える事しか出来ない…なら、ISについてと世界情勢についてルルーシュ様になるべく多くの情報を教えてあげるだけね。
まずは、ISが何を目的として作られたか、から説明していこうかしら。
「ふむ…なるほど。」
私の幼稚な説明の仕方にも真摯に聞き続けてくれるルルーシュ様は本当に凄いと思う。
一夏なんて五秒で、『何を言ってるのかわかんねえよ!!』で喧嘩になっちゃうぐらいだもの。
さて、次は…いよいよ世界の状態について、ね。
この話題は余り話したいものではない、特にルルーシュ様には。
「今現在世界各国では、ISによって男女での権利の問題が著しく変わりました。分かりやすく言うと、女尊男卑のように変わってしまったんです…。」
「ッ!」
この話題を切り出した瞬間にルルーシュ様の気配が変わった。
さっきまでは真剣に、時に微笑みながら話の受け答えをしていたのに『女尊男卑』のワードが出た瞬間に顔つきが変化したのだ。
朗らかな笑みは消え、代わりに困惑と理不尽に対する怒り…それが一気に表情に現れた。
コードギアスの世界においても、
ISも似たようなものね…男を奴隷の様に扱う国もあるし、何より戦争は変わった。
今まで使用していた武器、装甲車や戦闘機等が一切通用しなくなり、ISという抑止力を保有する国が今や世界のトップ。
コードギアスの世界と何一つ変わらない。強いて言うならば、今はこの世界の方が平和ということぐらいね。
きっとルルーシュ様が危惧しているのは、コードギアスの世界同様に圧倒的な支配国が全世界を掌握してしまう事。
そしてまた、理不尽な圧政の犠牲者が出てしまう事…ルルーシュ様にとって違う事は、守るべき大事な者がこの世界にはいない、それだけ。
「…失礼。」
顔色を悪くしたルルーシュ様がトイレに向かったのを見届け、深いため息を吐くと店の扉が開く音が聞こえた。
何となしに其方を見てみると、そこに立っていたのは--一夏。
「鈴っ!!ルルーシュ様は見つかったか?」
こんな店の中で大声出さないでよね馬鹿。
でも今はそれを口にする気力も湧かない…ルルーシュ様は一体どうするんだろう?
「ん?何かあったのか?」
私の心情を知らずに疑問を投げかけてくる一夏に腹が立ったが、今はコイツにでも事の経緯を話さないとスッキリしそうにないわね…。
---その後、ルルーシュ様が座席に戻ってくることは無く、姿を眩ませたのだった。
次回からルルーシュが世界を変えます(嘘
ゼロレクイエムの再発ですよ、再発!!(大嘘)