IS 一夏の彼女は副担任   作:陸のトリントン

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今回は、一学期終業式と夏休み初日の話です。

あれ・・・エピローグとプロローグが一緒になってしまった。

おまけに・・・甘くない。


第32話

臨海学校から数日が経ち、一学期の終業式を迎えた。

 

俺は白騎士を手に入れたからと言って、慢心はしていない。

 

終業式前日に真耶と戦ったが、俺の惨敗で終わった。

 

白騎士になっても撃たれ、白式より速くなっても撃たれ、操作技術が上達しても撃たれるだけで終わった。

 

と言うより、俺が強くなるに比例して、真耶が強くなってる。

 

どうやら、臨海学校の件で真耶に専用機を支給する話が持ち上がったんだが・・・

 

『たとえ量産機でも私の専用機はラファールです。それに、一夏君という最愛の人が私を強くさせてくれます』

 

そのセリフが原因で、教職員達が授業より夏休みの合コンの準備に力を注ぎ、教職員達による学級崩壊が起こりかけたとかないとか。

 

真耶は今のラファールを使い続けると言って俺に圧勝。確かに専用機はいらないな。

 

俺は自分が井の中の蛙だというのを知り、今後も真耶と一緒にISの特訓を続けることにした。

 

後、マドカが普通の女の子に戻ると言った。何でも、戦う理由がなくなったということで普通の女の子になると。その事に俺は驚いたが、マドカも人並みの幸せが欲しいんだと思い、俺と千冬姉は祝福した。千冬姉も普通の女の子に戻ればいいのに。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「それでは皆さん。二学期にまた会いましょう!」

 

真耶の言葉で一学期最後のSHRが終わり、夏休みが始まった。

 

俺は・・・

 

「織斑、話がある」

 

千冬姉に呼び出された。何で?

 

「一体、話って?」

 

「夏休みの間だが、私は家に帰れない」

 

「突然、何を?」

 

「このまま夏休みを迎える事が出来ないという事だ」

 

突然の話について来れないんですが・・・

 

「えっと・・・どうして?」

 

「マドカを入学させた理由を知ってるか」

 

「マドカの背後にある組織を調べるためだろ?」

 

「その組織を夏休み中に壊滅させることにした」

 

・・・え?

 

「えっと・・・一人で?」

 

「ああ」

 

「仲間は?」

 

「これは私の独断専行だ」

 

うわぁ、組織が一週間で壊滅しそう。

 

「マドカにも後で連絡をする。お前は有意義な夏休みを送ってくれ。私もお前達と帰省することを楽しみにしていたが、仕方のないことだ」

 

そう言い、落胆してる所を見ると苦渋の決断だったんだな。

 

「まあ、実家にいる間は山田君に保護者として同伴させるが」

 

「え!真耶が一緒に・・・」

 

「山田先生だ!お前の公私混同はいつになったら治るんだ」

 

「あ・・・ごめん」

 

「このことは山田君にも伝えてある。夏休みを精一杯楽しめ」

 

「分かった」

 

夏休み、真耶と一緒にいられるのか。実家だから学園みたいに誰かに襲われることもないし、有意義な夏休みになるぞ。

 

「だが、お前と山田君が淫乱な行動を起こし、周囲に迷惑を掛けた場合は・・・分かってるだろうな?」

 

「はい・・・気をつけます」

 

千冬姉、出席簿が紙屑のように丸まってるよ・・・

 

 

 

 

 

 

「一夏君、マドカさん。忘れ物はありませんか?」

 

「ああ。俺は無いぜ」

 

「私も」

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

翌日、俺とマドカと真耶は必要な荷物を背負い学園を後にした。

 

「まさか、真耶と一緒に帰省できるなんて思いもしなかったよ」

 

「私も織斑先生に頼まれた時はびっくりしました。でも、私は保護者ですから」

 

「分かってるって」

 

こうして真耶と一緒にのんびりといられるんだから、たくさん思い出を作らないと。

 

「それに、マドカの恋も実るように応援しないとな」

 

「に、兄さん!?」

 

「千冬姉から聞いたよ。マドカが想いを寄せてる相手がいるって」

 

「姉さんが!?」

 

マドカが顔を赤くしてる。少し前はそんな顔なんて見れないしな。それに、今着ている服は三人(清香と癒子とのほほん)が選んで買ってきたものだからな。

 

黒のスカートに白のTシャツの上に白のラインが入った半袖の上着。三人曰く、最初は無難なものを選んでみたと言う。

 

まあ、『てめえらの血は何色だぁ!』とか『働いたら負け』とかがプリントされたTシャツを着るよりはマシだ。

 

「そうですね。マドカさんの想い人って誰なんでしょうね?」

 

「ふ、二人には関係のない話だ。二人は二人で・・・思い出を作ればいい」

 

「そうだけど、マドカの恋模様も気になるなぁ」

 

「うぅ・・・」

 

マドカが恥ずかしくなりながら、俺達三人は実家へ向かって行った。

 

 

 

「ここが、私達の家・・・」

 

「ああ、そうだよ。俺とマドカの実家だ」

 

マドカが黄昏てる中、実家の前にいる。

 

庭は雑草が少し生い茂っているが、他の所は昔のままだ。

 

「とりあえず、中に入って荷物を置きましょう」

 

真耶の声に導かれるようにマドカは家の中に入って行ったが、少し寂しい顔をしていた。

 

「部屋は大丈夫みたいだ」

 

「じゃあ、私は買い物に行きますので一夏君とマドカさんは部屋の掃除をお願いします」

 

「分かった」

 

真耶は学園で着ている服のまま、買い物に出かけて行った。

 

「さて・・・」

 

俺は掃除を始めると同時に一つの問題を解決しに行動を起こす。

 

「マドカ、一緒に手伝って欲しいんだけど?」

 

「何だ?」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「随分、ホコリかぶってるな」

 

「兄さん。ここは一人で掃除した方がいいのでは」

 

「いや、ここは二人でやった方が効率的だと思うんだが」

 

「そうなのか?」

 

「そうだと思うけど」

 

俺はマドカと一緒に二階の衣服などがしまわれている部屋を掃除している。本当は掃除しなくても良いんだけど、俺の記憶が正しければこの部屋に何かをしまった記憶があるんだ。

 

「兄さん、一体何を企んでる?」

 

「別に。ただ、ここを今日掃除しなかったらずっとしないと思うからやってるだけ」

 

「そう・・・」

 

やっぱりマドカの顔が暗い。早くその何かが見つかればいいんだが・・・

 

 

 

「ふう。ここの部屋の掃除は終わった」

 

「そうだな」

 

結局、その何かが見つかることなく二十分で部屋の掃除は終わった。

 

「兄さん。次はどこの部屋を掃除するんだ?」

 

「そうだな・・・」

 

俺は次に掃除する場所を考えようと目線を上げたら・・・

 

「マドカ、棚の上にある箱はなんだ?」

 

「掃除し損ねたモノだな」

 

あの箱は・・・

 

「マドカ。肩車するから、それを取ってくれないか?」

 

「別に構わないが」

 

俺はマドカを肩車してその箱を取らせた。

 

「兄さん。これは何だ?」

 

その箱はガムテープで何重にも巻かれてあり、そのガムテープには・・・

 

いちかとまどか

 

と、ペンで汚く書かれていた。

 

「これは一階で開けてみるか」

 

俺はその箱を見た時、うっすらとだが昔の記憶が戻った気がする。

 

 

 

「兄さん。わざわざ山田先生と一緒に開けなくていい」

 

「まあ、そう言うなって」

 

「でも、箱の中には何が入ってるんだろう?」

 

俺は買い物から帰って来た真耶と三人で箱に巻かれてあるガムテープを剥がしていた。しかし、誰が何重にガムテープを巻いたんだ?

 

「やっと、箱とのご対面だ」

 

ガムテープをすべて剥がした箱の正体は金属製のお菓子箱だった。

 

「箱の中身は何だ?」

 

「開けてみる」

 

マドカに促されて箱を開けた。

 

「これは・・・」

 

箱の中には小さなおもちゃや文房具が入っており、その中に封筒が入っていた。

 

「何だこの封筒は?」

 

俺は封筒を取り出し中身を出してみると・・・

 

「写真と・・・カセットテープ」

 

俺はカセットテープをケースから取り出し、CDコンポにセットして再生ボタンを押した。

 

「一夏君。この写真・・・」

 

「ああ。俺の記憶が正しければこれは・・・」

 

真耶は写真を見つめ、俺とマドカはカセットテープから流れる音声に耳を傾けた。

 

 

 

『ちふゆおねえちゃん。なにかいって!』

 

『一夏、一体どうしたんだ?』

 

幼い頃の俺と千冬姉の会話だ。しかも・・・

 

『まどかがようちえんにはいったから、おいわいのことば』

 

『そうか。でも、どうしてカセットテープを持ってるんだ?』

 

『おもいでをのこしたい!』

 

『まだ四歳なのに難しい言葉を使うなんて、頭が良くなったな』

 

『うん!だからいって!』

 

 

 

五歳より前の出来事だ。

 

「思い出した。確か俺は千冬姉にマドカの幼稚園の入園祝いにお祝いのメッセージを入れたカセットテープを隠したんだ。大人になった時、マドカと一緒に聞くために」

 

「・・・・・・」

 

マドカは何も言わずにただ、CDコンポの前に座っていた。

 

 

 

『マドカ。幼稚園の入園おめでとうお前が大人になった時、私や一夏は一体何をしてるんだろうな?』

 

『さっかーせんしゅ!』

 

『一夏。お前はそうなのか。私はそうだな・・・剣道の師範でもやっているだろうな。だから・・・』

 

『ちふゆおねえちゃん、いちかおにいちゃん。なにやってるの?』

 

この声は・・・マドカの声だ!

 

『ひみつ!』

 

『おねえちゃーん!』

 

『一夏、いじわるしない。マドカ、大人になったら何になりたいんだ?』

 

『およめさん!』

 

『マドカはおよめさんか。きっといい大人になれるよ』

 

『うん!』

 

『ちふゆおねえちゃん!』

 

『お兄ちゃんなんだから、妹をいじめない!』

 

『いじめてない!』

 

『ん・・・親が帰って来たか』

 

『おとうさんだ!』

 

『おかあさんだ!』

 

『迎えに行ったらどうだ?』

 

『『はーい!』』

 

幼い俺とマドカは顔を思い出せない両親を迎えに下駄箱まで走って行った。

 

『一夏、マドカ。二人が将来、どんな大人になってるのか私に想像はできない。けど、これだけは言える。私達は家族なんだ。笑って、怒って、泣いて、それを共有できり家族は素晴らしいと思う。だから、いい大人になってくれ。これが私からへのメッセージだ』

 

『『おかえりー!』』

 

『どうやら時間だ。二人とも、仲良くするんだぞ!』

 

ここで音声は途切れた。

 

 

 

幼稚園の入園祝いのメッセージという名の未来の自分へのメッセージだった。

 

「まだ、家族がいた頃の記録が残ってたなんて」

 

「俺は嬉しいよ。マドカと一緒にいた頃の思い出があることを」

 

俺はカセットテープを取り出しケースに入れ、マドカの方を見た。

 

「ぐず・・・はぁ・・・私にも・・・思い出があったなんて・・・」

 

大粒の涙を拭いながらも、マドカは家族との思い出があることに喜んでいた。編入直後にマドカは・・・

 

 

 

『自分には家族の思い出は無い』

 

 

 

って言ってた。だけど、それも今日までの事だ。

 

「マドカ、俺達にも家族と思い出はあったな」

 

「うん・・・」

 

「良かったな」

 

「うん・・・」

 

俺はマドカを抱きしめ、マドカは俺の胸の中で大声で泣き叫んだ。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「そんなことがあったのか」

 

「はい。特にマドカさんには嬉しいことだと思います」

 

「そうだな。私も記憶がうろ覚えだからあまり覚えていないが、そのときの一夏の顔は笑ってたな」

 

夜になり、私は織斑先生に今日の出来事について話していた。あの後三人で仲良く夕食の支度をしたけど、マドカさんの顔は前より活き活きとして、昨日まであった厳しい態度は無くなって少し明るくなりました。

 

「で、その二人はどうしてるんだ?」

 

「今、二階で二人仲良く寝ています」

 

「そうか。すまないな、お前に保護者なんか押し付けてしまって」

 

「いいえ。一夏君もマドカさんも喜んでいましたから。織斑先生も無理をしないでくださいね」

 

「分かってる。今、マドカの上司にあたる人物を倒しに行く所だ」

 

「え、ええ・・・」

 

今更ですけど、織斑先生に勝てる人間はいない気がします。

 

「とにかく。私は五体満足、無傷無病で帰って来る。それまでの間だ、楽しい夏休みを過ごせ」

 

「はい。それでは失礼します」

 

私は電話を切り、テーブルの上にある写真を笑顔で見つめた。

 

「良かったね。家族の思い出が見つかって」

 

 

 

幼い頃の一夏君とマドカさんと織斑先生が笑顔で映っている写真。

 

それはカセットテープと一緒に入っていた家族との思い出の写真である。




次回は、五反田弾の受難を執筆する予定です。

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