IS 一夏の彼女は副担任   作:陸のトリントン

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今回は映画館デートです。

甘々は少なめです。

仕事疲れの中、真耶の画像を見て何とか執筆しています。

やはり真耶は女神であった・・・


第12話

クラス対抗戦から10日後。

 

俺は無事に退院し、駅のホームで真耶を待っていた。

 

退院したとは言っても、右腕は包帯で巻かれてるけど力仕事をしなければ問題は無い。

 

・・・厨二病とか言わないでね。

 

それに今日は真耶との映画館のデートだ。服装大丈夫かな?無難に白のジャケットコーデと黒のブーツカットパンツにしたけど、変じゃないよな?あの二人(箒とセシリア)と鈴は来ないよな?

 

そうこう考えてる内に約束の時間を迎えた。

 

「そろそろ来る頃だが・・・」

 

「一夏君!待たせてごめんね」

 

謝りながらやって来たのは、黒のフレアースカートにGジャンボーダーTシャツを纏った真耶だ。

 

「別に待ってなんかないさ真耶。俺もさっき来たばかりだからさ」

 

「そう、良かった」

 

「じゃあ行こうか」

 

「はい!」

 

手を繋ごうと真耶に手を差し伸べたら・・・

 

「一夏君、右手大丈夫?」

 

包帯で巻かれた右腕を気にしてた。

 

「力仕事をしなければ問題ないよ」

 

「そうなの。じゃあ・・・」

 

真耶は俺の右腕に優しく握り満面の笑みを浮かべ

 

「私が一夏君を守るから、今日はいっぱい甘えてね」

 

上目づかいで俺を見つめた。

 

「分かった」

 

俺が断る理由も無く、真耶と指を絡め映画館へと向かった。

 

「一夏君の手・・・暖かい」

 

「真耶の手だって、暖かくて気持ちいいよ」

 

「もう、一夏君ったら」

 

 

 

あの三人(箒とセシリアと鈴)・・・いないよな?

 

 

 

そんな不安が的中することなく目的の映画館に着いた俺は安堵の表情をし、真耶が観たかった映画を観ることにした。

 

 

 

『Paradigm City』

 

 

 

海外で大ヒットしたドラマを再構成した映画。まあ、総集編と言ったところだ。

 

なんでもこのドラマの監督を含みスタッフの大部分が日本人ということもあってか、日本で放送した際それなりのヒットをしたそうだ。

 

真耶が俺と一緒に観たい映画だと言うが、正直どんな話なのかは知らない。

 

「この映画、どんな話なの?」

 

「主人公のネゴシエイターが様々な謎を解明すると言うお話です」

 

「様々な謎?」

 

「はい、自分の住んでる街とか記憶など、放送が終了しても未だに議論の絶えない人気作なんです」

 

「へぇ。真耶は観たことあるんだ」

 

「昔観てただけなので、かなりうろ覚えなんですけどね」

 

 

 

記憶か・・・

 

小学一年以前の記憶が俺には無かったんだな。

 

物心が付く前に両親はいなくなってたから顔とかも覚えてない。写真だってない。初めから親なんていなかったって考えてた時期もあったからな。

 

この映画の主人公はどうやって自分の過去と向き合ったんだろう・・・

 

 

 

「一夏君。パンフレットを買ったから行きましょう」

 

「ん?ああ、行こう」

 

映画を観よう。答えのヒントとなるものがあるかもしれない。

 

 

 

とりあえず、三人(箒とセシリアと鈴)は来てないと・・・

 

 

 

 

 

 

『私の名は、ロジャー・スミス。この記憶喪失の街には必要な仕事をしている。』

 

この映画の主人公ロジャーがネゴシエイションしてるシーンで、今の学園にはネゴシエイターが必要なのかと思ってしまった。

 

・・・ネゴシエイションしてもあの三人が納得する姿が思い浮かばない。

 

『この街パラダイムシティは、記憶喪失の街。この街の人間は40年前のある日を境に、それ以前の記憶をすべて失っている。しかし、それでも人間と言うのはなんとかしていくものだ。どうすれば機械が動き、電気が得られるのかさえ分かれば。過去の歴史がなど無くとも文化とやらは装える。過去に何があったのか、何が無かったのか、気にせずに生活だってできる。いや、そう努力してきたのだ。記憶を失って悲しんでるのはこの街の老人だけだ。しかしメモリーは、悪夢のようにいきなりその姿を現す時がある』

 

40年前以前の記憶が無い街。まるで俺みたいだな・・・

 

その後、アンドロイドを雇った主人公だけど色々と苦労してるな。結構毒の効いた台詞を吐くし、あんなピアノ演奏で起こされたくないなぁ。

 

あの三人に起こされるのも考えものだけど・・・

 

後、エンジェルが登場したけどどう話に絡むのかな?

 

 

 

『マイクル・ゼーバッハはもうこの世から消えた。飼い主にはそう伝えたまえ!』

 

『では、君の名前は何だ…?』

 

『シュバルツ・バルト、とでもしておこうか!』

 

シュバルツの登場により話は動き始めた。

 

 

 

世界の真実、40年前の出来事、新たな謎が浮かび上がり理解出来ない中、一つだけ分かった事は・・・

 

 

 

『雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい…自由とはそういうことだ!』

 

 

 

『その通りだ、R・ドロシー・ウェインライト。君がそう呼ぶ限り、私はロジャー・スミスなのだ!!』

 

 

 

主人公がカッコいいぐらいかな。

 

紳士を気取ってるが、自分の信念を貫き通す姿はかっこいいな。

 

 

 

「こんな感じだったな・・・」

 

後、真耶が映画に釘付けになってる姿は可愛いなぁ。

 

 

 

話が進むにつれ衝撃の事実が出てくる。40年前の出来事、パラダイムシティ。

 

俺は真耶そっちのけで映画に釘付けになっていた。

 

そしてなにより・・・

 

 

 

『(パラダイムシティ…大いなる虚飾の舞台…その上にあって、愚かな人間の過ちを見つめていたのは、神ではなく、この打ち捨てられた装置でしかなかった!ハハハ…これは、喜劇だ。私が求めていたのは、真実のメモリーとは…!!)』

 

 

 

パラダイムシティが演劇の舞台であり、エンジェルがその舞台の演出をする存在という事実には衝撃を隠せなかった。

 

それでもロジャーは自分を貫いていた。

 

『エンジェル! 人にとって、メモリーは大切なものだ。それがあるから人は自分の存在を確認できる。それが失われれば、人は不安から逃れられない。だが聞いてくれ! いまここに生きている人間は、決して過去のメモリーだけが形作っているものではない。この私は、己がどういう存在なのかもわからない。私には、自分自身のメモリーすらないのだ。だが、おそらく私は、自分自身の意思で、メモリーを消し去ったのだ。その選択をしたのは、私自身だ。私自身のために、今と、そしてこれからを生きるために。自分という存在を信じたいがために!』

 

クライマックスに差し掛かっての長台詞。真耶は涙を流しながら映画を観ていた。

 

自分と言う存在を信じ信念を貫き通せたからこそ、この台詞が言えるんだな。

 

『エンジェル! 私のメモリーの中にある君を、私は決して失いはしない。私とふれあった、自分のすべきことに信念をもっていた君を、誰よりも自分自身を愛していた君を、そして、その気持ちが揺らいでいた、エンジェルという女を。自分自身の存在を否定してはいけない。人として生きるんだ』

 

俺もアイツ(ロジャー)みたいに自分を貫けるかな・・・

 

 

 

『私の名は、ロジャー・スミス。この記憶喪失の街には必要な仕事をしている。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

会場が明るくなり、俺は少し背伸びをして真耶と一緒に帰ろうとした。

 

「面白かったな。真耶はどうだった?」

 

「うぅ・・・おもじろ・・・ぐすっ・・・がっだでず・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」

 

真耶は感動の涙を流していた。凄くハマったみたいだ。

 

 

 

「はいティッシュ」

 

「ありがとう一夏君」

 

映画を観終わった後、俺と真耶は近くの喫茶店で昼食をとることにした。

 

「びっくりしたよ。あそこまで泣くほどだったとは」

 

「エンジェルに交渉するロジャーの台詞に感動しちゃって・・・」

 

相当心にくるセリフだったんだな。俺も心にきたけど。

 

「お待たせしました。カフェオレとパンケーキセットになります」

 

映画の感想を言い合ってる内に注文していたメニューが届き、一緒に食べることにした。

 

「一夏君、あーん」

 

「あーん」

 

「ここのパンケーキ、凄く美味しいって評判だったから一夏君と一緒に来れて良かった」

 

「そうなんだ。でも・・・」

 

「でも?」

 

俺は真耶の耳元に近づき、小さな声で囁いた。

 

「真耶の作ったパンケーキの方が美味しいよ」

 

「もうっ!」

 

怒らせちゃった・・・

 

「そんなの言われたら・・・恥ずかしいから」

 

訳ではないか。恥ずかしながら真耶は俺を見つめる。

 

「そう言うなら私、一夏君のために最高のパンケーキ作ってあげる!」

 

両手でガッツポーズをとり、さっきまでの恥じらいを吹き飛ばすかのように自信に満ち溢れた顔になった。

 

「分かった。じゃあ・・・」

 

今晩、買い足しに行こうと真耶を誘おうとしたが・・・

 

「ちょっと待ったー!」

 

聞き覚えのある声がしたので、振り向いたら

 

「おい!一夏!いい加減俺の事に気付けよ!」

 

赤い長髪に・・・バンダナ・・・ああっ!

 

「弾じゃないか!久しぶりだな!」

 

 

 

五反田弾

 

俺の中学時代の悪友で、俺と真耶が付き合っている事を知ってる数少ない理解者。

 

実の事を言うと、真耶に告白できたのも弾のお陰である。

 

 

 

「お前!俺の目の前で真耶とイチャイチャして・・・爆発しろ!」

 

「開口一番がそれかよ!」

 

「冗談だって」

 

「弾だって、ルックスは良いから好意を寄せてくる人が・・・」

 

「それが・・・いないんだよ」

 

「・・・・・・ごめん」

 

「分かってくれるだけでも嬉しいよ一夏」

 

弾、お前が嫉妬する気持ちが分かったよ。

 

 

 

「改めて、お久しぶりです真耶さん」

 

「弾くん、久しぶりだけど変わってないね」

 

「いやぁ、これが『五反田弾』ですから!」

 

喫茶店を出た俺と真耶は久しぶりに会った弾と会話を弾ませていた。

 

「一夏!真耶を泣かせたりはしてないよな?」

 

「するわけないだろ」

 

突然、弾が俺を睨み問いかけてきたが俺は真耶を悲しませたりは・・・

 

 

 

「その包帯が巻かれてる右腕は何だ!?」

 

 

 

した。クラス対抗戦で真耶を泣かせてしまった・・・

 

 

 

「この・・・真耶泣かせの一夏めぇ!」

 

「待て弾!右腕を叩くな!まだ治りきってないんだから!」

 

「すまねぇ。けど、真耶を何回泣かせれば気が済むんだ?」

 

「毎回泣かせてる様に言うなよ」

 

「一夏君、それほど弾くんは心配してるんだよ」

 

「そう!お前の大親友である俺がここまで心配するほど、真耶さんとの幸せを願ってるんだぞ」

 

「そうだったな」

 

「まっ、お前が真耶を捨てたら俺はお前を呪い殺しに行くからな」

 

ドヤ顔で殺害宣言をしないでくれ。後、成功しそうで怖いから。

 

「ところで弾。お前ずっと袋持ってるけど、何か用があるんじゃないのか?」

 

「あ・・・・・・」

 

「お前・・・」

 

「やべっ!親父に材料の買い足しを頼まれてたんだ!ということでじゃあな、一夏!真耶さん!・・・親父に殺されるぅ!」

 

全速力で駆ける弾に俺は思わず合掌してしまった。弾の親父、怒ると結構怖いからな。

 

「一夏君」

 

「どうしたの真耶?」

 

「一夏君の過去がどんなものであっても、自分を否定しないでね」

 

真耶が俺の右腕に寄り添ってきた。

 

「真耶。俺、何も言ってないんだが」

 

「だって一夏君、あの映画を観た後ずっと考え事してたから、もしかしてと思って」

 

「・・・真耶には敵わないな」

 

確かに俺は考えてた。自分の過去を知った時、俺は真耶と一緒にいられるのか。もしかしたら真耶や千冬姉と戦うことになるのかもしれないと考えた。

 

だけど、俺は俺なんだ。弾や真耶、千冬姉とクラスの皆が俺を「織斑一夏」と思ってくれる限り、俺は「織斑一夏」なんだ。

 

・・・映画の影響を受けてるな俺。

 

「真耶。今晩真耶のパンケーキが食べたいけど、大丈夫?」

 

「はい!大丈夫です」

 

「じゃあ、近くのスーパーで材料を買って行こうか」

 

そう言って俺は笑顔で真耶と手を繋ぎ、近くのスーパーに買い足しに行った。

 

そういえば、一つ嬉しい事があったんだ。

 

 

 

三人(箒とセシリアと鈴)と会うこと無く真耶とデートができた事だ。




次回は三人(箒とセシリアと鈴)が一夏の前に現れなかった理由を執筆する予定です。

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