まだ肌寒さを感じる春なのに、工廠内はまるでサウナのような熱気に包まれ、ただ立っているだけなのにポタリポタリと大粒の汗玉が次から次へと零れ落ちている。
そんな熱気の発生源に一番近い妖精さんたち二人もすでに汗だくで、疲労しているだろう。 しかし、虹色の槌を振り下ろす親方妖精さんには勢いの衰えはみえない。 いや、むしろ振り下ろす力がますます力強いモノへとなっていた。
弟子妖精さんもそんな親方妖精さんに負けじと、混ぜては叩き引きを最初から寸分違わずに行なっている。
ーーっ!? 頭がクラクラしてきた。 でも、最後まで見届けるんだ!!
妖精さん達の熱気にあてられ、軽い熱中症になったのか頭がクラクラとするけれど、私は歯を食いしばって震える足に自ら活を入れるように叩いた。
本来なら、飲み物を飲んで軽い休憩をした方がいいのだろうけど……。
どうしてもこの時間を1秒足りとも見逃したくなかった。
ーー意地でも最後まで見るんだ!
私が一人で奮起している間に、どうやら建造は最後の工程へと差し掛かったようで、親方妖精さんが弟子妖精さんになりやら指示を出していた。
○○妖精さん視点○○
「ふぅ……おい、アレも混ぜろ」
私がケースの方に視線をやり、弟子にアレを混ぜるように指示すると、さすがに弟子はビクッと大きく身体を震わせて私の方を凝視して動きを止めた。
「お、親方。アレは……」
まさか私が、アレを使うとは思ってもいなかったのだろう。 弟子は本当にいいのか? と言葉でなく視線で問いかけてくるが、私はニカッと笑って言ってやった。
「最高の贈り物をしてやるんだ、おめぇは嫌か?」
滅多に見せない私の無邪気な笑顔によほど驚いたのか、弟子は化け物でも見たかのような顔をしやがった。
ーーな、なんだよ。 そんなに、驚くこたぁねぇだろ!?
私がムッとした気配を察したのか、弟子はすぐにキリッと表情を引き締めてケースからオリジナル艦娘の核を取り出してきた。
そして、いいんですね?と再度、私に視線で問うてきた。
「おぉよ!派手にやろうや!!」
私は言葉で強く肯定し、槌を今日一番の力で握り締め大きく振り上げた。 そんな私に弟子の奴は、困った親方だ。 って感じに小さく微笑み、オリジナル艦娘の核を打ち作り上げた艦娘の義核の中へと置いて、タンタンッと今日で最高の繋ぎ打ちをし、手を引いた。
「どっせぇええええい!!」
カァァアアアアアアアアン!! 今日、一番の大きな大きな音が、工廠を突き抜け鎮守府の辺り一面へと鳴り響いた。 そして、音が響き渡り終えると、建造は佳境に入った。